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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
帰ってきたスタンダード・アナライズ グランプリ・静岡に向けて:第2回
帰ってきたスタンダード・アナライズ グランプリ・静岡に向けて:第2回
こんにちは。
いよいよグランプリ・静岡も今週末に迫ってまいりました。今回の記事では、「青単信心」と「黒単信心」に立ち向かう「Tier2(ティア・ツー)」のデッキをご覧いただきたいと思います。前回の記事で想定されるメタゲームと「Tier1」のデッキ解説をしたので、そちらも合わせてご覧ください。
「青白コントロール」
6 《島》 6 《平地》 4 《アゾリウスのギルド門》 4 《神聖なる泉》 2 《変わり谷》 2 《欺瞞の神殿》 2 《静寂の神殿》 -土地(26)- -クリーチャー(0)- |
1 《不死の霊薬》 3 《アゾリウスの魔除け》 3 《今わの際》 1 《本質の散乱》 4 《拘留の宝球》 3 《解消》 2 《予言》 4 《至高の評決》 2 《中略》 4 《スフィンクスの啓示》 4 《思考を築く者、ジェイス》 3 《太陽の勇者、エルズペス》 -呪文(34)- |
1 《霊異種》 2 《真髄の針》 4 《反論》 3 《天界のほとばしり》 1 《今わの際》 1 《否認》 1 《隔離する成長》 1 《記憶の熟達者、ジェイス》 -サイドボード(14)- |
古来より存在する由緒正しき「青白コントロール」の現代版がこちらです。序盤をカウンター呪文や《今わの際》、《拘留の宝球》などで捌いていき、相手の展開が伸び切ったら《至高の評決》で盤面をリセット。そうして終盤戦まで持ち込めば《スフィンクスの啓示》による圧倒的な物量差であったり、《思考を築く者、ジェイス》と《太陽の勇者、エルズペス》の強力プレインズウォーカータッグがゲームを掌握してくれるという算段です。
前回もお伝えしましたが、《今わの際》は現環境に蔓延する《群れネズミ》、《夜帷の死霊》、《波使い》、そしてこのデッキにとって比較的対処の難しい《変わり谷》をも対処可能なマスターピースです。一昔前であれば、優秀な単体除去である《破滅の刃》や《究極の価格》を求めて黒を足すほどでしたが、まさか《破滅の刃》よりも《今わの際》が重宝される時代が来ようとは予想だにしていませんでした。
「青白コントロール」のフィニッシャー枠は、《霊異種》1枚、《太陽の勇者、エルズペス》2枚という形が一般的ですが、このリストは《太陽の勇者、エルズペス》3枚に統一しているところが印象的です。しかしながら、このリストのように少なくともサイドボードには《霊異種》を入れておくことをお勧めします。なぜならば、サイドボード後は多くのデッキが《拘留の宝球》対策を施してくるため、対戦相手のプレインズウォーカーを抑え込むことや、ゲームを掌握しきることが難しくなるためです。
《霊異種》さえあればどんなプレインズウォーカーにも手を焼くことはありませんし、対戦相手を速やかに葬り去ることが可能です。そのため、デッキに多様性を持たせるという意味合いでも、フィニッシャーの枠はメインから《霊異種》1枚、《太陽の勇者、エルズペス》2枚という形が理想ではないかと思います。
このリストはサイドボードが14枚しか掲載されていませんでしたが、15枚目は《払拭》か2枚目の《否認》にするといいでしょう。また、《盲従》はビートダウン対策として優秀なので、《天界のほとばしり》1枚と入れ替えるといいと思います。
このデッキは非常にバランスが良いため1本目は環境のほとんどのデッキに対して五分以上に渡りあうことができますが、課題となるのはサイドボード後です。このデッキの屋台骨である《拘留の宝球》対策が入ってくるだけでも厳しい戦いを強いられることになりますが、それに加えてこちらのサイドボードがやや脆弱な印象を受けます。これはリスト云々の問題ではなく、「青白」2色の限界とも言える事象なので、もしも良いサイドボードができない場合は黒を足して「エスパー(青白黒)・コントロール」にするのもひとつの手だと思います。
