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グランプリ・東京2016

観戦記事

準々決勝:加藤 健介(東京) vs. 熊谷 陸(宮城)

By 宮川 貴浩

 シングルエリミネーションの初戦は、ナヤ・コントロールvs.グリクシス・コントロールという珍しいマッチアップになった。

 熊谷は、先日のプロツアー『イニストラードを覆う影』にも出場している確かな実力者。自ら構築したナヤ・コントロールデッキでここまでやってきたことからも、マジックに対する理解度の高さがうかがえる。

 第13回戦でも紹介した加藤は、プロツアー・チャンピオン瀧村 和幸の高校時代からの友人だ。真面目な性格で、マジックに対しても真摯な姿勢で取り組み続けているとのこと。その人柄は、非常に丁寧な受け答えやプレイングからも伝わってきた。

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 ここから先は、1度の敗北も許されない。

 その緊張感は、この場に立った者だけが味わうことができる。

ゲーム1

 熊谷は《森の代言者》で堅実な出だしを見せるが、これを加藤が即座に《闇の掌握》で除去すると、熊谷は土地が2枚で止まり、アクションもなくなる。

 そこに加藤が《ヴリンの神童、ジェイス》を着地させ、主導権は完全に加藤が握ったかに見えた。

 しかし、熊谷は《ニッサの誓い》から《戦場の鍛冶場》を引き込むと、一気に息を吹き返す。《絹包み》で《ヴリンの神童、ジェイス》を除去し、一度の起動も許さない。

 さらに熊谷が送り出した《不屈の追跡者》は加藤の《究極の価格》で即墓地に送られたが、手掛かり・トークンを残して最低限の役割はすでに果たしている。

 ここからの攻防は、まさに一進一退。

 熊谷の《巨森の予見者、ニッサ》は、加藤が《ゴブリンの闇住まい》からの《闇の掌握》で除去。続いて熊谷が送り出した《保護者、リンヴァーラ》も、加藤の「覚醒」込みの《破滅の道》で対処された。

 熊谷が《炎呼び、チャンドラ》を使い捨てて《ゴブリンの闇住まい》、「覚醒」で4/4となった山を流すると、ゲームはいったん仕切り直しとなった。

 再び《ヴリンの神童、ジェイス》を繰り出す加藤に対し、熊谷も《エルフの幻想家》、《不屈の追跡者》と負けていない。

 《ヴリンの神童、ジェイス》を《束縛なきテレパス、ジェイス》に変身させた加藤は、《ゲトの裏切り者、カリタス》を従えた上で《究極の価格》を《不屈の追跡者》に撃ちこんだ。

 プレインズウォーカーにはプレインズウォーカーを。熊谷も《巨森の予見者、ニッサ》を即《精霊信者の賢人、ニッサ》へと変身させると、[-2]能力で「目覚めし世界、アシャヤ」を戦力として追加した。

 加藤の手札には《龍王シルムガル》があるものの、熊谷は十分にマナを立てており、手札も4枚ある。加藤は少々時間をとり、《停滞の罠》の存在や調査でのドローも考慮に入れる。

 しかし、意を決してアタックを敢行した加藤の前に飛び出してきたのは、《大天使アヴァシン》だった。これにはやや予想外といった表情を見せる加藤。

 《ゲトの裏切り者、カリタス》を失った加藤は、《龍王シルムガル》で熊谷の《大天使アヴァシン》を奪い、《精霊信者の賢人、ニッサ》を落としつつ熊谷のライフを攻める。

 飛行戦力への回答がないかと思われた熊谷だったが、ここで駆け付けたのは《龍王アタルカ》! 《龍王シルムガル》を倒し、戻って来た《大天使アヴァシン》が《浄化の天使、アヴァシン》に変身すると、形勢は一気に熊谷へと傾く。

 加藤はなんとか《コラガンの命令》で《龍王シルムガル》を回収し再度戦場に送り出すが、これは熊谷の《停滞の罠》で追放される。こうなると加藤に対抗する術は残っておらず、天使と龍王の豪華過ぎるデュエットで、ゲームは速やかにフィナーレを迎えた。

加藤 0-1 熊谷

 今大会で特に活躍が目立つ2体の龍王。

 特に《龍王シルムガル》は、多くのプレイヤ―が現環境のキーカードに挙げていた。

 クリーチャーやプレインズウォーカーが強ければ強いほど、これらの龍王は輝きを増す。

 サイドボーディング後も、互いの龍王をめぐる戦いとなるのか。

ゲーム2

 お互いにデッキの内容を把握しているため、サイドボーディングにも高度な読み合いが発生する。特に加藤は、己の運命を託す60枚を慎重にチョイスした。

 1マリガンの加藤は、《ヴリンの神童、ジェイス》からスタート。このカードが生き残りさえすれば、マリガン分のディスアドバンテージは取り戻せるだろう。

 《エルフの幻想家》で手札を充実させる熊谷に加藤が《強迫》をキャストすると、公開されたのは《ニッサの誓い》、《先駆ける者、ナヒリ》、《不屈の追跡者》がそれぞれ2枚ずつに、《森の代言者》が1枚。非常に濃い熊谷の手札に頭を悩ませた加藤は、《ニッサの誓い》を1枚落とすことを選んだ。

