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グランプリ・神戸2014

観戦記事

準々決勝:孫 博/Sun, Bo(中国) vs. 覚前 輝也(大阪)

By 小山 和志

 予選ラウンドの15回戦が終了し、2270人のうち、決勝ラウンドに進むことを許されたのはわずかに8名。いよいよグランプリ王者という輝かしいタイトルへ向けてのノックアウトラウンドが始まる。頂上までは、あと3つ。

 その準々決勝の4テーブルの中から最も「熱い」戦いをご紹介しよう。バーンによるミラーマッチ、覚前 輝也と孫 博/Sun, Boの一戦だ。

 かつて日本選手権2004でトップ8に残ったこともある実力の持ち主である覚前と、中国からの刺客、孫。はたして火力で上回り、相手を黒焦げにするのはどちらのプレイヤーか。この準々決勝でより「熱い」男はどっちだ?


準々決勝:孫 博/Sun, Bo(写真左) vs. 覚前 輝也(同右)

ゲーム1

 スイスラウンドで上位だった覚前が先手。お互いにキープを宣言。覚前は《ゴブリンの先達》という最高のスタートを切る。返す孫は《裂け目の稲妻》を待機、1ターン目はクリーチャーを出した覚前が一歩リード、といったところか。

 さらに覚前は《苛立たしい小悪魔》を追加、これは着地。《ゴブリンの先達》が攻撃を続ける。これで孫は16。

 待機明けの《裂け目の稲妻》が覚前の《苛立たしい小悪魔》を焼き、《大歓楽の幻霊》をキャスト。これに対応して覚前は《稲妻》を孫の本体に。

 覚前は続くターン、《ゴブリンの先達》を立たせてエンド。《大歓楽の幻霊》除去することもできたが、火力を温存し、孫のライフ狙いに徹する。

 孫は《大歓楽の幻霊》でアタック、これが初めて覚前のライフを減らすが、ターン終了時に、覚前は意を決して《ボロスの魔除け》を本体に。これで孫は残り9点だ。さらに《稲妻》をあなたに、あと6点。《ゴブリンの先達》がアタックし、孫のライフは4。そして、孫のアップキープに覚前が《頭蓋割り》を打ち込むと、カードを引くことなく孫はカードを片付けたのだった。

孫 0-1 覚前

覚前 輝也

 使い込んでいるデッキだからか、双方のサイドボードの入れ替えは素早い。この同型対決の運命を分けるのは、劇的に効いてしまう《神聖の力線》の枚数か。孫には4枚、覚前には3枚の《神聖の力線》が採用されている。この1枚の差がどれほど影響するのだろうか。

ゲーム2

 ゲーム開始後、焦点となっていた《神聖の力線》がまず先手の孫の戦場に降り立つ。そして覚前からは...無し! これはゲーム開始時点で大きな差がついてしまっただろうか。覚前は孫の次なる《ゴブリンの先達》こそ除去するが、孫本体に呪文でダメージを与えられないのでは、どちらが有利か火を見るより明らかだ。

 覚前は《ゴブリンの先達》、《苛立たしい小悪魔》を召喚し、コツコツダメージを与えようとしていくが、孫は悠然とクリーチャーを焼き殺していく。

 それでも現状、クリーチャーで攻撃していくしかない覚前はさらに《ゴブリンの先達》を引き込み、アタック。これに対して《稲妻》が飛んでくるが、《ボロスの魔除け》で回避を見せる。そこで孫は追加で《欠片の飛来》を打ち込む。覚前は唯一のダメージ源を失い、孫は手札を使い切ってしまった。

 覚前は何とか引き込んだ《渋面の溶岩使い》で1点のアタックを続ける。先ほど手札を使い切った孫も目立ったアクションを起こすことはなく、お互いノーアクションで、1点、そしてまた1点と、《渋面の溶岩使い》が攻撃を続行する。ついに孫のライフが6まで落ち込んだ。

 そして、このタイミングで覚前がライフ3点を支払って《聖なる鋳造所》をサーチする。この場面でそんな代償を支払ってまでキャストするのは...1枚しかない。《神聖の力線》だ。これに対応して孫が《頭蓋割り》を打ち込み、覚前が残り5点。これで、お互いのライブラリーに眠るプレイヤーへの火力呪文はついに行き場を失ってしまった。

 ここから果てしなく長い我慢比べが始まり、いつ終わるのかも分からないドローゴーが続く。お互いのライフは5と6、残りわずかだ。あと少し、だがその少しが果てしなく遠い。お互いに除去となる火力呪文を、山ほど手札に抱えているのだ。

 数度にわたるクリーチャーとスペルとの交換を間にはさみ、ふたりはひたすらにセットランドとディスカードを繰り返していく。いつしか孫の戦場には4枚の《神聖の力線》が並んでいる。バーン合戦とは思えないほど両者のライブラリーは少ない。いつ、どうやって決着がつくのか、まさかライブラリーアウトによる決着になるのか、ギャラリーが固唾を飲んでふたりを見つめている。

 覚前のターンにお互いライブラリーの枚数を数えると、お互い同数であることが判明する。と、なると先にカードが引けなくなるのは孫だ。虎の子のフェッチランドを切ってライブラリーを圧縮し、何か策はないかと必死になって探し求める。


孫 博

 そしてもはや何度目か、《ゴブリンの先達》が覚前を攻める。インスタントを温存して、1度攻撃を受けた覚前のライフはたった残り1だ。

 そして、ついに孫がライブラリー最後の1枚を迎える。一縷の望みをかけて《地獄火花の精霊》が覚前へと向かう。ここでこのゲームで幾度となくかわされたやりとりが行われる。《地獄火花の精霊》に対し、覚前が《灼熱の血》、対応して孫の《ボロスの魔除け》。だが、勝負を決めたのは覚前がライフを1にしてまで温存しておいた最後のインスタント呪文、《欠片の飛来》だった。このインスタントが《地獄火花の精霊》ごと孫の望みを吹き飛ばしたのだった。

孫 0-2 覚前
覚前 輝也が準決勝進出!

 試合後、覚前は笑顔で語ってくれた。「通常であれば《戦場の鍛冶場》を対象にとるであろう《溶鉄の雨》を《乾燥台地》に打たれた時に、相手の勝ち筋はライブラリーアウトだけなんだと気づきました。だから、土地を探さなかったんです。」

 ダメージとライブラリーを冷静に計算した熱い男が、準決勝へと歩みを進める。

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