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グランプリ・静岡2018(スタンダード)

インタビュー

「英雄譚」村栄 龍司〜「1番になれないから、一生遊べる」〜

Moriyasu Genki
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 村栄 龍司。

 プロツアー・ドミナリア、最終順位10位。プロポイント15点獲得。

 25周年記念プロツアー、15位。12点。

 プロツアー・ラヴニカのギルド、72位。6点。

 村栄は直近3つのプロツアーでプロポイント合計33点を記録している。

 くわえてグランプリ・香港2018で1点を獲得したことで、次回のプロツアー『ラヴニカの献身』に参加すればシーズン合計37点となり、ゴールドレベルプロが確定する。

 ノンレベルから、ゴールドレベルへの一気呵成の昇格。

 マジック25周年記念プロツアーでチームを組んだ佐藤 レイと同じく「今年の人」としてにわかに注目を集めるプレイヤーだ。

 ゴールドレベルプロへの昇格を直前にしたこのタイミングで、普段は運営スタッフとして出場していないBIG MAGIC主管グランプリへのプレイヤー参加も決めたという。

Ⅰ マジックに対する想い――「1番になれないから、一生遊べる」

 村栄がマジック:ザ・ギャザリングにはじめて触れたのは中学生のころ。『プロフェシー』や『インベイジョン』が発売されたころだったという。彼は学校の友達とカジュアルに遊ぶゲームとして、ルールを覚えた。

 競技志向に目覚めたのは『基本セット2010』のプレリリースからだ。大学の同級生に誘われて、関西を中心にマジックを遊ぶようになった。

村栄「『基本セット2010』のプレリリースからは9年間、マジックで遊び続けてますね。単純にめちゃくちゃ面白いから、続けてます。スタンダードはもちろん、どのフォーマットも好きで、モダンやレガシーも遊んでますが、みんな上手ですよね。そうしたなかでは自分は絶対に1番になれないから、一生遊べるなって思ってます。極まるっていうことがないんですよね。」

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 村栄はマジックの楽しみ方として「(相手に)勝つこと・負けること」よりも、「(自分が)うまくなること」を強く意識しているように見える。ともすれば武道のような自己研鑽・求道の考え方に近いものかもしれない。

村栄「プロツアー予選(PTQ)制度のころから、競技大会に積極的に遠征や参加をするというわけではなかったです。近場であったら出るというような形で。ただ、はじめてグランプリでトップ8に残れたときに行けたプロツアーではすごく楽しくマジックができたので、また行きたいという気持ちになりました。行きの飛行機で偶然となりの席だった、当時面識のなかった三原(槙仁)さんにフライトの11時間ずっと声をかけられずに、一人回ししてたのは思い出です」

 そして「グランプリ・名古屋2012」で初めて掴んだ栄光。その戦績は、村栄により高い次元の舞台で遊ぶ楽しさをもたらした。

村栄「マジックは勝つたびに友人が増えていくのが本当に楽しいですね。当時は名前しか知らなかったようなプロたちとも仲良くさせていただく機会も増えました」

Ⅱ 結果がもたらした環境、環境がもたらす結果――「僕モダンが得意なんじゃなくて、親和が得意だったんだな」

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村栄「それまでは、自分が『うまい』ほうのプレイヤーかなっていう自負もあったんですが。結局、2回目のプロツアーへ行くのに3年かかりました。そうしたこともあって、自分は下手なんだなって思うようになりました」

 再びのプロツアー参加を目指して、村栄は積極的にプロツアー参加権利を得られる大会に参加していくことになる。《アーティファクトの魂込め》が収録された『基本セット2015』の発売直後に行われたモダンのプロツアー予選では、まだその存在や対策が周知される前に「ハサミ親和」を持ち込み優勝している。

村栄「このPTQ優勝から、モダンでは基本的に親和をずっと使い続けています。親研ゼミ(人見 将亮らが所属する『親和』ユーザーのオンライン・コミュニティ)は主に僕とみっくす(人見)が普段から毎日Magic Onlineでプレイしていて、全体での『親和』のやり込みは世界でも一番か二番か、ぐらいに思ってます。モダンで一番好きなデッキですね。ただ、今はかなり『親和』の立ち位置が悪いことで気づいたんですが、僕モダンが得意なんじゃなくて、『親和』が得意だったんだなって思ってます。これからは他のデッキも使えるようにしたいですね」

 親和という特定のデッキタイプを使いつづけるモダンに対して、スタンダードで結果を残したデッキはいわゆるトップメタに近しいものの使用が多い。今回のグランプリ静岡・2018(スタンダード)では「イゼット・ドレイク」を持ち込んでいる。

Ⅲ 思い描くスポンサード・プロ――「嬉しいというよりありがたかった」

村栄「BIGMAGIC主管(・主催)のグランプリ参加は5年ぶりですね。国内グランプリ自体これまではプロポイントレースに関与するようなこともなかったので、普通のイベントの1つという認識で運営としての参加を優先してました。今回はここでプロポイント3点が取れると大きく変わるので、参加させてほしいと自発的に申し出ました。デッキも昨晩のMOリーグで5勝できているので、頑張ります」

 グランプリの運営スタッフとプレイヤーという立場を両立させながらゴールドレベルプロに至った村栄だが、普段マジックをやる環境という意味で不自由を感じたことはなかったという。

 ただプロツアーで好成績を残しつづけられていることに、グランプリへの参加意欲も高まってきている様子もあるようだ。

村栄「ありがたいことに前回のアトランタ(グランプリ・アトランタ2018とプロツアー『ラヴニカのギルド』の連戦)ではBIG MAGICから期間限定のプロ契約も結んで支援してもらえました。自分自身はスポンサードを受けるレベルにないと自覚しているので、嬉しいというよりありがたかったという気持ちが強かったですね。またこの体験を通じて、スポンサード・プロの人たちへの尊敬の念も強まりました。瀬畑(市川ユウキ)さんや津村(健志)さんのように記事や解説などで言語化能力が高い人たち、すごいですね。瀧村(和幸)さんから受けた説明もとても分かりやすくて、本当に尊敬しているプレイヤーです」

村栄「あとは『Kusemono』の合宿でリミテッドの座学を他のメンバーから受けたんですが、分かりやすい上に、うなずくことばっかりで。みなさんのプレイの質はもちろん、伝える能力の高さをひしひしと感じました。逆に、今は自分がリターン、提供できているものがなにもない状況なので、申し訳ない思いがあります。アウトプットをもっと出来るようになりたいですね」


 アウトプットをもっと出来るようになりたい。

 イベント企画や動画配信では姿を見せることも多い村栄だが、「マジックの魅力や技術、考え方」の部分を伝える役割がいま自分で果たせていない、という思いを持っているという。

 立場が人を育てるという表現がある。求道者の村栄にとってゴールドレベルプロという立場は、自らを研鑽する最高の舞台のようだ。

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 村栄 龍司の英雄譚は、一旦ここまでだ。これからの彼の活躍を描くページは、研鑽を積んだ彼自身によってつむがれてゆくことだろう。

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