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観戦記事

ライバルズ・ガントレット 最終日ハイライト

Corbin Hosler

2021年9月6日

 

 ガントレット最終日が開幕した時、順位表の一番上にあったのは誰もが知る名前だった。カイ・ブッディ/Kai Budde。伝説の「ジャーマン・ジャガーノート」はこのゲームの歴史上最多のプレミア・イベントタイトル保持者だ。

 金曜日に行われた初日を、完璧な9勝0敗で駆け抜け、ブッディはすでにトップ8を確定させており、第27回世界選手権の参加権利を賭けて戦う機会を手にしていた。しかし、残る7席については、足切りを行うための3回戦のスタンダードラウンドのチャンスがある。

 

 レース序盤に抜け出したプレイヤーのひとりが、ギリシャのマティ・クイスマ/Matty Kuismaだ。彼はこの週末ブレイクした「ジェスカイ変容」をプレイしており、トップ8までの道のりを駆け抜けた。

 

 最終的にこのゲームのビッグネームたちが何人も加わり、トップ8の顔ぶれは以下のようになった。

  • カイ・ブッディ「イゼット・コントロール」
  • リー・シー・ティエン/Lee Shi Tian「緑単アグロ」
  • ジャン・メルケル/Jan Merkel「イゼット・コントロール」
  • 八十岡 翔太「ナヤ・アドベンチャー」
  • 石村 信太朗「ディミーア・ローグ」
  • ガヴィン・トンプソン/Gavin Thompson「グルール・アドベンチャー」
  • マティ・クイスマ「ジェスカイ変容」
  • ルイ=サミュエル・デルトゥール「ディミーア・ローグ」

 「ジェスカイ変容」は明らかに土曜日のMPLガントレットのトップ8では最高のデッキだった。だが、6つの異なるデッキが存在し、しかもそのほとんどが全く異なるゲームプランで動く多様なフィールドにおいて、それでもなお通用するのだろうか?

 トップ8の面々は、若いチャレンジャーと、歴代でも屈指の大物たちが完全に混ざり合う形になった。その結果、ジャン・メルケルが決勝でガヴィン・トンプソンにイベント序盤に敗北した借りを返し、最後の世界選手権の席を手に入れた。

おめでとう@jmmtgo。君が#RivalsGauntletの勝者だ!

「イゼット・コントロール」を乗りこなしたメルケルがこのゲームの、そして歴代の最高の選手たちを倒し、今年の#MTGWorldsの最後の席を手に入れた!

改めておめでとう、ジャン!

 さあ、それではここまでの道のりを見ていこう。

トンプソンが勝者側ブラケットを支配し、決定戦に進出

 ガントレットの戦前、長いプレイ歴を持つガヴィン・トンプソンは、このトーナメントにすべてを懸けていると語った。そして、トップ8の戦いが始まると、その通りのプレイを見せた。この週末のガントレットで見せた圧倒的な流れのまま、トンプソンはスタープレイヤーの海を泳ぎ切って見せた。

Gavin Thompson - 「グルール・アドベンチャー」
ライバルズ・ガントレット (2021年9月3~5日) / スタンダード[MO] [ARENA]
8 《
4 《
4 《岩山被りの小道
2 《ハイドラの巣
3 《バグベアの居住地
-土地(21)-

4 《エッジウォールの亭主
4 《ヤスペラの歩哨
3 《厚顔の無法者、マグダ
1 《リムロックの騎士
4 《砕骨の巨人
4 《恋煩いの野獣
2 《黄金架のドラゴン
1 《アゴナスの雄牛
-クリーチャー(23)-
1 《蛇皮のヴェール
2 《火の予言
2 《レンジャー・クラス
1 《アクロス戦争
4 《髑髏砕きの一撃
4 《エシカの戦車
2 《エンバレスの宝剣
-呪文(16)-
2 《運命の神、クローティス
1 《灰のフェニックス
2 《アゴナスの雄牛
3 《レッドキャップの乱闘
1 《蛇皮のヴェール
3 《バーニング・ハンズ
1 《乱動する渦
1 《ヴァドロックの神話
1 《アクロス戦争
-サイドボード(15)-

