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グランプリ・北京2017
強豪プレイヤーたちによるサンプルシールドデッキ構築
by Masashi Koyama
「この環境のリミテッドは面白い!」
プレイヤーたちに『アモンケット』リミテッドの感想を尋ねると異口同音に返ってくるのがこの言葉だ。
『アモンケット』発売から1週間が経過し、新セットを手にシールドを楽しんでいる方は多いかと思う。そして、これからプロツアー『イクサラン』プロツアー予備予選などでよりシールドに触れる機会は多くなることだろう。
「面白い」ことは「選択肢が多い」ことでもある。渡されたカードを手に、時には笑い、時には悩み抜きながらデッキを構築し、「どんなデッキ組むべきか?」と友人とより良い答えを見つけ出すのがシールドの醍醐味でもある。
さて、ここで本題に入ろう。我々取材班が「試しに」と開封した『アモンケット』ブースターパック6個。読者諸兄はどのようなシールドデッキを組み上げるだろうか。
{W} | {U} | {B} |
2 《聖なる猫》 1 《扇持ち》 1 《選定の司祭》 1 《信念の決闘者》 1 《断固たる修練者》 1 《ター一門の精鋭》 1 《双陽の熾天使》 2 《力強い跳躍》 1 《強制的永眠》 1 《絶妙なタイミング》 2 《俗物の放棄》 1 《排斥》 1 《黄昏 // 払暁》 |
1 《ヘクマの歩哨》 1 《エイヴンの修練者》 1 《ナーガの神託者》 1 《象形の守り手》 2 《抗えない主張》 2 《本質の散乱》 1 《知識のカルトーシュ》 1 《取り消し》 1 《錯覚の覆い》 1 《知識の試練》 1 《主張》 |
1 《ただれたミイラ》 1 《砂丘甲虫》 1 《枯死コウモリ》 1 《呪われた者の王》 1 《不気味な徘徊者》 1 《遺棄地の恐怖》 1 《超常的耐久力》 1 《野望の試練》 2 《野望のカルトーシュ》 1 《痛ましい教訓》 1 《荷降ろし》 1 《砂の撹拌》 |
{R} | {G} | 多色/無色 |
1 《血に飢えた振起者》 1 《道拓きの修練者》 1 《ミノタウルスの名射手》 1 《燃えさし角のミノタウルス》 1 《戦炎の投槍手》 1 《打擲場のマンティコア》 1 《猛火の斉射》 1 《マグマのしぶき》 2 《苦しめる声》 1 《投げ飛ばし》 1 《栄光の探究》 1 《暴力的な衝撃》 |
2 《頭巾の喧嘩屋》 1 《刻み角》 1 《気性の荒いクーズー》 1 《飛びかかるチーター》 1 《うろつく蛇豹》 1 《不屈の神ロナス》 1 《鱗ビヒモス》 1 《ハパチラの刻印》 1 《弱さからの脱皮》 2 《花粉のもや》 1 《造反者の解放》 2 《活力のカルトーシュ》 1 《ロナスの施し》 1 《楽園の贈り物》 1 《蜘蛛の掌握》 |
1 《ケンラの戦車乗り》 1 《水流織り》 1 《無慈悲な投槍手》 1 《木端 // 微塵》 1 《開拓 // 精神》 1 《ルクサ川の祭殿》 1 《ロナスの碑》 1 《灌漑農地》 1 《色彩の断崖》 2 《呪われた者の揺り籠》 |
一見すると緑以外のクリーチャーが弱く、「どう組んだものか...」と頭を抱えてしまうカードプールだ。一瞬「もう6パック開封するか...」と取材班ふたりが顔を見合わせた微妙なパック。だが仮にこのカードプールを手渡されたとして、シールドデッキ構築に「マリガン」はない。
