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エターナル・ウィークエンド・アジア2018

観戦記事

ヴィンテージ決勝:関本 寛大(東京) vs. 十文字 諒(東京)

Yohei Tomizawa

 関本と十文字の両者は固い握手を交わし、決勝戦とは思えないほどの笑顔をカメラへと向ける。

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 顔見知りだからという理由だけではない。この「エターナル・ウィークエンド・アジア2018」ヴィンテージ選手権を心の底から楽しんでいる。同時に参加者154人と大規模なヴィンテージのイベントで、この場にいることがプレイヤーとして誇り高いのだ。

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 関本は筑波大学のマジックサークル「CC」の出身者。そこで出会った仲間たちとマジックに打ち込み、卒業を機に散り散りになった今は連絡を取り合いつつも、マジックの調整はMOを中心に行っている。

 練習は裏切らず、結果として現れる。関本はスイスラウンドを全勝で駆け抜けスタンディング1位に躍り出ると、準決勝、準々決勝も2-0のストレート勝ち。「今日の人」と呼ぶのに相応しい活躍ぶりだ。

 使用するのは《逆説的な結果》をキーカードに据えた「逆説的ストーム」と呼ばれるコンボデッキの一種。《Mox Sapphire》に代表される0マナアーティファクトを戻し、ドローを進め、再度プレイすることでマナと呪文カウントを稼ぐもの。

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 対する十文字は関東の草の根の大会から駆け上がり、世界選手権にも参加経験を持つ強豪。かつてはスタンダードやモダンの大会を中心に参加していたが、ここ最近では晴れる屋トーナメントセンターで開催される「ヴィンテージ神挑戦者決定戦」のトップ8で、その姿を見る。

 「競技プレイヤーとしての十文字 諒は過去の人物」と語るが、友人達と遊ぶために作ったヴィンテージキューブを切っ掛けに、大会に対する想いがふつふつと蘇ってきた。そこで直近の大会を探したところ、「エターナル・ウィークエンド・アジア2018」ヴィンテージ選手権を見つけ、MOと現実の両方でデッキを用意し、調整してきたという。

 使用するのはヴィンテージ界のニューカマー「サバイバル/Survival」だ。デッキテクで取り上げた夏目 拓哉のものと違い、緑を中心に白と青をタッチと色を絞り、妨害要素を増やしているのが特徴的な構成だ。《スレイベンの守護者、サリア》に加え、「逆説的ストーム」を狙い撃つ《石のような静寂》が3枚採用されている。

 時は満ちた。これより先は関本と十文字だけの時間だ。

 アジア初の誇り高き王者を、決めよう。

 
ゲーム1

 スイスドローを全勝で駆け抜けた関本が先攻を選択し、マリガンチェックを行う。

「事故るのだけは勘弁だなぁ」

 決勝戦という舞台、最高のゲームを行いたい一心で、関本は胸中を明かす。それに対しゲーム内容を予測するかのように、

「こっちは事故らせるデッキだから」

 と十文字は応える。

 関本は《精神的つまづき》、《意志の力》という2種の打ち消しと《渦まく知識》、《時を越えた探索》という役割の違う2種のドローソース、色不足ない3枚の土地と、ほとんど完璧と思える初手を手にし、その上で。

 セット、《Library of Alexandria》。

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 十文字の1ターン目が何もなく過ぎれば、関本は次のターンから土地をタップするだけでカードを引き、爆発的なアドバンテージを得ることになる。

 わずか1ターン。その1ターンが勝負を分けた。

 十文字は《Tropical Island》、《Mox Jet》とマナを確保すると《Time Walk》。《Library of Alexandria》の条件を満たすため、関本は解決を許可する。

 追加ターンに入り、十文字は《Ancestral Recall》をプレイし、《精神的つまづき》で打ち消されたのを見届けると、《アメジストのとげ》。

 デッキの構成上多くの非クリーチャー呪文が採用され、勝利過程に呪文の連鎖は必要不可欠。デッキの戦略を破壊しかねないこのカードを、関本は《時を越えた探索》をコストに《意志の力》でカウンターする。

 たった1ターンで関本のプランは瓦解し、《Library of Alexandria》は使えない。あれだけ強力だった手札も、今や《渦まく知識》のみとなってしまっている。