 トンプソンがプレイしていたのは、スタンダードで安心安全といえるデッキだった。「グルール・アドベンチャー」。そして彼は初戦で石村信太朗の「ディミーア・ローグ」を、続いてルイ=サミュエル・デルトゥールの同デッキを、そして最後はジャン・メルケルの「イゼット・コントロール」を《エンバレスの宝剣》で一刀両断したのだ。3人の「青い」対戦相手に、3つの勝利を「グルール」のプレイヤーが収めたのだ。

 

 

 トップ8がトンプソンのものになるとは、予想されていなかった。大方の予想では、間違いなく伝説のカイ・ブッディだった。彼のチャンピオンシップでの実績から「カイ・ブッディは日曜日に負けない」というジンクスが誕生したほどなのだ。そして、2週間前のチャレンジャー・ガントレットで茂里憲之が使用し、圧倒的なパフォーマンスで駆け抜けた「イゼット・コントロール」を手に、ブッディはトップ8ラウンドでも手がつけられないように見えた。

 しかし、決勝ラウンド1回戦ではそうではなかった。同じく殿堂プレイヤーであるリー・シー・ティエンが3ゲームの接戦の末に、わずかな差で「緑単アグロ」を手に勝利を収めた。そのまま、リー・シー・ティエンは連続で「イゼット・コントロール」と対峙することになった。八十岡翔太の「ナヤ・アドベンチャー」を相手に3ゲームの末粘り勝ったジャン・メルケルと対戦することになったのだ。

Lee, Shi Tian - 「緑単アグロ」
ライバルズ・ガントレット (2021年9月3~5日) / スタンダード[MO] [ARENA]
19 《冠雪の森
4 《不詳の安息地
-土地(23)-

4 《ヤスペラの歩哨
4 《群れのシャンブラー
4 《群れ率いの人狼
4 《カザンドゥのマンモス
4 《恋煩いの野獣
4 《水晶壊し
-クリーチャー(24)-
4 《レンジャー・クラス
3 《グレートヘンジ
4 《原初の力
2 《エシカの戦車
-呪文(13)-
2 《鎖巣網のアラクニル
2 《漁る軟泥
2 《探索する獣
2 《吹雪の乱闘
2 《蛇皮のヴェール
3 《風化したルーン石
2 《強行突破
-サイドボード(15)-

 2回目も、同じように事が運ぶことはなかった。メルケルは効果的にリー・シー・ティエンの盤面をコントロールし、2ゲーム連取で勝者側ブラケットの決勝戦へと進んだのだ。

 

 メルケルとトンプソンが勝者側ブラケットでにらみ合うのと同時に、視線は敗者側ブラケットへ移った。トップ8の残りのプレイヤーたちはまだ生き残っており、決定戦に臨むためのチャンスを巡って争っていた。

ふたりのベテランプロが敗者側ブラケットを連勝で飾る

 始まりは、マジックの黎明期から今日まで歴史に名を残す、エキサイティングなマッチアップだった。カイ・ブッディと八十岡翔太の対戦だ。ブッディが殿堂顕彰者同士のマッチアップを勝ち上がり、トーナメント、そして彼にとっては初めての少人数による世界選手権出場のチャンスの可能性を残した。

 そして、すぐに必然といえる再戦となった。リー・シー・ティエンがトップ8の開幕戦でブッディを下してから、彼は石村信太朗を倒し、再度ブッディの前に立つことになった。ブッディはルイ=サミュエル・デルトゥールを前ラウンドで退場に追い込んでいた。

 

 今度はまた違った展開になるのだろうか? リー・シー・ティエンは開幕戦でブッディを圧倒したが、「ジャーマン・ジャガーノート」はその対戦での経験を活かし、2度目は調整してくるだろうか?

