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グランプリ・神戸2014

観戦記事

第6回戦:千葉 晶生(北海道) vs. 吉原 知基(大阪)

By 矢吹 哲也

 フィーチャー・マッチ・エリアには4つのテーブルが用意され、そこでは有名プレイヤーをはじめとする強者たちが通常とは違った環境で試合に臨むことになる。どの卓にもギャラリーの注目が集まるフィーチャー・マッチだが、中でもとりわけ注目すべきはここ「King of the Hill」のテーブルだろう。グランプリ・名古屋2014での記事にその概要がまとめられているが、このテーブルにつくのは、現「King」とそのラウンドでの対戦相手という全勝者同士。そこで勝ち続ければ、フィーチャー・エリアに呼ばれ続ける。そう、王座に腰を降ろすために必要なことはシンプルだ――「勝つこと」ただひとつのみ。

 しかし、それが容易なことでないのは言うまでもないだろう。プロツアー『マジック2015』でも「King」は次々と入れ替わっていた。しかし、現時点での「King」千葉 晶生は、ここまで2度の防衛に成功している。このまま王座を守り続ければ、おのずと今大会トップ8入賞への道が開けることだろう。

 その座を奪うべくフィーチャー・マッチ・エリアに現れたのは、大阪の吉原 知基。レガシーを主戦場にする彼だが、モダンで行われている今大会でもここまで着実に勝ち進んできた。もうひとつここで勝ちを重ねて、頂点へと繋がる「King of the Hill」の道を歩むことができるだろうか。


左:「King」千葉 晶生(北海道)  右:吉原 知基(大阪)

それぞれのデッキ

 対戦相手の吉原に「最初どんなデッキかわからなかった」と言わしめた千葉のデッキは、「青黒緑フラッシュ」とでも呼ぶべきものだろうか。2012年に行われたマジック・プレイヤー選手権で八十岡 翔太が用い、予選ラウンド11勝1敗から大会準優勝と圧巻のパフォーマンスを見せた「青赤緑コントロール(Eternal Commandなどとも呼ばれる)」をリスペクトしたコントロール・デッキだ。《謎めいた命令》などの強力なスペルを、《霊気の薬瓶》から《瞬唱の魔道士》や《永遠の証人》を繰り出して使い回すのがコンセプトとなっている。環境に合わせて《突然の衰微》を採用するため、赤ではなく黒を選択したと語る千葉は、仮想敵として黒緑系と双子に狙いを定めたという。

 一方の吉原もまた、白青赤のコントロール系デッキだ。元々コントロールが好きだと語る彼は、プロツアー『神々の軍勢』優勝デッキのリストを元に調整を進め、現在の《刃の接合者》を採用したミッドレンジ寄りのものに落ち着いたという。

 両者とも、現在のモダンのメタゲームを見据えて調整を重ねたデッキを手にこの場にいる。コントロール同士の息の詰まる攻防戦を掴むのはどちらのプレイヤーか。

試合展開

 快調なスタートを切ったのは「King」千葉。1ターン目《霊気の薬瓶》から2ターン目《血清の幻視》で、戦いの準備を始める。続く3ターン目には《瞬唱の魔道士》で《血清の幻視》を「フラッシュバック」し、さらに手札を整えていく。《瞬唱の魔道士》には吉原の《稲妻》が当てられた。

 さらなる《血清の幻視》を駆使し土地を並べ続ける千葉。対する吉原も土地を着実に伸ばしていく。

 吉原の《刃の接合者》には《差し戻し》。千葉の《漁る軟泥》には《稲妻》。両者主導権を譲らない。千葉は《忍び寄るタール坑》と《漁る軟泥》で攻めの姿勢を見せるが、吉原の《稲妻》と《流刑への道》がそれを阻んだ。

環境屈指の除去が千葉の攻撃を許さない。

 除去により千葉の攻めを抑えた吉原が、ついに攻勢に出た。ゴーレム・トークンを引き連れた《刃の接合者》2体に《天界の列柱》を加え、一挙に攻撃。千葉は《突然の衰微》でゴーレム・トークンを1体処理したものの、守り切れない。続くドローにも突破口は見えず、吉原の再度の攻撃を確認すると千葉は投了の意思を見せた。


吉原 知基

 2ゲーム目は吉原がマリガンを選択し、その後の手札にも苦しい表情。ダブルマリガンでのスタートになった。

 そのアドバンテージを活かすべく、千葉は2ターン目《瞬唱の魔道士》から《漁る軟泥》と続け、早い段階で攻勢に出る。《流刑への道》で《漁る軟泥》を処理した吉原だが、《瞬唱の魔道士》と《忍び寄るタール坑》が打ち消し呪文と除去呪文の後押しを受けてダメージを与え続けた。

 それでもなんとかマナを揃えた吉原は、《差し戻し》を受けながらも《刃の接合者》を戦場へ。しかし続くターン、千葉の手から《ザルファーの魔道士、テフェリー》が繰り出されると、吉原は《忍び寄るタール坑》に対処するすべを失い、残るライフを保つことはできなかった。


千葉 晶生

 第3ゲーム、再び《血清の幻視》を連打し手札を整える千葉。対する吉原も土地をしっかりと伸ばし、コントロール同士の戦いに備えた。

 《瞬唱の魔道士》に《呪文嵌め》、《刃の接合者》に《突然の衰微》と、再び両者とも脅威を出しては除去を受ける展開が続くと、やがて天秤は吉原側に傾き始めた。

 しかし千葉も《永遠の証人》から《漁る軟泥》と「King」の意地を見せる。戦いは試合時間を超え、追加の5ターンに突入。

 厳しい盤面に頭を悩ませる千葉。再三の《流刑への道》を受け、防御が切り崩されていく。渾身の《ザルファーの魔道士、テフェリー》も《マナ漏出》に打ち消されると、吉原による最後の攻撃が千葉に投了を迫ったのだった。追加5ターンのうち4ターン目での決着だった。

千葉 1-2 吉原

 試合が決着するなり、大きく息を吐いた両者。どちらからともなく「疲れた」と声が漏れる。

「スペルの差が出ましたね。消耗戦でアドバンテージを取れるカードが引けなかった」と、千葉は試合の感想を述べる。

 こうして、「King of the Hill」の座は吉原へ明け渡された。頂点への道はまだ長く、険しい。

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