「エスパー(青白黒)・コントロール」
4 《島》 4 《平地》 4 《神聖なる泉》 4 《湿った墓》 4 《欺瞞の神殿》 3 《神無き祭殿》 4 《静寂の神殿》 -土地(27)- 2 《霊異種》 -クリーチャー(2)- |
1 《遠隔 // 不在》 2 《思考囲い》 3 《アゾリウスの魔除け》 1 《ディミーアの魔除け》 1 《肉貪り》 1 《破滅の刃》 1 《究極の価格》 4 《拘留の宝球》 2 《解消》 2 《英雄の破滅》 4 《至高の評決》 1 《中略》 4 《スフィンクスの啓示》 4 《思考を築く者、ジェイス》 -呪文(31)- |
3 《群れネズミ》 3 《鬼斬の聖騎士》 2 《ヴィズコーパの血男爵》 1 《真髄の針》 1 《思考囲い》 3 《反論》 1 《破滅の刃》 1 《減縮》 -サイドボード(15)- |
「青白コントロール」と同じ思想を抱きつつも、そこに《思考囲い》や《英雄の破滅》といった優秀な黒いカードを足したデッキが「エスパー(青白黒)・コントロール」です。
《ディミーアの魔除け》は色拘束こそきついものの、《今わの際》と同様の理由から多くのマッチアップで重宝するカードです。しかしながら、先ほども述べたように現在は《今わの際》が黒の除去カードと同等かそれ以上の活躍を見せてくれているので、黒を足す理由は除去ではなく、サイドボードの充実化にあると思います。このリストにもそれは顕著に表れており、攻防一体の《群れネズミ》や、「黒単信心」と「白単ビートダウン」に強い《ヴィズコーパの血男爵》は「青白コントロール」にはないこのデッキだけの特権です。
このデッキにおける《群れネズミ》は、タップインランドの多さゆえに3ターン目からよどみなく起動することは難しいかもしれませんが、対戦相手はほぼ確実に除去を抜いてくるのでそれでも十分に効果的です。また、対「青単信心」では《霊異種》や《太陽の勇者、エルズペス》のような重いフィニッシャーは全てサイドアウトしたいため、《群れネズミ》のような軽いフィニッシャーを搭載できることはゲームプラン的にもサイドボードプラン的にも非常に優れています。
~対「青白コントロール」・「エスパー・コントロール」戦における先手・後手の選択~
「青白コントロール」は序盤の脅威に欠けるので、僕は対「青白コントロール」戦では後手を取るようにしていますが、対「エスパー・コントロール」では《思考囲い》と《群れネズミ》が入ってくる可能性があるので先手を取るようにしています。
もちろん、このリストのように自身が《群れネズミ》をサイドインする場合は常に先手を取るべきだと思いますが、もしもそうでない場合は対「青白コントロール」戦では後手を取る戦法もぜひ一度お試しください。コントロール対決ではよどみなく土地が伸びるかどうかで勝敗が決まると言っても過言ではないので、先手後手の1枚差が勝負の分かれ目になることも大いにありえますからね。
「赤単タッチ白信心」
12 《山》 4 《聖なる鋳造所》 4 《凱旋の神殿》 1 《ボロスのギルド門》 4 《ニクスの祭殿、ニクソス》 -土地(25)- 4 《灰の盲信者》 4 《炎樹族の使者》 4 《凍結燃焼の奇魔》 4 《ボロスの反攻者》 4 《モーギスの狂信者》 2 《鍛冶の神、パーフォロス》 4 《嵐の息吹のドラゴン》 -クリーチャー(26)- |
3 《岩への繋ぎ止め》 3 《ミジウムの迫撃砲》 2 《パーフォロスの槌》 1 《紅蓮の達人チャンドラ》 -呪文(9)- |
1 《摩耗 // 損耗》 1 《岩への繋ぎ止め》 4 《ボロスの魔除け》 3 《神々の憤怒》 1 《パーフォロスの槌》 2 《戦導者のらせん》 1 《燃え立つ大地》 2 《軍勢の集結》 -サイドボード(15)- |
「青単信心」と「黒単信心」に次ぐ第三の「信心」デッキが「赤単信心」デッキです。他の「信心」デッキよろしく《灰の盲信者》、《ボロスの反攻者》といった色マナ拘束の強いカードで盤面を制圧していき、それらを《モーギスの狂信者》か《鍛冶の神、パーフォロス》で攻撃力へと変換していくことが基本戦略です。複数枚の《炎樹族の使者》と《ニクスの祭殿、ニクソス》が揃った際の展開には目をみはるものがあり、単純な爆発力という意味では環境でも屈指のデッキだと認知されています。
