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グランプリ・上海2017
準々決勝:田中 宏直(兵庫) vs. 諸藤 拓馬(福岡)
By 矢吹 哲也
今大会の諸藤 拓馬は、間違いなく「今日の人」だった。
彼は3不戦勝明けの第4回戦から「ラムナプ・レッド」を手に次々と対戦相手を打ち倒し、初日全勝を達成。2日目も勢いそのままに無敗記録を伸ばし続け、第13回戦では渡辺 雄也、第15回戦ではクオ・ツーチン/Kuo, Tzu-chingを下し、ついぞ一度も土を付けることなく予選ラウンドを乗り越えていった。予選ラウンド15回戦を全勝という、直近に参加した3大会で連続初日落ちしていた鬱憤を一気に晴らす快進撃だった。
そのせいか、カードを繰る諸藤の様子はいつにも増して楽しそうだ。彼の場合、楽しくプレイすることでその技はさらに研ぎ澄まされていく。ゲームが始まる前から試合を楽しみ、相手からも笑顔を引き出す。それが彼の「必勝パターン」だ。
ゆえに大きなものが懸かる決勝ラウンドでも、彼のプレイ・スタイルは変わらない。笑顔で、楽しく、だ。
神戸の田中 宏直は、自身初のトップ8入賞に興奮した様子で諸藤との試合前の雑談に興じていた。昨日諸藤とともに今大会の初日全勝を果たした兒嶋 竜弥と同じグループに属しアジア・グランプリにも積極的に参加してきた田中は、これまで育んできた芽を出すチャンスに恵まれた。
対峙するのは、乗りに乗っている元日本王者にして世界選手権団体戦優勝メンバーのひとり。強大な相手だが、「ここまで来たら欲が出ますね、勝ちたいです」と田中は言い放つ。
ゲーム展開
「プレイ・ファーストこそ正義!」と初手を開いた諸藤は、直後に「えー!」と声を上げて悩む。ややあって「キープ」と発声した彼に対し、田中はマリガンを選択した。それを見た諸藤は「あー!それならこっちもマリガンしとけば良かった」と相変わらずの「諸藤節」だ。
ゲームが始まると諸藤は1ターン目に土地を置いてターンを返し、2ターン目《地揺すりのケンラ》。田中はそれを《ショック》で撃ち抜き、諸藤も田中の《暴れ回るフェロキドン》に《稲妻の一撃》を差し向けた。
諸藤も《暴れ回るフェロキドン》を戦場へ送り出すと、続くターンには2枚目の《地揺すりのケンラ》を追加し攻撃。しかし田中は《稲妻の一撃》と《ショック》でこれらを綺麗に捌き切った。
「えー! これで返し《熱烈の神ハゾレト》!?」と諸藤は絶望的な状況を想定したものの、田中は「そううまくはいかないです」と土地を置いてターンを返す。
ここで互いに盤面に繰り出せるものがなくなり、土地が3枚で止まった諸藤に対し田中はややマナフラッド気味。諸藤は《稲妻の一撃》や《ショック》を本体へ撃ち込み、田中は《ラムナプの遺跡》を連続で起動して、両者ともクリーチャーによらないライフ・レースを繰り広げる。
やがて諸藤は4枚目の土地を引き込み、《熱烈の神ハゾレト》を降臨させた。するとその返しに田中も《熱烈の神ハゾレト》を繰り出し、ライフ・レースは一気に加速する。
田中の《熱烈の神ハゾレト》で諸藤のライフは残り10点。
諸藤の《熱烈の神ハゾレト》の反撃で田中の残りライフは7点。
諸藤は盤面に《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を追加し、田中は《熱烈の神ハゾレト》を立たせてターンを返す。
諸藤は《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》で攻撃後、《暴れ回るフェロキドン》を追加。
田中はここでも盤面にクリーチャーを追加できず、諸藤の残り8点のライフを削り切るプランも見えない。
「やっぱり先手後手大きいですね。1ターン差っぽい」
諸藤が僅差のライフ・レースを制した。
第2ゲーム、今度は田中の先手だ。
しかしここでは両者とも初手を見るなりマリガンを選択した。「余裕のマリガンでしたね」とお互いの手札の悪さを報告し合う。
改めて6枚の手札を見た両者は、互いに占術で見たカードをライブラリーの底へ送り、ゲームを始めた。
