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チャレンジャー / ライバルズ / MPLガントレット

戦略記事

MPLガントレット/ライバルズ・ガントレット メタゲームブレイクダウン

Frank Karsten

2021年9月2日

 

 いよいよ9月3~5日に、「MPLガントレット」および「ライバルズ・ガントレット」が開催される。各イベントともMPLやライバルズ・リーグ、そして「チャレンジャー・ガントレット」で権利を得た24名のプレイヤーたちが、これまでにない重大な局面を迎えるのだ。「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」の席は残り4つ。MPLガントレットではそのうち3つの席をめぐる戦いが繰り広げられ、ライバルズ・ガントレットではただ1つの席を争うことになる。

 フォーマットは、「MPLガントレット」、「ライバルズ・ガントレット」ともにスタンダードで行われる。これらのイベントは、『エルドレインの王権』や『テーロス還魂記』、『イコリア:巨獣の棲処』、『基本セット2021』が活躍する最後のスタンダードのプレミア・イベントになるだろう。それらのセットがローテーションを迎える前に、長らく愛されたカードたちや環境の中心であり続けたカードたちにきちんとお別れを告げる機会になるはずだ。(参考記事:英語)

 全出場選手のデッキリストは9月3日の第1回戦開始時に「MPLガントレット」および「ライバルズ・ガントレット」公式イベントページにて公開されるが、ここでは全体のメタゲームを見てみよう。(編訳注:デッキリストの日本語訳も追って公開予定です。)

「ライバルズ・ガントレット」メタゲームブレイクダウン

 「ライバルズ・ガントレット」におけるメタゲームは以下のようになった。

Rivals-Gauntlet-Metagame-Standard.jpg

 《エッジウォールの亭主》を用いるデッキの呼称については、ある色のカードを少なくとも4枚以上メインデッキに採用している場合にのみ、その色をデッキ名に含めている。つまり赤緑を中心にして《軽蔑的な一撃》を3枚タッチしている形は「グルール・アドベンチャー」と呼称し、赤緑を中心にして《巨人落とし》を4枚タッチしている形は「ナヤ・アドベンチャー」と呼称する。

アーキタイプ 使用者数 使用率
ジェスカイ変容 7 29.2%
ディミーア・ローグ 3 12.5%
イゼット・コントロール 3 12.5%
ナヤ・ウィノータ 3 12.5%
スゥルタイ根本原理 2 8.3%
グルール・アドベンチャー 2 8.3%
ナヤ・アドベンチャー 2 8.3%
スゥルタイ・ジャイルーダ 1 4.2%
緑単アグロ 1 4.2%

 スタンダードに大変動が起こるとは思っていなかったが、それでも「ライバルズ・ガントレット」は私を驚かせてくれた。

 最初に特筆すべきは、「ジェスカイ変容」が復讐のために戻ってきたことだろう。《雷の頂点、ヴァドロック》+《伝承のドラッキス》+《非実体化》、《プリズマリの命令》+《黄金架のドラゴン》という5枚コンボ(《黄金架のドラゴン》を対象に取りつつバウンスを繰り返すことで無限マナが成立する)を中心に据えたこのデッキは、その複雑さから操縦するのが難しい。だが「ライバルズ・ガントレット」の参加者には、「『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップ」からこのデッキを使い続けているプレイヤーもいるのだ。その「ジェスカイ変容」は、総参加者24名のうち合計7名(使用率29.2%)の使用者を集めた。

 驚きをもたらしたのは「ジェスカイ変容」だけではない。例えば「ディミーア・ローグ」を選択したプレイヤーの1人は《遺跡ガニ》と《ヴァントレスのガーゴイル》を入れ換え、メインデッキから《激しい恐怖》を複数枚採用できるようになっている。これにより緑を含むクリーチャー中心のデッキに対する優位性を得たわけだが、環境の終盤でもまだこうして常識に挑む余地があるのは嬉しいことだ。

 『フォーゴトン・レルム探訪』の登場によりスタンダードへ最も大きな影響を与えたのは、「イゼット・コントロール」の隆盛だろう。「チャレンジャー・ガントレット」にて茂里 憲之は、《キオーラ、海神を打ち倒す》や《燃えがら地獄》を採用した「ローグな(メタ外の)」デッキを持ち込んだ。しかしその活躍ぶりは世界選手権に招待されるにふさわしいものであり、その後このデッキはスタンダードのメタゲームに定着した。

 そしてこのデッキにも、さらなる改良が見受けられた。6人のベテラン・プレイヤー(ライバルズ・ガントレットに3人、MPLガントレットに3人出場)によるチームが、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を相棒として採用するという革新をもたらしたのだ。このアーキタイプにとって、デッキ枚数を80枚に増やすことはそれほど大きな負担にならない。なぜなら茂里 憲之による元のリストでは、4枚採用されているカードが《砕骨の巨人》や《河川滑りの小道》、《天啓の神殿》のみだったからだ。80枚になることでわずかに《砕骨の巨人》や適切な色マナを引き込みにくくなるものの、不都合な部分は小さいと言える。80枚なら、3枚採用のカードを4枚にしたり《寓話の小道》と基本土地をいくらか加えたりすれば達成できるだろう。その見返りに得られる《空を放浪するもの、ヨーリオン》はゲームが長引いたときの助けとなり、《キオーラ、海神を打ち倒す》を明滅できれば最高だ。

