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The Finals 2019

戦略記事

デッキテク:増門 健太の「出来事・城塞」 ~「終わりなき展開力」の全容~

Moriyasu Genki

 《ボーラスの城塞》。

 「凶悪」とうたわれたエンチャント《未来予知》や《ファイレクシアの闘技場》の流れを汲む、とても「黒らしい」ライフ損失をカード・アドバンテージ獲得手段とする伝説のアーティファクトだ。

 ゲートウォッチら正義のプレインズ・ウォーカーチームにとっての宿敵、「ニコル・ボーラス」の城であり、ボーラスがラヴニカの征服を目論んだことがメインエピソードとなる『灯争大戦』において、重要な山場を演出したフィールドでもある。

 この《ボーラスの城塞》をアドバンテージ獲得の手段にしつつ、さらに『エルドレインの王権』の「出来事・エンジン」を組み合わせたプレイヤーがいる。

 「出来事・エンジン」。《エッジウォールの亭主》から出来事クリーチャーの連打に続けられれば、ビートダウンとは思えぬほど尽きぬ手札と物量を示し続けることも可能だ。

増門 健太 - 「出来事・城塞」
The Finals 2019 / スタンダード (2019年12月21日)[MO] [ARENA]
8 《
5 《
4 《草むした墓
4 《疾病の神殿
2 《ロークスワイン城
2 《寓話の小道

-土地(25)-

4 《エッジウォールの亭主
3 《金のガチョウ
4 《穢れ沼の騎士
4 《恋煩いの野獣
3 《残忍な騎士
2 《夜の騎兵
4 《豆の木の巨人

-クリーチャー(24)-
3 《幸運のクローバー
2 《ボーラスの城塞
2 《戦争の犠牲
2 《大いなる創造者、カーン
2 《ゴルガリの女王、ヴラスカ

-呪文(11)-
2 《打ち壊すブロントドン
2 《虐殺少女
2 《夜の死神
2 《強迫
2 《壮大な破滅
2 《害悪な掌握
1 《魔術遠眼鏡
1 《ボーラスの城塞
1 《グレートヘンジ

-サイドボード(15)-
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 増門 健太。ここ数年、競技大会の現場にいて彼を見かけた者があるプレイヤーは多いだろう。グランプリでの上位入賞の数も多く、新潟からの「刺客」として関東圏の大会でも好成績を記録している。

 その増門は先日のグランプリ・名古屋2019から引き続き、この「《ボーラスの城塞》入り緑黒ミッドレンジ」こと「出来事・城塞」を持ち込んできている。このグランプリでは12勝2敗1引き分けとトップ8入賞まで「あと一歩」の成績を残していて、その全容を気にかけるプレイヤーも少なくなかった。デッキ製作の経緯や実際に使うにあたってのテクニックなどを伺った。

「出来事・城塞」製作の経緯

 もともと、《王冠泥棒、オーコ》が禁止される前に製作されているデッキタイプだ。数か月前、増門が神奈川のイベントに遠征参加した際にこのデッキタイプの「原型」となるデッキと出会っている。

増門「《王冠泥棒、オーコ》がいる中で、こんな大振りのアーティファクトが機能するのか?と最初は疑問だった」

 増門は疑問を抱くこととと同時に、《ボーラスの城塞》と出来事・エンジンの組み合わさったときの爆発力に心惹かれていたようだ。

 当初から「ゴルガリ・出来事」も使っていたが、「食物」デッキが「シミック・食物」から「スゥルタイ・食物」へと変化していく過程で環境に《害悪な掌握》が増加し、《エッジウォールの亭主》のみをアドバンテージ源とする構成には不安を感じ、先日のグランプリ・名古屋2019開催の数日前にはいよいよ「出来事・城塞」の使用を決め、ブラッシュアップし本戦へと挑んだ。

増門「トップメタをにぎる(使用する)のは嫌っていて。グランプリ・横浜2019では『グリセルシュート』(《御霊の復讐》+《グリセルブランド》)をチームの7人くらいで調整して参加しました。名古屋での『出来事・城塞』は使うのを決めたのがギリギリだったので強いか弱いかの判断をつけられなくて、シェアはしてません」