ファースト・アクションは田中の2ターン目《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》。これに諸藤も《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》で応じ、田中は続くターンに《ピア・ナラー》を追加する。
諸藤は「同じ動きをすると後手が負けるのは必然」と言いつつ、それでも悩んだすえに《ピア・ナラー》。盤面は完全に鏡写しの状態になり、両者は突破口を探ることになった。
しかし田中はすぐに動き、全軍での攻撃を敢行した。これに驚きながらも諸藤はブロック・クリーチャーの指定に入り、《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を《ピア・ナラー》本体と飛行機械・トークンでダブル・ブロックした結果、飛行機械を一方的に失ってしまう。
「あ、これ先制攻撃か!」
諸藤は《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》の先制攻撃を見落としていた。田中は《霊気圏の収集艇》を加えてターンを返し、諸藤は《損魂魔道士》を繰り出し体勢を立て直そうとする。
田中は《削剥》で《損魂魔道士》を撃ち落とすと、《霊気圏の収集艇》と飛行機械で攻撃を続けた。これで残りライフは諸藤11点に対して田中23点。諸藤は田中のターン終了時に《ショック》で《ピア・ナラー》を落とし、どうにか盤面の優位を握らせまいとした。
諸藤は続けて《反逆の先導者、チャンドラ》を呼び出し、盤面にプレッシャーをかけた。しかし田中はそこへ《チャンドラの敗北》を差し向け、迎えたターンに2枚目の《ピア・ナラー》。
諸藤も《霊気圏の収集艇》を設置したものの、盤面の不利は明確だ。田中はダメージを計算し、最後の攻撃を繰り出した。諸藤の「搭乗」に合わせて《ピア・ナラー》の能力を起動して《霊気圏の収集艇》をブロック不可にすると、致命打を通すことに成功したのだった。
第3ゲーム、再び先手は諸藤へ移り、ライブラリーをシャッフルする両者はどちらからともなく「勝ちたい」という思いを言葉にした。
そして初手を確認した諸藤は即キープ。1ターン目《損魂魔道士》は田中の《ショック》を受けたものの、続く《地揺すりのケンラ》で早速攻撃を始める。
諸藤は3ターン目に《霊気圏の収集艇》を展開し、田中は《削剥》でこれに対処したのちに《ピア・ナラー》を展開した。ここで諸藤は攻め手を引き込めず、田中の方が先に《熱烈の神ハゾレト》を着地させる。
その後も土地を引き込み続けた諸藤は、ターンを返すのみ。その後6枚目の土地を置くと、《地揺すりのケンラ》を「永遠」で戦場へ戻し、ブロッカーとしての運用しかできないことを嘆いた。
しかし田中の手札から飛び出した《栄光をもたらすもの》が、《地揺すりのケンラ》のブロッカーとしての役割すら奪った。
これで《熱烈の神ハゾレト》も動き出し、一挙13点の大打撃が諸藤を襲う。諸藤も《反逆の先導者、チャンドラ》からの[+1]能力で《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を盤面に加えたものの、田中が展開した強力な軍勢を受けるにはあまりにも心許ない。
残りライフ4点の諸藤に田中は全軍攻撃をするまでもなく、《ショック》と《ラムナプの遺跡》で試合を閉幕に導いた。予選ラウンド15回戦全勝の諸藤の圧倒的な勢いを、田中はここで食い止めたのだ。
田中 2-1 諸藤
今大会の諸藤の圧倒的なまでのパフォーマンスを見て、誰もが「優勝の予感」を受けたことだろう。しかしマジックは最後の最後までわからない。こういう形で金星を挙げられるのも、このゲームが数々のドラマを生み出す理由なのだ。
「優勝してください」と声をかけた競技マジックの大先輩に対し、田中は改めて勝利への思いを口にして次の戦いへ向かうのだった。
田中 宏直が諸藤 拓馬を2勝1敗で下し、準決勝へ!
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