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EVENT COVERAGE
グランプリ・神戸2017
決勝:小島 輝政(大阪) vs. Joe Soh(マレーシア)
By Masashi Koyama
瀬戸内海を望む神戸港湾岸から約3kmの海上に位置する神戸国際展示場。
土曜日の朝、この地に集まった2,802人は、それぞれが胸に抱く想いをデッキに載せて、このグランプリ・神戸2017という大海へと漕ぎ出した。
そして、長い旅路の中で迫り来る荒波に揉まれる中で一隻また一隻と脱落し、グランプリ最後の戦いとなる栄光の決勝戦の舞台へとたどり着いたのは、ただふたり。
地元関西勢、大阪の小島輝政と、はるばる海を越えてマレーシアからやってきたジョー・ソー/Joe Sohだ。
ソーにとって、この神戸の地には因縁がある。
奇しくも同じくこの神戸で行われたグランプリ・神戸2015。当時もまた白黒カラーのデッキを手にしていたソーは並み居る日本人プレイヤーたちをなぎ倒し、決勝へと歩みを進めた。
惜しくも「アタルカ・レッド」を駆る諸藤拓馬に敗れ、一時はグランプリ制覇という夢が潰えたものの、今ソーはその時以来のグランプリトップ8、そして決勝に挑もうとしている。海の向こうで見守る母国マレーシア、そしてアジア圏の仲間たちの想いを追い風に、今度こそ念願のグランプリ王者となることはできるか。
見守る仲間による追い風、という点では地元関西勢の小島も負けていない。一足先に航海を終え、陸に上がった友人たちが、小島の戴冠を見届けるべくフィーチャーマッチエリアの周りに集っている。
自身3度目となる参加となったこのグランプリで、手には研鑽を重ねた「ドレッジ」デッキを持ち、背には力強い仲間の声援を受け、決勝戦に挑む。
小島 輝政(写真左)とジョー・ソー(写真右)。グランプリ王者となれるのはどちらかひとり。 |
両者の準備が整うと試合開始のアナウンスが高らかにが鳴り響き、グランプリ・神戸2017決勝の錨が上げられた。
ゲーム1
小島が《信仰無き物あさり》から《壌土からの生命》を落とし、2枚目の《信仰無き物あさり》が連鎖する絶好のスタート。これで先ほど手札に戻った《壌土からの生命》に加え《ダクムーアの回収場》を墓地に落とし、首尾は上々。これで「発掘」が連鎖していけば、すぐにソーは墓地から蘇るクリーチャーの海に飲み込まれることになるだろう。
......が、ソーは2ターン目のドローでこのマッチ、メインデッキ戦の鍵となるカードを悠々と引き込む。そう、墓地に依存する小島にとって致命的な《大祖始の遺産》!
ソーはそのままこれをプレイ、即座に生け贄に捧げることはせずにひとまず様子見を選択するも、小島は大きく行動を制限されてしまった格好だ。
小島は《大祖始の遺産》の起動を迫るべく《壌土からの生命》を唱える。ソーは少考するが、ここでも《大祖始の遺産》を温存する。
そして《難題の予見者》で手札を検閲、ビッグアクションを起こされる心配がないことを確認すると、ここで小島の墓地を追放。
小島は果敢に《傲慢な新生子》と《恐血鬼》でアタック。《恐血鬼》をブロックした《難題の予見者》に(いったんX=0で墓地へ送った)《燃焼》をフラッシュバックし、「発掘」持ちカードを墓地に落としつつ《難題の予見者》を葬る。
さらに《難題の予見者》死亡誘発によるドローを「発掘」に置換、《秘蔵の縫合体》が墓地へと送り込まれ、さらには《安堵の再会》を引き込み、再び「発掘」の連鎖へ舵を切ったかのように見えた。
が、ソーはまず《現実を砕くもの》で5点のダメージを与えると、《秘蔵の縫合体》を《流刑への道》で追放し、出血を最小限に抑える。
念願のグランプリ制覇に向けてソーが突き進む |
そして《潮の虚ろの漕ぎ手》で《安堵の再会》を抜き去り、2枚目の《現実を砕くもの》で10点のダメージを与えの残りライフは5!
