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グランプリ・静岡2017春
準決勝:棚橋 雅康(新潟) vs. 桐野 亮平(岡山)
By 宮川 貴浩
誰もが憧れるグランプリトップ8という晴れ舞台。では、実際にそこまでやってきた者たちが次に目指すものは何だろうか。トップ4入賞か、次回のグランプリトップ8か。いや、今日の優勝だ。
誰もが日本で一番高い山を知っていても、二番目に高い山を即答できる人は多くない。一番とその他には、それだけ大きな差があるのだ。来た道のりだって、振り返るのは頂上の景色を見てからでいい。
つまり、ここで負けては意味がない。だが、現地はもちろん、放送を通して多くの人々が見守り緊張に包まれているはずのフィーチャーテーブルからは、楽しげな声が聞こえてきた。
「このデッキやばいな~」
機体デッキの海(ことごとく飛んでいるが)をかき分けてトップ4までやってきた棚橋の「《電招の塔》」デッキのリストを見て、桐野は感嘆の声をもらした。
「そりゃトップ4に残るわ」
とてもグランプリ初出場とは思えない落ち着きを見せる桐野は、「初日全勝のあと1敗して気が楽になった」と語った。機体デッキのシンデレラレーサー桐野は、勢いそのままにてっぺんまでぶっちぎるか。それとも、棚橋が静岡後に《電招の塔》という記念碑を打ち立てるか。
ゲーム1
後手の桐野は《屑鉄場のたかり屋》、《キランの真意号》、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、《大天使アヴァシン》とパワフルな面々が揃った7枚をキープする。マリガンに見舞われた棚橋は、デッキの名前にもなっている《電招の塔》を設置するところから動きを開始した。
桐野のメインデッキに直接これを破壊できるカードは入っていない。そびえ立つこの塔にエネルギーが行き渡り、繰り返し《稲妻》が放てるようになる前に、棚橋という巨塔をへし折ることができるだろうか。
棚橋は手始めに《屑鉄場のたかり屋》に《ショック》をプレゼントすると、再び出てきた2枚目の《屑鉄場のたかり屋》は《霊気溶融》で黙らせた。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が3枚に《無許可の分解》が2枚、《大天使アヴァシン》というオーバーキルな桐野の手札も、土地が3枚しかないのでは意味がない。
対照的に土地を伸ばし続ける棚橋は、《屑鉄場のたかり屋》には《蓄霊稲妻》、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は《不許可》、手札とエネルギーの補充に《天才の片鱗》と、七色の呪文を駆使して最早なんでもありの状態。気がつけば《電招の塔》もエネルギー満タンになっている。
棚橋は桐野の2枚目の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》も《奔流の機械巨人》で《不許可》にすると、逆に2枚目の《奔流の機械巨人》で桐野を追い詰め、《ショック》、《ショック》と本体にお見舞いしたところで、桐野が潔く「死んだ」と宣言した。
棚橋 1-0 桐野
棚橋が素早くサイドボーディングを終える一方で、桐野は悩むそぶりを見せる。デッキリストが公開とはいえ、事前にどれだけ相手を想定できるかという点では、全体数の少ないデッキを使っている棚橋が一歩リードか。
ゲーム2
桐野は一瞬首をかしげてからキープを決めたが、《キランの真意号》、《異端聖戦士、サリア》と動きは悪くない。
《霊気との調和》を唱えていた棚橋は、《キランの真意号》を《蓄霊稲妻》で撃ち落とすことには成功するが、サイドボードから投入した《守られた霊気泥棒》は《異端聖戦士、サリア》のせいでせっかくの瞬速を活かしきれない。そして何より、今度は棚橋の土地が止まってしまった。
《大天使アヴァシン》にはなんとか《不許可》を合わせることができた棚橋だったが、その代わりに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の着地を許してしまう。
桐野の布陣は、《異端聖戦士、サリア》、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、《歩行バリスタ》と実にやりにくいもの。さらには《苦い真理》で二の矢、三の矢を補充した。
棚橋は《粗暴な排除》というマニア垂涎のおしゃれなカードを交えて耐えつつ、なんとか土地を並べて《奔流の機械巨人》で《粗暴な排除》を使いまわしながら、まくりの態勢に入る。
しかし、捌いても捌いても桐野の攻撃の手は緩まず、最後まで残り続けた《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が貫録十分にゲームを決めた。
棚橋 1-1 桐野
ゲーム3
棚橋は《霊気との調和》で無難な立ち上がり。1マリガンの桐野は、《模範的な造り手》をトップバッターに送り出した。
桐野の《模範的な造り手》は《スレイベンの検査官》が残した手掛かりで強化されアタックを敢行するも、これは滑り込んできた《守られた霊気泥棒》が優しく受け止める。棚橋は続く《異端聖戦士、サリア》に少し悩み、これを《不許可》した。
ここで、再びの不運が棚橋を襲う。4枚目の土地が置けない。苦しい棚橋はたまらず《霊気溶融》を《模範的な造り手》にエンチャントしなんとか延命を計るが、桐野の手札には《歩行バリスタ》、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、《大天使アヴァシン》と脅威の連続が控えていた。
《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は《虚空の粉砕》で防ぎ、綱渡りを続ける棚橋。しかし、《自然廃退》に対応した桐野の《歩行バリスタ》の自爆で《大天使アヴァシン》が《浄化の天使、アヴァシン》へと変身してしまう。
再度《霊気溶融》で《浄化の天使、アヴァシン》を食い止めようとする棚橋だったが、桐野の2枚目の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が通り、最後まで4枚目の土地、赤マナが引けないと、ついぞ桐野の波状攻撃を押し返すことはできなかった。
棚橋 1-2 桐野
「(土地が)詰まるか~」と悔しそうな表情を見せた棚橋。桐野は「コントロールプランにしようかと思ったけど、勝てるわけがないと思ってやめた」と語り、両者はサイドボーディングについて考察した。
桐野「デッキリストを見て、あの軽さは絶望しました」
棚橋「《電招の塔》を割るカードを腐らせるためのプランだったんですけどね」
桐野「《グレムリン解放》は1枚だけ挿しました」
棚橋のデッキに翻弄されながらも己のスタイルを貫き通した桐野。「意志」という最強の矛を、決勝の舞台でも突き立てることができるか。
桐野 亮平、決勝進出!
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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