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グランプリ・北京2017
海外グランプリに参加しよう! ―世界を旅する齋藤 友晴からのアドバイス―
By Kazuki Watanabe
マジックは世界中でプレイされている。大会で海外のプレイヤーと対戦することは日常茶飯事であるし、日本を離れ、海外グランプリに参加するプレイヤーも多数存在する。今回のグランプリ・北京2017には102名の日本人プレイヤーが参加している。
現地スタッフが作成したカバレージをリアルタイムでお届けできることからも分かるように、科学技術の発展は目覚ましい。とは言え、どれだけ技術が発展しても、異国の地へと足を運ぶためには相応の時間と疲労に襲われてしまう。
日本から中国・北京までは、おおよそ3時間前後の空の旅を経験する必要がある。まだまだ短い部類だが、旅慣れしていない人間にとってはこの数時間でも疲れが溜まってしまうだろう。海外遠征ならば、その疲労と付き合いながら、長い長いグランプリ本戦を戦わねばならない。
世界を飛び回り戦いを繰り広げるトッププレイヤーは、どのような工夫をしているのだろう?
今回は「飛行機の中での過ごし方」、「海外滞在時のアドバイス」などを、長年世界を舞台に戦いを繰り広げる、齋藤 友晴選手に聞いてみよう。
――昨シーズン、齋藤選手は世界中のグランプリに参加されていましたよね。今シーズンは比較的控え目、という印象を受けるのですが、生活はやはり変わりましたか?
「睡眠時間のムラが少なくなって健康になった、と言いたいところなのですが、昨シーズンも特に体調は崩さなかったんですよ。」
――あれだけ世界を飛び回っていたのに、それは凄いですね......何か秘策のようなものがあったのですか?
「旅慣れする中で培った経験と知識はもちろんありました。ただ、それ以上に『体調を崩すわけにはいかない!』という意識も強かったんです。世界を飛び回って、マジックに熱中し、仕事もするという活力が何よりも支えだったのかな、と思います。今でも大きく体調を崩すことがないのは、その活力のお陰かもしれません。」
機内での過ごし方 -ストレスなく過ごすために-
――なるほど、ありがとうございます。今回は先ほど仰っていた『旅慣れする中で培った経験と知識』についてお伺いしたいと思います。海外遠征と言えば飛行機での長時間移動が付きものですが、齋藤選手が気をつけていることはありますか?
「飛行機に乗るときは、とにかく楽なズボンにすることをおすすめします。ゆったりとしたものにすると疲れ方が違いますからね。空港って色々な人とすれ違いますよね? 何度も利用していると分かるのですが、旅慣れしている人は柔らかいズボンを履いていることが多いと思います。自宅のようにリラックスできることが理想ですね。」
――たしかに足が締め付けられると、想像以上のストレスがありますよね。
「そうなんですよ。それと同じくらいストレスになりがちなのが、室温です。基本的に冷房が強いことの方が多いので、上着、カーディガン、薄手のパーカーなど、一枚羽織れるものがあると良いですよ。それから、座席の上の部分でエアコンの調整ができることを知らない人も多いので、覚えておくと良いと思います。あと、飛行機では『手荷物は前の座席の下に』ってアナウンスされますよね?」
――搭乗した後に、アナウンスされますね。
「前の人の座席の下って、自分が利用できるスペースなんです。なので、そこに足を伸ばしてしまうと良いですね。膝を伸ばせるだけでも、かなり快適度が違いますから」
海外遠征の荷物 -海外遠征小物バッグ-
――なるほど......かなり色々な知識がありますね。次に荷物についてお聞きしたいのですが、工夫していることはありますか?
「今回はこのままプロツアー『アモンケット』の会場であるアメリカまで向かうので、少し大きめです。大小のキャリーケースを1つずつ用意しました。大型には衣類、スリーブ、練習用のブースターボックス、それから海外遠征小物バッグを入れてあります」
――海外遠征小物バッグ......少しひみつ道具のような響きですが、どのようなものが入っているんですか?
