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The Finals 2019

観戦記事

準々決勝ダイジェスト

Moriyasu Genki

 「The Finals 2019」。完全招待制大会である今大会の参加者は、非常に「濃い」面々であった。名実ともにトップ・プロであるMPLプレイヤーたちやプロツアーやミシックチャンピオンシップ優勝経験者、殿堂プレイヤーらの姿もあった。

 その中でスイスラウンド8回戦を勝ち残った8人は、確かな実力を持っていることに疑問の余地はないだろう。

 今回はビデオ・フィーチャーの「細川 侑也 (東京) vs. 佐藤 直輝 (神奈川)」を除く3卓の準々決勝の様子をダイジェストでお伝えする。

卯月 祐至 (京都) vs. 竹内 亮太 (静岡)

 同じカラーリングだが全く異なるアプローチのデッキ対決となった。

 卯月の「ラクドス・サクリファイス」は《魔女のかまど》と《大釜の使い魔》のコンボを中心に「粘り強さ」を見せる。

 竹内の「ラクドス・騎士」は《エンバレスの宝剣》によるハイスピードな勝利を目指すアグロデッキだ。

ゲーム1

 先手を取った卯月が《魔女のかまど》から《嵐拳の聖戦士》。後手ながら竹内は2ターン目にして《熱烈な勇者》2体と《どぶ骨》でダメージレースを仕掛けていく。

 《嵐拳の聖戦士》がブロッカーとして機能しない組み合わせとなってしまった卯月、3ターン目にして長考をかけたあとに《波乱の悪魔》をプレイする。

 最高速ともいえる序盤の展開を見せた竹内だったが、これでピタリと攻勢が止まってしまう。卯月はさらにプレイした《忘れられた神々の僧侶》に自ら《初子さらい》で速攻を付与すると即座に起動し、《波乱の悪魔》の誘発と合わせて竹内の盤面を一掃する。

 手を失くした竹内に対し、《忘れられた神々の僧侶》のドローも含めて後続を展開した卯月がそのままゲームをもぎとった。

竹内 亮太
ゲーム2

 再び竹内の《熱烈な勇者》の攻勢で始まるゲームだが、《魔女のかまど》と《大釜の使い魔》を完成させた卯月が再び一歩リードだ。

 このセットは《戦いの誇示》で《魔女のかまど》を破壊して即座に妨害する竹内だが、若干のカラー・トラブルも相まって次手に繋がらない。

 それでも《朽ちゆくレギサウルス》の7/6という強烈なサイズで盤面を支えようとするが、これを2枚の《初子さらい》で使いまわされると逆に窮地に至ったのは竹内だ。

 卯月は《どぶ骨》をプレイしつつ、竹内が追加した《騒乱の落とし子》を《溶岩コイル》で退場させる。

 翌ターン、《朽ちゆくレギサウルス》の攻撃を受けつつも、卯月は《忘れられた神々の僧侶》を戦線に加える。

 竹内は自身の《朽ちゆくレギサウルス》で複数回カードを失ったことも相まって、これを突破する手立てに届く前にライフレースに競り負けてしまった。

卯月 2-0 竹内

卯月 祐至

 

小林 遼平 (千葉) vs. ティーラワット・チャオヴァリンダ/Thirawat Chaovarindr (タイ)

ゲーム1

 トップ8唯一の「ジェスカイ・ファイアーズ」の小林。日本選手権2019も優勝した新鋭にして注目のプレイヤーだ。

 対して、トップ8に3人という成績を残した「勝ち組」である「ラクドス・騎士」のうちの1人、チャオヴァリンダ。

 チャオヴァリンダが3ターン目までに《嵐拳の聖戦士》2枚と《どぶ骨》をプレイする好スタートを切った。この初速の勢いが「ラクドス・騎士」の強みであり、選ばれている理由の一番だろう。

 《嵐拳の聖戦士》がライフへのプレッシャーと手札の補充を兼ねるので、この序盤の攻勢を保ちきるのが「ラクドス・騎士」にとっての主な勝ち筋だ。

ティーラワット・チャオヴァリンダ

 しかし、決勝ラウンドはゲーム開始以前に互いのデッキ全カードを確認できる「リスト公開制」が採用されている。

 ウィニー・クリーチャーを展開する「ラクドス・騎士」に対して《砕骨の巨人》と《轟音のクラリオン》をしっかりキープで持っていた小林が、チャオヴァリンダの展開を流したあとに《炎の騎兵》をプレイする。

 小林が2枚の《時を解す者、テフェリー》でこのエレメンタルの攻撃をバックアップすると、攻守は一気に逆転し、そのまま速やかにライフを削り切った。

ゲーム2

 サイドボード中、「ラクドス・騎士」にとって致命的となる「全体除去」の《轟音のクラリオン》と《陽光の輝き》の枚数をしっかりと確認するチャオヴァリンダ。

 実際のゲーム2では《漆黒軍の騎士》からスタートしてサイズを成長させるプランを取ろうとするが、残念ながら土地が2枚で止まってしまう。1~2マナ域のクリーチャーの展開こそ続けるものの、打点は思ったほど伸びていかない。

