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グランプリ・上海2014
第9回戦:渡辺 雄也(日本) vs. Zhang, Zhiyang(中国)
By Masami Kaneko
初日最終ラウンドの9回戦。既に2日目進出を決めてホッとしている人、全勝対決に挑む人、そこには様々なドラマがある。ここではその中でも一番緊張感のあるであろうドラマ、「勝てば2日目、負ければ初日落ち」に挑む2人の試合をお送りしよう。
渡辺雄也は、説明も不要なくらい日本を代表するプロプレイヤーだ。今年もまた日本で一番のプロポイントを稼ぎ出し、年末の「マジック・ワールドカップ」や「世界選手権」への出場を決めている。
おっと、世界選手権や団体戦の話ならこちらも負けてはいない。チャン・ツィユン/Zhang Zhiyangは、2009年に中国が団体戦で優勝したときのチームメンバーだ。
2日目進出に向けて負けられない両者、しかし勝負の世界は無情、勝つのはどちらか1人。運命の試合が、今始まる。
渡辺雄也 vs. チャン・ツィユン |
ゲーム1
ダイスロールに勝利したチャンが、「後手」を選ぶところからゲームはスタート。しかしチャンはマリガンを選択、手札6枚からのスタートとなった。
渡辺の「変異」は《森》《沼》《平地》から繰り出され、チャンは3ターン目もタップイン土地を置いたため展開はない。渡辺はさらに《アブザンの戦僧侶》を追加し、それに対して土地の止まったチャンは「変異」を出すに留まる。
渡辺は追加の「変異」を出しつつ、《アブザンの戦僧侶》を「長久」で強化し、盤面を強固なものとしていく。
自身のターンで《休息地の見張り》を表にしたチャン、攻撃したうえでコストで見せた《マルドゥの軍族長》を展開、渡辺の攻撃を止めるべく、盤面を作っていく。
今度は渡辺が考える番だ。攻撃するべきなのか、しないべきなのか。渡辺は、考えた末に4/3となった《アブザンの戦僧侶》のみで攻撃をした。もちろん《マルドゥの軍族長》とトークンでブロックすれば相打ちが取れるが、そんな状況で何の策もなく《アブザンの戦僧侶》が攻撃してくるはずがない。チャンとしてもこの攻撃はブロックできない。4点のライフがチャンから渡辺に移動し、渡辺はさらに《雪花石の麒麟》を追加、攻め手を絶やさない。
渡辺 雄也 |
まだ4枚目の土地が引けないチャン、「変異」を展開し、必死に守りを固める。
渡辺としても、マナが不自由なチャンに対して安易な「変異」の相打ちはしたくない。《雪花石の麒麟》のみが攻撃を行い、《アブザンの戦僧侶》は長久、さらに「変異」。渡辺の場には合計3体の「変異」が並んだ。
チャンも「変異」で応えるものの、渡辺は《大蛇の儀式》で《マルドゥの軍族長》を排除し、全軍突撃。
「変異」が場に5体並び、お互いにフルタップでの攻撃。さながら神経衰弱というか坊主めくりというか、ともあれ《アブザンの戦僧侶》が残ってはゲームはできない、とチャンはこれを相打ちにもっていく。結果、渡辺の場には「変異」が2体と《雪花石の麒麟》、チャンの場には1/1の兵士トークンのみが残った。
そしてさらに追加された《スゥルタイのゴミあさり》を前に、飛行クリーチャーがどうにもならないチャンは、カードを片付け次のゲームに行く意思を示した。
渡辺 1-0 チャン
ゲーム2
1ゲーム目と同様に後攻を選ぶチャン。そして今度は渡辺がマリガン。後攻のチャンの「変異」からゲームはスタートした。
それに応えるは渡辺の《雪花石の麒麟》。しかしこれはすぐにチャンの《打ち倒し》で対処されてしまう。追加の戦力を用意できない渡辺に対して、《休息地の見張り》が表になり、《マルドゥの軍族長》が展開される。
どうにか《スゥルタイのゴミあさり》を展開した渡辺、これでチャンの攻撃をシャットアウトできたかに見えたが、ここには《弧状の稲妻》が飛ぶ。が、渡辺はさらに《スゥルタイのゴミあさり》を展開。これにはチャンの攻撃の手も止まる。土地が止まり気味のチャン、土地の止まらない渡辺。《書かれざるものの視認》は、《軽蔑的な一撃》で打ち消される。
チャン・ツィユン/Zhang Zhiyang |