環境初期では《ドムリ・ラーデ》と《歓楽者ゼナゴス》のために緑を足した形が一般的でしたが、「青単信心」と「黒単信心」の支配が強まるに連れて、それらの主力クリーチャーである《波使い》や《冒涜の悪魔》を対処できる《岩への繋ぎ止め》に白羽の矢が立ち始めました。「黒単信心」に対して《ヴィズコーパの血男爵》と同等程度に強力な《軍勢の集結》が使えることもまた、白を選ぶ大きな理由になっています。
このアーキタイプはどちらかと言えば「黒単信心」や「青白」系のデッキのように遅いデッキに対して強い構成になっていますが、「青単信心」にも決して勝てないことはありません。「青単信心」側が序盤に《変わり谷》を引いて展開がもたついていたりすればもちろんのこと、仮にきれいに展開されようとも《波使い》に《岩への繋ぎ止め》か「超過」の《ミジウムの迫撃砲》を合わせることができれば勝機を見出すことができます。
このデッキの弱点はと言いますと、《炎樹族の使者》や《ニクスの祭殿、ニクソス》を引けなかった場合の動きがもっさりしていることです。リストを見てもらえれば分かるように、2マナのカードが多いため中盤までは1ターンに1回しか動けないことが多く、そうなってもしまうとこのデッキは出来損ないのビートダウンデッキに成り下がってしまいます。
その代わりに圧倒的な爆発力を手にしているので難しいところですが、このデッキが更なる飛躍を見せるためには《モーギスの狂信者》や《嵐の息吹のドラゴン》といったクリーチャー陣を抜いて軽いカードを採用するなど、既存の構築にとらわれない大胆な発想が必要なのかもしれません。
「白単タッチ黒ビートダウン」
8 《平地》 4 《神無き祭殿》 4 《変わり谷》 4 《静寂の神殿》 1 《オルゾフのギルド門》 1 《沼》 -土地(22)- 4 《ボロスの精鋭》 4 《ドライアドの闘士》 4 《万神殿の兵士》 4 《果敢なスカイジェク》 4 《管区の隊長》 3 《威圧する君主》 4 《放逐する僧侶》 2 《ザスリッドの屍術師》 -クリーチャー(29)- |
4 《精霊への挑戦》 3 《オルゾフの魔除け》 2 《ヘリオッドの槍》 -呪文(9)- |
2 《罪の収集者》 2 《ザスリッドの屍術師》 2 《利得 // 損失》 3 《闇の裏切り》 2 《思考囲い》 3 《破滅の刃》 1 《オルゾフの魔除け》 -サイドボード(15)- |
以前紹介させていただいた「白単タッチ赤ビートダウン」の最新版は2色目に黒を選んだものでした。今をときめく各種「信心」デッキとは違い、普通に展開して普通に殴りきる古典的な、それでいて堅実な攻めが魅力のデッキです。
マナカーブの頂点が3で抑えられたこのデッキは、他のデッキの追随を許さない手数の多さで対戦相手を圧倒します。1マナとは思えない強力な3種類のクリーチャー陣を筆頭に攻め入り、《威圧する君主》や《放逐する僧侶》といった優良クリーチャーが展開と妨害の両立をも可能にします。
これほどまでの行動回数を単体除去で凌ぎ切ることは不可能に近く、それゆえに近頃では《電謀》や《減縮》のようなあからさまな「白単ビートダウン」対策を見かける機会が増えています。このデッキのサイドボードにもミラーマッチ用と思われる《利得 // 損失》が採用されていることからも、「白単ビートダウン」系のデッキがメタゲームの一角を占めていることがご理解いただけるかと思います。
2色目を赤にしていた理由は《至高の評決》に耐性が付き、なおかつ本体火力としての機能もはたす《ボロスの魔除け》がほとんどでしたが、このリストでは《ザスリッドの屍術師》と《オルゾフの魔除け》のために黒を選んでいます。
前者はこのデッキのクリーチャーの大多数が「人間」クリーチャーであることに着目した1枚で、このデッキが苦手とする《至高の評決》対策としての働きが期待できます。後者はライフ損失こそあるものの、制限のない貴重な2マナの完全除去として道を切り開いてくれます。
また《オルゾフの魔除け》は黒と赤を分かつ最大の理由と言ってもいいほどで、「タッチ赤」バージョンだと色の性質上対処の難しかった《波使い》を容易に対処できる点は黒を選ぶ大きな動機となっています。
