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EVENT COVERAGE
グランプリ・東京2016
市川ユウキ&松本友樹の「スゥルタイ・季節」
By Masashi Koyama
※この記事はグランプリ本戦1日目に取材されたものです
2015年5月、ふたりの「ユウキ」がトーナメントシーンを席巻した。
1人は市川ユウキ。プロツアーで2連続トップ8入りからのプラチナ・レベル到達とド派手な戦績を引っさげグランプリ・上海2015で念願のグランプリ初優勝を達成した。
市川に比べると松本友樹はその時点では、ネームバリューが低かったことは否めないだろう。だが、彼は市川の後を追うかのようにグランプリ・千葉2015で見事初戴冠を果たしてみせたのだ。
そんなふたりの「ユウキ」はデッキをシェアする機会もあり、松本作のデッキを操る市川が晴れる屋主催の「神挑戦者決定戦」を勝ち抜いたこともある。
そして、このグランプリ・東京2016で彼らが75枚同じ内容のデッキを使い、ここまで7戦全勝という快進撃を続けているとあらば、取材しないわけにはいかないだろう。
4 《森》 4 《沼》 1 《島》 2 《ラノワールの荒原》 4 《風切る泥沼》 2 《ヤヴィマヤの沿岸》 4 《窪み渓谷》 1 《詰まった河口》 4 《進化する未開地》 -土地(26)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《森の代言者》 1 《棲み家の防御者》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 2 《龍王シルムガル》 -クリーチャー(15)- |
3 《闇の掌握》 2 《精神背信》 2 《究極の価格》 2 《苦い真理》 2 《破滅の道》 1 《ムラーサの胎動》 2 《衰滅》 3 《闇の誓願》 1 《シルムガルの命令》 1 《過ぎ去った季節》 -呪文(19)- |
1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 3 《強迫》 2 《死の重み》 2 《否認》 1 《帰化》 1 《鞭打つ触手》 1 《無限の抹消》 1 《餌食》 1 《悪性の疫病》 1 《過ぎ去った季節》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード(15)- |
ラウンドの間をぬって、松本友樹がインタビューに応じてくれた。
――デッキのことをお伺いする前に、市川さんとの関係性について教えていただけないでしょうか。おふたりは普段調整チームのような形なのでしょうか。
「いえ、そんなことは全く無いですね。個人個人でデッキを回していて、イベントが近づくと連絡を取って『良いデッキはありますか』と聞くような感じですね」
――市川さんとデッキを共有されている印象が強いのですが。
「あまりどちらも意識していないのですが、お互いに連絡して気に入ったものを使う感じですね。今回は別で、このグランプリ・東京に向けて『一緒にやりませんか』とお話をもらって、一緒にデッキを組みました」
――市川さんとは知り合ってからもう長いのでしょうか?
「僕がまだ大きな大会に出ていなかった頃、グランプリトライアルで一度対戦したことがあって、そのことを向こう(市川)が覚えていてくれて、彼がプロツアー予選を抜けたあたりの頃にもう一度お話しするようになった感じですね」
――今回は仮想敵を決めづらかったと思うのですが、その中でどのようにこのデッキを作られたのでしょうか。
「仮想敵としては、緑白トークンと黒緑サクリファイスが2強だと考えていて、その下にエスパー・ドラゴンやグリクシス、《過ぎ去った季節》などのコントロールや人間ビートダウンなど色々なデッキがあると思っていました。このデッキを組んだ経緯は、黒緑のコントロールというコンセプトはいいなと思ったのですが、(《過ぎ去った季節》コントロールは)オーバーキルに過ぎるのではないかなと(笑)。そういう印象があったので、スムーズにまとめられないかな、ということと、《龍王シルムガル》というカードが環境的にベストに近いカードではという考えがあったんですね。なので、このカードを使いつつ良いデッキを作れないかということで、このデッキを選びました」
――青いカードは《ヴリンの神童、ジェイス》《龍王シルムガル》、それに《シルムガルの命令》が1枚入っているのですね。
「この環境はプレインズウォーカー、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》というラインが本当に強いので、インスタントタイミングでそれらを触れるカードと、1枚で劣勢な盤面を盛り返せるカードが欲しかったんですね。《闇の誓願》からサーチができるので、役割が複数あったり大きな影響を与えることのできるカードを散らしたいということもあって1枚入っています」
――仮想敵の緑白トークンや黒緑サクリファイスにはどのようなゲームプランを取るのでしょうか。
「基本的なプランは《森の代言者》などで盤面を支え、できれば《衰滅》などで時間を稼ぐのが序盤の目標ですね。状況に合わせて《闇の誓願》でカードをサーチできるのですが、ゴールは《龍王シルムガル》か《過ぎ去った季節》ということになりますね」
――苦手なデッキはあるのでしょうか?
「実はMagic Onlineで調整していて、あまり多くのデッキと対戦していないんですが(笑)、当たりたくないなと思うのは緑赤のランプデッキですね。《精神背信》がないときついマッチアップです。あとは緑白トークンに対してすごく有利、という訳ではないので、対コントロール用に練ってきている(緑白トークン)デッキは怖いですね」
――サイドボードに目を移すと1枚挿しが多い気がするのですが。
「《闇の誓願》があるのでシルバーバレットするのが基本的な戦略になりますね。《無限の抹消》や《悪性の疫病》のような特定のデッキに有効なカードは1枚ではそこまで影響を及ぼさないのですが、《闇の誓願》があるおかげで実質4枚積んでいるようなもので、こういった効果の大きいカードを散らすことができるのが強いですね。」
――ありがとうございました。
いかがだっただろうか。なお、松本は最後に「このデッキは市川さんが組んでくれたんですよね」と市川に言及することも忘れなかった。
松本と市川の関係性は筆者が考えていた調整チームのようなものではないとのことだったが、それでも両者共にお互いをリスペクトしているのが感じられる。
そして、市川に松本についてのコメントを求めると一言。
「マジックプレイヤーとして信頼してますから」
この短いコメントがふたりの「ユウキ」の関係性を端的に表しているのではないだろうか。
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