本記事では強豪プレイヤーである鍛冶友浩、高橋優太、菅谷裕信に上記のカードプールを渡し、どのようなデッキを組み上げるかを尋ねてみた。
鍛冶友浩の構築
「Magic Onlineで40回練習してきたよ!」
ニコ生解説者としてもお馴染みの「KJ」こと鍛冶友浩はこのグランプリへ向けて猛練習を積んできた。事実、前日トライアルでは一発で不戦勝を獲得し、その練習の成果を発揮している。
鍛冶に今回のシールドプールを手渡すと軽やかな手つきで必要なカードとそうでないものを分け、速やかにデッキ構築を始めた。
「まずはカードを色分けして、プレイアブルなカードの枚数が足りるかを確認しましょう。『サイクリングカードをとりあえずデッキに入れる』ような構築だと、ビートダウンに対して速度負けしてしまうことが多いです」
鍛冶いわく、「サイクリングで水増しするようなカードよりも18枚目の土地を入れた方がはるかにいい」とのことだ。3~4~5ターンとノンストップで土地を置いてアクションをすることが重要で、「土地を探しに行くためのサイクリング」という行為自体が致命傷になりかねないと言う。
鍛冶はプール内のカードを並べながら「《不屈の神ロナス》と《象形の守り手》が2トップ。(ぱっと見た感じ)緑白青から選ぶ感じですかね。緑青かなあ......」と所感を述べてくれた。
本カードのめぼしいレアである《不屈の神ロナス》と《象形の守り手》をともに使うことができる緑青は有力な候補のように見えた。しかし、緑青のカードを並べていくうちに鍛冶の表情が曇ってゆく。
「並べてみると枚数が足りないですね。青のクリーチャーが少なすぎる......。この環境はクリーチャー12枚、呪文11枚のような構成でコントロールデッキを組んでももいいと思います。ただ、それは序盤を凌いでロングゲームに持ち込めることが大前提です」
今回のカードプールでは序盤に相討ちを取れるようなクリーチャーが少なく、《頭巾の喧嘩屋》のような「督励」持ちのアタッカーにいいようにやられてしまうことが多そうだと鍛冶は緑青に見切りをつけた。
その後も「難しい...」と頭を抱える鍛冶は緑は確定させ、2色目を吟味しながら最終的には以下のデッキをメインデッキとして組み上げた。
9 《森》 8 《山》 -土地(17)- 1 《血に飢えた振起者》 1 《道拓きの修練者》 2 《頭巾の喧嘩屋》 1 《ケンラの戦車乗り》 1 《刻み角》 1 《ミノタウルスの名射手》 1 《飛びかかるチーター》 1 《うろつく蛇豹》 1 《不屈の神ロナス》 1 《燃えさし角のミノタウルス》 1 《戦炎の投槍手》 1 《打擲場のマンティコア》 1 《鱗ビヒモス》 -クリーチャー(14)- |
1 《マグマのしぶき》 1 《弱さからの脱皮》 2 《苦しめる声》 2 《活力のカルトーシュ》 1 《蜘蛛の掌握》 1 《栄光の探究》 1 《木端 // 微塵》 -呪文(9)- |
結果、鍛冶は緑赤をメインデッキとして選択。
「メインは無難に作り、サイドボードで構成を変えることがかなり多いです。実際、遅めのデッキに対しては一番デッキパワーが高い緑青に組み替えると思います。ロングゲームでは強いデッキなので」
このカードプールでは緑青のプレイアブルなクリーチャーが少なく、メインデッキとしては心許ないと判断したようだ。
《楽園の贈り物》や《開拓 // 精神》もあり3色や4色にする選択肢もありそうではあるが、その辺りはどうだろうか?