サイドボードには追加の《破滅の刃》までもが控えていますし、「黒単信心」に効果的な《闇の裏切り》も現在のメタゲームであれば非常に魅力的ですので、「青単信心」と「黒単信心」がツートップだと想定するのであれば、2色目の選択は赤ではなく黒に軍配が上がると言っていいでしょう。
「コロッサル・グルール(緑単タッチ赤信心)」
9 《森》 2 《山》 4 《踏み鳴らされる地》 4 《奔放の神殿》 4 《ニクスの祭殿、ニクソス》 -土地(23)- 4 《エルフの神秘家》 4 《炎樹族の使者》 4 《森の女人像》 4 《旅するサテュロス》 2 《漁る軟泥》 4 《世界を喰らう者、ポルクラノス》 1 《狩猟の神、ナイレア》 3 《高木の巨人》 1 《自由なる者ルーリク・サー》 -クリーチャー(27)- |
4 《ドムリ・ラーデ》 2 《歓楽者ゼナゴス》 4 《獣の統率者、ガラク》 -呪文(10)- |
3 《不毛の地のバイパー》 3 《ナイレアの信奉者》 1 《自由なる者ルーリク・サー》 4 《霧裂きのハイドラ》 2 《破壊的な享楽》 2 《食餌の時間》 -サイドボード(15)- |
「コンボデッキが作りたかったんです。」
このデッキの製作者である三原 槙仁氏がこのデッキを作った理由を尋ねられた際にそう語った通り、このデッキの理想の動きは正しくコンボデッキの動きそのものです。
大量のマナクリーチャーと《炎樹族の使者》、そしてそこに《ニクスの祭殿、ニクソス》が加われば、3ターン目に《獣の統率者、ガラク》をキャストすることも夢ではありません。一度《獣の統率者、ガラク》が着地してしまえば、[+1]能力が更なる戦力を供給し、それまでに築いていた膨大なマナの使い道を与えてくれます。時には《狩猟の神、ナイレア》を《踏み荒らし》のごとく使い倒したり、《世界を喰らう者、ポルクラノス》が15/15近くまで巨大化することもあるほどです。
メタゲームのトップに位置する「青単信心」の《潮縛りの魔道士》と《波使い》だったり、「黒単信心」の《冒涜の悪魔》などを対処しづらいため、メタゲーム的には決して良い立ち位置にいるとは言えないものの、一度でもこのデッキを使えば、多くの人がその豪快かつ緻密な動きの虜になってしまうのではないかと思います。
このデッキを使う際の注意として、Magic Online(以下MO)で《世界を喰らう者、ポルクラノス》に関する決定的なバグがあることをお伝えしておきます。
MOでは《世界を喰らう者、ポルクラノス》を「怪物化」させた際に、対戦相手がクリーチャーをコントロールしていようとも「ダメージを与えない」ことを選ぶことができますが、これはバグだそうです。例えば対戦相手が《冒涜の悪魔》しかコントロールしていない状況下で《世界を喰らう者、ポルクラノス》をX=1で「怪物化」した場合、MOならば「ダメージを与えない」ことを選んで生き残ることができるのですが、実際にはX=1以上の場合は最低でも1体以上の対象を取らなければいけないので、《世界を喰らう者、ポルクラノス》は強制的に《冒涜の悪魔》とダメージを与え合い、結果として《冒涜の悪魔》に1点が、《世界を喰らう者、ポルクラノス》には6点のダメージが入って一方的に死んでしまいます。
僕もつい最近まで知らなかったことなので、もしも主にMOで練習しているという方はご注意ください。(※なお、このバグは12月11日のメンテナンスで修正されました。)
「帰ってきたスタンダード・アナライズ グランプリ・静岡に向けて」はこれにて終了です。僕は期末試験の関係で参加できなくなってしまったので、カバレージを観ながら友人たちを応援したいと思います。
はたしてグランプリ・静岡は「青単信心」と「黒単信心」が新たな歴史を刻む大会となるのか。それともその他のデッキの逆襲なるのか。スタンダードが大好きなプレイヤーとしては、今後の環境を占う大会として大いに注目しています。
参加されるみなさんは優勝目指してがんばってください! それでは、また次回の記事で。
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