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EVENT COVERAGE
グランプリ・名古屋2018
第1回戦:チーム 行弘/佐藤/山本 vs. チーム 高木/増野/高木
マジックの競技シーンにおいて「新しいシーズン」の到来を告げるグランプリ・名古屋2018がいよいよ始まった。
フォーマットは先週発売されたばかりの『ラヴニカのギルド』を用いたチーム・シールドだ。
ボロス・イゼット・ディミーア・ゴルガリ・セレズニア。
収録されている5つのギルドを中心にした新セットを楽しめる今大会には、全国各地から660以上のチームが参加している。
その約2000人を数える参加者たちのなかに「いま最もリミテッドが強い」と噂される3人がいた。
チーム構成、デッキ紹介
左から行弘 賢/佐藤 レイ/山本 賢太郎 |
チーム 行弘 賢/佐藤 レイ/山本 賢太郎。
今年度日本最多プロポイントを獲得し、日本代表キャプテンの行弘 賢。
昨シーズンにてグランプリ・香港2017優勝、今シーズンから初のプラチナ・プロとなった佐藤 レイ。
三度のプロツアーサンデー(トップ8)経験者、山本 賢太郎。
プラチナ・プロ2人、ゴールド・プロ1人。古今の強豪集まるグランプリ・名古屋2018においても格別の強豪チームだ。
A卓の行弘は緑黒のデッキをベースにいくつかの強力な白いカードを含めた「緑黒白」だ。B卓、佐藤はボードコントロールする呪文を中心に、良質のクリーチャーでまとめた「青赤」。C卓、山本の「青黒」はクリーチャー、呪文ともに評価の高いカードが多そうだ。
左から高木 祐維/増野 良輔/高木 隆之 |
対するは、チーム 高木 隆之/増野 良輔/高木 祐維。行弘が対戦席につくなり「祐維君じゃん」と声をかけた。
それぞれ互いに良く知る仲のようだ。それもそのはず、こちらのチームも全員が競技シーンで結果を残している熟練者だ。
高木 隆之はグランプリ・神戸2008にて準決勝に進出している。直近でもグランプリ・千葉2018(フォーマット:『基本セット2019』個人リミテッド)にて11勝4敗という好成績を残しているリミテッド巧者だ。
デッキは緑黒のカードを中心にした「緑黒白」であり、対する行弘とはミラーマッチの様相となった。
B卓、チーム中央を担うのは増野 良輔。彼もグランプリ・静岡2008にて準決勝まで勝ち進んでいる。デッキは「青黒」。《家門のギルド魔道士》や《巧みな叩き伏せ》、《夜帷の捕食者》といった優秀な青黒・カードでしっかり構築できている。
C卓の高木 祐維。プロツアー・フィラデルフィア2005とプロツアー・横浜2007の二度プロツアーを経験している。デッキはかなり前のめりに構築された「赤白」。序盤一気に攻め立て、終盤は《実験の狂乱》でカード・アドバンテージを確保する。
全員がマジック歴10年を超えるベテラン同士のマッチアップとなった。
ゲームが始まるまでは古い仲の友人と向かい合い談笑していたが、開始の合図とともに6人とも真剣な眼差しを対戦相手に差し向ける。
試合
A卓: 行弘 賢(緑黒白) vs. 高木 隆之(緑黒白)
マリガン・チェックの前、行弘が勢いよく自らの頬を両手ではたいて「気合」を入れる。乾いて高く響いた破裂音は、他の5人にも改めてゲームの開始を告げる音になったようだ。
ゲーム1、《鋼胴の甲虫》から《デヴカリンの造反者》、《泥棒ネズミ》そして《クロールの群れ》までよどみなく展開する行弘。
対する高木 隆之も少し遅れて《デヴカリンの造反者》、《冷酷なゴルゴン》、《絡み爪のイトグモ》を展開し、戦闘で相打ちしていき受けきることを選んだ形だ。
高木 隆之は続いて《疫病造り師》で《クロールの群れ》を対処するも、行弘が次の用意したのは《よろめく根茎》。これまで対処した分だけ成長したこのクリーチャーを食い止めきれなかった。
ゲーム2では《デヴカリンの造反者》、《真夜中の死神》、《管区の案内人》と続けてカード・アドバンテージを失わない展開で先んじた高木 隆之。《野生の角獣》が初動となった行弘のライフは一瞬にして蒸発した。
高木 隆之が見せたこの展開力を、ゲーム3では行弘が超えてきた。《獣に囁く者》が着地して対応されないことを確認すると、行弘はそこから毎ターン、カードを減らさずにクリーチャーを追加してゆく。
《獣に囁く者》がプレイされた瞬間に高木 隆之がこぼした「これは、負けたかな」という一言は、瞬く間に現実のものとなった。
行弘 2-1 高木 隆之
B卓:佐藤(青赤) vs. 増野(青黒)
ゲーム1は増野が3ターン目にプレイした《囁く工作員》を守りきる展開となった。
佐藤の《高熱仮説》には《軽蔑的な一撃》を合わせ、《光を遮るもの》との戦闘では《巧みな叩き伏せ》をかみ合わせることでクロック・パーミッションとして動ききった。
