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グランプリ・香港2017
瀧村 和幸の決勝ドラフトピック ~掟破りのダブル聖域探究者~
By Atsushi Ito
瀧村「ここから。ここからだから」
決勝ラウンド進出が決まったとき、瀧村 和幸は自分に言い聞かせるように言っていた。
ゴールドレベル・プロである瀧村にとって、トップ8に入ったというだけで得られるものはそう多くはない。
だがそれ以上に、むしろ最後まで勝ちきってこそ本当の勝利なのだという、プロツアーのトロフィーを掲げたことがある者ならではの重みがある言葉だ。
そんな瀧村が決勝ドラフトの席に着くと、同じくトップ8に残った日本人プレイヤー、佐藤 レイの下家。
佐藤 レイ |
今回、瀧村は佐藤と香港での行動をともにしており、しかもリミテッド巧者同士で通じ合う部分があったのか、「スタバでドラフト談義までした」というのである。
そして決勝ドラフトで隣同士に座ったということは、組み合わせの関係上決勝戦まで対戦することはない。
どちらともなく発した「決勝で会おう」という言葉にもう一方が応じ、最後のドラフトが始まる。
1パック目
1-1: 《聖域探究者》
他の候補:《崇高な阻止》《帆凧の掠め盗り》《水罠織り》《吸血鬼の士気》
その瀧村の初手は、最高と言っていいものだった。
《聖域探究者》は吸血鬼はもちろん、ありとあらゆる黒いデッキにフィットする文句なしの爆弾レアだ。
もちろん迷いなくピックした瀧村、順調なスタートを切る。
1-2: 《選定された助祭》
他の候補:《轟く声、ティシャーナ》《ティシャーナの道探し》《クメーナの語り部》
流れてきた《轟く声、ティシャーナ》に一瞬目を瞠った瀧村だが、脇の緑も濃いことを見て黒を絞る方針を選択する。
ここからうまく白黒吸血鬼に行ければ最高形だが、そうでなくても先ほどの記事に出てきたように「ストーリー」を与えないことで黒の卓人数を減らし、黒軸の他のアーキタイプにスライドしやすくなると見込まれるので、悪くない選択と言えるだろう。
1-3: 《崇高な阻止》
他の候補:《薄暮軍団の弩級艦》《群棲する猛竜》《凶兆艦隊の貯め込み屋》《軍団の征服者》
ここは単純なカードパワーで除去をピック。自然に白黒2色をつまめている。
1-4: 《卑怯な行為》
他の候補:《巨大な戦慄大口》《危険な航海》《プテロドンの騎士》
黒のトップコモンとされているコンバットトリック。複数体の能力なしクリーチャーによる戦闘が起こりやすい『イクサラン』環境では、1対2交換の可能性も生まれてくる。
1-5: 《不動のアルマサウルス》
他の候補:《征服者のガレオン船》《襲撃》《川守りの恩恵》《身勝手な粗暴者》
ここで少し流れに翳りが出てくる。白のコモンが流れていないのだ。
だが、自分が苦しいなら下家で白をやっているプレイヤーはもっと苦しいはず。そう思ってか、瀧村は白をさらに主張する。
1-6: 《決別の砲撃》
1-7: 《小綺麗なスクーナー船》
他の候補:《座礁》
だが、ついに白と黒のカードが消えた。
1-8: 《もぎ取り刃》
1-9: 《嵐を変容する者》
1-10: 《手付かずの領土》
1-11: 《薄暮軍団の弩級艦》
1-12: 《潜水》
1-13: 《キンジャーリの呼び手》
1-14: 《金色の歩哨》
1パック目は将来のリターンを期待してかなり強引な主張を行ったという印象ではあったが、ドラフトにおける1パック目は色の椅子取りゲームであり、その観点からすると強力なカラーリングを占有するための準備期間ともとれる。
もとより白黒は『イクサラン』ドラフトにおける断トツの最強アーキタイプなのであり、他の色を流れやすくすることによって「レアが入った白黒」という最終的な実利を得られるのであれば、多少の我慢は仕方ないということなのだろう。
2パック目
2-1: 《アダントの先兵》
そしてパックはそんな瀧村に応えた。《アダントの先兵》は環境でも最強クラスの2マナ域であり、攻撃的な白黒が組みたいところに降ってきた天恵とも言うべき1枚だ。
2-2: 《崇高な阻止》
2-3: 《司教の兵士》
2-4: 《指名手配の獄道者》
1パック目の我慢が功を奏し、白と黒の流れはかなり良い。
さらに極めつけに......
