- HOME
- >
- EVENT COVERAGE
- >
- イニストラード・チャンピオンシップ
- >
- イニストラード・チャンピオンシップ 初日の注目の出来事
EVENT COVERAGE
イニストラード・チャンピオンシップ
イニストラード・チャンピオンシップ 初日の注目の出来事
2021年12月3日
(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)
ちょうど8週間前、マジック界では競技の頂点である「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」が行われた。そのトーナメントは、日本の高橋優太が0勝3敗というスタートから残りを10勝0敗してタイトルを獲得する、という忘れがたい結末だった。
そして今日はどうかといえば、「イニストラード・チャンピオンシップ」の初日、高橋はトップグループを走っていた。252名のプレイヤーが参加している中、4勝3敗以上の成績を残せば2日目に進出できる。
2名のプレイヤーが初日を無敗で駆け抜けた先導者となった。プロシーンでは新顔となるティム・マクサヴニー/Tim MacSavenyが、ライバルズ・リーグのメンバー、クリスティアン・ハウク/Christian Hauckと肩を並べ、2人だけが7勝0敗の成績を挙げた。
そこに至るまでの経緯を紹介しよう。
ヒストリックの新時代
MTGアリーナのヒストリック・フォーマットのプレイを最高峰の競技レベルイベントで見られたのは「チャレンジャー・ガントレット」が最後だったが、そこからの期間で多くの変化があった。《記憶の欠落》はフォーマットから去り、新しいセットとカードが多数登場し、ヒストリックのデッキ構築環境はまさに「西部開拓時代」の再来となっている。
そのような背景から、「イニストラード・チャンピオンシップ」におけるヒストリック戦については多くの注目が集まった。このイベントはヒストリックで始まり、3日目のトップ8によるダブルエリミネーション・プレイオフでもフォーマットとして選ばれているため、トーナメント全体を挟み込む形だ。
その結果、チャンピオンシップ開催までの数週間に猛烈なテストプレイ期間が発生し、各チームは何が当てになるのか誰にもわからない広大なフォーマットで、デッキの改良、あるいは革新を目指すことになった。最終的なメタゲームの数字もそれを反映しており、デッキ全体の16%を超えるデッキはなく、10%以上のデッキも3つしかなかったのだ。
上位デッキがよく採用している人気カードは《集合した中隊》《太陽冠のヘリオッド》《信仰無き物あさり》《弧光のフェニックス》《奔流の機械巨人》《大魔導師の魔除け》などで、マジックの各フォーマットでおなじみのカードがヒストリックでも活躍している。
ヒストリック3回戦の激しい戦いが終わったのちのスタンディング上位もまた、パイオニアやモダンのファンにとって見慣れたものとなった。
ヒストリック3勝0敗デッキ
アーキタイプ | 人数 |
---|---|
イゼット・フェニックス | 8 |
ゴルガリ・フード | 4 |
ヘリオッド・カンパニー | 4 |
ジェスカイ・コントロール | 3 |
ジャンド・フード | 2 |
ジェスカイ独創力 | 2 |
ラクドス・アルカニスト | 2 |
セレズニア人間 | 2 |
イゼット天啓 | 1 |
ディミーア・コントロール | 1 |
5色ニヴ=ミゼット | 1 |
ジャンド・カンパニー | 1 |
ジャンド城塞 | 1 |
《信仰無き物あさり》と《弧光のフェニックス》の組み合わせは依然として有効だ。使用者34名中8名がヒストリック3勝0敗のスタートを切り、少し離れてMTGアリーナでリリースされた新しいカードを活用した2つのデッキが続いた。
「ゴルガリ・フード」は、「使い」慣れた《大釜の使い魔》と《魔女のかまど》のデュオに、新しく《貪欲なるリス》と《食肉鉤虐殺事件》が加わった。その一方で《太陽冠のヘリオッド》デッキは、ヘリオッドと《魂の管理人》系の能力と《小走り樫》によって「無限」へと進むこともできる。その中身はいつでもコンボで勝利できると脅してくる強力なミッドレンジ・デッキだ。
ヘリオッドのデッキリストは、ネルソン/Nelsonが(兄弟でありコメンテーターのコーリー・バウマイスター/Corey Baumeisterとともに行う「filming deck techs」(英語動画)の撮影で忙しくないときに)スタンダードに集中していた間、ヒストリックのテストプレイを担当していた元世界王者ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezの好意により提供された。
「メタゲームはおおむね予想通りだった」とドミンゲスは初日のデッキの成功について説明した。「私たちは『セレズニア人間』と『イゼット・フェニックス』にやや優勢で、コントロール・デッキには不利だ」
ヒストリックの3勝0敗デッキ群は誰にとっても何かしら気になる部分はあったが、《表現の反復》、《ドラゴンの怒りの媒介者》と《考慮》、そして今や至るところで見る《邪悪な熱気》といったカードでヒストリックでの勢いを取り戻した王道のアーキタイプ、「イゼット・フェニックス」に迫るものはなかった。
2日目が始まれば再びこのフォーマットでの対戦が行われるので、ヒストリックの全デッキリストをぜひ確認してほしい。成績上位のデッキ同士がどのようにしのぎを削るかが、トップ8入りを目指すレースの結果を左右することだろう。
スタンダードは緑を選ぶがよし
スタンダードは主に3つのデッキがその存在を誇示していた。常に人気の「イゼット天啓」とその名の由来である《アールンドの天啓》、「白単アグロ」とその妨害要素たる《スレイベンの守護者、サリア》、そして《老樹林のトロール》や同様の超大なモンスターを率いた昔なじみのストンピィなデッキ「緑単アグロ」、といったところだ。
何のデッキを持ち込んだにせよ、対戦では各プレイヤーが《感電の反復》をどのように捌くか、つまりそれらをどう唱えるか、あるいはこのフォーマットを定義づけているイゼットの呪文重視デッキにどう対処するかを中心に展開された。
その重要性から、プレイヤーはこのデッキをかつてのスタンダード――やモダン――で使用されていた有名な青赤コンボデッキと比較するほどだった。