 今回は、まったく疑いの余地がなかった。ブッディは2ゲーム連取でリー・シー・ティエンに完勝し、敗者側ブラケットの決勝に進んだ。勝者側ブラケットでガヴィン・トンプソンに敗北した同郷のジャン・メルケルが待ち受けていた。

 殿堂プレイヤーであるリー・シー・ティエンにとっては嘆かわしい終わり方となった。しかし、トップ4入賞の結果は世界選手権に出場できなくても、彼に来期のMPLの座を確約するものだ。

ライバルズ・ガントレットトップ4で来年もMPL残留だ。

@rex51515とルコゼードに最大の感謝を(誰かその会社にスポンサーしてもらえる方法を紹介してくれ)。

あとは効果が切れるのを待たなきゃね。

そして、私が1-4した時に諦めるなと言ってくれた@CCalcanoにも。

#HareruyaPros

 トンプソンが決定戦で待ち構えているということはつまり、ブッディは決定戦に進むため、思いもよらなかった敗者側ブラケットでの戦いを勝ち抜かねばならないということであり、その達成まであと1試合となった。しかし、ジャン・メルケルとのミラーマッチを通過しなければならない。そして、ブッディが最も成功した「サンデー・プレイヤー」なのに対し、メルケルもまた王者である。プロツアー・神戸2006と今シーズン初めのMagic Online Showcase Season Three Championship で優勝を収めているのだ。

 試合は、両プレイヤーが打ち消し呪文、バウンス呪文、そして複雑なコンバットの計算を交わす古典的なものとなった。そしてメルケルが、まもなくスタンダードローテーションによってフォーマットを去るこの環境の代名詞、巨大な《サメ台風》のトークンでマッチの勝利を確かなものにした。そして巨大な一撃によって、メルケルは決定戦へと進出を決めたのだった。

 

決勝戦:世界選手権出場権決定戦

 この結果を持って、優勝者を決めるマッチが行われることになった。サンデーでゲームカウント6勝0敗の無敗のガヴィン・トンプソンと相対するかつてのプロツアー王者ジャン・メルケルは、2ラウンド前の敗北の雪辱を期する。

 かかっているものは明白だ。敗者となっても、来期のMPLの座を獲得することができる。しかし、マッチ2本先取制の試合の勝者のみが、切望する第27回世界選手権の席をその手に掴むことができる。

 ここに至り、トンプソンの夢物語は突然の終焉を迎えた。2ゲームに渡り彼はマナに苦戦し、メルケルは《キオーラ、海神を打ち倒す》を解決するまで、タイミングよく複数枚の《砕骨の巨人》を展開することができた。

 

 トンプソンにとって、「グルール・アドベンチャー」が「イゼット・コントロール」を相手にするのは厳しいマッチアップだということは分かっていたたが、投げ出すことはしなかった。メルケルが一瞬で1マッチ目を取り世界選手権まであと1勝となってもなお諦めることはしなかった。トンプソンはガントレット全体を見ても、印象的な立ち直りを見せた。

 人生で最も重要なゲームを3戦連続で落とした後に落胆することは簡単だが、彼は続くゲームで粘り強さを証明して見せた。5枚までマリガンしても、彼は自分を信じキープし、《エシカの戦車》に乗り込み、衝撃的な勝利を収め、トーナメントに生き残った。

 

 そして第3ゲーム。すべてはリスク計算にかかっていた。

 トンプソンはオープニングハンドをライブラリーに戻した。マリガン後の手札には緑マナが不足していた。しかし、その他は強力だ。すでにカードは1枚少なくなっており、後手だ。トンプソンは《》さえあれば解き放つことができる手札をキープする戦略的決断を下した。このアメリカ人にとって不運だったのは、トンプソンは必要なマナを引き込むことができず、週末がジャン・メルケルのものになったことだ。かつてのプロツアー王者、ジャン・メルケルが、最後の世界選手権の席を手に入れたのだ。

 

 世界選手権の権利を手に入れた! しばらくは笑いが止まらないだろう。

 ここに至るまで助けてくれた人、そして応援してくれた皆さん、ありがとう

世界選手権の展望

 メルケルの勝利により、第27回世界選手権の枠は埋まった。既に前回のガントレットを勝ち抜き権利を獲得していた4人のプレイヤーに加え、井川良彦、佐藤レイ、ジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emmanuel Depraz、そして今ジャン・メルケルが加わった。

 ふたつのリーグシーズン、数多のセットチャンピオンシップ、そして緊張のガントレット3回が過去のものになった。その先にあるのは、世界選手権だ。

この10月、競技マジックの頂点が@MTGArenaにやって来る。

世界中から最高の16人のプレイヤーが250,000ドルと、マジック世界王者のタイトルを賭けて戦いに臨む。

#MTGWorldsは、2021年10月8~10日だ!

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