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チャンピオンズカップファイナル シーズン3ラウンド3

デッキテク:「イゼット果敢」のカード選択 ~6回戦終了時点の全勝デッキ~
『タルキール:龍嵐録』が発売されるまでは赤系のアグロと聞けば、赤単、グルール、ボロスがメジャーどころであり、単純な攻撃力で劣る青は一歩遅れていた。
しかし、同セットに収録された1枚の装備品《コーリ鋼の短刀》はイゼットのカラーコンビネーションをデッキへと昇華させ、イゼット果敢をトップメタへと送り込んだ立役者だ。
チャンピオンズカップファイナル シーズン3ラウンド3(以下、チャンピオンズカップファイナル)のメタゲームをみても、全体の3割以上を占めたのは前評判が高かったイゼット果敢だった。ほかの赤系アグロと比較して速度で劣ることなく、《食糧補充》によりロングゲームも強く、死角なし。まさに最強の称号をほしいままにしているデッキといっても過言ではないだろう。
これが意味するところはイゼット果敢同士によるミラーマッチの多発。参加者は事前にミラーマッチに、そしてその先にあるメタデッキ攻略を意識して構築したはずだ。
ラウンド6終了時点で全勝していたのはわずかに4名のプレイヤー。その全員が使用していたのはやはりイゼット果敢だった。
しかし、各々構築に差異があり、どのマッチアップを重く見ているかなど思考の分岐がみてとれる。今回はラウンド6までを全勝した4名全員のイゼット果敢を比較しつつ、構築の意図を探っていきたい。
今回はチャンピオンズカップファイナル6回戦終了時点で全勝だった4名のプレイヤーにデッキの詳細について聞いていこう。
プレイヤーとデッキリスト
今回インタビューを実施したのは次の4名のプレイヤーだ。
黒田 正城

主な戦績:プロツアー神戸04 優勝、プロツアー名古屋05 トップ8、グランプリ トップ8入賞複数回ほか
4 《島》 4 《リバーパイアーの境界》 4 《尖塔断の運河》 4 《山》 4 《シヴの浅瀬》 1 《轟音の滝》 -土地(21)- 4 《僧院の速槍》 2 《かまどの精》 3 《ドレイクの孵卵者》 -クリーチャー(9)- |
4 《噴出の稲妻》 4 《コーリ鋼の短刀》 4 《選択》 4 《巨怪の怒り》 4 《手練》 3 《洪水の大口へ》 3 《食糧補充》 4 《嵐追いの才能》 -呪文(30)- |
2 《除霊用掃除機》 2 《紅蓮地獄》 1 《洪水の大口へ》 2 《呪文貫き》 1 《今のうちに出よう》 2 《声も出せない》 2 《陽背骨のオオヤマネコ》 2 《轟く機知、ラル》 1 《ティシャーナの潮縛り》 -サイドボード(15)- |
芝田 輝良

主な戦績:(この後2連勝し)チャンピオンズカップファイナル シーズン3ラウンド3 初日全勝
5 《島》 4 《山》 4 《リバーパイアーの境界》 4 《シヴの浅瀬》 4 《尖塔断の運河》 -土地(21)- 3 《僧院の速槍》 3 《ドレイクの孵卵者》 2 《精鋭射手団の目立ちたがり》 -クリーチャー(8)- |
3 《洪水の大口へ》 4 《選択》 4 《噴出の稲妻》 4 《巨怪の怒り》 4 《手練》 4 《食糧補充》 4 《嵐追いの才能》 4 《コーリ鋼の短刀》 -呪文(31)- |
1 《洪水の大口へ》 1 《呪文貫き》 1 《声も出せない》 2 《塔の点火》 2 《除霊用掃除機》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《削剥》 1 《紅蓮地獄》 1 《精鋭射手団の目立ちたがり》 1 《焦熱の殲滅》 2 《轟く機知、ラル》 1 《陽背骨のオオヤマネコ》 -サイドボード(15)- |
堀 雅貴

主な戦績:プレイヤーズコンベンション千葉2025準優勝
4 《山》 5 《島》 4 《リバーパイアーの境界》 4 《シヴの浅瀬》 4 《尖塔断の運河》 -土地(21)- 4 《僧院の速槍》 2 《精鋭射手団の目立ちたがり》 2 《ドレイクの孵卵者》 1 《かまどの精》 -クリーチャー(9)- |
4 《コーリ鋼の短刀》 3 《洪水の大口へ》 4 《選択》 4 《巨怪の怒り》 4 《手練》 4 《噴出の稲妻》 3 《食糧補充》 4 《嵐追いの才能》 -呪文(30)- |
2 《除霊用掃除機》 2 《陽背骨のオオヤマネコ》 2 《呪文貫き》 1 《石術の連射》 2 《紅蓮地獄》 1 《魔女跡追いの激情》 1 《ドレイクの孵卵者》 1 《轟く機知、ラル》 1 《洪水の大口へ》 2 《塔の点火》 -サイドボード(15)- |
村上 和弥