これでいきなり許された時間が1ターンとなった小島に、怒濤の攻撃を防ぐ術はなく、ソーが2年前は叶わなかった決勝戦でのゲーム奪取に成功する。
小島 0-1 ソー
念願の優勝まであと1ゲームに迫ったソーは素早くサイドボーディングとシャッフルを終え、少し高揚したような表情で第2ゲームの開始を待つ。
対象的に小島はサイドボーディングに苦悩している。メインデッキの《大祖始の遺産》に始まり、ソーのサイドボードには2枚の《外科的摘出》と《ゲトの裏切り者、カリタス》が控えているのだ。
カードをライブラリーに入れては抜きを幾度も繰り返すその姿からは、小島の苦悩が伝わってくる。
1本目を落とし苦しい小島は入念にサイドボーディングを行う |
それでも、今はできることをやるしかない。小島は意を決したように大きく息を吐きだし、シャッフルを終えると、ソーに自らのデッキを差し出した。
ゲーム2
この土壇場で小島は痛恨のトリプルマリガン。《稲妻の斧》《ナルコメーバ》《信仰無き物あさり》《恐血鬼》の4枚をキープし、ライブラリートップの《ナルコメーバ》を一番下へ送ると、1ターン目のドローは待望の土地である《樹木茂る山麓》!
これで《信仰無き物あさり》で《恐血鬼》を墓地へ落とすことに成功する......
が、墓地対策を大量に採用しているソーは《不毛の地の絞殺者》でクロックを用意すると、小島の《恐血鬼》を《外科的摘出》で引っこ抜く!
ソーはさらに《未練ある魂》をプレイしクロックを5点に引き上げ、小島の態勢が整う前に勝負を制しにかかる。
ここで小島の手札は《思考囲い》《稲妻の斧》《安堵の再会》《臭い草のインプ》というもの。
まずは《思考囲い》でソーの手札から《流刑への道》を落とし、《不毛の地の絞殺者》を《稲妻の斧》で処理しつつ《臭い草のインプ》を墓地に落とし、ライフを削りきられる前に「発掘」を繋げようとする。
だが、ソーは2枚目の《未練ある魂》で十分な後続を用意すると、《コジレックの審問》で最後の手札である《安堵の再会》を落とし露払いを済ませ、《未練ある魂》フラッシュバックで6体のスピリットを戦場に並べる。
ターンを返された小島はドローを「発掘」に置換し、《ナルコメーバ》と《秘蔵の縫合体》が墓地に落ちたのを見て、一瞬可能性を感じ逡巡するものの、波のように押し寄せるスピリット・トークンを前に息継ぎをするかのように小さく息を吐くと――
グランプリ・神戸2017チャンピオンとなるソーに右手を差し出した。
小島 0-2 ソー
その瞬間、ソーは感情を抑えきれない、といったふうに机に突っ伏し、トロフィーに手を伸ばす。それと同時にアジア圏のグランプリで苦楽をともにしてきた仲間たちが駆け寄り抱擁を交わし、ソーは祝福の波に呑まれたのだった。
今、アジアのマジックは急成長を遂げている。
かつて、アジア圏のグランプリは日本勢にとってチャンスの大きい遠征先とされていた。参加人数が少なく、勝ちやすい。実際に多くのプレイヤーたちがアジア各国のグランプリに足を運び、そして勝利をもぎ取っていった。
今でも日本勢のプレイヤーがアジアのグランプリで勝利を手にする光景を目にすることはもちろん少なくない。
その一方で、日本で開催されるグランプリでは毎回のようにアジア地域からの遠征プレイヤーたちが上位に名を連ね、タイトルを争っている。
アジアの熱風の中心にいるのは、間違いなくソーであり、そしてまたこの優勝トロフィーを持ってアジアに熱い風を吹かすことだろう。
ソーはメディアのインタビューを終えると、トロフィーをいとおしそうに抱え、静かに会場を去った。これから陸に戻り明日にはきっと優勝の証を持ってマレーシアに凱旋し、きっと仲間たちに祝福を受けることになる。
でもその前に、もう一度彼を称えよう。マジックを愛し皆に愛されるアジアの雄を、皆の記憶に残すために。
おめでとうジョー・ソー! グランプリ・神戸2017チャンピオン!
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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