 新潟出身であるプロプレイヤー・木原 惇希や、増門と同じく「新潟コミュニティ」の強豪として全国区の知名度を有する棚橋 雅康、前回The Finals2018優勝の渡邊 崇憲らといった面々と深い交流を持つ増門。マジック・コミュニティ「Onogames」の一員であり、かつMagic Onlineを主な練習場所としているという。いわゆる練習場所に悩まされる「地方の苦しみ」というものは、練習の振り返りのコメントからは感じさせない。

 「Magic Onlineでの練習」を「MOに潜る」と表現する増門は練習を練習と思わず、楽しんでいるプレイヤーのようだ。

「出来事・城塞」と各デッキタイプの相性

 話題は「出来事・城塞」の実際の相性に進んでいく。まず「《王冠泥棒、オーコ》と《夏の帳》の禁止」という大きい環境の変化を受けて、デッキリスト自体も新環境へと適応進化している。

増門「《王冠泥棒、オーコ》がいなくなったことで《グレートヘンジ》も使えるようになりました。ライフ支払いが多いので、2点回復が沁みます」

 《ボーラスの城塞》はもちろん、《残忍な騎士》と《穢れ沼の騎士》でもライフ支払いを求められる展開が多く、ライフ・コントロールは課題の1つだった。禁止改定を経て「大型のアーティファクト」の評価が上がったことで、デッキとしての「ぶん回り力」はさらに高められている。

増門「『シミック・フラッシュ』に対してはカウンターをすり抜けやすい《幸運のクローバー》の分、有利です。」

 今大会において明確にトップ・メタである「シミック・フラッシュ」に対して「出来事・城塞」は有利だと断言する増門。事実、今日すでに3回あったマッチアップを取りこぼしていない。

増門「『キャット・オーブン』(《魔女のかまど》デッキ)に対しては、良く言って微有利くらいですね。シミックでも『シミック・ランプ』にはド不利です」

 盤面への干渉を減らして《豆の木の巨人》といったマナ・サポートに回している増門。展開は安定するものの、よりランプ(マナ加速)戦法に特化するデッキに対しては終着点が相手の方がより強力になりやすい。

増門「『ラクドス・騎士』は、実はこのインタビューの直前に当たって負けてしまってるんですけど、《恋煩いの野獣》などがいる分でそう不利にも感じていないです」

 《恋煩いの野獣》は、スピーディなダメージクロックを形成する「矛」としての役割が担われていることはもちろん、出来事《切なる想い》を含めて、全体が後ろ向き(ロングゲーム向き)のデッキにおいて序盤の弱点を補う優秀な「盾」役でもある。

 そして打ち消し呪文を多用する「シミック・フラッシュ」への相性の良さからも分かるように、「青白コントロール」のようなデッキに対しても攻め続ける姿勢をとりやすい。

サイドボーディング

 各アーキタイプとの相性を語る上で外せないのがサイドボードの要素だ。

 対「キャット・オーブン」の妨害用として優秀な常在型能力を有するメインデッキの《大いなる創造者、カーン》から、その[-2]能力でサーチできるように《ボーラスの城塞》や《グレートヘンジ》、《魔術遠眼鏡》がサイドボードに置かれているほか、複数枚ある《夜の死神》もいくらか特徴的だ。

増門「今はデュレス(《強迫》)が強くなくて。『シミック・フラッシュ』に対しては《エリマキ神秘家》など裏目がある。《幸運のクローバー》と合わせて確実に相手のハンドを減らせる《夜の死神》にしてます」

 増門 健太と「出来事・城塞」。新たに登場したデッキビルダーとデッキが、今年最後のビッグ・タイトル「The Finals2019」優勝を狙う。厚い練習量と確かなカード・デッキへの観察眼に裏付けされたデッキ調整の結果は今回、花開くだろうか。

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