2-5: 《聖域探究者》
なんと2枚目の《聖域探究者》をゲット!
リミテッドにおいて同じレアを2枚持っていれば掟破りと呼ばれても仕方がない。ましてそれが《聖域探究者》ならなおさらだろう。
2-6: 《鉤爪の切りつけ》
2-7: 《吠えるイージサウルス》
2-8: 《卑怯な行為》
2-9: 《無情な略奪》
2-10: 《女王湾の兵士》
2-11: 《啓蒙》
2-12: 《軍団の征服者》
2-13: 《高くつく略奪》
2-14: 《岸の守り手》
その後も8手目の《卑怯な行為》や一周した《女王湾の兵士》など、実りある2パック目となった。
3パック目
3-1: 《イクサランの束縛》
4マナ域は飽和しているが、このクラスの万能除去なら許容できる。
3-2: 《軍団の上陸》
さらに上家の佐藤からのプレゼントが到着。3枚目のレアで瀧村のデッキはさらに輝いていく。
3-3: 《軍団の征服者》
3-4: 《隠れ潜むチュパカブラ》
3-5: 《女王の工作員》
3-6: 《深海艦隊の殺し屋》
3-7: 《立ち枯れの守り手》
3-8: 《深海艦隊の殺し屋》
3-9: 《略奪者の痕跡》
3-10: 《選定された助祭》
3-11: 《強迫》
3-12: 《キンジャーリの呼び手》
3-13: 《キンジャーリの呼び手》
3-14: 《太陽冠のハンター》
だが、それが最後の見どころだった。
白と黒の優秀なカードは姿を消し、枚数合わせのようなカード群がひたすら瀧村の前を通り過ぎるだけの時間が続くと、やがてすべてのピックが終了したのだった。
瀧村「苦しくはなかったし、うまくピックできたと思うんですけどね」
実際瀧村のデッキは悪くはない、むしろ強力と呼べる出来に仕上がっている。
だが2つ上のプレイヤーが白黒をやっており、そのせいで3パック目はろくなカードが拾えなかった結果、特にクリーチャーが足りずに、23枚の中にいくつか微妙なカードが入ることとなってしまった。
しかも準々決勝の相手は地元香港が誇るプラチナレベルプロ、リー・シー・ティエン。
それでも、ここで負けるわけにはいかない。盟友・佐藤と決勝で対戦するため、そして最後まで勝ちきるために。瀧村は、準々決勝に臨む。
9 《沼》 8 《平地》 -土地(17)- 1 《立ち枯れの守り手》 1 《アダントの先兵》 1 《司教の兵士》 1 《女王湾の兵士》 1 《指名手配の獄道者》 2 《軍団の征服者》 2 《聖域探究者》 1 《不動のアルマサウルス》 2 《選定された助祭》 1 《女王の工作員》 -クリーチャー(13)- |
2 《卑怯な行為》 1 《軍団の上陸》 1 《鉤爪の切りつけ》 1 《無情な略奪》 2 《崇高な阻止》 1 《イクサランの束縛》 1 《小綺麗なスクーナー船》 1 《薄暮軍団の弩級艦》 -呪文(10)- |
1 《手付かずの領土》 3 《キンジャーリの呼び手》 1 《啓蒙》 1 《潜水》 1 《強迫》 1 《もぎ取り刃》 1 《岸の守り手》 1 《高くつく略奪》 2 《深海艦隊の殺し屋》 1 《金色の歩哨》 1 《隠れ潜むチュパカブラ》 1 《略奪者の痕跡》 1 《嵐を変容する者》 1 《決別の砲撃》 1 《吠えるイージサウルス》 1 《太陽冠のハンター》 -サイドボード(19)- |
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