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グランプリ・北京2017
行弘 賢が教える、『アモンケット』シールドデッキ実践編
By Kazuki Watanabe
グランプリ・北京2017のフォーマットは、リミテッド。初日の9回戦は、シールドデッキ(以下「シールド」)で行われる。
発売から1週間、プロツアー『アモンケット』を目前に控えた現在。北京まで足を運んだトッププレイヤーは、限られた時間を「ドラフト、構築、そしてこのシールド」に割いている。
わずかな時間しか許されない中では、『アモンケット』のシールドに対する理解力とともに、マジックの基礎力が重要となってくる。この環境の特色のみを読み切っても、勝利は掴みづらい。最後の一歩を踏み出すために重要なのは、やはりしっかりとした足場、基礎力なのだ。
今回、インタビューをお願いしたのは、Dig.cards所属プロプレイヤー、行弘 賢。行弘賢のよくわかる!リミテッド講座を連載しており、第19回では早速『アモンケット』のドラフトを解説している。日本を代表するリミテッド巧者だ。
その行弘が初日のデッキ構築を終えたところで、「この環境のシールドについてお聞きしたい」と声を掛けたところ、いつもの爽やかな笑顔で「良いですよ!」と一言。プロツアー『アモンケット』直前ということで、「そこまで練習できていない」と語る行弘だが、そのシールド構築を見ながらこの環境のシールドについて学んでいこう!
まず筆者が「行弘さんの考える『アモンケット』のシールドで重要なポイントを教えていただけますか?」と問うたところ、次のような答えが返ってきた。
「簡単に言ってしまえば、クリーチャーが重要ですね。攻めるクリーチャーの質が良ければ、守る側も質が良くないとゲームにならないことが多いです。強いクリーチャーを使える色を選んで、勝負するのが良いですね。色を決めるのに迷うことも多いので、その辺りは制限時間内でしっかりと決断していくことが大事です」
その上で、シールド構築の制限時間30分の使い方を聞いてみると、
「最初の15分くらいで、2パターンに絞ります。そして、次の10分でどちらが最適かを検討して、残り時間で細部を詰める感じです。」
とのことだ。
さて、突然だが、ここから実践編だ。以下に、行弘が手にしたプールを掲載する。15分間リストを眺め、どの色を使用するかを決定してみてほしい。時間が許す方は、ぜひ実際の構築(土地は何枚か? サイドボードプランは?)まで考えてみよう。
{W} | {U} | {B} |
1 《扇持ち》 2 《束縛のミイラ》 1 《信念の決闘者》 2 《レト一門の槍の達人》 1 《献身的な門友》 1 《断固たる修練者》 1 《オケチラの従者》 1 《結束のカルトーシュ》 1 《強制的永眠》 2 《力強い跳躍》 2 《俗物の放棄》 1 《新たな信仰》 1 《選定された行進》 |
2 《周到の書記官》 2 《古代ガニ》 1 《微光鱗のドレイク》 1 《釣りドレイク》 2 《川蛇》 2 《抗えない主張》 1 《知識のカルトーシュ》 1 《突風撃》 1 《ヒエログリフの輝き》 1 《知識の試練》 |
1 《悪運尽きた造反者》 1 《砂丘甲虫》 1 《枯死コウモリ》 1 《呪われたミノタウルス》 2 《冷酷な侍臣》 1 《スカラベの饗宴》 1 《超常的耐久力》 1 《野望のカルトーシュ》 1 《信者の確信》 1 《華麗な苦悶》 1 《残酷な現実》 |
{R} | {G} | 多色/無色 |
1 《損魂魔道士》 1 《捷刃のケンラ》 1 《ネフ一門の鉄球戦士》 1 《道拓きの修練者》 2 《オナガトカゲ》 1 《心臓貫きのマンティコア》 1 《砂漠セロドン》 1 《焼き尽くす熱情》 1 《マグマのしぶき》 1 《投げ飛ばし》 1 《激情の試練》 1 《結束の限界》 1 《栄光の探究》 |
2 《修練者の相棒》 1 《苦刃の戦士》 1 《ナーガの生気論者》 1 《頭巾の喧嘩屋》 1 《気性の荒いクーズー》 1 《名誉あるハイドラ》 1 《苦しめる一射》 1 《造反者の解放》 1 《花粉のもや》 1 《ロナスの施し》 1 《活力のカルトーシュ》 1 《蜘蛛の掌握》 1 《活力の試練》 |
1 《むら気な召使い》 1 《ケンラの戦車乗り》 1 《アン一門の勇者》 1 《無慈悲な投槍手》 1 《潰滅甲虫》 1 《研ぎ澄まされたコペシュ》 1 《ロナスの碑》 1 《隠れた茂み》 1 《進化する未開地》 3 《陽焼けした砂漠》 |
さて、色、構築は決定しただろうか? それでは次に、行弘が実際に使用したリストを掲載しよう。自分の構築と、見比べてほしい。
6 《森》 6 《山》 3 《沼》 1 《隠れた茂み》 1 《進化する未開地》 -土地(17)- 2 《修練者の相棒》 1 《苦刃の戦士》 1 《ナーガの生気論者》 1 《ネフ一門の鉄球戦士》 2 《オナガトカゲ》 1 《頭巾の喧嘩屋》 1 《ケンラの戦車乗り》 1 《心臓貫きのマンティコア》 1 《無慈悲な投槍手》 1 《潰滅甲虫》 1 《砂漠セロドン》 1 《名誉あるハイドラ》 -クリーチャー(14)- |
1 《マグマのしぶき》 1 《投げ飛ばし》 1 《野望のカルトーシュ》 1 《活力のカルトーシュ》 1 《ロナスの碑》 1 《蜘蛛の掌握》 1 《活力の試練》 1 《激情の試練》 1 《結束の限界》 -呪文(9)- |
行弘が選んだのは、赤緑タッチ黒だ。ここからは行弘本人にこの環境のシールド、そして「迷ったときの考え方」などについて伺っていこう。
――今回は、赤緑タッチ黒を選択されたわけですが、すんなりとこの組み合わせに決まりましたか?