 十文字はプレッシャーをかけ続ける。続くメタカードは《石のような静寂》だ。

 これが解決されると《逆説的な結果》で《Mox Sapphire》などを戻した際にマナが出なくなってしまうため、関本は対応して《渦まく知識》。3枚のカードを確認するも、着地を許してしまう。

 防御札の切れた関本に、十文字は次々と脅威を叩きつける。先ずは《適者生存》、続いて《Bazaar of Baghdad》だ。

 十文字の手札にクリーチャーがなかったことも幸いし、隙を見て関本は《宝船の巡航》でドローすると、《Time Walk》で追加ターンを得てからの《Time Vault》設置。さらに《ウルザの後継、カーン》で《撤廃》を追放しながら、《粗石の魔道士》を手に入れる。

 《石のような静寂》がある限りは、関本の《Time Vault》と《通電式キー》による無限ターンが決まることはない。しかし次のターンで《ウルザの後継、カーン》のマイナス能力で、静寂を打ち破る《撤廃》を手にすることができる。

 ここでもまた、1ターン。この1ターンに、またも十文字は見事合わせる。

 《Bazaar of Baghdad》を起動し土地を捨てると、残る手札は1枚。その1枚を捨て《適者生存》の起動を宣言する。

 捨てられたことで《日を浴びるルートワラ》がマッドネス効果で召喚され、《復讐蔦》がサーチされる。1枚目の《復讐蔦》を捨て再度《復讐蔦》を探し、最後の1マナを使い《復讐蔦》を捨てつつ《虚ろな者》を手札に。

 《虚ろな者》を0マナで召喚すると、条件を満たした《復讐蔦》たちが《ウルザの後継、カーン》を強襲する。

 作り上げられた十文字の盤面の打点は15。関本のライフは14。《粗石の魔道士》で1ターン稼げるとはいえ、関本としては捌くよりも逆転勝利に繋がる一手が欲しいところ。

 関本は《粗石の魔道士》をブロッカーとし、《通電式キー》をサーチする。レッドゾーンに送り込まれたクリーチャーをブロックし、残りは3。

 このドローでデッキに1枚だけ入っている《断片化》を引ければ、無限ターンが成立し、関本の逆転勝利となる。

 念じるようにドローするも、それはデッキのキーカードである《逆説的な結果》。《断片化》という最後の可能性を信じ、4枚のカードを引くも、それは望んだものではない。

 《石のような静寂》はついぞ破られることはなく、関本は次の試合へと意識を切り替える。

関本 0-1 十文字

 
ゲーム2

 十文字は長考の末、マリガンを選択する。マリガン後は《Bazaar of Baghdad》こそあるが、《復讐蔦》と《虚ろな者》のみと動けるのか不明なところ。

 関本は《Volcanic Island》から《思案》でデッキトップを確認すると、シャッフルを選択し、《Mox Emerald》、《師範の占い独楽》とパーマネントを増やしていく。《逆説的な結果》を最大限に活用するためには、戦場に土地以外のパーマネントを多く置く必要があるためだ。

 十文字は《Bazaar of Baghdad》を置くと即起動し、《復讐蔦》、《日を浴びるルートワラ》を捨てつつ、マッドネスを宣言。そして《虚ろな者》。条件を満たした《復讐蔦》は戦場に戻ると、即座にレッドゾーンに送り込まれ、1ターン目にして9点分のクロックが形成される。

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 この脅威に対し関本は動じない。《Tundra》を置くと、古のリセット呪文《天秤》を唱える。

 自身の土地を1枚を犠牲に、十文字の3体のクリーチャーを破壊し、手札1枚を捨てさせる。

 十文字が《Bazaar of Baghdad》を起動しただけで終わると、関本は《師範の占い独楽》を起動しデッキトップを入れ替え、《太陽の指輪》でマナ加速。着々と準備を進めていく。

 それでも、十文字の沈黙は先ほどの1ターンのみだった。都合3度目の《Bazaar of Baghdad》を起動すると、《日を浴びるルートワラ》をマッドネスで召喚しつつ、マナを払っての《貴族の教主》。墓地から蘇るのは2枚に増えた《復讐蔦》だ。このアタックで関本のライフは7となり、いきなり崖っぷちに立たされる。

