EVENT COVERAGE

グランプリ・神戸2017

観戦記事

第15回戦:藏田 真太郎(神奈川) vs. Kuo, Tzu Ching(台湾)

By 矢吹 哲也

 筆者も幾度となくこの場に立ち会っているが、第15回戦、すなわち予選ラウンド最終戦のフィーチャー卓は他のどの試合とも異なる雰囲気を醸し出す。最先頭の集団はほとんどが同意の上の引き分けを選択しトップ8入賞を確定させるため、この舞台に立つのはもう少し先の決勝ラウンドでのことになる。今ここにいるのは、あとひとつ「勝てば」トップ8入賞の望みを持てるプレイヤーたちだ。

 台湾のクオ・ツーチン/Kuo, Tzu Chingは誰もが認めるアジアの雄のひとりであり、とりわけ日本の国内グランプリやアジアのグランプリでは必ずと言って良いほどフィーチャーエリアでその顔を見ている。今回も自身12度目のグランプリ・トップ8入賞を懸けて、予選ラウンド最後の試合に意気込む。

 対する藏田 真太郎は先日行われた「BIG MAGIC Invitational vol.3」にてトップ8に入賞するなど、徐々にその頭角を顕してきているプレイヤーだ。今大会でプレミア・イベントでの躍進も果たした彼は、あと1勝で少なくともプロツアーの参加権利が手に入るところまで来た。


藏田(画面左)vs.クオ(同右)。それぞれの仲間を含む多くのギャラリーに見守られ、決戦に挑む

藏田 真太郎(グリクシス「死の影」)vs. クオ・ツーチン(Knightfall)

 1ターン目《貴族の教主》から《聖遺の騎士》と高速のスタートを切ったクオに対し、藏田は《思考囲い》を差し向けて《献身のドルイド》をクオの手札から落とした。

 そして《通りの悪霊》を「サイクリング」し、さらに《思考掃き》で墓地を肥やした藏田は、早くも《グルマグのアンコウ》を展開する。

 強力なクリーチャーを相手にしたクオだが、しかし彼の《聖遺の騎士》も渡り合えるほどに大きい。5点の強打を藏田へ与えたクオは《集合した中隊》で2枚目の《貴族の教主》と《献身のドルイド》を盤面に加え、さらなるプレッシャーを与えていく。

 藏田は《瞬唱の魔道士》から《思考囲い》を放ち、再びクオの手札を暴いた。残るカードは《歩行バリスタ》、《集合した中隊》、《療治の侍臣》と強力なもので、藏田は頭を抱えながら《歩行バリスタ》を抜き去った。

 しかしクオが《集合した中隊》を唱えると、そこから《反射魔道士》が現れた。序盤から積極的に自身のライフを削っていった藏田は、守り手を失ったのちにライフを残すことができなかった。


クオの「Knightfall」は、強打とコンボの両面からプレッシャーをかけていく。

 第2ゲーム、《》を置いてターンを渡した藏田に対し、クオは1ターン目に《極楽鳥》を展開した。そのターンの終了時に《思考掃き》を唱えた藏田はフェッチランドで墓地の枚数を増やすと、2ターン目に《黄金牙、タシグル》を着地させる。

 クオは《貴族の教主》と《ブレンタンの炉の世話人》を展開。藏田は《黄金牙、タシグル》によるクロックを刻み始め、さらに《最後の望み、リリアナ》でクオの《極楽鳥》を潰した。

 クオは《永遠の証人》で墓地の土地を回収し、白マナを捻出すると《流刑への道》で《黄金牙、タシグル》の除去に成功する。しかし《最後の望み、リリアナ》が、タフネスの小さなクオのクリーチャーを次々と墓地へ送っていく。

 クオは《漁る軟泥》を繰り出して盤面の優位を取り直そうとするが、藏田の《致命的な一押し》が刺さる。残りライフも8点と心許なくなったクオは《集合した中隊》に期待を寄せた。戦場に降り立ったのは、《療治の侍臣》と《聖遺の騎士》。《最後の望み、リリアナ》により《療治の侍臣》は失ったものの、《聖遺の騎士》が守りを支えてくれた。

 藏田は《思考囲い》でクオの手札を攻め、クオはそれに対応して《召喚の調べ》を放ち《献身のドルイド》を置いた。公開されたクオの手札には《療治の侍臣》があり、藏田はコンボを防ぐことに成功した。続けて《瞬唱の魔道士》の攻撃でクオの残りライフを5点にすると、《最後の望み、リリアナ》の[-2]能力で墓地を肥やした。

 クオは6/6の《聖遺の騎士》で藏田の《最後の望み、リリアナ》を退場させ、《薄暮見の徴募兵》を盤面に加えた。藏田は《瞬唱の魔道士》で再度攻撃へ向かい、クオは《薄暮見の徴募兵》の能力で《歩行バリスタ》を手に入れると、《瞬唱の魔道士》との相討ちに向かわせた。

 藏田は《コラガンの命令》で《献身のドルイド》を倒し、同時に先ほど墓地へ行った《瞬唱の魔道士》を回収。さらにそれを繰り出して《致命的な一押し》をフラッシュバックすると、《聖遺の騎士》の除去にも成功した。

