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グランプリ・静岡2018(スタンダード)
準々決勝:中島 篤史(神奈川) vs. 青木 義次(福岡)
2018年。年の瀬が迫る、12月の2日。今年最後の日本グランプリはダブル・グランプリとして開催された。
グランプリ・静岡2018。
レガシーでは昨日、覚前 輝也が3度目のグランプリ優勝を果たした。1日遅れてスタンダードも、トップ8プレイヤーが参加者1900人越えのなかから輩出された。棚橋 雅康が4度目の入賞となる他は全員が初となるグランプリ・トップ8だ。
若きプレイヤー、老練のプレイヤーが出揃い、今年最後のグランプリ・チャンピオンを決める戦いが始まる。
プレイヤー、デッキ紹介
青木 義次(写真右)。福岡在住であり、多数のコミュニティに参加する幅広い交友関係を持つプレイヤーだ。
普段遊ぶ場所も「カードショップばぶるす」や「晴れる屋 福岡店」、「イエローサブマリン 福岡店」といったショップの他、「梅野会」「木曜ドラフト インナーマッスル」といったコミュニティの名前を挙げている。
快活で明るい福岡弁で、対する中島に「まただね」と声をかけた。
中島 篤史(写真左)。今年8月に開催された関東のプロツアー地域予選を1位で勝ち抜き、プロツアー・『ラヴニカのギルド』に参加しているプレイヤーだ。
そのプロツアー本戦での戦績も10勝6敗と好成績を収めている。(奇しくも、同じくトップ8の棚橋 雅康も同じプロツアー地域予選を勝ち抜いている。)
町田にある「カードショップ・ぽぷら」や「東京MTG」で普段マジックを遊んでいるというが、話を聞く限りMagic Onlineへの注力も欠かしていない。神奈川在住であり特定のコミュニティに参加しているわけではないようだが、競技シーンの動向には常に目を光らせているようだ
青木と中島は数時間前のスイスラウンド14回戦ですでに一度、対戦していた。そのときは中島がゲームを落とさずマッチに勝利しており、青木からしてみればリベンジの機会が早々におとずれたことになる。
「今度は勝つ」と意欲をみせる青木だが、明るく会話を続け、中島と、そして自らの緊張をほぐしていくようであった。
青木「なんでも聞いてね」
グランプリ決勝トーナメントの常である「対戦前のデッキリスト交換」の間も、両者の会話は続く。
青木のデッキはボロス・アグロ。使用者は多くないが、今グランプリでは圧倒的な勝率を誇ったデッキタイプの1つだ。
デッキについている名前は「高尾スペシャル」。同じく九州出身のデッキビルダー・高尾 翔太が主軸を作成したデッキであり、おしくも12勝3敗でトップ8進出を逃した辻川 大河もこれを持ち込んでいた。青木なりの調整も加えられており、「少しだけミッドレンジ寄り」とのことだ。
10 《平地》 5 《山》 4 《断崖の避難所》 4 《聖なる鋳造所》 -土地(23)- 4 《不屈の護衛》 3 《追われる証人》 4 《アダントの先兵》 4 《ボロスの挑戦者》 1 《凶兆艦隊の向こう見ず》 2 《軍勢の切先、タージク》 2 《正義の模範、オレリア》 -クリーチャー(20)- |
3 《軍団の上陸》 1 《溶岩コイル》 4 《ベナリア史》 4 《議事会の裁き》 3 《暴君への敵対者、アジャニ》 2 《英雄的援軍》 -呪文(17)- |
4 《トカートリの儀仗兵》 2 《溶岩コイル》 1 《苦悩火》 3 《一斉検挙》 2 《焦熱の連続砲撃》 1 《実験の狂乱》 2 《黎明をもたらす者ライラ》 -サイドボード(15)- |
最も特徴的なのはサイドボードの《一斉検挙》3枚だろう。これをみた中島も、なかば笑いながら指摘した。
中島「サイドの《殺戮の暴君》への殺意が半端ないですね。あと《トカートリの儀仗兵》4枚って、もう犯罪的じゃないですか(笑)」
7 《森》 5 《沼》 4 《草むした墓》 4 《森林の墓地》 2 《愚蒙の記念像》 1 《探知の塔》 1 《ゴルガリのギルド門》 -土地(24)- 4 《ラノワールのエルフ》 4 《マーフォークの枝渡り》 3 《野茂み歩き》 1 《探求者の従者》 4 《翡翠光のレインジャー》 2 《真夜中の死神》 2 《貪欲なチュパカブラ》 2 《破滅を囁くもの》 2 《殺戮の暴君》 -クリーチャー(24)- |
3 《採取 // 最終》 2 《喪心》 3 《ヴラスカの侮辱》 1 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》 2 《ビビアン・リード》 1 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -呪文(12)- |
3 《強迫》 1 《暗殺者の戦利品》 2 《黄金の死》 2 《打ち壊すブロントドン》 1 《貪る死肉あさり》 1 《略奪者の急襲》 1 《ヴラスカの侮辱》 3 《最古再誕》 1 《殺戮の暴君》 -サイドボード(15)- |
青木が中島のデッキリストを見て「これなに?」と聞いたのは《略奪者の急襲》だ。
パワー2以下のクリーチャーを追放するインスタント・呪文。《アダントの先兵》、《正義の模範、オレリア》をインスタントで対処できる数少ないカードとのことだ。
青木はゴルガリ対策を、中島はボロス対策をしっかりしてきていることをお互いに確認して、あらためて試合がはじまる。
試合展開
ゲーム1
中島「握手、しときますか」
青木「しとく!」
互いに初めてとなるグランプリ・トップ8。その喜びは、お互いのものだ。しっかりと手を握りしめてから、2人はゲームの準備にとりかかった。
スイスラウンド1位の中島が先手を選択するも、しかし彼はマリガンを宣言する。一方の青木は《追われる証人》《アダントの先兵》、《正義の模範、オレリア》と土地という手札をキープした。
中島は6枚の手札から1ターン目に《ラノワールのエルフ》スタート。青木は《平地》、《追われる証人》。
中島の2ターン目は《愚蒙の記念像》タップインで終わり、と序盤の動きはゆるやかだ。青木は攻勢を仕掛けるため《アダントの先兵》をプレイする。
青木 義次 |
ただ中島が3枚目の土地を置くと、ここからはゴルガリの得意とするミッドレンジのマナ域だ。《貪欲なチュパカブラ》で《追われる証人》を破壊。つづく《軍勢の切先、タージク》に対しては《破滅を囁くもの》で守勢を固めておく。
青木は《破滅を囁くもの》を対処するのではなく、ライフを攻めるため《英雄的援軍》で戦線を横に広げる。《軍勢の切先、タージク》こそ《破滅を囁くもの》に打ち取られるが、中島のライフを5まで落としこんで一気に致死圏だ。
だったのだが――
青木「強すぎ!」
中島のダブル・アクションに、青木が嘆いた。《野茂み歩き》からの《翡翠光のレインジャー》!
