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グランプリ・名古屋2016
プロプレイヤースポンサー企業にインタビュー
By Sugiki, Takafumi
マジック・ザ・ギャザリングも誕生から20年を超え、全世界で70以上の国で2000万人以上のファンとプレイヤーに遊ばれるゲームとなった。そんなマジックに対して、日本ではここ数年新しい仕組みが広がっている。それは「スポンサー制度」だ。
これまで、マジックにもプロプレイヤーと呼ばれる仕組みはあり、プロポイントを一定のレベル保持している人を指している言葉であったが、これは社会一般で使われる「プロ」という言葉とは異なる事象を指していた。
しかし、ここ数年に広がる「スポンサー制度」はまさしく世間一般で言う「プロ」。大会に参加するにあたり、旅費、参加費、カードなどの補助をするとともに、大会での順位やメディア露出に応じて報酬を与えるようなスキームとなっている。
そのようなプロ契約をプレイヤーと締結するスポンサーである、BIGMAGIC、晴れる屋、Cygamesの方にスポンサー契約を締結するに至った経緯、狙い等についてインタビューを行った。
BIGMAGIC
BIGMAGICは総合カードゲーム会社として、現在ではマジック以外にも様々なカードゲームを取り扱っているが、その名の通り、元々はマジックの小売店として創業している。その歴史は古く、『第4版』発売以前からということであるから、20年以上の歴史を持つこととなる。
現在、瀧村和幸(プロツアー『戦乱のゼンディカー』優勝)、松本友樹(グランプリ・千葉2015優勝)、そして本日新たにスポンサー契約が発表された和田寛也(プロツアー『タルキール龍紀伝』35位)の3名のプレイヤーとスポンサー契約をしている。
インタビューに応じて頂いたのは、BIGMAGICのマジック部門マネージャーである、日下部恭平氏。自身もレガシーを中心にプレイしプレイヤーとしても様々な大会で上位入賞するなど活躍しており、またグランプリではBIGMAGICのブースに店員として立っているため、ご存知の方も多いであろう。
――なぜマジックプレイヤーのスポンサー契約を行ったのでしょうか?
日下部「マジックには、プロプレイヤー制度はあるけれども、企業がスポンサーするということがここ数年無くて。僕が中学生のころに石田格さんがフューチャービーとスポンサー契約をされているのがかっこいいと思っていて、そういうことを自社でもやってみたいと思ったんですよね。それで、現在Team Cygames所属の市川ユウキさん(プロツアー『マジック2015』ベスト8)にお声がけしました。」
※市川ユウキ氏はBIGMAGICに最初のスポンサー契約プレイヤーとして迎えられ、その後Team Cygamesに移籍している。
――スポンサーしているプレイヤーに期待することは?
日下部「個人的な思いとしては、とにかく勝ってもらうこと。企業でやるからには、利益に繋げないといけないけれども、BIGMAGICはこんな強い人たちをスポンサーしてることを単純に自慢したいっていう気持ちがあります。
瀧村さんがスポンサード直後に優勝してくれたのは本当に嬉しかったですね。
それだけではなく、対戦したプレイヤーの方と良いコミュニケーションを取ってもらうことが、BIGMAGICのブランディングに繋がって、それが結果的に利益にもなって帰ってこればと思っています。」
――スポンサーしているプレイヤーにはどのような支援を行っているのでしょうか?
日下部「BIGMAGICシャツを提供したり、デッキを構築するためのカードの貸与を行ったりしています。
また、メディアへの露出や成績に応じての金銭的な報酬も用意しています。」
――今後スポンサー契約以外にも、マジック業界に対して行っていきたいことはありますか?
日下部「BIGMAIGIC OPENを現在開催していますが、それをもっと規模を大きくしていきたいですね。日本全国のいろんなところでBIGMAGIC OPENを開催できればと思っています。
そういった取り組みが、地方のマジックを盛り上げたり、また他のショップとかにもスポンサー制度が広がって、マジック全体の底上げにつながっていくのではないかと思います。」
――ありがとうございました。
スポンサー契約や将来のマジックに対する熱い思いを語っていただいた日下部氏に、最後にマジックに対する誓いを一つ立ててもらった。
晴れる屋
晴れる屋はマジックのプロプレイヤーでありトレーダーでもある齋藤友晴の個人事業としての小売店から始まり、現在は東京・高田馬場に300人収容の世界最大級のトーナメントセンターを構えるまでに成長した日本最大手のマジック小売店である。
プロプレイヤーも多く晴れる屋に就職しており、また八十岡翔太(マジックプロツアー殿堂)、津村健志(マジックプロツアー殿堂)を始めとした8名ものプレイヤーに対して、Hareruya Prosとしてスポンサー契約をしている。
インタビューに応じていただいたのは、同社取締役副社長の高桑祥広氏。かつて存在した関東周辺の若手強豪プレイヤーが集まった「浅原連合」に所属し日本選手権2008準優勝、世界選手権2008ベスト4などの輝かしい戦績を残している。晴れる屋事業に集中しプレイヤーとしては一戦を退いていたが、ここ最近のグランプリではプレイヤーとして参加している姿も見かけるようになった。
――なぜマジックプレイヤーのスポンサー契約を行ったのでしょうか?
高桑「プロとしての露出という意味では、オーナーで代表でもあるトモハル(斎藤友晴)が最初でした。2014年4月に津村(健志)が入社したときがスポンサー制度を立ち上げたタイミングですね。まずは単純に事業にとってプラスになると思ったこと。さらに、プロに飯を食わせたい、メディア媒体としての影響力の掛け算を見てですね。もともと、この会社のモットーが『マジックを世界一のゲームにするために頑張る』で、まずは日本のマジックを盛り上げるためには何をしたら良いかと考えた時に、プロをスポンサーするというのは自然な流れでした。」
――スポンサーしてるプレイヤーに期待することは?
