- HOME
- >
- EVENT COVERAGE
- >
- グランプリ・静岡2018(スタンダード)
- >
- 準々決勝:塗木 博章(愛知) vs. 嶋崎 椋太(福井)
EVENT COVERAGE
グランプリ・静岡2018(スタンダード)
準々決勝:塗木 博章(愛知) vs. 嶋崎 椋太(福井)
1960名から、15回戦の激闘を経て残り8名まで絞られた。そしてこれから、さらに4名に絞るための戦いが始まる。
グランプリトップ8という、実力がなければ紛れもなく成しえようもないであろう偉業を達成したばかりの塗木と嶋崎は、その余韻に浸る時間もそこそこに、準々決勝のフィーチャーテーブルへと現れた。
ここからはデッキリストが公開となるため、互いに対戦相手のデッキリストを手にした二人。そこにあったのは……?
塗木「……ゴルガリか(笑)」
嶋崎「セレズニアかー」
『テンペスト』〜『ウルザズ・サーガ』期にマジックを始め、『オンスロート』で一旦休止したものの『ラヴニカ:ギルドの都』で再開したという古参プレイヤーであり、グランプリ・静岡2015ではバブルマッチで惜しくも敗れてトップ8を逃した経験がある塗木のデッキは、セレズニア・アグロ。トップメタの一角である白赤アグロに対して相性が良いことで知られており、前月のプロツアー『ラヴニカのギルド』ではチーム「武蔵」のチームデッキとして覚前 輝也をトップ8まであと一歩というところまで導いたデッキタイプだ。
だが。そんなセレズニアにも、苦手なデッキタイプがある。
北陸は福井県から遠征してきた、まだグランプリは2回目の参加だという嶋崎が持ち込んだゴルガリ・ミッドレンジは、現時点におけるスタンダード環境のベスト・ミッドレンジであり、カードの交換とドローというアドバンテージの基本を完璧に押さえたデッキである。しかもそれだけではなく、セレズニア側の除去とテンポの要である《議事会の裁き》を《ビビアン・リード》でメインから割ることすら可能であったり、《採取 // 最終》で横並びを咎めることも可能だったりと、セレズニア側にとって嫌なアクションを逐一とってくるのだ。
厳しいマッチアップとなった塗木は、 せめてどこかに綻びがないかと嶋崎のデッキリストを隅々まで見回す。
攻める側である塗木にとっては、嶋崎のデッキに採用されている受けの種類が重要となる。メインに《貪欲なチュパカブラ》が2枚、《採取 // 最終》が3枚。サイドに《黄金の死》が3枚と《打ち壊すブロントドン》が2枚、《煤の儀式》はない。
対し、守る側である嶋崎にとっては、相性差は前提として塗木がいかにして自分の守りを上回る脅威を展開してくるかが重要となる。サイドに《無効皮のフェロックス》が4枚。《不滅の太陽》が1枚。
トロフィーまであと3勝。ここまで勝ち上がってくるほどの強者を、彼らは互いにいかにして出し抜くのか。
塗木と嶋崎との準々決勝が、いま始まった。
塗木 博章(写真左) vs. 嶋崎 椋太(写真右) |
ゲーム1
スイスラウンド上位で先攻を取った塗木がマリガンを選択すると、続く6枚を見ても苦しそうな表情。
塗木「……んー、これは……どうしようかな……」
そして逡巡ののちにダブルマリガンを選択。それでもゲームが始まると、2ターン目に《茨の副官》を送り出し、3ターン目には土地こそ置けなかったものの、《苗木の移牧》で攻め立てる。
嶋崎は3ターン目に《野茂み歩き》で応えるが、これに対して塗木は引き込んだ《オラーズカの拱門》を置きつつ《軍団の上陸》。さらに「変身までいけないんだよなー……」とボヤきつつも、「召集」した《議事会の裁き》で《野茂み歩き》を追放して3点アタックをお見舞いする。
さらに返す嶋崎が《翡翠光のレインジャー》でターンを返すと、なおも塗木は《ベナリア史》から、出たばかりのトークンを「召集」して2枚目の《議事会の裁き》! 2ターン後の《ベナリア史》のⅢ章で嶋崎のライフを削りきるプランを見出すことに成功する。
塗木 博章 |