しかし緑の大型クリーチャーでただ攻撃するということにも一理があり、ティム・マクサヴニーとクリスティアン・ハウクが7勝0敗の完璧な戦績を達成したのは、まさにそれによるのだ。マクサヴニーは金曜のスタンダード4回戦すべてで「イゼット天啓」と対戦して4勝0敗と完璧な結果を残し、ハウクは同日、青系のデッキを3度打破している。
「緑単がスタンダードでイゼットを倒すのに最高の弾を与えてくれたと思うし、ヒストリックの『セレズニア人間』についてはまだはっきりしていないが、デッキは今のところうまくいってるかな」とハウクは語った。「7勝0敗できるとまでは思っていなかったが、今日はずっとリラックスしてプレイできていた。それでも、7回のダイスロールで1度しか勝てなかったことを考えると、本当に7勝0敗で終えたことは未だに信じられないね」
7勝0敗という走りはトップ8への明快な道筋をハウクとマクサヴニーに残した。2日目にあと5勝するだけでよいのだ。長年のマジックプレイヤーであり、リミテッド愛好家でもあるマクサヴニーは、国外で数年過ごしたのちに最近アメリカに戻り、トーナメントシーンへと足を踏み入れた。構築トーナメントでこれほどうまくやってのけたことはもちろん称賛に値するが、単なる驚くべき出来事という表現では収まらない衝撃だった。
Managed the straight 7-0 for double-first place (I was first at 6-0 already). I literally have no idea what I'm doing, so it's a better than expected result. Cheers @Marshall_LR and @lsv
— Tim MacSaveny (@TimMac70) December 4, 2021
ストレートの7連勝で同率1位(6勝0敗の時点で1位だった)。本当にどうやったのか自分でもわからない、期待を超える結果だ。 @Marshall_LR と @lsv に乾杯
「私は『カルドハイム』のシールド戦によって『「ストリクスヘイヴン」チャンピオンシップ』の参加権を獲得し、今回のトーナメントでは『イニストラード:真紅の契り』のシールド戦によって参加権を獲得した」とマクサヴニーは説明する。「私はリミテッドが大好きだが、大きなイベントへの参加権を獲得するには、自身がやれるベストを尽くさなければならないね」
彼のベストは初日を駆け抜けるには十分なものだった。そしてマクサヴニーは2日目のヒストリックで自身の「ディミーア・コントロール」デッキを用いてその走りを再開する。
「デッキリスト提出日に、ギョーム・ワフォ=タパ/Guillaume Wafo-Tapaが彼の配信で『ディミーア・コントロール』をプレイしているのを見て、私はそれが《集合した中隊》へ対抗するのに良いと判断した」とマクサヴニーは話す。「このデッキをずいぶん練習したが……私の子どもたちを見てほしい、お父さんがプロツアーで1位になったと大興奮だ!」
スタンダードのメタゲームはほぼ予想通りの展開となったが、驚きもあった。そのうちの1つは殿堂顕彰者ラファエル・レヴィ/Raphaël Lévyが持ち込んだ予想外の「黒単コントロール」デッキで、彼は初日を6勝1敗で終えている。
スタンダードは2日目の後半にも行われ、誰がトップ8になるのか――そして誰が来年の「神河チャンピオンシップ」にも参加できるのかを決定する。彼らが何に直面することになるのかを正しく知るために、全プレイヤーのスタンダード・デッキリストを確認してみよう。
先を見据える
トップ2名のすぐ背後には、6勝1敗の成績で世界王者の高橋優太、シャハール・シェンハー/Shahar Shenhar、カイ・ブッディ/Kai Buddeやウィリアム・「ヒューイ」・ジェンセン/William "Huey" Jensenなどを含む大物たちが潜んでいる。
120名以上のプレイヤーが12月4日の午前9時(PST、日本時間26時)に始まる2日目に再び現れ、あと8回戦を戦い抜いてトップ8へと進出するプレイヤーを決定し、次の世界選手権への出場権確保に一歩近づくことになる。
その様子はtwitch.tv/magic(英語)で視聴できるぞ!
(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa)
「イニストラード・チャンピオンシップ」 日本語版放送ページ・放送日程
日本語版放送出演者
- 実況:石川朋彦(@katuobusi717)
- 実況:ブルナー実久(@mksnake007)
- 実況:岩SHOW(@suicidman)
- 解説:中村修平(@Nakashu_)
- 解説:黒田正城(@masashiro41236)
- and more...
RANKING ランキング
NEWEST 最新の記事
-
2024.11.12観戦記事
The Week That Was: 熱烈な勇者の帰還|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.27観戦記事
第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 決勝戦|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.26トピック
第30回マジック世界選手権 トップ8プロフィールとデッキリスト|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.26観戦記事
Magic World Championship 30 Day Two Highlights|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.25観戦記事
Magic World Championship 30 Day One Highlights|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.25戦略記事
The Spiciest Decklists of Magic World Championship 30|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権