 十文字のターンはまだ終わらない。第2メイン・フェイズに入ると手札の最後の1枚である《虚空の杯》をX=0で唱える。

 関本は《僧院の導師》を召喚し、《通電式キー》で早速トークンを1体生成するが、ここで終わってしまう。十文字の攻撃クリーチャーは3体。そのうち2体を通してしまえば、敗北してしまう。もう1枚何かしら使えるカードがあれば、モンク・トークンは2体となり、《僧院の導師》本体はブロックしなく済んだはずなのだ。

 十文字は{G}を含む2マナを立たせたまま、《復讐蔦》2体と《日を浴びるルートワラ》をレッドゾーンに送り込む。2体を通せば敗北してしまうため、関本は《復讐蔦》2体をそれぞれチャンプブロックし、お茶を濁す。

 関本の手には、またの《逆説的な結果》。《通電式キー》と《太陽の指輪》でマナを増やし、《師範の占い独楽》のドローをスタックに置いてから《逆説的な結果》をプレイし、最大限カードを引く。

 手札は増えた。その増えた手札を有効に使うにはマナが必要だ。手札に《Mox Emerald》はある、しかし。

 手札にあるマナ・アーティファクトは意味をなさない。《虚空の杯》を対処しない限り使うことはできないが、何よりもまず、関本はカードをプレイするためのマナが、絶対的に不足してしまっている。

 手札を見て、盤面を確認し、可能性を模索した後、関本は手札を開示する。

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 その瞬間、十文字は喜びを爆発させ、天高く、両手を突き上げた。

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関本 0-2 十文字


 競技プレイヤーだったはずの十文字に、なぜ引退したのか尋ねると、こう教えてくれた。

「グランプリ・北京2018を一つの区切りとしたんです。マジックで勝つにはある程度練習しなければいけない。そのことはこれまでの経験から、重々承知しています。それでも社会人となると、仕事との両立が難しく、時間が割けなくなれば段々と勝てなくなっていって」

「楽しくてやっているはずのマジックなのに、大会に出ると勝てない。それが積み重なっていくとフラストレーションが溜まり、苦しくなっていって。矛盾が生じてますよね。趣味として、息抜きに楽しむことでフラストレーションが溜まってしまうなんて。それならいっそのこと、区切りをつけて引退することに決めたんです」

 生活環境が変われば、マジックとの付き合い方も変わっていく。それは誰にでも平等に訪れる。

 何よりできたはずのことができなくなり、勝てた試合と落とし、勝利至上と意識するあまり、大会ごとのフラストレーションは増してしまう。

 勝てず、苦しく、それでもマジックはずっと好きでいたい。だからトーナメントプレイヤーからカジュアルプレイヤーへと転向する。

 その一方で、カジュアルに遊ぶために作ったヴィンテージキューブの《Black Lotus》を見ると、大会で使ってみたいという気持ちもわいてきた。いったんトーナメントシーンから引いたことで、マジックに対する意識も変化する。

「これまでの自分は型にはまったプレイヤーだったと思うんです。環境最強と言われるデッキを使い、ミラーマッチを強く意識した構成のものが勝つ。王者のデッキこそ勝つべき、それが理想と思っていました。だからいわゆるローグや地雷と呼ばれるような初見ではわからないデッキは好みではありませんでした」

 十文字を優勝に導いた「サバイバル/Survival」は、過去の強力な土地と非クリーチャー呪文と、現代のクリーチャーを主軸としたデッキ。青いカードをほとんど使用せずに、クリーチャーでビートダウンするヴィンテージではかなり珍しい部類のデッキだ。

「でも一度離れたことで、とりあえず結果を残したデッキを使うようにしたんです。それによって、今まで自分に見えていなかった世界が見えた、知見が広がった感じですね」

 新しい考え方に触れ、デッキを使うことで、プレイヤー自身の意識は変化していく。フィルターをかけずに見ることで、様々なデッキに触れるようになる。

「それこそ久しぶりに会った友人と話して、自分デッキの印象全くないんですよ。王道ばかりで、変わったデッキとか使っていなかったので。十文字のデッキ? 記憶にないなって。これだけ情熱かけてきたのに、悲しいじゃないですか。このデッキなら、友人も覚えてくれるでしょう」

 友人どころではない。マジックに関わる全ての人が《永遠の証人》として。

 十文字 諒と「サバイバル/Survival」の名を記録と記憶に、深く、鮮明に永遠刻み込むのだ。

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おめでとう、十文字 諒! アジア初のエターナル・ウィークエンド ヴィンテージ選手権チャンピオン!
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