だがやはりダブルマリガンは重く、この時点で塗木の手札はゼロ枚ということを考えると、後続は半ば途切れていると言っても過言ではない。
しかも嶋崎が《ゴルガリの女王、ヴラスカ》で騎士・トークンを破壊すると、返しのフルアタックで塗木は嶋崎のライフを残り9点まで落としこみつつ《一番砦、アダント》を構えるのだが、続くターンに嶋崎は6マナ目となる土地をセットし、それらをすべてタップしようとする。
そしてゴルガリの6マナといえば、アレしかない。
塗木「流され……?」
嶋崎「《採取 // 最終》で」
すべてのリソースを盤面に費やした塗木に対して行われる、あまりにも無情な交換。
それでも塗木は引き込んだ《ベナリア史》で攻めを継続しようとするのだが、続いて嶋崎が《ビビアン・リード》の[-3]能力で《議事会の裁き》に追放されていた《翡翠光のレインジャー》を取り戻しながら守りを固めると、塗木にはこのプレインズウォーカーを落とす手段がない。
そして、塗木が「何枚引くねんこれ……」と漏らしながら追加の《ベナリア史》を出した返しのターン。この《ビビアン・リード》が、嶋崎に《殺戮の暴君》をもたらす!
《ベナリア史》の第Ⅲ章をものともしないタフネス6を前に、塗木の騎士・トークンは足踏みするしかない。
一方嶋崎は続けて《ビビアン・リード》の[+1]能力で《翡翠光のレインジャー》を獲得すると、《殺戮の暴君》で果敢にアタックし始める。それもそのはず、再びの《ベナリア史》第Ⅲ章が発動してレッドゾーンに送り出された騎士・トークンに対し、嶋崎は《喪心》と《ヴラスカの侮辱》でトークンを丁寧に潰しにかかったのだ。
《茨の副官》からの《敬慕されるロクソドン》で最後の抵抗を試みる塗木だったが、さらに《ビビアン・リード》の[-3]能力で《野茂み歩き》を《議事会の裁き》から釈放した嶋崎は、《愚蒙の記念像》で《翡翠光のレインジャー》を回収して6点回復を見せつける。
塗木「さすがに無理だなこれ……」
徹底的にリソースの差を付けられた塗木は、数ターン後に《殺戮の暴君》に撲殺される未来を予見して先んじて投了を宣言した。
塗木 0-1 嶋崎
嶋崎「なんか相手のサイド見てサイドするなんて初めての経験なんで緊張しますね……」
塗木「そんなに入れるものないでしょ(笑) 入ってくるのは《打ち壊すブロントドン》2枚と、《黄金の死》3枚くらいでしょうかね……」
リスト公開とはいえ、さすがにゲーム中は相手のデッキリストを確認しながらゲームを進行することはできない。ただしサイドボード中だけは例外である。一応再び塗木のデッキレシピの細部を確認した嶋崎に対し、塗木はもはや見るべきところはないとばかりにリスト確認を要求しなかった。ゴルガリがセレズニアに対してやってくるであろうことなど、先刻すでに承知済みだからだ。
並べれば、薙ぎ払われる。かといって一点突破しようにも、ゴルガリの生物はサイズ感が違いすぎる。ゆえに塗木にできることは、ただ一つだけだった。
何度薙ぎ払われても並べなおす。それができるのがセレズニアの持ち味であり、それしかできないのがセレズニアの不器用さでもあるからだ。
ゲーム2
今度は嶋崎がマリガンで、《協約の魂、イマーラ》に対し《野茂み歩き》が立ちはだかる展開。塗木は「召集」でトークンを生み出しながらこれを《議事会の裁き》で排除するも、2体目の《野茂み歩き》が道を阻む。ならばと塗木は《茨の副官》から《苗木の移牧》と面展開。
だが、嶋崎は《翡翠光のレインジャー》で《野茂み歩き》の能力を誘発させて6点回復。さらに土地が詰まった塗木が《軍団の上陸》を出して変身させることしかできないのに対し、《マーフォークの枝渡り》で4/6の《野茂み歩き》を作ってレッドゾーンに向かわせる。
それでも塗木も《不和のトロスターニ》を出し、5体アタックで嶋崎に強烈な一撃をお見舞いするのだが、続くターンに《ベナリア史》を設置したところで《ヴラスカの侮辱》を《不和のトロスターニ》に打ち込まれると、トークンのサイズが戻ったところで嶋崎が公開したのは《黄金の死》!
