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グランプリ・北京2017

トピック

インタビュー:瀧村 和幸 ―プロツアーに向けて。そして、ドラフトの練習とは―

By Kazuki Watanabe

 プロツアー『アモンケット』まで、あと1週間。

 いや、実際には1週間も猶予はない。プロツアー『アモンケット』はアメリカ、ナッシュビルという日本から遠く離れた地で開催され、金曜日から始まる。そのため、大抵のプレイヤーは木曜日に日本を発つであろう。月曜日に北京から帰国すると考えれば、火曜日と水曜日の2日しか、彼らに残された時間はない。プロプレイヤーたちが次なる戦いへと旅立つまでの時間は、限られている。

 限られた時間という意味では、新セット発売からプロツアーまでの時間がそもそも短い。『アモンケット』発売からわずか2週間で、プロプレイヤーは構築、そしてドラフトの研鑽を積み、自身の地位と名誉のための戦いに赴かねばならないのだ。

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 今回インタビューを申し込んだ、BIG MAGIC所属プロの瀧村 和幸選手に明日以降のスケジュールを尋ねてみると、

「月曜日に帰国、火曜日と水曜日は出社して、木曜日にナッシュビルへ出発ですね」

 と想定どおりの慌ただしい予定が返ってきた。

 この、何もかもが限られた時間の中で、瀧村はどのように研鑽を積みながら過ごしたのだろうか。早速、伺ってみよう。

瀧村 和幸選手にインタビュー ―ドラフトは40回前後―

――プロツアー『アモンケット』に向けた動きについてお聞きしたいのですが、具体的に動き出したのはいつ頃からですか?

「私の場合、他のプロプレイヤーよりも少し遅めだと思います。プレリリースに参加したところからスタートですね。」

――なるほど。最初に『アモンケット』に触れたときの印象はいかがでしたか?

「目新しさよりも、どこかで見たことのあるカード、といった印象がありましたね。督励、不朽といった能力も、スタンダードには大きな変化を与えるほどではないだろうな、と思ったので、焦らずに動き出そうと思いました。特に、今回からMagic Onlineの導入が早くなったので、それが始まってからで良いかな、と。」

――そうだったんですね。では、今回のグランプリ・北京2017のフォーマットでもあるリミテッドについてはいかがですか?

かなり回数を重ねました。Magic Onlinとリアルを含めたら40回前後はこなしたと思います。」

――その回数は過去のセットと振り返ってみると多い方なのですか?

「今回は比較的多めですね。Magic Onlineのリリースが早まったことで可能になりました。ひたすらドラフトをやっていたようなイメージですね」

ドラフトは、引き出しの多さが勝負

――これまでの時間の振り分け方についてお聞きしたいのですが、「構築、ドラフト、シールド」の3つの中で、最も時間を割いたのがドラフトですか?

「そうですね。私はとにかくドラフトが大好きなので、とにかくやっています。好きな理由は、単純に面白いというのもあるのですが、構築に比べて、ドラフトは差をつけやすいと思っているんです。構築、特に最近のスタンダードは、強いカードを強くまとめることで、ある程度勝つことができます。そうなると、周囲を出し抜くことがとにかく難しいんです。そういった意味では、ドラフトに力を注いだほうがプロツアーの総合的な成績が良くなるのでは、と考えています。」

――現在はあっという間にデッキリストが拡散されていきますし、構築で出し抜くのはかなり難しい印象がありますね。

「情報の伝達が、とにかく速いですよね。昨日の画期的なリストが、翌日には当たり前になっているような速度ですから。それに対して、ドラフトは経験則が活きてきますし、やればやるだけ強くなれると思います。」

――なるほど。もう少しドラフトの練習についてお聞きしたいのですが、練習を重ねることで「環境の基本」を理解することがやはり重要なのですか?

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「そういう意味もありますね。ドラフトは、引き出しの多さが勝負なんです。例えば、自分があまりやらない色の爆弾レアを引いたとき、当然それをピックしなければいけません。ですが、その色に慣れていないとその後のピックが覚束なくなるんですよ。完成形がイメージできなくなるので。」

――「この色ならば、こういうデッキを作るから、あのカードをピックしよう」といった感じですか。

「そのとおりですね。そういったことを、回数を重ねてなくしていく中で覚えていき、覚束ない色の組み合わせをなくしていくことが理想です。

――ドラフトの練習は、そうやってレパートリーを増やしていくことなのですね。

「ピックに限らず、戦闘をはじめとする実際のゲーム内での腕前を磨くことも必要ですが、ある程度の構築を把握できているかどうかで、ゲーム内のプランも変わってきますからね。引き出しを増やすことは、まだまだ挑戦しなければならない、と私自身も強く思います」

――瀧村さんにも、まだまだ足りない引き出しがあるのですか?

