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グランプリ・静岡2017春

観戦記事

第12回戦:藤村 和晃(大阪) vs. 猿田 克海(茨城)

by 宮川 貴浩

 今やすっかり日本の強豪プレイヤーとして認知されている藤村。彼の「ティムール・タワー」デッキは多くのプレイヤーに衝撃を与えたが、本人は「使うデッキに特にこだわりはないので、いいと思ったデッキはなんでも使います」と語る。果たして今回持ち込んだのはどんなデッキなのか。

 対する猿田は、他のカードゲームはやっていたものの、マジックは『戦乱のゼンディカー』から始めたと教えてくれた。昨日ノーbyeからの全勝者が出たが、猿田もまたノーbyeから1敗でここまで来ている。

 トップ8に向けて負けられないところで繰り広げられた、目にもとまらぬマッチをご覧いただこう。

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「あ、握手の写真ですね?」と慣れた様子の藤村(左)。猿田(右)も緊張こそあるだろうが、気負いは感じさせない。
ゲーム1

 両者が1ターン目《模範的な造り手》のこれぞという立ち上がりを見せ、このマッチが機体デッキのミラーマッチだということが早々に判明する。しかし、藤村がマルドゥカラー(赤白黒)であるのに対して、猿田はそこに青を足した4色デッキのようだ。

 猿田が先手の利を活かして《歩行バリスタ》をX=1で設置すると、藤村は《キランの真意号》で空に活路を見出そうとする。しかし、猿田は攻撃の手を緩めない。《経験豊富な操縦者》を戦場に送り、潜在的アドバンテージと打点を確保する。

 ここまで、アグレッシブなデッキの性質を体現するかのようにスピーディーにプレイしていた両者だが、ここで初めて藤村が思案した。藤村の手札には《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、《屑鉄場のたかり屋》、《無私の霊魂》と攻めているときに強いカードが揃っており、これらのカードをどう守りに使うかは悩みどころだ。結局藤村は、自身はブロッカーにはなれないものの、《キランの真意号》に搭乗できる《屑鉄場のたかり屋》を選択した。


勝負所を瞬時に嗅ぎ取る藤村の嗅覚

 しかし、その《屑鉄場のたかり屋》が《キランの真意号》に乗り込んだところでお約束の《無許可の分解》が飛んできて、《キランの真意号》はむなしくスクラップになる。アタックと《歩行バリスタ》の砲撃で藤村のライフはぴったり0になり、音速で1ゲーム目の決着がついた。

藤村 0-1 猿田

 先手後手で大きくプランの変更が要求されるであろうこのマッチアップ。藤村は特に入念にサイドボーディングを行う。相手に青が入っていることはどう考えているだろうか。

ゲーム2

 待望の先手番を手にした藤村は、《キランの真意号》で早速離陸体勢に入る。猿田は《歩行バリスタ》をX=1で設置するが、《キランの真意号》を撃墜できるのははるか未来の話。これでは心もとない。

 さらに、猿田は自身が「このデッキの負けパターンの1つ」と語る《尖塔断の運河》が重なる状況に陥り、手札に2枚ある《無許可の分解》を撃つことはおろか、《模範的な造り手》を送り出してやることもできないもどかしい展開だ。

 この隙に藤村が《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を叩きつけると、猿田は青マナを立てているものの《否認》は飛んでこず。着地した《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は忠誠度能力を起動しながら《キランの真意号》にも乗り込み、猿田めがけてスカイ・ハイ。

 最後は猿田が《致命的な一押し》を撃ってきたところに藤村が《無許可の分解》を合わせ、苦し紛れに展開されたクリーチャーとともに猿田を解体(バラ)した。

藤村 1-1 猿田

「機体っぽい戦いですね。1本目ブン回って、2本目事故って」と猿田に話しかける藤村。サイドボードとシャッフルを注意深く行った後、「相手がわかってる。試合よりシャッフルの方が長いもん。試合の9割を決めるからなー」と猿田の実力を認め、気を引き締めて最後の1レースに挑む。


ゲーム3

 このゲームも両者ともにキープ。正面からのぶつかり合いが見られそうな雰囲気に、早くもエンジン音が聞こえてくる気さえする。

 スタートダッシュは、攻めの猿田が《模範的な造り手》、受けの藤村が《スレイベンの検査官》。藤村は2枚しか土地がなかったが、調査と通常ドローでしっかり4枚目までの土地を引き込んだ。

 猿田は《キランの真意号》、その《キランの真意号》を破壊して出てきた《グレムリン解放》のトークンには出し惜しみせずに《致命的な一押し》と、気持ちいいほどアクセル全開。

 そのまま猿田が《歩行バリスタ》をX=2でスタンバイさせたあとに《模範的な造り手》と《スレイベンの検査官》でアタックすると、再び藤村に決断の時が訪れた。

 このときの藤村の手札は《キランの真意号》2枚、《グレムリン解放》、《大天使アヴァシン》、土地、《無許可の分解》。藤村はぐっと我慢し、《スレイベンの検査官》で《模範的な造り手》をチャンプすることを選んだ。これで藤村のライフは13。猿田は藤村がアーティファクトをコントロールしていないこともしっかり確認する。


素早いプレイングとは裏腹に常に冷静な猿田

 藤村は仕方なく《模範的な造り手》に《無許可の分解》を使用するが、これではテンポが巻き返せない。2体目のX=2の《歩行バリスタ》は《グレムリン解放》でまとめて対処するが、それも本体火力に変換されるだけだ。

 猿田はクリーチャーが《スレイベンの検査官》しかいなくなり手札も空になるが、控える《乱脈な気孔》と《スレイベンの検査官》の残した手掛かり・トークンが息切れを感じさせない。下手に展開すると《無許可の分解》のダメージで負けかねない藤村は、《先駆ける者、ナヒリ》で《スレイベンの検査官》を除去してから、捨てて引く能力で《屑鉄場のたかり屋》を捨てつつ除去を探しに行くが、試行回数はもう限られている。

 最後は、猿田の《屑鉄場のたかり屋》のアタックにたまらず藤村が呼び出した《大天使アヴァシン》が《無許可の分解》が降りかかり、デッドヒートにチェッカーフラッグが振られた。

藤村 1-2 猿田

 試合後藤村は、「《屑鉄場のたかり屋》が腐って負けてしまったので、もう1枚減らして《致命的な一押し》にしておけばよかったです」と悔しさをにじませながらも勝負の分かれ目を教えてくれた。

 猿田、1敗を守り第13回戦へ!

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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