チャンは「変異」を追加。渡辺は《まばゆい塁壁》と《爪鳴らしの神秘家》を展開。盤面こそ負けていないが、ターンを迎えて手札6枚があるチャンに対して、渡辺の手札は1枚、リソース差はかなり開いてしまっている。これだけリソースの差がついてしまうと、カードの1対1交換を続けること自体が厳しい。さらにはチャンの場に《灰雲のフェニックス》と《山頂をうろつくもの》が追加され劣勢の渡辺。
結局、有効牌を引けなかった渡辺は、チャンの物量に押しつぶされてしまうのだった。
渡辺 1-1 チャン
ゲーム3
運命の3本目。このゲームで、このグランプリ・上海2014を今日だけで終えるのか、明日もう一日プレイできるのかが決まる大切な試合だ。
これまでのゲームと同じように、お互いにカラフルな土地を並べる静かな立ち上がり。渡辺の「変異」が先攻するが、これにはチャンも《湯熱の精》で応える。渡辺はここは攻撃せず、「変異」を追加するにとどめた。1枚目の「変異」が非常に大切である、と宣言するようなプレイだ。
そして、渡辺は、自らのターンを終えて次のチャンのターンエンドに動いた。まずは《爪鳴らしの神秘家》を表にし、そのマナから《アブザンの先達》を表に。《アブザンの先達》で攻撃する構えだ。
しかしその目論見をチャンの《冬の炎》が打ち砕く。《爪鳴らしの神秘家》を破壊したうえで《アブザンの先達》をタップし、さらにはチャンの《大物潰し》が《アブザンの先達》を破壊し、渡辺の展開した《よろめく従者》は《軽蔑的な一撃》で打ち消し、さらには《山頂をうろつくもの》を追加。残った渡辺の唯一の「変異」も《弧状の稲妻》でと一方的な展開となった。
劣勢というか、盤面に何もなくなってしまった渡辺。《書かれざるものの視認》から《スゥルタイの占い屋》を展開。これによりどうにか将来の展望を獲得する。
チャンの攻撃をしのぎつつ、《スゥルタイのゴミあさり》から《大物潰し》。さらには《ラクシャーサの大臣》と展開してみれば、一転して盤面は渡辺有利となった。
チャンも《跳躍の達人》を追加するが、渡辺も《雪花石の麒麟》を追加。チャンはさらに《休息地の見張り》を展開するが、渡辺はついに《スゥルタイのゴミあさり》《雪花石の麒麟》《ラクシャーサの大臣》の3体で攻撃。今まで我慢していた渡辺が、ついに攻めに転じた瞬間だ。
この攻撃に対してチャンは悩む。チャンの盤面は全て飛行クリーチャー。どのようにブロックするかが勝負を分けそうだ。
チャンの結論は、《休息地の見張り》と《湯熱の精》での《雪花石の麒麟》のブロックだった。これを《引き剥がし》にて一方的な戦闘に持ち込む渡辺。さらには「変異」を追加し、勝負を決めにかかる。
......と、ここで、この激戦はついにここで時間切れ。追加5ターンが行われ、勝負を決することになった。引き分ければ、どちらも2日目には行けない。お互いに、勝たねばならない戦いだ。
追加1ターン目 チャン
チャンは《休息地の見張り》を表で再展開、渡辺は先ほど出した変異:《隠道の神秘家》を表に。
追加2ターン目 渡辺
《スゥルタイのゴミあさり》《雪花石の麒麟》《ラクシャーサの大臣》《隠道の神秘家》で攻撃。
チャンがトップデッキしていたまさかの《必殺の一射》が、渡辺の《スゥルタイのゴミあさり》を破壊。チャンのライフは6に減少。さらに「変異」を追加する。
追加3ターン目 チャン
さらに《宝船の巡航》をトップデッキしたチャン。引いた3枚の中から《灰雲のフェニックス》を展開、さらに《急流の崖》を置き、残り7。
追加4ターン目 渡辺
ついに、渡辺が攻撃できる最後のターンがやってきた。《雪花石の麒麟》《隠道の神秘家》、「変異」での攻撃。チャンは《雪花石の麒麟》をブロックし、残りライフ2。そう、2点のライフが残ってしまった。引き分けか。ギャラリーも含めてそんな空気が流れた。
そして。
渡辺は静かに赤マナを含む3マナをタップし、1枚のカードを盤面に置いた。
それは、《軽蔑的な一撃》をもケアした、渡辺にとっては予定通りの、チャンにとっては想定外の、その一手。
2007年、グランプリ・京都にて時代に告げられた彼の名前は。
現在、時代を越えて全世界に響き渡っていた。
これから語られるのは、彼の、彼自身の「伝承」だ。
渡辺 2-1 チャン
渡辺雄也、2日目進出!
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