By 伊藤 敦

　13回戦で渡辺 雄也と山本 賢太郎が揃って敗北を喫してしまったため、トップ８の可能性がある日本人はここにきてただ一人となった。

　森 勝洋。

　世界選手権2005王者にして幾多のタイトルを獲得してきたプレイヤーだが、一時期はプロシーンから遠ざかっていたように思われる。

　しかし今年の年明けにマジック・オンラインのプロツアー予選を抜けると、プロツアー『イニストラードを覆う影』では18位に入賞して来週に開催されるプロツアー『異界月』の参加権利を獲得。さらについ先週にはHareruya Prosへの加入が発表され、大きな話題を呼んだ。

　はたしてこのグランプリ・シドニー2016がプロツアーに続いて、森のプロシーンへの復活劇の第二幕となるのか。

　対戦相手はオーストラリア現地のプレイヤー、スコット・フルコ/Scott Fulko。

　友人と思しきプレイヤーたちがフィーチャーマッチの周りで見守る中、正念場の戦いが幕を開けた。

ゲーム１

　《原初のドルイド》からの《罪からの解放者》でエルドラージ・ホラー・トークンを生成するフルコに対し、森は《歓喜する信者》で応える。これを積極的に交換しにいったフルコが続けて《近野の司祭》を送り出すと、森のアクションは《気紛れな霊》。

　さらにフルコが《小村の隊長》、森が《悟った狂人》と並べたところで、フルコはそれぞれ２枚目となる《原初のドルイド》と《罪からの解放者》をプレイしエルドラージ・ホラー・トークンを再び呼び出す。

森「ハハ、トゥメニーｗ」

　しかしトークン同士が相打ちになり、森が《容赦無い泥塊》を送り出すとフルコの盤面に大したプレッシャーはない。

　それでもフルコはここで《ウルヴェンワルドの観察者》をプレイして一気にゲームの主導権を握ろうとするのだが、そこに森の狙い澄ました《巻き込み》が突き刺さる！

　さらに森は「昂揚」もしていない《容赦無い泥塊》を《近野の司祭》が立っている場であえてアタックに行かせると、攻撃が通ったのを確認して６マナフルオープンでターンを返す。

　ブロッカーは《悟った狂人》《気紛れな霊》のみ、《小村の隊長》と《近野の司祭》がいるから失った３点はすぐに取り戻せる。なぜアタックしたのか......？

　少し考えたフルコだが、結局誘いに乗ってフルアタックする。これを受けて、森はまず４/２となった《近野の司祭》を《気紛れな霊》でブロックしてから、墓地２枚の《突発的変化》を《近野の司祭》にエンチャントする。

　当然このままでは一方的に《近野の司祭》を打ち取られてしまうフルコはここで《執念》をプレイするのだが、森が持っていたのはなんと２枚目の《巻き込み》！

　この戦闘で完全に主導権を握った森は、さらに返すターンに《集団的抵抗》で「昂揚」を達成しつつ《小村の隊長》を除去。このターン一挙10点を入れつつ、《厄介な船沈め》の「現出」で《集団的抵抗》を回収するビッグプレイ。

　完全に森のペースに乗せられてしまったフルコ、さすがに投了。

森 1-0 フルコ

ゲーム２

　開幕は３枚で土地が詰まってしまったフルコだが、《原初のドルイド》《原初のドルイド》と並べており、《悟った狂人》や《歓喜する信者》を出すのみの森も相手に土地を供給させたくはないため膠着状態となる。

　やがて土地を引き込んだフルコが《不動の聖戦士》に《グリフの加護》を付けて殴りだすと、森も《改良された縫い翼》をブロッカーに立てざるをえないが、これは《直接射撃》でインスタントで対処され、さらに《夜明けのグリフ》を追加されてしまう。

　だが森はダメージを食らいつつも慌てずに墓地から《改良された縫い翼》を再度呼び出し、少しでもゲームを長引かせようとする。森のデッキには《驚恐の目覚め》が入っており、ライブラリーアウト勝ちも狙えるためだ。

　だが、ここで６枚目の土地を引き込んだフルコは《夜明けのグリフ》を「現出」の種に捧げて《州民を滅ぼすもの》をプレイ。

　これ自体は《巻き込み》されるものの、誘発した能力は健在。《原初のドルイド》×２、《節くれ木のドライアド》、《グリフの加護》がついた《不動の聖戦士》がすべて+2/+2修整＆トランプルを得て森に襲い掛かる。

　ライフを２まで落としつつ、どうにかこのアタックをしのいだ森だったが。

　続くターンに地上のクリーチャーで殴り返してブロッカーを手薄にしてしまったところで、フルコが再びフルアタック。

　《原初のドルイド》２体の攻撃が通ったところでの《執念》は《巻き込み》するものの、《狙いは高く》で綺麗に押し込まれてしまった。

森 1-1 フルコ

ゲーム３

　運命の３本目......だが、ここで後手ワンマリガンのフルコの土地が２枚で詰まってしまう。

　《節くれ木のドライアド》こそ出せたものの、森が《歓喜する信者》《気紛れな霊》《くすぶる狼男》と送り出してその《節くれ木のドライアド》を除去。フルコは返すターンにようやく土地を引き込むものの、既に盤面には絶望的な差がある。

　ひとまず《聖戦士の相棒》を送り出したはいいが、返すターンに森が６枚目の土地を置いて《くすぶる狼男》を《噴出する戦慄狼》に変身させると、もはやブロックすることすらかなわない。

　一応《罪からの解放者》を出してはみるものの、森が《集団的抵抗》をプレイしようとしたところで、対象の宣言を聞く前にフルコは悔しそうにカードを片付けた。

森 2-1 フルコ

　森 勝洋、最終ラウンドにトップ８の望みをつなぐ！