 残った《ニッサの誓い》で土地を確保した熊谷は、知られている戦力のうち、まずは《森の代言者》を戦場に送り出す。これは加藤が《究極の価格》で処理し、墓地を肥やしながら《ヴリンの神童、ジェイス》も《束縛なきテレパス、ジェイス》へと変身させた。

 加藤が《ゲトの裏切り者、カリタス》を出し、《ゴブリンの闇住まい》から《究極の価格》で《不屈の追跡者》を破壊すれば、熊谷は《停滞の罠》で《ゲトの裏切り者、カリタス》を追放する。両者一歩も引かない展開が続くが、この間にも《束縛なきテレパス、ジェイス》は順調に忠誠度を上げていく。

 さらには加藤が熊谷の《先駆ける者、ナヒリ》に《シルムガルの命令》をあわせてこれを打ち消し、《停滞の罠》をバウンスして《ゲトの裏切り者、カリタス》が戦場に戻ってくると、2枚目の《ゴブリンの闇住まい》で《強迫》が再利用されようとしたところで、熊谷は投了を宣言した。

加藤 1-1 熊谷

ゲーム3

 今度は熊谷が1マリガンでのスタート。1ターン目に《強迫》を唱えた加藤は、《絹包み》、《ニッサの誓い》、《不屈の追跡者》、《進化する未開地》、《》とういう熊谷の手札から、《絹包み》を捨てさせた。

 熊谷は引き込んだ《エルフの幻想家》から《ニッサの誓い》へとつなげ、2枚目の《不屈の追跡者》を手札に加える。

 加藤は2ターン目に《ヴリンの神童、ジェイス》を着地させるが、熊谷は《不屈の追跡者》を唱えたのち《進化する未開地》を置き、未来の2ドローを確保。アドバンテージの獲得では負けていない。

 盤面にも干渉しなければならない加藤は、《ヴリンの神童、ジェイス》の《束縛なきテレパス、ジェイス》への変身をはさみ、2回の《破滅の道》で2体の《不屈の追跡者》を除去した。

 次いで頼りになる相棒《ゲトの裏切り者、カリタス》を戦場に送り出した加藤だったが、熊谷は加藤の終了ステップに《大天使アヴァシン》を召喚。さらに自身のターンに《巨森の予見者、ニッサ》を《精霊信者の賢人、ニッサ》に変身させ、《先駆ける者、ナヒリ》までもを戦場に加えた。

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思わず「厳しいー」と言葉がもれる加藤。しかし、その目はまったく光を失っていない。

 加藤は《束縛なきテレパス、ジェイス》の忠誠度を0にし、《破滅の道》でまずは《大天使アヴァシン》に対処したが、熊谷はなんと《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を追加。これで、熊谷の戦場には3体のプレインズウォーカーがそろい踏みすることになった。

 ここで、注目すべきプレイングが見られた。熊谷は、《先駆ける者、ナヒリ》の能力を起動しなかったのだ。

 《先駆ける者、ナヒリ》の[-2]能力は、そもそも対象がない。[+1]能力を起動した場合、もし加藤が《龍王シルムガル》を持っていたら、どうなるか。ちょうど忠誠度が8になった《先駆ける者、ナヒリ》を奪われ、[-8]能力を起動された上で2枚目の《龍王シルムガル》が登場。さらにプレインズウォーカーを奪われるという悲惨な結末が待っているのだ。試合後に話を伺ったところ、両者ともそのことに気がついていた。


有利に見える状況でも決して隙を見せず、負け筋を消してゆく熊谷

 加藤は《ゴブリンの闇住まい》で《破滅の道》を使いまわして《先駆ける者、ナヒリ》を破壊し、《シルムガルの命令》のバウンスとマイナス修整を駆使してなんとか状況を打開しようと試みる。

 しかし、熊谷は戦場に3体の《森の代言者》を並べ、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》で全体強化の紋章まで得ている。そして、空から《龍王アタルカ》が降ってくると、加藤は手札で腐っていた2枚の《ゲトの裏切り者、カリタス》を見せ、笑顔で自身のグランプリ・東京の終わりを受け入れた。

加藤 1-2 熊谷

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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