このシナジーでライフを取り戻した中島は《破滅を囁くもの》で優位にライフレースを進めていく。途中、《アダントの先兵》を落とすために使った《喪心》を《凶兆艦隊の向こう見ず》で利用され、《破滅を囁くもの》を失うが、その能力で整えたドローとサイズの膨れた《野茂み歩き》でライフレースの優位を手放すことなく、そのままゲームを差し切った。
中島 1-0 青木
ゲーム2
青木「一本も勝ててないよ」
スイスラウンドでの試合を含めて、これでゲーム3連敗だと語る青木。
中島「野茂みレインジャー(《野茂み歩き》+《翡翠光のレインジャー》)が、神ですね」
地上クリーチャーを展開してライフを攻めるというボロスの基本戦略に対して、戦線とライフの両方を支援するパッケージだ。《野茂み歩き》に関しては代わりになるようなカードもないため、それを引けるかどうかにかかっている部分もある動きだが、決まれば強いのは明らかだ。
感想戦の会話もほどほどに、ゲーム2がはじまり青木が《アダントの先兵》を展開する。対する中島は《マーフォークの枝渡り》をプレイし、デッキトップの公開は《略奪者の急襲》。
青木「でたでた!」
中島「でたでた、でも今は、いらない(笑)」
青木「ランドが欲しいと見える」
試合開始前、話に挙げたばかりの《略奪者の急襲》だが、墓地に送られたため活躍はなさそうだ。青木も3ターン目に《軍勢の切先、タージク》プレイするものの、《マーフォークの枝渡り》と相打つことを嫌って第2メインでの展開とした。
青木「1回も速攻で走ってない」
本来であればベストムーブにも近い3ターン目《軍勢の切先、タージク》だが、ライフレースに貢献できていないと嘆く。中島がしっかりと2マナ・クリーチャーを展開しているということだ。
その中島も《マーフォークの枝渡り》を追加して《沼》を引き込んでいく。
青木は土地、展開ともに止まったため、手札の内容は重そうだ。中島が《貪欲なチュパカブラ》で《軍勢の切先、タージク》を破壊して《マーフォークの枝渡り》の攻撃でライフを詰めていく。さらに青木が2体目の《アダントの先兵》を追加したところに、《黄金の死》を合わせて盤面を一掃する。
中島 篤史 |
青木は《暴君への敵対者、アジャニ》で《アダントの先兵》を回収するも、中島に《ヴラスカの侮辱》《喪心》と合わせられ、すでに支払えるライフもほとんどない青木は再び戦力を失う。
その青木が初手から手札に抱え続けている呪文が1枚あった。《一斉検挙》だ。《殺戮の暴君》やサイズの上がった《野茂み歩き》に対するベストアンサーだが――
中島が展開したカードは《翡翠光のレインジャー》、2連打!
タフネス3という《一斉検挙》を「くぐりぬける」クリーチャーの展開によって、青木は攻め手も受け手も失ってしまった。
最期に自らの負けを認めると、今度は青木から手をさしのべ握手を求めた。
中島 2-0 青木
青木「(準決勝)がんばって! マジック、めちゃくちゃうまいね。こんなふうにマジックやったら、楽しいんだろうな」
負けた青木が、勝った中島に対して笑顔で応援の言葉をかけた。長年の友人同士であれば、そういう光景もあるかもしれない。しかし2人の出会いは、先ほどだ。そして青木は、中島に2敗を喫している。そのなかでこの応援の言葉がかけられるとは、青木の人柄の良さが伺える。
中島「ミッドレンジ使うとまた、見方が広がりますね。マジック、奥深いですね」
青木「(今回参加権利を得た)プロツアー、行くっちゃやろ。またそのときに。がんばってね」
対戦を通じて培われた友情。想い。時間にして2時間も顔を合わせてないかもしれないが、たしかに青木は中島に気持ちを託した。そして中島も、笑顔でそれに応えていた。
中島 篤史、Win!準決勝へ進出!
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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