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グランプリ・上海2017
決勝:ソン・フアチャオ(中国) vs. 田中 宏直(兵庫)
By 矢吹 哲也
今大会、グランプリ・上海2017では、ビデオ・フィーチャー卓が会場の3階に位置する小部屋にしつらえられ、さながら将棋のタイトル戦のような静けさをたたえている。
そこへ、プロツアー・トップ8入賞経験を持つヤン・ウィンチャン/Yam, Wing Chunを準決勝で破りこの場所へ登ってきた田中 宏直が入室した。
そこではもうひとつの準決勝が行われており、田中はその試合の行方を見守った。
両者の戦いは白熱し長期戦となっており、その間田中はひたすらに待った。友人たちの応援を背に階段を登ってきたその熱を保ち、最後の相手がどちらになるのか、決する瞬間を待った。
そしてソン・フアチャオ/Song, Huachaoと岡田 尚也による準決勝は、ソンの側に軍配が上がった。
ソンに集まる中国人プレイヤーの期待は大きい。グランプリ・上海2014以来、中国開催のグランプリでは海外から来たプレイヤーたちが栄冠を掴み続けてきた。3年にわたり自国開催のグランプリで王者を輩出できなかった彼らの口惜しさは、どれほどのものだろうか。
ソンは2005年に当時の世界選手権団体戦で中国代表メンバーとして戦い、2014年にはワールド・マジック・カップの中国代表として再び国の応援を受けて戦った。「3年ぶりの自国プレイヤーによる国内グランプリ制覇」の悲願を果たすのは、この男しかいない。
ソンと田中は決勝前の最後の休憩を取り、フィーチャー卓につき、自身初のグランプリ決勝の舞台に立った。
静寂の中、両者は互いにデッキを交換し戦略を練る。「ラムナプ・レッド」と「ティムール・エネルギー」。最後はやはり、環境の2大巨頭による決戦だ。
普段と異なり、この試合を取り巻くギャラリーはなし。筆者とふたりのジャッジ、そして2台のカメラだけが、彼らの戦いを見届ける。
ゲーム展開
「Good luck」と声をかけあい初手を確認した両者だが、田中はマリガンを喫することになった。6枚の手札をじっと見つめた田中は、土地4枚の手札をキープする。
動き出しは先手のソン。1ターン目《霊気との調和》でマナ基盤を整えると、2ターン目に《地揺すりのケンラ》を繰り出した田中に対し《蓄霊稲妻》を当て、3ターン目は《ならず者の精製屋》を展開。
田中は《暴れ回るフェロキドン》で対抗するも、ソンは2体目の《ならず者の精製屋》を加え盤面を固める。それでも田中は2枚目の《地揺すりのケンラ》でソンの防衛線へ攻め込み、《ならず者の精製屋》を1体相打ちに取ると《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を追加した。
ソンは《蓄霊稲妻》で《暴れ回るフェロキドン》を除去すると、《導路の召使い》で防衛線を維持した。しかし田中はここで《熱烈の神ハゾレト》を送り出し、強烈な攻撃を繰り出す。
ソンは互いのライフを計算し、これを受けることを選択した。そして迎えたターンに彼は《栄光をもたらすもの》を戦線に加え、「督励」で《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を焼き払いながら全軍で反撃。突如として、田中のライフは残り9点まで落ち込む。
それでも田中はライフ・レースに応じた。《熱烈の神ハゾレト》の能力で2点のダメージを与えて攻撃を加え、ソンのライフも残り7点に。田中は2枚目の《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》をブロッカーとして送り込み、ソンの攻撃を牽制する。
しかしソンはターンを迎えるとすぐに土地を倒し、2枚目の《栄光をもたらすもの》で一気に攻め切ったのだった。
第2ゲーム、田中はここでもマリガンを喫した。それを受けてソンは、力強く「キープ」と発声する。
6枚となった田中の手札も土地4枚に《暴れ回るフェロキドン》、《アン一門の壊し屋》という芳しくないもの。対する後手のソンは1ターン目から《霊気との調和》を唱え、2ターン目に《導路の召使い》と理想的な動きを見せる。
田中は3ターン目に《暴れ回るフェロキドン》を着地させたものの、ソンは《つむじ風の巨匠》を追加し盤面を固めていく。田中は《反逆の先導者、チャンドラ》を呼び出し[+1]能力でマナを生み出すと、《地揺すりのケンラ》を追加した。
ソンは《導路の召使い》によるマナ加速から、4ターン目《栄光をもたらすもの》!
これで《反逆の先導者、チャンドラ》と《暴れ回るフェロキドン》を失った田中だったが、ターンを迎えると《アン一門の壊し屋》と《ボーマットの急使》で盤面を立て直し、反撃。6点のダメージでソンのライフを残り10点に落とす。
しかしソンの守りは固かった。《削剥》で《ボーマットの急使》を除去すると、全軍を立たせてターン。エンド。《栄光をもたらすもの》の「督励」が解けるのを待つ。
田中は《地揺すりのケンラ》で反撃したが、ソンは《つむじ風の巨匠》と《導路の召使い》でこれをダブル・ブロック。田中の《暴力の激励》によるトランプル・ダメージを最小限に抑えた。
そしてソンは《慮外な押収》を唱え、田中の盤面に残る唯一のクリーチャーである《アン一門の壊し屋》を奪うと、守りが空くのを厭わず《栄光をもたらすもの》と飛行機械・トークン2体での攻撃を敢行した。
田中は6枚目の土地を引き込み、《地揺すりのケンラ》を「永遠」して反撃する。
だがソンはさらに《逆毛ハイドラ》を盤面に加え、守り手を残しつつ8点ものダメージを田中に与えた。
両者とも残りライフ5点となったところで、田中はドロー・ゴー。
ソンの最後の攻撃を見て、田中は「ありがとうございました」と右手を伸ばすのだった。
ソン 2-0 田中
戦いの場の静けさから一転、王者が会場3階から凱旋すると、友人たちが大きな歓声を上げて彼を迎えた。
ソンは優勝トロフィーを高々と掲げ、歓声に応える。
中国が3年ぶりの国内グランプリ王者を輩出した瞬間だった。
アジアのマジック・プレイヤーのレベルは年々上がっていると、誰もが言う。
それはこれからも続くだろう。ソン・フアチャオのような王者が、多くのプレイヤーに夢を与えていく限り。
ソン・フアチャオ、グランプリ・上海2017優勝おめでとう!
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