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EVENT COVERAGE
グランプリ・シドニー2016
ドラフターズ 〜リミテッド巧者たちの戦い「ドラフトマスター」の行方〜
by Masashi Koyama
マジックプレイヤーなら誰しも憧れるであろうマジック最高の舞台、マジック:ザ・ギャザリング世界選手権。
2012年にマジック・プレイヤー選手権として始まったこのイベントは世界選手権と名前を変え、設立当初からプレイヤーたちの憧れの的であり続けている。
そして、今年度行われるマジック:ザ・ギャザリング世界選手権2016へと招待されるのはわずかに24人。
その24人の枠に入るためにはプロツアーでの優勝や地域別年間獲得ポイントで上位に立つ......など様々な方法がある。
そして、その招待枠のひとつに「ドラフトマスター」がある。
「ドラフトマスター」についてご存じない方のために説明しておくと、「シーズンのプロツアーを通して最もドラフトでマッチ・ポイントを稼いだプレイヤー」が該当することになる。
たった1つの枠をかけて争うこの「ドラフトマスター」。プロツアーでのマッチ・ポイントを参照するため、このグランプリ・シドニー2016の結果が争いに影響するわけではない。
だが、「ドラフトマスター」を狙えるほどの手練ともなれば、リミテッドで行われる本グランプリで活躍する可能性は高いだろう。
ここでは、そんな「ドラフトマスター」で現在最上位を走っているのが、マジックのスーパースター、「ジョニーマジック」ことジョン・フィンケル/Jon Finkelだ。
1位(45点)―ジョン・フィンケル/Jon Finkel
往年の名選手は、現在もトップシーンで大活躍を続けており、今シーズンもプロツアートップ8に入賞するなど、最前線で戦い続けている。
そんな古くから活躍を続けているフィンケルは、普段からドラフトを数多くこなしているわけではないという。
「プロツアーが終わってしまえば、あまりドラフトをすることはないかな。数週間に1回とか、それくらいだ。プロツアーがカードセット発売後すぐに開催されるから、その短い間にたくさんドラフトをして、その後新たなセットが出るまでの数ヶ月はあまりプレイすることはないね」
基本的には新セット発売後に集中的にドラフトをして、プロツアーの後はほぼリミテッドをすることがないようだ。シールドに至っては、リミテッドグランプリの本戦以外でデッキを組むことはないという。
ただ、チームリミテッドによるグランプリは例外で、チームメイトが集まった段階で数回デッキ構築の練習をするとのことだ。
もちろん、古くからの蓄積があってこその高い勝率ではあるが、果たして、彼と普通のプレイヤーの違いはどこにあるのだろうか。
「間違いなく、経験を多く積んでいる、ということが大きな助けになっているだろう。私が思うに、マジックではいつリスクを背負わなければいけないか、あるいは安全を取るべきかというのを理解することが重要だ。例えば、3色目の強いカードをタッチするか、あるいは2色でデッキを組むか、そういった場合のことを知らなくてはいけない。それが全てだと思う。マジックは可能性を選択するゲームなんだ」
可能性を選択し続けてきたフィンケルは今シーズン、プロツアー『戦乱のゼンディカー』とプロツアー『イニストラードを覆う影』でトップ8入賞するなど好調だ。プロツアー『異界月』でも、彼のドラフトに注目が集まることは間違いない。
古くからマジックを象徴するプレイヤーであるフィンケル。彼に憧れたマジックプレイヤーも日本に多くいらっしゃることだろう。最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いした。
「日本の皆さん、こんにちは。(昔と比べると)今日本ではマジックが盛り上がっていて、強いプレイヤーがアメリカと同じくらい多くいるというのはとても感慨深いものがあるよ。これからもこの調子でマジックを盛り上げて行ってほしいね」
2位タイ(43点)―クリスティアン・カルカノ/Christian Calcano
フィンケルをマッチ・ポイント2点差の2位タイで追うカルカノ。フィンケルに比べると知名度は低いものの、彼もまた激戦区アメリカからプロツアーに参加し続けている強豪だ。
カルカノにとって、「ドラフトマスター」を獲得すれば悲願の世界選手権出場となる。
「新セット発売から1週間はドラフト漬けだね。その後は構築の練習に集中するから、ドラフトをする回数は減るかな。プロツアーシーズンでなければ、普段はオンラインで週に4〜5回ってところだね」
やはりカルカノも新セットの発売から集中的にドラフトをこなすスタイルのようだ。フィンケルとの違いは、普段から週に数回ほどはドラフトをオンラインでプレイしているところだ。
そんなカルカノは、今シーズンのプロツアーでそれぞれ4勝2敗、5勝0敗1分、5勝1敗と好成績を残している。
彼の強さの秘訣は一体どのようなところにあるのだろうか?
「僕は新しい環境になると、たくさんのことを試すことにしているんだ。例えば、一見難しそうに見えるアーキタイプとか、カード同士の組み合わせなんかだね。そこで負けてしまうことは問題ではなくて、敗北から何かを学ぶことが重要なんだ。普通は、ゲームに負けてしまうのは面白くないから難しいことだけど、そこで心を強く持って、どこが良かったのかあるいは悪かったのかをしっかり把握するのが大切だと思う」
数々の敗北を乗り越えて、今「ドラフトマスター」レースで好位につけているカルカノ。年間プロ・ポイントも37点と来期のゴールド・レベルを既に決めている。
シーズン最後のプロツアー『異界月』で果たしてフィンケルを抜き去り、世界選手権の出場権を手にすることができるだろうか。
そして「ドラフトマスター」レースはこの2人以外にもマルシオ・カルバルホ/Marcio Carvalhoや日本の八十岡翔太など強豪プレイヤーたちが競い合っている。
順位 | 氏名 | 国 | 通算マッチポイント |
---|---|---|---|
1 | Jon Finkel | アメリカ合衆国 | 45 |
2 | Marcio Carvalho | ポルトガル | 43 |
2 | Christian Calcano | アメリカ合衆国 | 43 |
4 | Matej Zatlkaj | スロバキア | 42 |
4 | Thiago Saporito | ブラジル | 42 |
4 | Samuel Tharmaratnam | カナダ | 42 |
4 | 八十岡 翔太 | 日本 | 42 |
プロツアー『異界月』のドラフトラウンドは目が離せない展開になりそうだ。
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