「確かに、この環境の半分弱くらいのシールドプールは2色で組めないと思います。ですが、このプールだと序盤を凌ぎきれなそうなので、3色にはしないほうがいいんじゃないかなと思います」
序盤を凌ぐことの重要性を繰り返し強調する鍛冶。先ほど言っていたように《頭巾の喧嘩屋》のようなアタッカーが止まらないようではこの環境で勝ち上がるのは不可能だとのことだ。
「とは言ってもこれはかなり難しいプールです......本番でもらっちゃったらデッキ構築時間ギリギリまで悩むと思います」
高橋優太の構築
昨季最終戦、プロツアー『異界月』で見事トップ8の座を射止めた高橋。
「黒はない」 各色のプレイアブルなカードをマナ・コスト順に並べ黒に見切りを着けた高橋。「緑はいい! 緑だけは確定ですね。除去あり、クリーチャーあり......」と、まずは鍛冶と同じく緑を主軸にデッキ構築を試みる。
「まずは一番やらなそうな緑青から......」と緑青の組み合わせを並べつつも一瞬でダメだと解体する高橋。やはりクリーチャーの少なさがネックになる。そう、緑青で組むと2マナ圏のクリーチャーがゼロなのだ。
頭を悩ませる高橋は「緑から離れよう......悪いと思っていた黒がそこまで悪くない!急に色めき出した!」......と黒赤を並べ始めるが...ダメッ...! カードが足りず2色で満足の行くデッキが構築できない。
「無いものはしょうがないから」と2マナ圏を諦め順次多色で構築しようとするが「弱い......」とどのカラーリングの組み合わせもしっくりくるものが無く、頭を抱える。
「タッチのしがいはあるね」となんとかポジティブな緑青タッチ白、緑赤タッチ青......と順次コンビネーションを試し、あまりシナジーのない《選定の司祭》を渋々2マナ圏に組み入れることで、高橋は以下のデッキをひとまずの答えとして提示してくれた。
9 《森》 6 《平地》 1 《灌漑農地》 1 《色彩の断崖》 -土地(17)- 1 《扇持ち》 1 《選定の司祭》 1 《信念の決闘者》 2 《頭巾の喧嘩屋》 1 《気性の荒いクーズー》 1 《うろつく蛇豹》 1 《不屈の神ロナス》 1 《断固たる修練者》 1 《ター一門の精鋭》 1 《鱗ビヒモス》 1 《双陽の熾天使》 -クリーチャー(12)- |
1 《強制的永眠》 1 《絶妙なタイミング》 2 《活力のカルトーシュ》 2 《俗物の放棄》 1 《楽園の贈り物》 1 《蜘蛛の掌握》 1 《排斥》 1 《黄昏 // 払暁》 1 《木端 // 微塵》 -呪文(11)- |
「これを本番でもらったら......かなり厳しいプールです」
プラチナ・プロを持ってしても「苦しい」と言わざるを得ないこのカードプール。果たして菅谷の構築は......?
菅谷裕信の場合
続いてこのカードプールについて伺ったのは、グランプリ・北京2016王者の菅谷裕信だ。
この環境のシールドはデッキを10回ほど組んできたという菅谷だが、カードプールを手渡すと開口一番「カードが足んないなー」と苦笑する。やはり2マナ圏の薄さはいかんともしがたく、鍛冶、高橋と同じく頭を抱えて各色の組み合わせを試していく。
「この環境では2マナ圏のクリーチャーが少ないことはよくあることですね。『いかに組むか、いかにごまかすか』というプールも何度か引いたことはあります......とは言えこのプールは極端ですが」
菅谷は全てのクリーチャーをマナ・コスト順に並べ「3マナ圏が膨れてしまっているが、全体的にクリーチャーが少なく緑を使わざるを得ない」と決断する。
結果、勝てるカードである《象形の守り手》を使うべく緑青を主軸にしてデッキを構築していく。
「《象形の守り手》《鱗ビヒモス》《双陽の熾天使》のどれかが出れば何とかなる......と思います。」とダブルシンボルながら《黄昏 // 払暁》《双陽の熾天使》のタッチまで踏み込み、以下のデッキを完成形とした。
8 《森》 5 《島》 3 《平地》 1 《灌漑農地》 -土地(17)- 1 《扇持ち》 2 《頭巾の喧嘩屋》 1 《ヘクマの歩哨》 1 《気性の荒いクーズー》 1 《飛びかかるチーター》 1 《うろつく蛇豹》 1 《不屈の神ロナス》 1 《水流織り》 1 《エイヴンの修練者》 1 《ター一門の精鋭》 1 《象形の守り手》 1 《鱗ビヒモス》 1 《双陽の熾天使》 -クリーチャー(14)- |
2 《本質の散乱》 1 《知識のカルトーシュ》 1 《強制的永眠》 1 《活力のカルトーシュ》 1 《楽園の贈り物》 1 《排斥》 1 《知識の試練》 1 《主張》 1 《開拓 // 精神》 -呪文(10)- |
「《不屈の神ロナス》《双陽の熾天使》《黄昏 // 払暁》の流れは気持ちよさそう」と苦しいながらも勝ち筋を見出し、この緑青タッチ白の形に落ち着いた。
さて、全員を悩ませてしまったカードプールだったが、三者三様のデッキを提示してくれた。
全員が口にしていた通り非常に厳しいプールではあるが、冒頭で述べた通りシールドデッキ構築に「マリガン」は無い。渡されたプールでなんとかデッキを組み上げなければいけないのだ。
果たしてあなたはこのカードプールを渡されたとして、どのようなデッキを組むだろうか? ぜひ一度考えてみてほしい。
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