互いにマリガンとなったゲーム2では、佐藤が先んじた展開を見せる。《団体のギルド魔道士》、《ゴブリンのクレーター掘り》そして《軍勢の戦親分》と続ける。
増野も《死の重み》や《賽銭ガニ》といった「硬い」カードで耐えしのぎ続けるが、《発破》で《賽銭ガニ》が落とされたところでカード・アドバンテージの差は覆しがたいものとなった。
《軍勢の戦親分》への《巧みな叩き伏せ》が《悪賢い隠蔽》で打ち消された地点で、増野に毎ターン増殖するゴブリン・トークンたちから自らのライフを守る手立てはなくなっていた。
3ゲーム目は増野が《夜帷の捕食者》を4ターン目にプレイ。この「呪禁」に直接対応するカードを持たない佐藤が、限られた時間のなかで回答を求める展開となった。
佐藤が5/5で展開した《門番のガーゴイル》には即座に《致命的な訪問》が当てられる。
佐藤はそのまま打ちどころのない《高熱仮説》を2枚ドローでプレイしてから《団体のギルド魔道士》を展開。
やがて《つぶやく神秘家》を出してから《夜帷の捕食者》以外のクリーチャーに除去を当てて鳥・トークンを生成してゆく。
この飛行を持つ鳥・トークンは《夜帷の捕食者》のブロックに回ることもできたが、佐藤は悩んだ末、攻撃に回して増野のライフを削ることを選んだ。
だがしかし、佐藤はここまで受け手に回ってきていたことで増野のライフはほとんど減っていない。11点ほども残る計算で増野がターン・エンドをしたところで佐藤は《逃れ得ぬ猛火》で増野のライフを一気に減らした。
生成された鳥・トークンの打点も合わせて、増野のライフは残り4点まで削れる。だが佐藤も、このターンで何も続けられなければ増野が依然優位を保つダメージ・レースによる敗北がかなり濃厚になる。
そしてこのターン・エンドのタイミングで佐藤の手札には土地しかなかった。ドローによって展開は大きく変わるタイミングだ。そして佐藤がトップデッキしたカードは……。
《直流》。プレイ。2点。手札の土地を捨てて、再活でプレイ。2点。合わせて、4点。
佐藤 2-1 増野
C卓:山本(青黒) vs. 高木 祐維(赤白)
ゲーム1は山本は《夜帷のスプライト》と《血の刺客》のシナジーを組み合わせ、毎ターン3/1絆魂という壁を用意して高木を圧倒した。
ゲーム2でも早々に山本はこの2枚を取りそろえたが、高木 祐維も軽いクリーチャーを連打し、その後カード・アドバンテージの塊の《実験の狂乱》を設置して盤面を一気に揃えてゆく。
その後、高木 祐維は毎ターンほぼ2枚から3枚のカードをプレイし続け、《静める者、エトラータ》を含む山本の戦線を突破しきった。
ゲーム3の途中で行弘、佐藤が勝利報告をしたことでチーム戦としての勝敗は決したが、ゲームとしてはちょうど高木 祐維がルール確認のためにジャッジを呼んでいるところだったため、この確認は完遂された。
「《ディミーアの密告者》による『諜報2を行う』能力で、ライブラリーから墓地に落とされた《血の刺客》が、そのタイミングで自身の能力を誘発し、手札に移動することができるかどうか」というものだ。
「『諜報を行う』能力が解決される前に、すでに《血の刺客》は墓地になければ誘発自体しないのではないか」という疑問だ。
そしてジャッジの裁定は「誘発する」という結果が出た。リリースノートの記載としても「『あなたが諜報を行うたび』に誘発する能力は、あなたが諜報の処理を行った後に誘発する。」とある。
おそらくこれは高木 祐維のみならず、疑問・違和感を持っていたり間違って覚えているプレイヤーも他にいるかもしれない。
《血の刺客》は優秀なカードであり、もちろん同色の能力である諜報を行うカードも同じデッキに入ることも多いので、《血の刺客》が諜報によってライブラリーから墓地に落とされるということの再現度は低くなさそうだ。
このジャッジの裁定を待ってから山本、高木 祐維は合意の上でゲームを終わらせた。
山本 1-1 高木 祐維
チームマッチ結果
チーム 行弘 賢/佐藤 レイ/山本 賢太郎 2-0 チーム 高木 隆之/増野 良輔/高木 祐維
3卓とも3ゲームを行うフル・カウントとなった。
特に佐藤 vs. 増野の3ゲーム目は増野が有利にゲームを進めているようも見ることができたが、状況に則したカードを引くことを信じて不利なダメージ・レースに挑んだ佐藤が賭けに勝った形となった。
その頃には自らのマッチを終えていた行弘も展開を見守っていたが、佐藤が信じるものを信じるという姿勢であった。
行弘 賢、佐藤 レイ、山本 賢太郎。
日本屈指のリミテッド巧者たちによる素晴らしいゲーム・メイクの様子はこれからも見続けることができそうだ。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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