「結構悩みましたね。赤は多分使う、と思ったのですが、緑と黒のどちらにするかが悩ましかったです」
――カードプールを眺めた第一感についてお伺いできますか?
「まず、赤は《心臓貫きのマンティコア》、緑は《名誉あるハイドラ》がいるので、この2色どちらかは使うな、と。考えました。その上で、《心臓貫きのマンティコア》がダブルシンボルなので、まずは赤、という印象でしたね」
――なるほど。その上で緑を選択したのは、やはり《名誉あるハイドラ》を使いたいから、ということですか?
真剣な表情で構築中 |
「先ほど述べたとおり、強いクリーチャーを使える色を使うべき、と考えています。基本的に、クリーチャーが足りなくなることが多いんですよ、この環境って。質もそこまで良くないですし、頭数を揃えようとすると弱いクリーチャーで埋まってしまうことも多いんですよね。結果、色を足して強いクリーチャーを借りることになるのですが、だからこそ緑が人気なのだと思いますね。マナベースをサポートするカードも多いので」
――たしかに、緑のクリーチャーは優秀な印象が強いですね。結果、「不朽」を持つ2枚のクリーチャーを使う構築になったわけですか。
「そうですね。『不朽』を持っているレアは本当に強いです。(擬似的に)墓地から戻ってくることで、1枚で2枚分働いてくれるわけですから、このデッキにはレアのクリーチャーが4枚入っているようなものです」
――そう考えると、強力ですね......クリーチャーの枚数で言うと、この環境は低マナ域が不足する傾向にあるような印象があるのですが、それについてはいかがですか?
「足りなくはなりますね。ただ、それは相手も一緒なので、そこまで気にしなくて良いと思います。今回も2マナ域をもう1枚減らして重いクリーチャーにしたかった、というのが正直なところですね。《修練者の相棒》が4マナ、5マナのクリーチャーだったら、もっと良くまとまったと思います。」
――少し色の選択に戻るのですが、白、青は選択肢に入らなかったのですか?
「一見、青は良さそうに見えるのですが、レアがないんですよ。白も同じくですね。多色のカードもまとまってますし、カルトーシュと試練の組み合わせもこの3色の場合、強力なんですよね」
――『アモンケット』で登場したサイクルですね。
「黒の《野望のカルトーシュ》と緑の《活力のカルトーシュ》は、シンプルに『相手のクリーチャーを除去しながら、自分のクリーチャーを強化できる』という能力なので、使い勝手が良いんです。そして《激情の試練》と《活力の試練》も比較的強力ですよね。上手く組み合わせるので、こういった要素を考慮すると、自然とジャンドカラーでまとめる形になりました。呪文に関しては、ほぼ不満がないですね」
――今回のプールは、かなり好感触のようですね。
「そうですね。プールとしては、中の上だと思います。4マナ以上のクリーチャー5枚のうち、2枚を引くことができれば勝てるかな、という印象です」
――環境全体の話になりますが、行弘さんが考える色の順位はどのようになっていますか?
「緑>赤>黒>白>青、という印象です。黒は今回のように補う色なので、赤か緑に合わせることができれば、と。やはり緑はクリーチャーの質が良く、相手にとってはすべてが除去しなければならない対象になりうるくらいなので、使いたい、と思っていました」
――なるほど。では、今回の赤緑タッチ黒は、理想に近いのかもしれませんね。
「そうですね。ジャンドカラーにできたのは、理想どおりでした」
――少しシールド全般の話になると思うのですが、行弘さんのようにリミテッドに慣れた方でも色の組み合わせを決めるときは悩むわけですよね? 初心者に向けて、「迷ったときはこうするべき!」といった指針のようなものはありますか?
「指針、ですか......そういう意味では私が今回迷ったときに『攻めるようにしよう!』と思ったことが答えかもしれません。『赤黒か、赤緑か』と迷ったのですが、『赤黒は相手のプランに付き合う必要があるけれど、赤緑ならば攻められる』と思ってこちらを選びました。攻めた方が裏目がないことが多いんですよね」
――これは分かりやすい指針かもしれませんね。
「かなり大事な考え方だと思います。攻めたほうがゲームの時間が短くなりますよね。ロングゲームになると、単純にミスも増えますし、裏目を引く蓋然性も高くなってしまいます。引きムラも増えますからね。『初心者にはビートダウン』というのも間違いではないんですよ」
――なるほど! これはかなり大事ですね。
「そして、『アモンケット』は短期決戦を選べる環境なんです。後半でライフを詰められるカード、例えば《投げ飛ばし》のようなカードもありますからね」
『アモンケット』シールド、実践編。いかがだったろうか?
「この環境では、クリーチャーが鍵となる。強いクリーチャーを使用できる色を選び、迷ったときには攻める方向へ。」
数少ない経験の中から、リミテッド巧者である行弘が弾き出した答えは非常にシンプルでありながら、分かりやすい。この記事が、読者諸賢のシールド技術を向上させることを望む。そしてそれは、行弘自身が望むことでもあるはずだ。
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