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エターナル・ウィークエンド・アジア2018
ヴィンテージ・デッキテク:夏目拓哉の「サバイバル/Survival」
Magic Online、通称MO。この電脳世界はいつだって可能性に満ちている。
遡れば2007年の「セファリッドブレックファースト」。このデッキはMOで秘密裏に調整され、現実のトーナメントで活躍したものだ。
MOを生まれ故郷とするデッキが、満を持してこの「エターナル・ウィークエンド・アジア2018」ヴィンテージに登場している。MOのヴィンテージ界で活躍した新デッキは、現実世界でも活躍できるのだろうか。
「サバイバル/Survival」と名づけられたこのデッキは、2種類のキーカードをもっている。1枚はデッキ名の通り《適者生存》、もう1枚は「ドレッジ」のキーカードである《Bazaar of Baghdad》だ。
最も自由にカードが選択できるはずなのに、制限カードというなの固定枠が多いヴィンテージ。凝り固まりつつあるヴィンテージ界へ、一石を投じたこのデッキを詳しく見ていこう。
解説してくれるのは、プロツアー地域予選(RPTQ)突破の経験をもつ夏目拓哉(神奈川)だ。
《Bazaar of Baghdad》と《適者生存》
まずはデッキリストをご覧いただこう。
1 《森》 2 《Savannah》 1 《Tropical Island》 1 《Bayou》 2 《Taiga》 3 《吹きさらしの荒野》 2 《新緑の地下墓地》 2 《樹木茂る山麓》 4 《Bazaar of Baghdad》 -土地(18)- 4 《日を浴びるルートワラ》 2 《死儀礼のシャーマン》 3 《スレイベンの守護者、サリア》 1 《闇の腹心》 2 《Elvish Spirit Guide》 2 《ゴブリンの太守スクイー》 1 《大物狙い》 1 《配分の領事、カンバール》 1 《刻み角》 4 《復讐蔦》 1 《憤怒》 1 《不可思議》 4 《虚ろな者》 1 《黄金牙、タシグル》 -クリーチャー(28)- |
1 《Black Lotus》 1 《Mox Pearl》 1 《Mox Sapphire》 1 《Mox Jet》 1 《Mox Ruby》 1 《Mox Emerald》 1 《Ancestral Recall》 4 《適者生存》 1 《アメジストのとげ》 1 《Time Walk》 1 《虚空の杯》 -呪文(14)- |
1 《配分の領事、カンバール》 1 《刻み角》 2 《石のような静寂》 3 《魔力流出》 4 《虚空の力線》 4 《精神壊しの罠》 -サイドボード(15)- |
「近い動きのデッキとしては、モダン・フォーマットの『赤黒ホロウワン』『赤黒・復讐蔦』になります。それらのヴィンテージ版というのがイメージとしては近いと思います。大きな違いは墓地を送るカードが《Bazaar of Baghdad》と《適者生存》強力な2種に変更されているところ」
「前者はタップするだけで2枚引きつつ3枚を捨てる。毎ターン使える《信仰無き物あさり》、後者はマナこそかかりますが、必要牌を探し出すことができます。《復讐蔦》はもちろん、1枚挿しの対策カードを引っ張ってくるクリーチャー限定の《Demonic Tutor》です」
デッキの動き
「赤黒・復讐蔦」というイメージはついたが、こちらはどうやって墓地から《復讐蔦》を釣りあげるのだろう。《歩行バリスタ》等は見当たらないが……
「《Bazaar of Baghdad》を起動し、2枚引いて3枚捨てる。ここで《復讐蔦》を墓地に落とし、《日を浴びるルートワラ》をマッドネスで召喚し、3枚捨てたことで0マナで唱えられる《虚ろな者》を召喚すれば、土地をタップしただけでクリーチャーを3体コントロールと不思議な盤面に早変わり。後はどれだけここら辺のキーパーツが引けるかにかかっています」
「この《日を浴びるルートワラ》と《虚ろな者》の2種が吊り上げるキーになります」
「《適者生存》の場合はクリーチャーを選べるため、《復讐蔦》をまとめて墓地に落とし、一気に召喚という展開も可能です。《復讐蔦》以外でも《憤怒》や《不可思議》といった懐かしいインカネーションも採用されているため、予想外のダメージを叩きだすことも可能です。」
デッキがうまく回らない時は気長に
理想はあるが、いつだって現実は無情である。キーカードを引かない場合の妥協案、《復讐蔦》を引かない場合のロングゲームでの戦い方はあるのだろうか。
