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グランプリ・神戸2017

観戦記事

準々決勝:小島 輝政(大阪) vs. 千葉 晶生(北海道)

by 森安 元希

 グランプリ・神戸2017。

 日本国内において実に3年ぶりの開催となったモダン・グランプリもいよいよ大詰めだ。

 スイスラウンド15回戦を終え、今宵の英傑8人が選出された。

 前回の日本国内でのモダン・グランプリも「グランプリ・神戸2014」であったことから、神戸はモダンの地と言えるのかもしれない。

 しかし移ろい変わったものもある。トップ8のデッキタイプの顔ぶれだ。

 前回まだ健在であった「双子」は、今回もちろんいない。

前回
  • 「タルモハサミ親和バーン」
  • 「トリココントロール」
  • 「赤緑トロン」
  • 「赤白バーン」
  • 「双子」
  • 「タルモ双子」
  • 「風景の変容」
今回
  • 「アドグレイス」
  • 「親和」
  • 「エスパー・コントロール」
  • 「グリクシス死の影」
  • 「ジェスカイ・フラッシュ」
  • 「ドレッジ」
  • 「エルドラージ・トロン」
  • 「白黒エルドラージ」

 「親和」や「トロン」のように基本的なアーキタイプが共通するものはあるものの、大幅に形を変えているものがほとんどだ。

 スイスラウンド6位の小島の「ドレッジ」も、当時はメタゲームにほとんど存在しなかったデッキだ。

 《安堵の再会》、《傲慢な新生子》という手札入れ替えカードが充足されたことに加え、《秘蔵の縫合体》という、「勝手に出てくる」にしてはあまりに大きいサイズのクリーチャーが主軸となった。

 スイスラウンド3位、千葉の「エスパー・コントロール」は前回から存在したオーソドックスなアーキタイプだが、使用者が多いというわけではない。

 その中で、《栄光半ばの修練者》という最新セットからの新戦力をメインに4枚投入した新型だ。「白いタルモゴイフ」と呼びあらわす《栄光半ばの修練者》が、決勝トーナメントで活躍するだろうか。

 グランプリの決勝トーナメントはデッキリストが公開制だ。

 試合開始前にリストを手に取りあい、お互いにカードのオラクルを確認する。

 小島は《肉貪り》、千葉は《災いの悪魔》をそれぞれジャッジに確認する。

 「ドレッジ」においてそのターンに出したクリーチャーたちで一気にゲームエンドを狙う1枚として、全体強化をつける役割を持つクリーチャーだ。

 また《秘蔵の縫合体》の誘発条件も満たし、中盤あたりで殴ってくることもままある。

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小島 輝政 vs. 千葉 晶生
ゲーム1

 スイスラウンド上位の千葉が先手を選ぶ。《闇滑りの岸》から《血清の幻視》という順当な滑り出しだ。

 小島も《》から《傲慢な新生子》とプレイして、「ドレッジ」デッキの準備を整えていく。千葉はその様子を眺めて《金属海の沿岸》セットのみで2ターン目も渡す。

 小島は戦闘後の第2メインフェイズにて《傲慢な新生子》を起動する。《ダクムーアの回収場》を落としてから発掘2でこれを回収し、《ナルコメーバ》が着地する。その後の《信仰無き物あさり》には千葉が《マナ漏出》を当てて、《ダクムーアの回収場》プレイでターンが終わる。

 千葉、3ターン目も《闇滑りの岸》セットで自らのターンでは動かない。

 小島は対称的に積極的なアクションだ。《踏み鳴らされる地》アンタップインから《信仰無き物あさり》をフラッシュバック。千葉はデッキの動きを徹底的に抑えるべく、ここにも《マナ漏出》を当てる。

 千葉は《集団的蛮行》で 《肉貪り》を捨て、「-2/-2修整」と「捨てさせる」の2モードで唱える。だが落とせるカードが《暗黒破》しかないのは、若干の不運だった。

 小島は自らのターンにこの《暗黒破》を発掘して、《燃焼》を墓地に置いていく。


小島 輝政

 この《燃焼》をフラッシュバックしたが、捨てるカードは《恐血鬼》のみ。土地を置いて戦場に戻して、墓地の《秘蔵の縫合体》2体を回収するカードとして運用する。本来はフィニッシュブロー的に取り扱われることも多い《燃焼》だが、小回りも効くようだ。

 千葉は打開策を探しに《苦い真理》を3色で唱えていく。引いてきた《血清の幻視》を打って、占術2は両方下で、タップ・アウト。

 そして残った手札は......土地3枚と《苦い真理》1枚だ。次のトップデックが間に合うか......

 小島が、このがら空きのボディに攻め入る。

 《恐血鬼》と《秘蔵の縫合体》2体でアタック。その後、フィニッシュブローとして2枚目の《燃焼》をフラッシュバックした。

 14点ほどあった千葉のライフは、一瞬にして溶け切った。

小島 1-0 千葉


 「エスパー・コントロール」の千葉も「ドレッジ」の小島も、お互いにあまり数が多い想定はしていなかった相手だ。

 サイドボードも入れては戻し、戻しては入れての繰り返し。相手がどのような戦法に切り替えてくるのか。

 その中で千葉が小さく「きつい」と洩らす。千葉の「エスパー・コントロール」が採用している除去は《致命的な一押し》や 《肉貪り》など、「ドレッジ」側からすればリカバリーの効きやすいものの枚数が多いようだ。

ゲーム2

 《否認》と《虚無の呪文爆弾》という回答をしっかり握った千葉がキープを力強く宣言する。小島はマリガンの6枚スタートだ。

 千葉は《溢れかえる岸辺》《湿った墓》から《血清の幻視》で、さらに手札とドローの質を高めていく。すでに手札には《黄金牙、タシグル》《未練ある魂》まで見えている。

 小島も6枚ながら《信仰無き物あさり》スタートを決められている。《壌土からの生命》と《恐血鬼》を捨て、エンジンに火を入れ始める。

 千葉はこの返しにデッキの肝要となる《栄光半ばの修練者》をプレイ!