主な戦績:プレイヤーズコンベンション千葉2023トップ8、Red Bull Untapped 2021 日本大会トップ8、プロツアーへ複数回参加経験あり
4 《尖塔断の運河》 4 《シヴの浅瀬》 4 《リバーパイアーの境界》 5 《島》 4 《山》 -土地(21)- 4 《精鋭射手団の目立ちたがり》 4 《僧院の速槍》 -クリーチャー(8)- |
4 《噴出の稲妻》 4 《コーリ鋼の短刀》 4 《巨怪の怒り》 4 《食糧補充》 4 《選択》 4 《手練》 3 《洪水の大口へ》 4 《嵐追いの才能》 -呪文(31)- |
3 《塔の点火》 3 《ドレイクの孵卵者》 1 《呪文貫き》 1 《魂標ランタン》 1 《轟く機知、ラル》 2 《焦熱の射撃》 1 《石術の連射》 1 《除霊用掃除機》 1 《削剥》 1 《陽背骨のオオヤマネコ》 -サイドボード(15)- |
質問項目
質問項目は下記の3つである。各々の答えを聞いていこう。
Q1 メインボードに採用されているクリーチャー《ドレイクの孵卵者》、《精鋭射手団の目立ちたがり》、《かまどの精》の選択理由。
Q2 《轟く機知、ラル》と《陽背骨のオオヤマネコ》の効果的な相手、その優先度。
Q3 サイドボードの1マナ除去《声も出せない》と《塔の点火》の採用理由。
黒田 正城

黒田「今回はリュウジ(村栄 龍司)となかしゅー(中村 修平)の3人で調整して結構マッチアップした結果、《精鋭射手団の目立ちたがり》はほっぼサイドアウトしてた。事前予想ではミラーマッチは下手したら半分、じゃあミラーマッチで不要なこのカード自体を外そうとなったね。(初日終了時点)実際のところ6/8イゼット果敢で、戦績は5-1と狙い通りだったね」
黒田「特に先手での強い動きである2ターン目《ドレイクの孵卵者》、3ターン目呪文+《巨怪の怒り》で6点ダメージを積極的に狙っている。ライフを詰めつつ、追加の4点クロックを生成でき、《ドレイクの孵卵者》のタフネスも上がり定着率アップ。これが一番やりたいプラン」

黒田「《かまどの精》に関しては《食糧補充》のスライドより、後手でダブつくのが気になって。サイド後に1枚減らしていたので3枚にして、《かまどの精》の枠を作りました。《かまどの精》は赤系のぶつかり合いで強く、安心感がある。オルゾフピクシーやジェスカイコントロールといった《一時的封鎖》がある相手には対処されないし、エースアタッカーだね。出来事とクリーチャー、両モードとも強い」
Q2:《轟く機知、ラル》×2、《陽背骨のオオヤマネコ》×2
黒田「たまたま参考にしたリストが両方2枚ずつだったのがはじまりかな。一時的に《陽背骨のオオヤマネコ》は1枚になっていたけど、サイドボードの枠が空いて2枚目を取ることができた。《塔の点火》を《声も出せない》に変更した関係で、枠をひとつ空けられたんよ」
Q3:《声も出せない》×2
黒田「先手の《ドレイクの孵卵者》を対処するのに後手のベストなカードが《声も出せない》だった、それにつきるかな。《塔の点火》と違って単体で対処できるし。黒系ミッドにも強くなるから、実際《分派の説教者》を出されたゲームを乗り越えてるし」
芝田 輝良

Q1:《ドレイクの孵卵者》×3、《精鋭射手団の目立ちたがり》×2
芝田「事前の予想からイゼット果敢が増加するのはわかりきっていたことでミラーマッチに強い《ドレイクの孵卵者》を優先的に採用しました。それに加えて上位3強の残る2つ、ジェスカイ眼魔と赤単アグロにも強いのも理由です」
芝田「逆に《精鋭射手団の目立ちたがり》は上位3強には弱いものの、コントロールや版図大主、ピクシーといったデッキには効果的です。長丁場でそれらのデッキと対戦した際に取りこぼさないようにメインボードに2枚、サイドボードに追加の1枚を採用しています」
Q2:《轟く機知、ラル》×2、《陽背骨のオオヤマネコ》×1
芝田「《陽背骨のオオヤマネコ》はディミーアやジェスカイに効果的な反面、《ティシャーナの潮縛り》で誘発型能力を対処されるとただのバニラとなってしまいます。対して、《轟く機知、ラル》は《ティシャーナの潮縛り》さえ除去すれば稼働できる。対応力の高さから《轟く機知、ラル》を優先的に採用しました」