 《歩行バリスタ》をX=2で繰り出したクオに対し、藏田は2枚目の《最後の望み、リリアナ》を呼び出し、クオの《歩行バリスタ》のタフネスを下げようとした。クオはこれに対応して《歩行バリスタ》の能力を起動し、《瞬唱の魔道士》を除去、《最後の望み、リリアナ》に1点のダメージを与える。

 クオは迎えたターンに引き込んだ《反射魔道士》を繰り出し、盤面を維持。藏田は《最後の望み、リリアナ》の[-2]能力でで《瞬唱の魔道士》を再度回収すると、《コラガンの命令》をフラッシュバックして、クオのライフを残り3点に追い詰めた。

 クオは《ガヴォニーの居住区》によって《反射魔道士》のパワーを上げ、《最後の望み、リリアナ》を退場させた。藏田は《グルマグのアンコウ》を戦線に追加し、最後の攻撃に備える。

 そして有効なカードを引き込めなかったクオがターンを返すと、藏田は戦場に残る《反射魔道士》を《終止》で退場させ、最後の一撃を放ったのだった。


熱戦を制しゲームをイーブンに戻す藏田。両者による盤面の奪い合いは、さらにヒートアップする。

 最終ゲーム、クオは再び1ターン目に《貴族の教主》を繰り出し、藏田は《血清の幻視》で火蓋を切った。続くターンに《思考掃き》を唱えた藏田は、またも2ターン目《黄金牙、タシグル》で素早いクロックを用意する。

 だがクオは《反射魔道士》で《黄金牙、タシグル》をバウンスし、《貴族の教主》を追加。盤面の優位を握り返した。しかし藏田はここで《神々の憤怒》を放ち、クオの盤面を一掃する!

 4枚目の土地を置いてターンを渡したクオ。すなわち《集合した中隊》の構えだ。藏田は再び《黄金牙、タシグル》を展開し、そしてクオの《集合した中隊》は――クリーチャーを追放され拾えるものが土地しかない《永遠の証人》と、《献身のドルイド》を出すのみだった。

 それでも迎えたターン、クオは《召喚の調べ》から《療治の侍臣》を呼び出し、無限マナのコンボを完成させる。そこからさらに《集合した中隊》を放つと《反射魔道士》と《漁る軟泥》が登場。盤面の優位は一気にクオの側に傾いた。

 しかし藏田はターンを迎えると、両手で土地をタップし《滅び》を放った。

 これにはクオも一瞬目を見開き動きを止め、やがて首を振る。そして満を持して《死の影》 が戦場へ送り込まれ、クオの死期が2ターン後であることを伝えた。

 だがクオは《反射魔道士》で《死の影》 を戻し、盤面の取り合いを続ける。藏田は《黄金牙、タシグル》を再展開し、クオは《聖遺の騎士》を盤面へ。熱戦にギャラリーの数も増し、ふたりの戦いは最終局面を迎える。

 藏田は《黄金牙、タシグル》で攻撃後、《死の影》 を2体展開した。クオも2体目の《聖遺の騎士》を繰り出してターンを渡すと、藏田はターン終了時に《黄金牙、タシグル》の能力を起動する。藏田の墓地には《滅び》と《致命的な一押し》しかなく、クオはやむなく《滅び》を選択する。

 藏田は《死の影》 2体で攻撃し、クオはこれをチャンプ・ブロックで防いだ。《瞬唱の魔道士》で(フェッチランドで「紛争」を達成した)《致命的な一押し》をフラッシュバックして《聖遺の騎士》を1体除去すると、3枚目の《死の影》 を加える!

ゆっくりと、だが確実にクオの元へ「死の影」が迫る。

 クオに残された道は、《集合した中隊》を引き込み無限コンボを揃えるか、藏田の攻撃を防ぎ切り反撃で倒すのみ。《聖遺の騎士》でライブラリー内の土地を少しでも減らし、《流刑への道》で《死の影》 を1体除去すると、続くドローに望みをかける。

 引き込んだのは、《永遠の証人》。クオはこれで《流刑への道》を回収すると、もう1ターン生き残れることを祈った。

 藏田は《集団的蛮行》でクオの《永遠の証人》を墓地へ送り、クオは《死の影》を《流刑への道》へ送る。藏田は最後に残った《死の影》で攻撃。クオは反撃の鍵となる《聖遺の騎士》を残し、これをブロックしないことを決断した。

 残った2点のライフを、《コラガンの命令》が焼き尽くした。

藏田 2-1 クオ


 勝負が決した瞬間、ギャラリーから歓声があがった。仲間たちが身を乗り出し、次々と藏田に祝福の声をかける。藏田は勝利の味を噛み締め、仲間たちと喜びを共有した。

 この記事を執筆している時点で、この後の結果は出ている。最後の戦いに勝利した藏田だったが、惜しくもオポネント差でトップ8入賞は逃すことになった。しかし彼の前にはさらなる道が開かれ、次なる舞台、マジック最高峰のプロツアーが待っている。

 仲間たちの支えを受け、己の力で新たなステージへ進んだ藏田。今後の活躍にも期待しよう。

  • この記事をシェアする

RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

RANKING

NEWEST

サイト内検索