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グランプリ・神戸2017
第5回戦:保坂 祥輝(滋賀) vs. Kelvin Chew(シンガポール)
By 矢吹 哲也
ケルヴィン・チュウ/Kelvin Chewと言えば、先日のグランプリ・北京2017優勝の記憶が新しいだろう。プロツアー・トップ8入賞1回、グランプリ・トップ8入賞3回(うち優勝1回)の華々しい戦績を誇るチュウの名は、自国シンガポールはもちろん、世界中に広まっている。
対する滋賀の保坂 祥輝は、普段レガシー・プレイヤーとしてマジックを楽しみ、昨年レガシーで行われたグランプリ・千葉2016では14位という好成績を収めた。「その勢いに乗って」と戦いの舞台をモダンにも広げた彼は、今大会不戦勝なしのスタートから4連勝で自身初のフィーチャー・マッチを迎えることになった。その勢いは本物だ。
保坂 vs. チュウ。グランプリ王者の勢いに保坂の勢いは勝るか。 |
「レガシーで使っている色と同じです」と自身のデッキをほのめかした保坂。彼が今大会に持ち込んだのは「エスパー『死の影』」だ。試合後に選択の理由を尋ねたところ、《未練ある魂》と《流刑への道》が(流行の)「グリクシス『死の影』」に対して強く、また積極的に攻勢をかけるプランもコントロール寄りに立ち回るプランもとれることを強みとして挙げた。
対するチュウは「Knightfall」と呼ばれる《聖遺の騎士》と《珊瑚兜への撤退》のコンボを搭載した、バント3色のデッキを手に今大会へ臨んでいる。彼はもうひとつ、《療治の侍臣》と《献身のドルイド》による無限コンボも搭載しており、多少の妨害には潰されない形になっている。
保坂 祥輝(エスパー「死の影」)vs. ケルヴィン・チュウ(Knightfall)
先手のチュウが《霧深い雨林》起動から《極楽鳥》でゲームを始めると、対する保坂は《思考囲い》でチュウの手札を暴いた。明らかになった手札を見て、保坂は「撤退か......」とつぶやく。相手の武器を知った瞬間だった。
《聖遺の騎士》と《珊瑚兜への撤退》のコンボ・パーツが揃っているチュウの手札から、保坂は《聖遺の騎士》を取り去り、チュウは迎えたターンに《珊瑚兜への撤退》を設置した。《血清の幻視》で手札を整える保坂を尻目に、チュウは《献身のドルイド》で展開を進める。
保坂はフェッチ・ランド起動からのショック・ランドのアンタップインでたちまち自身のライフを減らしていき、残り10点になったところで《死の影》を2枚続けて展開。チュウにプレッシャーをかけていく。
しかしチュウは《反射魔道士》で《死の影》を1体保坂の手札へ送ると、《永遠の証人》で《聖遺の騎士》を回収。コンボ・パーツを再び揃えた。
だが保坂も《瞬唱の魔道士》で《思考囲い》を再利用し、コンボ達成を許さない。彼はさらに《流刑への道》でチュウの《献身のドルイド》の除去にも成功した。それでもチュウは《集合した中隊》で2枚目の《反射魔道士》と《献身のドルイド》を引き当て、保坂の攻勢をシャットアウトする。
保坂は《黄金牙、タシグル》を展開してターンを渡した。チュウは《珊瑚兜への撤退》でそれをタップさせると、《反射魔道士》2体で攻撃に出た。
保坂は《瞬唱の魔道士》を繰り出し、《流刑への道》をフラッシュバックしてこれを防いだ。チュウは2枚目の《永遠の証人》で《聖遺の騎士》を再び回収し、今度は着地に成功した。
ついに保坂の対応手段は尽き、チュウのコンボが決まった。保坂は、大きく息を吐いてカードを片付けた。
度重なる妨害を乗り越えてコンボを成立させたチュウ。 |
第2ゲーム、保坂は1ターン目《血清の幻視》から2ターン目《思考囲い》。チュウの手札から《永遠の証人》を抜いたものの、チュウは《極楽鳥》、《貴族の教主》、《療治の侍臣》と展開を進める。
保坂は《思考掃き》を連打して墓地を肥やしながら手札を整えていき、一方のチュウは《療治の侍臣》をもう1枚追加して攻勢を続けた。コンボに頼らずとも攻め手を持つことができるのもこのデッキの強みだ。
残りライフを7点に減じながらも、保坂は《拘留の宝球》で《療治の侍臣》を一掃した。その後に繰り出された《薄暮見の徴募兵》にも《致命的な一押し》を当てた保坂だが、2体の《貴族の教主》がチュウの打点を支え、《極楽鳥》の攻撃でじわじわと追い詰められていく。
ここで《瞬唱の魔道士》、《黄金牙、タシグル》と繰り出し反撃に出た保坂は、《未練ある魂》でチュウの攻撃を防ぎにかかった。チュウの最後の一撃はなかなか通らず、保坂の攻撃によってライフ差は徐々に狭まっていく。
そして《イーオスのレインジャー》から《死の影》も追加した保坂は、ついに劣勢だった盤面を逆転させた。チュウに「次いきましょう」と言わせることに成功したのだ。
粘り強く戦い勝利を引き寄せた保坂。 |
迎えた第3ゲーム、チュウはマリガンを喫したものの、2ターン目に《献身のドルイド》を繰り出した。保坂はそれを《致命的な一押し》で対処したが、チュウは3ターン目に《聖遺の騎士》を着地させる。
保坂は着々と自身のライフを減らし、チュウの《聖遺の騎士》も《瞬唱の魔道士》からの《致命的な一押し》(フェッチランドの起動で「紛争」達成)で対処。残りライフ7点となったところで、満を持して《死の影》を2体繰り出した。
1体は《反射魔道士》で戻したチュウだが、6点の強打が彼を襲う。保坂は《黄金牙、タシグル》も盤面に追加し、王手をかけた。残りライフは8点と心許ないチュウはそれでも、2体目の《反射魔道士》で《死の影》を戻して反撃。続く保坂の攻撃も受け、肉を切らせて骨を断つ気迫を見せる。
チュウは「変身」した《爪の群れの咆哮者》と《反射魔道士》でさらに攻撃。しかし保坂は2枚目の《瞬唱の魔道士》で《致命的な一押し》をフラッシュバックし、致命打を与えさせない。
そして保坂の最後の一撃に対応して、チュウは《集合した中隊》を放つ――
保坂はひと呼吸置き、《対抗突風》を差し向けた。
チュウの腕が伸びた。
保坂 2-1 チュウ
強敵との接戦を終え、保坂は大きく息を吐いた。まだ初日の折り返しを終えたところだが、「疲れた」と思わず口に出る。
それでも彼は、試合後のインタビューで使用デッキのことを尋ねる筆者にイチ押しのカードも教えてくれた。「今回活躍の機会はなかったんですが、《儀礼的拒否》強いですよ。トロン系が出してくるカードに刺さり、3ターン目に《瞬唱の魔道士》からフラッシュバックが間に合うので」
ひとりのレガシー・プレイヤーの新天地への挑戦は、まだ続く。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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