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EVENT COVERAGE
グランプリ・神戸2017
旅する「アドグレイス」職人、野稲 和弘
By 森安 元希
(本記事はグランプリ本戦1日目第9回戦終了時点で取材した内容をもとに作成しています)
昨年から、グランプリ規模の競技シーンにその名が通うようになってきた者がいる。
野稲 和弘。マレーシアや台湾、中国、オーストラリアなどアジア圏のグランプリをグラインドしている、非常に精力的なプレイヤーだ。
普段は広島でマジックをたしなんでいるが、PPTQなどで関西圏にも積極的に足を延ばしていることで関西勢だと思う者も多いらしい。
同じく記事『杉山 雄哉が送り出すハイブリッド型コンボ、「5色・集合した中隊」』でご紹介している、「ジョニーのお店」スポンサード・プロの杉山 雄哉とは、同じ旅程を組んで同宿に泊まっているほど仲睦まじい。
そして今年は単身、グランプリ3開催のあるラスベガスへの「遠征」も予定しており、その熱情によってめきめきと頭角を現してきている。
野稲はモダンフォーマットでは、同じデッキタイプを使い続けている。
「このデッキでは3回目のグランプリだよ」と控え目に話すが、それも去年と今年での話だ。
国内で遊ぶプレイヤーにとっては3年ぶりのグランプリなのだから、その間隔の差は9倍にも近い。
そしてそのハイペースのなか愛用するデッキタイプは、「アドグレイス」。
「半分このデッキありきで、参加しているところはあるね」とケラケラ笑う。
間を置かず真剣な面持ちで「誰よりも回してると思うよ」と付け加えた。愛情と自信の表れだ。
そして今日、それは形となって表れていた。1日目9回戦、全勝。
2802人のうちたった10人しかいない全勝者の1人として、トップ8に最も近い1人だ。
1 《島》 1 《平地》 3 《金属海の沿岸》 2 《啓蒙の神殿》 3 《闇滑りの岸》 3 《欺瞞の神殿》 4 《宝石鉱山》 2 《真鍮の都》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(20)- 4 《猿人の指導霊》 1 《研究室の偏執狂》 -クリーチャー(5)- |
4 《睡蓮の花》 3 《否定の契約》 4 《天使の嗜み》 4 《血清の幻視》 3 《手練》 3 《大霊堂の戦利品》 4 《五元のプリズム》 2 《検閲》 3 《ファイレクシアの非生》 1 《稲妻の嵐》 4 《むかつき》 -呪文(35)- |
2 《墓所のタイタン》 2 《致命的な一押し》 2 《思考囲い》 2 《残響する真実》 1 《ハーキルの召還術》 1 《苦い真理》 1 《至高の評決》 4 《神聖の力線》 -サイドボード(15)- |
比較的オーソドックスなメインデッキだ。試験的に採用してみたという2枚の《検閲》だが、強くもあり弱くもありというところだったようだ。
「一応、《虚空の杯》X=1されていても、サイクリングすることで《研究室の偏執狂》勝ちできるけど......一応ね(笑)」
文字通りマニアックなシチュエーションにも対応できると話しながら、未だその場面に遭遇したことはないらしい。しかし「できる」ということが大切なのも、事実だ。
「アドグレイス」との出会いと旅路
3回のグランプリにわたって使い続ける「アドグレイス」との出会いは、最初は敵だったと話してくれた。違うデッキを使っていた頃から、当たって勝ったことがなかったようだ。
「《否定の契約》もコンボパーツも、なんでも持ってて、引いて、絶対に4ターン目にすぐ決めてきて。これ、理論上最強のデッキじゃない?と思ったのが、最初だね。実際PPTQに持ち込んだら、すぐ勝てて(笑)。それからは、なんだかんだ。
グランプリ・広州では初賞金に初プロポイントもらえたし。クアラルンプールのスーパーサンデーシリーズでもスイスラウンド全勝させてくれてたし。
ブリスベンでは、ちょっと不甲斐なかったけど。それ以外では、デッキが勝たせてくれるからね」
野稲のインタビューの間、出てくるグランプリの地名がカタカナなのと、「デッキが勝たせてくれる」という表現が節々に現れるのが特徴的であった。
それほどこの「アドグレイス」を信頼して、各地を飛び回っているのだ。
メインデッキの立ち位置
以前、モダンで「青緑感染」が現役だったころには、この枠を《魂の裏切りの夜》としていたこともある野稲は、その経験則もあり、
「『アドグレイス』というデッキはメイン58枚まで固定枠で、2枚がフリースロットだよ。その代わり、サイドは色々変わるけど」と話す。
「『カラデシュ』での《致命的な一押し》の加入も大きかった。これまでは《流刑への道》や《暗黒》のようなカードで、序盤に打ちにくかった。アド損(アドバンテージの損失)ない除去が増えて嬉しい」
《暗黒》は《ファイレクシアの非生》《天使の嗜み》という、アドグレイスの「負けない」カード群でも対応できなかった「感染」に対して採用していた半ば専用枠だったようだ。
相手がメタゲームからいなくなったことでスロットが緩まったとともに、デッキとしての立ち位置が良くなっているようだとも話す。
サイドボードの入れ替え指南
また野稲は、現存する主要なデッキタイプのいくつかに対してのサイドイン・アウトも教えてくれた。
まず共通するサイドアウトとして、抜くものは《睡蓮の花》《五元のプリズム》のマナ加速、そして《手練》の3種類からだという。
最速のコンボ成立が目指しにくくなるためマナ加速は抜けやすく、探す役割の《手練》自体をパワーカード、ヘイトカードにすることで対応力を上げてゆく。
対「エルドラージ・トロン」
《虚空の杯》があるため、0マナの《睡蓮の花》を優先して減らす。
《虚空の杯》対策にバウンスは3枚(《残響する真実》2枚、《ハーキルの召還術》1枚)とも入れる。
ちなみに今回は「踏まずに、ラッキー」という感想のようだ。
対「カウンター・カンパニー」
「向こうの方がキルターンが1ターン早いコンボなので、大分不利っちゃ不利」と話す。
対「死の影」(グリクシス、ジャンド、エスパー)
《思考囲い》《致命的な一押し》はタイプを問わず共通して入れる。
とりあえず「死の影」であるかどうかに関わらず、白マナが見えた相手、ありそうな相手には《残響する真実》を入れる。
白がある相手からは、「めちゃくちゃキツい」と語る《石のような静寂》がほぼ出てくると想定している。
対「白黒エルドラージ」
「ここも厳しい相手です。今日1回当たって勝てて良かった」と話す、アグロ気味の白黒型エルドラージ。
あまり相手がハンデスに依存するデッキではないとしながら、《潮の虚ろの漕ぎ手》など厳しいカードがあるため、《神聖の力線》を3枚くらいイン。白いのでバウンスも入れ、《致命的な一押し》と《至高の評決》で除去してゆく。そんなにライフを削る相手ではないという判断から《苦い真理》で手札を確保し、《墓所のタイタン》で盤面を支えるとのことだ。
なお《不毛の地の絞殺者》が誘発型能力で待機呪文を「食べられる」ことには、使う側も使われる側も要注意の挙動だ。
モダンには数多のアーキタイプが存在するためにサイドイン・アウトの方法論も無限に存在することになるが、野稲のサイドイン・アウトには一貫性があって整然としている。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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