「デッキ内のシナジーこそ強力ですが、噛み合わないこともあり得ます。《復讐蔦》と《虚ろな者》を引かなければ、クロックは形成できず、《Bazaar of Baghdad》で手札は減るばかり。そこで《ゴブリンの太守スクイー》の出番となります。毎ターン手札に戻るため、《Bazaar of Baghdad》の効果を軽減し、《適者生存》は手札が増えることに。地味ながらアドバンテージが稼げるため、重宝します」
主要パーツ以外の細かいカードたち
青中心のデッキではないために、万能カウンター《意志の力》は使用できない。コンボ等や相手のアクションをどう対処するのか。デッキの細かいパーツの使い方を聞いていこう。
「妨害枠では《スレイベンの守護者、サリア》を筆頭に《虚空の杯》、《アメジストのとげ》の3種類5枚です。マナ加速から1ターン目にプレイできれば『ヘイトベア』のように、ロックをかけることもできますね。《意志の力》のないデッキであるため、先に置く必要がありますが」
「《死儀礼のシャーマン》と《Elvish Spirit Guide》は《適者生存》の起動時にで不足しがちな緑マナを補充します。《Elvish Spirit Guide》については追加の《Mox Emerald》枠としても使用可能となっています」
1枚挿しの意義
このデッキは《適者生存》という万能サーチカードがあるため、一部のカードを1枚挿しにし、ツールボックスのようにさまざまなカードを詰め込み、適宜使用することを狙いとしている。
「《適者生存》により、状況に応じて効果的なカードを探しだせるのも強みです。例えば《配分の領事、カンバール》は《スレイベンの守護者、サリア》と同じくストーム対策として。ダメージレースを加速させます」
「《刻み角》は『MUD』などアーティファクト対策。また下の効果でアーティファクトがタップで(戦場に)出るようになりますので、『逆説ストーム』の動きも封じることができます」
「《大物狙い》はオリジナルですが、苦手とする《ドルイドの誓い》と『MUD』対策になります。《グリセルブランド》だろうが、《引き裂かれし永劫、エムラクール》だろうがなんでもこい!」
キープ基準とマリガン
カード同士の噛み合いが重要視され、キープ基準が難しそうに感じるが、一体何をもってマリガンの判断とすればいいのだろう。
「基本的には《Bazaar of Baghdad》か《適者生存》があればキープになります。ただし先手で《Mox Emerald》などのマナ・アーティファクトと《スレイベンの守護者、サリア》をキープし、『ヘイトベア』のように立ち回ることもあります」
「速攻で押し切れればいいんですが、マリガンが原因で時には長引くことも。そうなった場合《ゴブリンの太守スクイー》を使い少しずつリソース回復に努めましょう」
メタゲームとデッキの立ち位置
さまざまなカードにあふれるヴィンテージ。メタゲームとそれぞれに対する相性についても簡単に教えてもらおう。
「ヴィンテージのメタゲームですが『逆説ストーム』、《ドルイドの誓い》、『MUD』、ジェイス系のコントロールの4種類を考えています。ただし、複雑なのはこれらのデッキはハイブリッドすることがあるということ。頭の隅に置いておいてください」
「『MUD』は序盤での相手のマナ拘束の有無が鍵になります。相手が《抵抗の宝球》などを戦場に出すと厳しいため、その前にクリーチャーを出したいところ。爆発力ではこちらが有利ですから」
「ジェイス系コントロールは非常に相性がいいですね。ヴィンテージの環境の特性上除去が少なく、《意志の力》に代表されるカウンターに頼りがち。それらはこのデッキには効果的ではありません」
「ストーム系はまさにスピード勝負の先手ゲー。いかに早く仕掛けられるか。こちらの《スレイベンの守護者、サリア》などの対策カードがプレイできるかも鍵です」
「最後になりますが《ドルイドの誓い》は非常に相性が悪いです。クリーチャーデッキである限り、避けては通れない道。サイドボードを使っても、なかなか厳しいものがあります」
MO派生の新たなヴィンテージデッキ「サバイバル/Survival」について見てきたが、いかがだったろうか。
ヴィンテージというクリーチャーがあまり活躍せず、除去が薄い環境だからこそ、このデッキは活きるのではないか。呪文の応酬に飽きた方、新たな刺激を求める方に、クリーチャーによる爆発力を味わえるデッキとして、おススメしたい。
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