 この革新は魅力的だが、「ライバルズ・ガントレット」においては一番人気の「ジェスカイ変容」との相性が勝敗を左右するだろう。私としては、「イゼット・コントロール」側に必要な回答が不足しているのではないかと懸念している。《砕骨の巨人》や《燃えがら地獄》では、1枚で「変容」を止められないのだ。とはいえ、それは実際の戦いを見てみなければなるまい。

 「ライバルズ・ガントレット」における最も刺激的なデッキは、間違いなく誰も備えていないであろう「スゥルタイ・ジャイルーダ」だ。このデッキはマナ加速から4ターン目あるいは5ターン目に《深海の破滅、ジャイルーダ》を唱え、《虐殺のワーム》を戦場に出すことを狙う。この戦略は《エシカの戦車》を使う緑系のデッキにはかなり効果的に見えるが、一方で「ジェスカイ変容」や「イゼット・コントロール」、「スゥルタイ根本原理」に対して妨害やプレッシャーをかけることにとりわけ優れているようには見えない。とはいえ、個人的にはこういったメタ外のデッキを応援したい。

「MPLガントレット」メタゲームブレイクダウン

MPL-Gauntlet-Metagame-Standard.jpg
アーキタイプ 使用者数 使用率
スゥルタイ根本原理 8 33.3%
ジェスカイ変容 4 16.7%
ディミーア・ローグ 3 12.5%
イゼット・コントロール 3 12.5%
ナヤ・ウィノータ 2 8.3%
グルール・アドベンチャー 2 8.3%
ジェスカイ・サイクリング 2 8.3%

 「MPLガントレット」と「ライバルズ・ガントレット」のスタンダードメタゲームを比較してみると、いくつか特筆すべき違いが見受けられる。例えば「ライバルズ・ガントレット」においては一番人気の「ジェスカイ変容」が「MPLガントレット」では2番手に「過ぎない」点が挙げられるだろう。

 代わって最も多くの使用者を集めたのは、「スゥルタイ根本原理」だ。「MPLガントレット」出場者の3分の1が「保守的」とも言えるこのデッキを選択している。選択理由は1年以上にわたり「スゥルタイ根本原理」の経験を蓄積してきたからかもしれないし、単純にこの手のデッキが好きだからかもしれない。いずれにせよ、特筆すべき革新が起きていないにしても、マナ加速からの《出現の根本原理》の力はいまだ健在ということだろう。

 2つの「ガントレット」の違いをもう1つ挙げるなら、「ジェスカイ・サイクリング」の存在だ。「ライバルズ・ガントレット」では使用者がいないこのデッキを、「MPLガントレット」では2名のプレイヤーが選択している。私の経験から「ジェスカイ・サイクリング」は「スゥルタイ根本原理」に有利であるため、「MPLガントレット」では良い位置にあるのではないかと思われる。いずれにしても、スタンダードにおけるデッキ間の相性差はどれも小さいため、各戦略の遂行力――戦術的判断や巧みなサイドボーディング、そしてゲーム中における最適解の選択が勝敗を分けるだろう。

 才能あるプレイヤーがこれでもかと集まったイベント、タイトな試合が予想される。

まとめ

 この週末に、いよいよ「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」の残る4つの席が埋まる。世界選手権の舞台へ上がるために、プレイヤーたちはこの数年にわたって蓄積してきたスタンダードの知識を総動員して当たるだろう。長きにわたり環境の中心にあるデッキとの対戦経験もまた、存分に活かされるはずだ。

 両「ガントレット」イベントの合計で、最も採用枚数の多い土地でないカードはローテーション後もスタンダードに残る《軽蔑的な一撃》だった。しかしこの週末は、《出現の根本原理》や《伝承のドラッキス》、《盗賊ギルドの処罰者》、《天頂の閃光》、《砕骨の巨人》、《海の神のお告げ》、《軍団のまとめ役、ウィノータ》、《空を放浪するもの、ヨーリオン》、《エッジウォールの亭主》といったカードが築き上げたアーキタイプや環境を生放送で観られる最後のときになるだろう(再録がない限り)。

 戦いの模様は9月3日の9時(日本時間25時)からtwitch.tv/magic(英語)にて生放送でお届けするので、お見逃しなく!


MPLガントレット/ライバルズ・ガントレット 放送ページ・放送日程
日程 放送日程 区分 放送ページ
1日目 9月3日(金) 25:00~ MPL・ライバルズ1~9回戦 英語公式Twitch
2日目 9月4日(土) 25:00~ MPL3回戦+決勝ラウンド 日本公式Twitch
日本公式YouTube
英語公式Twitch
3日目 9月5日(日) 25:00~ ライバルズ3回戦+決勝ラウンド

日本語版放送出演者

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