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グランプリ・神戸2014

観戦記事

決勝:覚前 輝也(大阪) vs. 後藤 祐征(愛知)

By 矢吹 哲也

 5回のグランプリ、2度のプロツアー。ここ神戸の地には、古くからマジックの歴史が刻まれてきた。古今東西多くのプレイヤーの意志が、熱意が、涙が、そして歓喜が、この会場には染み付いている。

 そして今再び、その上に2,270名のそれぞれの想いが積み重ねられた。17回もの戦いを経て築き上げられた最高の舞台に立っているのは、ただふたりのプレイヤーだけだ。


グランプリ・神戸2014 決勝戦

 覚前 輝也。かつて日本選手権でその名を馳せた強豪が、再びこの舞台に帰ってきた。一時期マジックを休止したのちに「本気」で復帰し、即プロツアー予選を抜けるという地力の高さには目を瞠るばかりだ。

 後藤 祐征。愛知のマジック・コミュニティを中心に強い信頼を得るデッキビルダーである彼は、今大会にも「ハサミタルモ親和バーン」なる強烈なデッキを組み上げてここまで勝ち抜いてきた。多くのプレイヤーを魅了した彼の活躍は、今この試合をもって完成するだろう。

 ある夏の2日間の物語。すべてがこの試合に結実する。

それぞれのデッキ

 互いのデッキリストに目を通す両者。後藤が《彩色の星》の効果を質問される、という一幕も。今大会ではどのリストも「親和」を意識した構成になっており、とりわけサイドボードに投入された対策カードの数々に後藤は「ほんとキツイ」と漏らす。

 しかしそれだけの対策を受けながらも、後藤は独自チューンの「親和」で勝ち抜いてきた。そこを覚前に指摘されると、「(対策カードに対して)ずらしてきたんで」と笑顔を見せる。

 一方の覚前は「白赤バーン」。メタ上のデッキをすべて試した結果「一番強い」と手応えを得たという。「調整時間は短かったから不安はあった」と語る彼だが、この2日間極めて大きなパフォーマンスを見せ、今この舞台にいるのだ。

 高速デッキ同士の「熱い」最終戦、ここに開演。

試合展開

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 両者とも初手を凝視し、静かにキープを宣言。後藤が《マナの合流点》、《バネ葉の太鼓》、そして《羽ばたき飛行機械》2枚を展開してゲームが開幕する。覚前が第1ターン《苛立たしい小悪魔》をプレイすると、後藤はクリーチャーとして残す方を選択し、それを《感電破》で除去した。

 《大霊堂のスカージ》を繰り出してターンを返す後藤。覚前は《渋面の溶岩使い》をプレイし、続けて《裂け目の稲妻》を「待機」。後藤が《タルモゴイフ》を盤面に追加すると、しばし考えを巡らせた覚前は「待機」が解けた《裂け目の稲妻》を《タルモゴイフ》に撃ち込み、その後《渋面の溶岩使い》の能力のコストで自分の墓地を減らすことで、ダメージを受けている《タルモゴイフ》のタフネスを下げてこれを倒した。この《渋面の溶岩使い》の能力がさらに《大霊堂のスカージ》も除去する、というビッグ・プレイになる。


覚前 輝也

 覚前はさらに《大歓楽の幻霊》を戦場に加え、続けて《欠片の飛来》と《渋面の溶岩使い》で《羽ばたき飛行機械》をすべて撃ち落とし、プレッシャーをかけていく。防戦に回った後藤は《感電破》で《渋面の溶岩使い》を除去するものの、《大歓楽の幻霊》の攻撃と能力、そして押し寄せる火力呪文を前に焼き尽くされるのだった。

覚前 1-0 後藤

 第2ゲーム、後藤は《ダークスティールの城塞》、《オパールのモックス》、《バネ葉の太鼓》、《大霊堂のスカージ》、そして《陽光の呪文爆弾》と一挙5枚展開。《大霊堂のスカージ》を《稲妻》で除去された返しのターンには《タルモゴイフ》と《アーティファクトの魂込め》を盤面に追加し、凄まじい速度で盤面を完成させる。

FN_gotou_board.jpg

 ゲームが始まった瞬間に窮地に立たされた覚前は、それでも望みを捨てず《裂け目の稲妻》を「待機」。3ターン目にして8点もの大打撃を受けた彼は、《裂け目の稲妻》と《灼熱の血》で《タルモゴイフ》を除去しつつ一矢報いる。

 だが反撃はそこまで。次のターンには、魂を込められた《陽光の呪文爆弾》の攻撃と《感電破》で、覚前のライフは削り切られた。

覚前 1-1 後藤

後藤 祐征

 迎えた第3ゲーム、両者とも手札を吟味し宣言するのは「キープ」。覚前の《苛立たしい小悪魔》による4点から最終ゲームが始まった。後藤のライフは16。

 後藤の第1ターンは《ちらつき蛾の生息地》、《オパールのモックス》、《彩色の星》の3枚と「控えめな」スタート。

 そこへ覚前の《大歓楽の幻霊》が着地し、強烈に牽制をかける。

 しばし考え、意を決した後藤は《陽光の呪文爆弾》を展開で2点、さらに《アーティファクトの魂込め》で2点を受け、自分の身を切りながら攻撃に向かう。これで覚前のライフは14、戦場では5/5となった《彩色の星》が彼にプレッシャーをかける。第2ターンにして、ライフレースは一気に加速するのか。

 覚前の2枚目となる《苛立たしい小悪魔》が戦場に現れると、後藤は大いに悩み......
......決断した。残りライフ12点の状態から4点を受け、勝負に出る。残り、8点。

 《大歓楽の幻霊》が攻撃に向かい2点。残り、6点。

 そして覚前の手札には――《溶岩の撃ち込み》が2枚控えていた。

覚前の勝利を祝うのはやはりこのカード!
覚前 2-1 後藤

 試合後、生放送のゲストに呼ばれた両者は試合を振り返る。最終ゲームに《苛立たしい小悪魔》から4点のダメージを受けることを選んだ場面について、後藤は次のように語った。

「ライフ的にはもう追加の火力を持たれていたらいずれにしても負けている盤面だったので、あそこでクリーチャーを通して消耗戦に持ち込まれるのは避けたかった」

 マジックにもときに勇気が必要になる場面がある。そこで前に出られるかどうかも、このゲームの醍醐味だろう。

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超高速のダメージレースを制したのは覚前 輝也! グランプリ・神戸2014優勝おめでとう!

巻末追記

 以下に、第3ゲームにおける両プレイヤーの初手7枚と、第3ターンまでのドローを掲載します。

 皆さんならどうゲームを運ぶでしょうか?

覚前(先攻)

初手:《》《乾燥台地》《苛立たしい小悪魔》《苛立たしい小悪魔》《大歓楽の幻霊》《溶岩の撃ち込み》《溶岩の撃ち込み

ドロー:第2ターン《聖なる鋳造所》、第3ターン《欠片の飛来

後藤(後攻)

初手:《アーティファクトの魂込め》《アーティファクトの魂込め》《大霊堂のスカージ》《彩色の星》《バネ葉の太鼓》《オパールのモックス》《ちらつき蛾の生息地

ドロー:第1ターン《空僻地》、第2ターン《陽光の呪文爆弾


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