嶋崎 椋太 |
この《黄金の死》を、嶋崎は3ターン目からいつでも打てる状態だった。盤面を一掃するチャンスはいくらでもあった。それをここまで溜めたことで、塗木のリソースを最大限刈り取ることに成功する。
だが、塗木の目はまだ死んでいない。一手遅れで6マナ目を引き込んで唱えたのは、《不滅の太陽》! 失ったリソースを補充しにかかる。
こうなると追加ドローが機能し始める前に決着を付けたい嶋崎は《愚蒙の記念像》で墓地の《翡翠光のレインジャー》を回収すると、《野茂み歩き》を6/8まで育てて塗木に殴りかからせる。塗木も《ベナリア史》からの《敬慕されるロクソドン》で盤面を再構築するが、嶋崎は2枚目の《愚蒙の記念像》で再び《翡翠光のレインジャー》を回収してライフを回復しながら《野茂み歩き》を強化し、塗木のライフを4まで落とし込む。
13点クロックで対抗する塗木だが、チャンプブロックに阻まれてうまく嶋崎のライフを削れない。さらにここで嶋崎は《打ち壊すブロントドン》を引き込み、虎の子の《不滅の太陽》を破壊することに成功する。
とはいえ塗木も、《オラーズカの拱門》のドローから《議事会の裁き》を引き込んで嶋崎の生命線だった《野茂み歩き》をようやく排除。そして3/3の騎士トークンが2体に《敬慕されるロクソドン》といった塗木のクリーチャーだけが攻撃できる盤面ができあがる。《真夜中の死神》がチャンプブロックし、嶋崎の残りライフはついにあと8点を残すのみ。
しかし。これだけ長期戦になってカードを引いていれば、当然嶋崎もこの一見絶望的な盤面への解答にたどり着く。すなわち、《採取 // 最終》!
1ゲーム目と同様にすべてのリソースを失い、どうにか《オラーズカの拱門》のドローで再びリカバリーを図ろうとする塗木に対し、なおも嶋崎が《殺戮の暴君》《貪欲なチュパカブラ》と叩きつける。《無効皮のフェロックス》をブロッカーに立てる塗木だったが、冷静に《無効皮のフェロックス》の能力を起動した嶋崎が《ヴラスカの侮辱》を撃ち込むと、ここまでやって負けなら仕方ないといった様子で口を開いた。
塗木「負けました」
嶋崎「ありがとうございました!」
塗木 0-2 嶋崎
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
RANKING ランキング
NEWEST 最新の記事
-
2024.11.12観戦記事
The Week That Was: 熱烈な勇者の帰還|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.27観戦記事
第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 決勝戦|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.26トピック
第30回マジック世界選手権 トップ8プロフィールとデッキリスト|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.26観戦記事
Magic World Championship 30 Day Two Highlights|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.25観戦記事
Magic World Championship 30 Day One Highlights|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.25戦略記事
The Spiciest Decklists of Magic World Championship 30|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権