「ちょっと書き出してみますね。えーと、絆創膏、それから爪切り......こんなものが詰まってます」
齋藤式、海外遠征小物バッグリスト
- 絆創膏
- 折り畳み傘
- 葛根湯
- 爪切り
- 歯ブラシセット
- 眉抜きピンセット
- 綿棒
- ヘアワックス
- ダイス(忘れたとき用)
- メモ(忘れたとき用)
- ひげ剃り
- 栓抜き
――爪切り、綿棒、ピンセット。忘れたとき用にダイスとメモ......いろいろなものが入っていますね。
「あると便利なんだけど、現地で手に入れるのは難しいというものが多いですね。普段使っているものを遠征の度に詰め直すと忘れがちなので、旅行用カバンに常に準備して入れておくようにしています。個人的におすすめなのが、栓抜きですね。海外だと瓶の飲み物しか手に入らないことも多くて、何度かテコの原理で乗り切ろうと思ったことがあるのですが、怪我の元なので......」
――その辺りも、経験に基づく用意ですね。小型のキャリーケースには何が入っているんですか?
「小型の方は、飛行機内に持ち込める最大サイズで、スタンダードのカードを詰め込んであります。この大きさだと、大型のストレージがぴったりと入るんですよ。プロツアーに向けて必要なものなので、預けて紛失したら大変なので機内持ち込みにしています。でも、小さいカバンにずっしりとカードが詰まっていて重さもすごいので、赤外線で中を見た職員の人に『何が入ってるんですか?』と聞かれることもありますよ」
――たしかに、空港職員の方も、滅多に見ないでしょうね。マジックプレイヤーの荷物って。
ホテルの過ごし方 ―自宅のように過ごす―
「あとは、ホテルの過ごし方でしょうか。以前、松岡 修造さんも言っていたのですが『ホテルでは、自宅のように過ごすこと』がおすすめです。旅行カバンを床に広げたままにして、そこから都度荷物を出し入れする人って多いと思うんですよ。マジックプレイヤー男子の8割がそうだと思いますけど。」
――まさに私がそうですね......キャリーケースを床に開いて、そこから衣類とか荷物を出しています。
「クローゼット、引き出しなどがあるならば、ガンガン使うべきです。荷物はなるべく全部出して、旅行カバンも奥にしまっておく。そして、室内を広く使って、快適に過ごすと良いですよ。ごちゃごちゃしてると休みづらいですし、デッキを作ったり、練習したりするときに集中できないですからね。」
――ホテルに戻ったら早速やってみます!
海外遠征に行ってみよう ―マジックは、世界で楽しまれている―
――では最後に。世界で戦い、旅にも慣れている齋藤選手から、「海外グランプリに行ってみたい」「世界でマジックをプレイしてみたい」と思っているプレイヤーにメッセージをお願いします。
「昔から世界を回っていると気付くのですが、年々、世界との繋がりが強くなってきています。日本にいても世界の料理が食べられますし、世界の色、文化が流入してますよね。同じように、世界にも日本の色があって、日本と同じような部分もあるんです。中国に来たからといって、中国のものしかないわけではありませんよね?」
――そうですね。日本食も食べられますし、西洋のものに触れる機会も多いです
「そうやって、世界の色々なものが、世界各地で混ざり合っているんですよ。なので、『海外』という壁を作ってしまうほどではないんですよね。言語の壁はもちろんありますけど、ガイドブックを指差すだけでも伝わりますし、今ならスマホで翻訳することもできますから。」
――なるほど。「海外だから怖い」という壁を自分で勝手に作ってしまっている部分があるのかもしれません。
「行ってみたら分かると思うのですが、意外とハードルは高くないと思います。一人だとちょっと......という人は、友人を誘って行くのが良いと思いますし、近場のアジア圏でも英語が使える場所も多いので、その辺りから始めるのが、最初は良いかもしれませんね。それから、マジックのグランプリが開かれる場所って、その国の中でも比較的安全な場所が多いので、そこまで怖がる必要はないのかな、という気がしますね。主催者側もそういう場所を選んでいますから。」
――マジックをプレイするという目的があれば、そのハードルはさらに低くなる、ということですね。
「そうですね。マジックは、世界で楽しまれているゲームですから、言語の壁があってもカードの能力は一緒です。簡単な単語のやり取りでグランプリのゲームも進行していきますし、そういった『普段とは少し違った環境』の中で楽しむことができるのも、マジックの大きな魅力ですから」
長年世界を飛び回って活躍を続ける、齋藤 友晴選手。その経験を活かしたアドバイスを語りながら、インタビューが終わった後も、「そういえば、昔北京でこんなことがあって......」と笑顔で思い出話を続ける姿を見ていると、「カバレージの仕事を離れてプレイヤーとして海外グランプリに参加するのも楽しそうだな」と、一人のマジックプレイヤーとして思ってしまった。
このインタビューを読み「海外グランプリに行ってみたい」と思った方が一人でも増えたならば、これ以上の喜びはない。
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