高桑「プロツアーで勝ってほしいというのはもちろんのこと、プロプレイヤーってこんな素敵な職業だっていうことを伝えていってもらいたいと思っています。」
――スポンサーしているプレイヤーにはどのような支援を行っているのでしょうか?
高桑「マジックが強くなれる環境を提供するという理念のもと、いろいろな援助をしています。
まだ試行錯誤の段階ですが、最近だと『晴れるーむ』と名付けた練習スペースを用意し、自由に使えるようにしています。また、定期的なミーティングやLINEでのディスカッション、サプライ、カードの提供もしています。
特徴的なのは、報酬形態です。プロツアーなどでの順位やメディア露出に応じての報酬もありますが、負けてしまってもある程度の報酬を提供することにしています。
これはトモハル自身が海外を転戦してきた経験に基づくものなのですが、戦績が安定しないとどうしても資金的にきつくなったりしてしまうんですよね。そういう金銭的な不安をなくして、末永くマジックのプロとして活躍していってもらいたいという考えです。」
――今後スポンサード以外にマジック業界に対して行っていきたいことはありますか?
高桑「Hareruya Prosとして活動は『晴れるーむ』の整備など練習環境をもっと良くしていきたいですね。
今後マジックを強くなっていきたいというメンバーを新たにプロとして迎え入れていくことも考えています。」
――ありがとうございました。
自身も往年の名選手である高桑氏。このグランプリでも初日を8勝1敗の好成績で折り返し、トップ8の目も見えている。
そんな高桑氏にマジックに対する誓いを立ててもらった。
Cygames
Cygamesは数々の人気スマートフォンゲームタイトルを開発する有名ゲーム会社である。その他にも、アニメ事業を手掛けるなど幅広く事業展開しているが、マジックに関してTeam Cygamesとして市川ユウキ(プロツアー『マジック2015』ベスト8)、山本賢太郎(プロツアー『マジック・オリジン』ベスト8)、覚前輝也(グランプリ・神戸2014優勝)の3人をスポンサードするという発表はマジック業界に驚きをもたらした。ゲームという広い枠で捉えれば関係性があるとはいえ、BIGMAGICや晴れる屋などのマジック取扱店に比べると、ゲーム開発会社がマジックプレイヤーをスポンサードするというのは、意外な感は否めない。
そのようなCygamesからインタビューに応じていただいたのは、Team Cygamesの仕掛け人、同社常務取締役で人気ソーシャルゲームのプロデュースも行っている木村唯人氏。ゲーム開発会社がマジックプレイヤーをスポンサードする狙いや経緯をお聞きした。
――なぜマジックプレイヤーのスポンサー契約を行ったのでしょうか?
木村「当社としてはゲームを出すだけではなく、CSR(企業の社会的活動)の一環として、ゲーム文化全体に貢献したいという思いがあります。そして、ゲームを遊ぶことを職業にできるというゲームの新たな社会的認知を作るために、プレイヤーをスポンサードするという考えに至りました。
なぜマジックプレイヤーを選んだかというと、僕自身がマジック大好きであるのもそうですが、日本人が強くて活躍している面白いゲームとして、もっと社会に認知されていってもらいたいと思ったからですね。」
――スポンサーしてるプレイヤーに期待することは?
木村「まず、スポンサーするプレイヤーを選ぶ基準としては、若手でやる気がある人、熱意がある人です。
スポンサーするプレイヤーに期待するしているのは、トーナメントで活躍することはもちろん、マジックに対する熱を全面に出していってほしいですね。そういった意味では市川さんは自己のブランディングも含め、スター性のある素晴らしいプレイヤーだと思います。
Twitterで、山本さん、覚前さん、市川さんの3人を、当社の開発したゲームのキャラクターになぞらえて『クール・キュート・パッション』の3人という表現をしている投稿があって上手いなと思いましたが、そういったプレイヤーとしての個性というのも大事かなと思っています。」
――スポンサーしているプレイヤーにはどのような支援を行っているのでしょうか?
木村「マジックに集中できる環境、マジックが強くなれる環境を用意するという理念のもと、様々な支援をしています。
具体的には、プロツアーやグランプリ等に参加する際のカードの貸与、ホテルや航空券の金銭的援助及びそれらの手配、練習環境の提供等ですね。今回の『ゲートウォッチの誓い』発売直後の土日は、ドラフト練習のために会社の会議室を提供しました。
もちろん、プロツアーやグランプリなどの大会での戦績に応じての報酬の提供も行っています。」
――今後スポンサード以外にマジック業界に対して行っていきたいことはありますか?
木村「ウィザーズさんとの調整もあるとは思いますが、マジックのプロリーグを開催したいと考えています。
他業種からもコマーシャルを提供してもらって、各社が契約しているプロプレイヤーが対戦する番組が毎週放送されたりしたら、マジックの面白さがもっと多くの人に伝わると思います。
いま、日本でマジックはすごく盛り上がっていますが、さらにもう一段階発展させるには『観せるマジック』、今言ったような番組の放送などが鍵になるかと思います。」
――ありがとうございました。
マジック業界の更なる発展について、マジック以外の業種の企業の経営者からの貴重なご意見も頂くことができた。ご自身もマジックプレイヤーである木村氏に最後にご自身の誓いを立ててもらった。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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