 小島、《壌土からの生命》の発掘で《秘蔵の縫合体》を落としていく。《踏み鳴らされる地》タップインの「上陸」で《恐血鬼》を戻し、落ちたばかりの《秘蔵の縫合体》も戻ってくる。さらに《傲慢な新生子》を追加した。

 千葉が《栄光半ばの修練者》通常アタックすると、小島も能力を起動せず《傲慢な新生子》と相打ちさせる。

 千葉は督励によって確実に《栄光半ばの修練者》を落とさないようにもできたが、あえて落として墓地3枚と3マナを使って《黄金牙、タシグル》をプレイした。2ターンに1度の4/4絆魂よりも4/5を選択した結果だ。

 小島は《黄金牙、タシグル》という壁を前にしても、構わずアタックを仕掛けていく。落ちてもすぐ戻る「ドレッジ」クリーチャーたちの利点だ。少しでも点数が入るのであれば、すぐにレッドゾーンに送り込まれる。

 戦闘後に《信仰無き物あさり》フラッシュバックで《壌土からの生命》を落として、「ローム・エンジン」を回していく。

 そこへ千葉は初手から溜めていた《虚無の呪文爆弾》を合わせた。置かれているだけでは機能しないカードなので、的確にキーカードを抜けるまで「待っていた」。

 《憑依された死体》の通常プレイも《マナ漏出》すると、千葉はゲームの主導権を握り始めていく。


千葉 晶生

 《未練ある魂》でスピリット・トークンたちを用意して、ダメージソースも着々と増え始めていく。さらに墓地に2枚ある《恐血鬼》を《失われた遺産》で追放して、上陸エンジンのパーツを減らしていく。

 しかし小島の手立てがなくなったわけではない。先ほど打ち消された《憑依された死体》を起動型能力で戻して、《秘蔵の縫合体》も戻す。航空戦力も用意して、千葉の進撃に待ったをかける形だ。

 千葉は《未練ある魂》でさらにスピリット・トークンを追加して攻め手を厚く厚くしていく。......が、なかなかこのスピリット・トークンたちがレッドゾーンに送り込まれない。すでに序盤の《恐血鬼》たちによって既に千葉のライフは1桁に落ち込んでおり、ブロッカーを減らせないのだ。

 千葉は《秘蔵の縫合体》のアタックを通し、小島も千葉のスピリット・トークンのアタックを少し通していく。互いにライフが5を割る。緊迫したライフレースだ。

 千葉が2枚目の《失われた遺産》を唱える。指定は《ナルコメーバ》。スピリット・トークンで攻め切ることを決めた指定だ。そのまま、《瞬唱の魔道士》も素プレイで横に並べる。

「なんでも良い」。

 どうにかして1/1トークン1体を避けられるカードが来れば、勝てるだけのダメージを与えられるはずだが......来ない。それでも絶対に数え間違いがあってはならないように、お互い何度もダメージソースの値と盤面を数えなおす。

 少しでもアタックを仕掛けたら削りきれず、返しに削られ切られる。お互いにその盤面が形成された。

 そして先にその膠着盤面に介入したのは、千葉だ。

 千葉が引いたのは、《栄光半ばの修練者》!

 ダメージレースを一気に覆しうる、サイズと絆魂を持つ待望ともいえる1枚だ。

 小島も願いを託して、発掘3の《壌土からの生命》ではなく発掘5の《臭い草のインプ》を回収した。

 ここで小島が探しているカードは、たった1種類だ。まだ見つかっていない。

 《信仰無き物あさり》フラッシュバック。

 1枚目のドローは《臭い草のインプ》発掘に置換。見つからない。

 2枚目のドローは《壌土からの生命》発掘に置換。

 一気に13枚を墓地に送り、《壌土からの生命》発掘でめくったカードの最後の3枚目に、それはあった。

 手札はたった2枚だが、フラッシュバックで唱える。《栄光半ばの修練者》と《瞬唱の魔道士》を焼いた。

 そして次のターン。小島が《災いの悪魔》を「蘇生」させて戦線に1体追加、全体をワンサイズ上げる。

 執念で到着した《燃焼》でわずかにこじ開けたブロックの穴を、貫き通した。

小島 2-0 千葉

 ゲーム2、中盤までゲームの主導権を握っていたのは間違いなく千葉であった。

 しかし、「ドレッジ」が誇る「死ぬのを厭わないクリーチャーたちの粘り強さ」という本領が発揮されるほどのロングゲームとなったのが、逆転の一因だったのだろう。

 爆発力としぶとさ。両方を兼ね備えていることを証明した「ドレッジ」の小島が、準決勝へ駒を進めた! 残り、2戦!

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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