芝田「また、黒単デーモンが流行りだして《分派の説教者》などが増えたのも理由です。《轟く機知、ラル》は忠誠度が高く、ひとたび戦場へ出れば攻撃されても何故か落ちない。結果ライフを守ることに繋がり、《食糧補充》などでリソースを稼ぎ巻き返しを図るターンを作れるんです」
芝田「《塔の点火》2枚はかなりオーソドックスかなと思います。イゼット果敢のミラーマッチやジェスカイ眼魔に対しては《噴出の稲妻》の2点では効果が薄く、3点が重要。追放かつ3点を求めてこのカードを採用しています」
芝田「《声も出せない》は《焦熱の殲滅》を含めて《黙示録、シェオルドレッド》を対処できる5点相当のカードを2枚用意したくて。黒系ミッド用の枠です」
芝田「さらに先手の《ドレイクの孵卵者》を対処できる貴重なカードでもあります。《魔女跡追いの激情》や《焦熱の射撃》も候補に上がりましたが、後手2ターン目では安定しないためこちらを優先しました」
堀 雅貴

Q1:《ドレイクの孵卵者》×2、《精鋭射手団の目立ちたがり》×2、《かまどの精》×1
堀「大前提としてイゼット果敢が多い、その2マナ域の中では《ドレイクの孵卵者》が圧倒的に高性能です。ミラーマッチを優先しつつも、《精鋭射手団の目立ちたがり》が0枚だと版図大主やジェスカイコントロールに厳しい戦いを強いられるため2枚採用しています」
堀「《かまどの精》は黒田さんに教えてもらいました。中盤以降に1マナで出して《コーリ鋼の短刀》を装備し、わずか3マナで5/6のハイスタッツクリーチャーが走れます。ただし、重ね引くと弱いため1枚に留めました」
Q2:《陽背骨のオオヤマネコ》×2、《轟く機知、ラル》×1
堀「多色のコントロールに対して効果的であり、特にジェスカイコントロールに不利なため《陽背骨のオオヤマネコ》を多めに採用しました。《轟く機知、ラル》は黒系ミッドなどの中速に強く、本当は2枚採用したかったのですが枠が見つからず諦めたかたちです」
Q3:《塔の点火》×2
堀「《声も出せない》はどんなクリーチャーでも無力化できる反面、ブロッカーとして残るのが気になって。自分はサイドボードを合わせて《洪水の大口へ》を4枚採用しているので、対黒系はバウンスで受けられるため優先度を落としました」

堀「《ドレイクの孵卵者》を対処するには適しているかもしれませんが、自分は《魔女跡追いの激情》を含めて十分にカードは揃っていると判断したのもありますね」
堀「《塔の点火》は協約が強く、果敢が一度誘発した《僧院の速槍》まで落とせます。フルタップ限定ですが、《ドレイクの孵卵者》も対処でき、ミラーマッチで強くでられると考えています」
村上 和弥

Q1:《精鋭射手団の目立ちたがり》×4
村上「練習の結果4枚になりました。《ドレイクの孵卵者》が増えているのはわかっていましたが、試してみてメインボードは除去が少ないから勝利貢献度はそれほど変わらない。それなら《精鋭射手団の目立ちたがり》を優先することで勝てるマッチアップを増やそうと考えました。メインボードはジェスカイ・コントロールや版図大主、アゾリウス全知など広く戦える構築にしたかった狙いがありますね」

村上「《ドレイクの孵卵者》はサイド後で十分間に合います」
Q2:《轟く機知、ラル》×1、《陽背骨のオオヤマネコ》×1
村上「特定のデッキに効果的なカードは2枚で取りたいところですが、このデッキはほかのデッキと比較してドローが多いので探しやすくなっています。両カードともマナ総量4とこのデッキにしては重く感じます。テンポ感を損なわず、それでいて必用時に引きたい。《選択》や《手練》、《食糧補充》で探していき、最後にゲームを〆るときにあれば良いので1枚ずつのみの採用としました」
Q3:《塔の点火》×3
村上「メインから《ドレイクの孵卵者》を抜いている分、サイドボードにミラー用のカードを多めに採用しています。《塔の点火》はだいたいどのイゼット果敢も3枚じゃないですかね。協約コストも用意しやすく、3点が強い場面も多くあります。ミラーマッチでは1マナ残して果敢の牽制のし合いが多発しますが、その上から余剰の1点で倒せるのは《噴出の稲妻》にはできない仕事です」
村上「それと《焦熱の射撃》はこだわりがありまして。ミラーマッチの《ドレイクの孵卵者》、赤単アグロの《魔道士封じのトカゲ》、黒系の《分派の説教者》や《黙示録、シェオルドレッド》など対イゼット果敢用のカードへのカウンターサイドボードとなります」
――皆さんご協力ありがとうございました。
一口にイゼット果敢といっても、どのデッキへ強くアプローチをとるか、それにより採用するカードは分岐していく。ミラーか、それを含めたトップメタか、はたまた少数のメタデッキへの対抗策とするか。カードの選択枚数を知り、理由を聞くことでどのデッキを意識しているのかがはっきりと理解できた。
今後、苛烈なイゼット果敢メタが進むと思われるが、上記の回答の中に最適なイゼット果敢を構築するヒントがあるのではないか。本稿がその助けとなれば幸いだ。

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