 加えて小林はゲーム1同様《砕骨の巨人》を巧みに使い、《漆黒軍の騎士》を打ち落とし、さらに追加された《黒槍の模範》と相打ちをとって全力で守る。

 次いで4ターン目には「ジェスカイ・ファイアーズ」のデッキ名の由来でもある《創案の火》からの《陽光の輝き》で再びチャオヴァリンダの戦線を流す。

 さらに《風の騎兵》で手札を整えると、小林は盤石の布陣のままチャオヴァリンダとのゲームを終えた。

小林 2-0 チャオヴァリンダ

小林 遼平

 

平山 怜 (東京) vs. 佐山 辰ノ介 (東京)

 3人目の「ラクドス・騎士」は佐山だ。

 対する平山は「シミック」だが、トップメタである「シミック・フラッシュ」ではなく《茨の騎兵》などから《終末の祟りの先陣》と繋げる「ランプ(マナ加速)」ルートを重要視する「シミック・ランプ」だ。

「《世界を揺るがす者、ニッサ》からのすみやかな《破滅の終焉》X=10で《終末の祟りの先陣》を出す」という勝ち方は、「緑」のカードだけで成立しているとは思えないほど「ワン・ショット」「飛び道具」的だ。

ゲーム1

 平山がマナ加速をしきる前に速やかにゲームを終わらせる必要のある佐山。

 《どぶ骨》から《漆黒軍の騎士》、そして《残忍な騎士》から《エンバレスの宝剣》と一気に繋げて、一瞬にして勝利を目前にする。

 しかし平山も、この怒涛の勢いをしっかりと相殺していく。《爆発域》で1マナ・クリーチャー陣を流したあと《茨の騎兵》で土地を伸ばしつつブロックに回り、しっかりとライフを守っていく。

 それでも《エンバレスの宝剣》を担いだ《残忍な騎士》で《茨の騎兵》を落とすと、佐山は「35対4ですね」と、伝える。

 そして佐山もまた「35、ですね」と復唱した。

佐山 辰ノ介

 ライフを減らすことを佐山が優先した結果、生き残っていた《世界を揺るがす者、ニッサ》。

 彼女が土地を3/3のエレメンタルにしつつ、爆発的なマナを生み出していく。

 2体のクリーチャー・土地以外の土地を全てタップして、12マナの捻出を宣言する平山。

「X=10です」

 平山の宣言の後、ライブラリーから《終末の祟りの先陣》が登場する。

 2体のクリーチャー・土地が《終末の祟りの先陣》の誘発と《破滅の終焉》で、合計+12/+12の修整を受ける。

 《終末の祟りの先陣》自身は+10/+10の修整で、3体合わせたダメージの合計は……47点。

 佐山が数ターンに渡って積み立てたライフの貯蓄は、一瞬にして崩れ去った。

平山 怜
ゲーム2

 絶体絶命のピンチを乗り越えた平山。あと「一噛み」が届かなかった佐山。

 ゲーム2は再び佐山の攻勢で形成されていく。《漆黒軍の騎士》から《黒槍の模範》でダメージ・クロックを用意する。

 さらに《軍団の最期》や《残忍な騎士》でマナ・クリーチャーもどかしてダメージを稼いでいく。

 対する平山は《枝葉族のドルイド》を失いつつも、《恋煩いの野獣》でブロッカーを用意しつつ《発現する浅瀬》から《茨の騎兵》と繋げる。

 この《茨の騎兵》のサイズと、そして到達能力が佐山を苦しめた。状況を打破するために展開した《悪ふざけの名人、ランクル》が攻撃を仕掛けられない。

 お互いに攻撃を仕掛けず土地を置いてターンを渡すことを何回か繰り返すが……最初に述べたように、マナを伸ばして強みがあるのは平山の「シミック・ランプ」の方だ。

 合間に《ヴァントレス城》を起動してドロー内容を整えていた平山が、再びゲームを決める《破滅の終焉》にたどり着いた。

平山 2-0 佐山


 

卯月、小林、平山 「2-0」で準決勝へ

 結果として紹介した3卓すべてが2ゲームで勝敗を決したが、一方的な展開と言えたのはほとんどない。わずかなゲームスピードの違いを「差し切った」形で準決勝へ駒を進めた卯月、小林、平山の3人。そして細川との熱戦を制した佐藤を加えたトップ4。

 スイスラウンド8回戦からの決勝トーナメントを一挙に行う「ワン・デイ・トーナメント」である今回のThe Finals 2019を、そのスピード感のままゴールテープを切るプレイヤーは、誰だ。

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