「もちろんありますよ。例えば、私は愚直なビートダウンが嫌いで、コントロールやギミックが仕込んであるデッキが好きなんです。自然と、そういうデッキになるんですよね。そういった意味では、ビートダウンの引き出しが少ないので開拓していくべき箇所ですね。」

――なるほど......瀧村さんにも嫌いなアーキタイプってあるのですね。

「そもそも、ビートダウンは好きな人が多くてできない、というのもあるんですよね。卓に2~3人座ってしまうとビートダウンのパーツが軒並み枯れていって......。」

――結果、瀧村さんが好きなカードが流れてくる、と。

「そうですね。ドラフトの魅力は、その都度、違ったストーリーを楽しめることです。そういう意味では、ビートダウンのストーリーを楽しんでみたい気持ちも、もちろんあるんですよ」

必要な情報は出揃っている

――では、グランプリ・北京2017も最終日を迎え、ここからの瀧村さんの計画についてお聞きしたいと思います。プロツアーに向けて、次はスタンダードに注力する段階ですか?

「そうですね。ここからはスタンダードです。とにかく調べようと思っています。勝っているデッキリストを調べて、環境の全体像を把握しながら、自分の使用する決めていこうと思います。この環境は、『マルドゥ機体』と『霊気池』の2つ、そして少し下がって『黒緑』、といった構図だと思うので、それらをしっかりと見比べて、特に前者の2つは強く意識していこうと思います。」

――なるほど。トッププロの視点から、環境を調べ尽くすわけですね。

「必要な情報はほぼ出揃っていますし、今週末もそこまで大きな動きはないと思います。1つくらい、新たなアーキタイプが出てくる可能性はあると思いますが。」

――スタンダードもMagic Onlineのリリースがが早くなった影響を受けると思いますか?

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「少なからずあるとは思いますが、リリースが早くなったとは言っても、全プレイヤーの環境理解が早まったとは思っていないんです。もちろん、トッププレイヤーの理解度は早まっていると思いますけど、Magic Onlineと実際のデッキ分布は、大きく異なりますからね。Magic Onlineでは敗れたときのリスクが少ないこと、それから『これがベストだから!』という理由ではなく、『資産がないからこれを使う』といったプレイヤーも多いと思うんです。カジュアルに楽しめる、という意味では良い環境だとは思うのですが、実際の環境とは異なるという印象を持つべきかな、と。」

藤田 剛史さんの、熱い言葉

――なるほど。そういった意味では、実際に情報交換をするプレイヤーの存在が重要になりそうですね。

「そうですね。最近はローリーさん(藤田 剛史選手)からは色々な情報を貰っています。新たな発見も」

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――同じBIG MAGIC所属の藤田さんですか。

「ローリーさんは、エネルギーがとにかく凄いんですよ。情報収集と共有への熱意も凄くて、今期のチームシリーズでも同じLast Samuraiとして活動しているのですが、『チームシリーズのことよりも、まず、君はゴールドレベルを確定させて、来期も一緒に頑張ろう!』という言葉をもらっているんですよ」

――おお......ものすごく熱い言葉ですね!

「そうですね。本当にありがたいです。なので、ゴールドレベルを確定させて、プロツアー『アモンケット』でも良い成績を残したいですね」

――では、最後に改めて、プロツアーに向けた決意をお聞かせください。

「まずはX-5(11勝5敗、またはそれ以上)を目指して、次のプロツアーに繋げていきたいと思います。プロポイント10点を取れば、プラチナ・レベルも見えてくる位置なので、頑張りたいですね。それから、プロツアーという場で、自身の平均値以上の実力、成績を出すことも目標です。もちろん上を目指すわけですが、崩れないこともプロとしては大事かな、と思っていますので。」

――ありがとうございました。ぜひ、頑張ってください!


 力強く決意を述べてくれた瀧村選手。限られた時間の中で、最大の効果を出すために、このグランプリ・北京2017の経験を胸に、プロツアー『アモンケット』でも活躍してくれるに違いない。来週の今頃には、その結果が我々のもとに届いているはずだ。


おまけ?

――お話を伺っていると、この『アモンケット』のドラフトにはかなりの自信があるようですね。

「そうですね。かなり回数も重ねましたし、自分なりの答えというか思考はしっかりと確立できていると思います。」

――なるほど。プロツアー直前ということで、ドラフトの極意やテクニック、環境理解については秘密の部分も多いかと思うのですが、一言でこの環境の鍵を表すとすれば、どのようなものになりますか?

「そうですね......」

 そう言って一呼吸置いたあと、瀧村選手ははっきりとした口調で、この環境の鍵を披露してくれた。発せられた言葉の響きも相俟って、夏休みの少年のように明るく、自信に満ちた表情で。

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「カブトムシです。」

――!?

 プロツアー『アモンケット』での瀧村選手の活躍に期待しよう!

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