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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

ストーム値:『イニストラード』『イニストラードを覆う影』

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ストーム値:『イニストラード』『イニストラードを覆う影』

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年3月27日


 昨年、私はストーム値という概念を諸君に紹介した。これは私が、あるメカニズム要素がスタンダード環境のセットに再録される可能性を語るために自分のブログで発明した道具である(ここで強調しておきたいのは、ストーム値は私の個人的見解であるということである)。ストーム値に関する最初の記事では、『タルキール覇王譚』ブロックについて語っている。その4か月後に、2つ目の記事で『ラヴニカ』『ラヴニカへの回帰』両ブロックについて。さらに6か月後の3つ目の記事では『ゼンディカー』『戦乱のゼンディカー』両ブロックについて語っている。

 ストーム値に関する記事は好評だったので、4つ目を書くことにした。今回は『イニストラード』『イニストラードを覆う影』両ブロックのメカニズムに注目することにしよう。ストーム値について詳細に知りたい諸君は、それについて掘り下げている最初の記事を読んでくれたまえ。ここでは、手短にまとめておこう。

 ストーム値は1から10まであり、おそらく再録されるであろうメカニズム的要素が1、まず再録されないであろうメカニズム的要素が10である。値それぞれの意味は以下の通りだ。

 次のセットででも再び使われることになるのは間違いない。

例:飛行、接死、占術

 再び使われることになるのは間違いないが、すぐとは限らない。

例:キャントリップ、混成マナ、両面カード

 おそらく今後何回も使われることになるだろう。

例:サイクリング、フラッシュバック、上陸

 今後も使われることになるだろうが、確実と言うには問題がある。

例:変異、キッカー、刻印

 再録する場所を探す必要があるが、私は可能性が高いと思っている。

例:進化、怪物化、陰鬱

 再録する場所を探す必要があるが、私は可能性が高いとは思っていない。

例:貪食、忍術、生体武器

 再録されるとは思われないが、ふさわしい環境があれば再録はあり得る。

例:氷雪マナ、回顧、刹那

 再録されるとは思われないが、もしかしたらあり得る。

例:マッドネス、エコー、待機

 ありえないとは言わないが、ちょっとした奇跡が必要。

例:フェイジング、スレッショルド、激突

10

 ありえないとは言わないが、かなりの奇跡が必要。

例:ストーム、発掘


 次に、メカニズムのストーム値を決めるために使っている5つの分類について説明しよう。

人気

 プレイヤーがこのメカニズムを好きだったかどうか。プレイヤーが好きなものは、再録される可能性が高い。そうでなければ、再録される可能性は低い。これは「楽しかったか」という質問が大きな基準になる。この評価は以下の4段階になる。

  • 大好評 ― 市場調査で、史上すべてのメカニズムの中で上位25%に含まれているメカニズム。なお、これらの評価は現在のメカニズムと史上すべてのメカニズムとの比較になる(市場調査はずっと以前から始めていたのだ)。従って、上位に入るのは難しい。
  • 好評 ― 市場調査で、平均以上で上位25%には至らなかったもの
  • 普通 ― 市場調査で、平均以下で下位25%には至らなかったもの。ただし平均としてかなり好かれているものなので、平均以下といってもプレイヤーの多くが嫌っているわけではなく、それ以上に好かれているメカニズムがあるというだけである。この分類に入ったからといって再録の可能性が下がるわけではない。
  • 不評 ― 市場調査で、下位25%のメカニズム。この区分に入ったものは、再録の可能性は低くなる。
デザイン空間

 このメカニズムで作れるカードの枚数にどれぐらい余裕があるか。それ以上カードを作ることができなければ、どれだけのプレイヤーが好んでいようと、どれだけデベロップしやすかろうと関係ないので、デザイン空間は重要である。この評価は以下の3段階になる。

  • 広大 ― このメカニズムには非常に広大なデザイン空間がある。何度でも再録できて、新カードを作る上での問題はない。
  • 中等 ― このメカニズムにはいくらかのデザイン空間があり、簡単に再録はできるが何度でもというわけにはいかない。
  • 狭小 ― このメカニズムはこのセット内でデザイン空間の限界に来ている。再録したときに充分なカードをつくるのは難しい。
多用途性

 このメカニズムと他のメカニズムの相性はどうか。このメカニズムには多くの前提が必要か、それともサポートはほとんどいらないか。言い換えると、このメカニズムによってデザインは簡単になるか難しくなるか。この評価は以下の3段階になる。

  • 柔軟 ― このメカニズムは使用が簡単で、サポートはほとんど必要なく、他のメカニズムと容易に相互作用する。
  • 普通 ― このメカニズムは多少使用が難しく、いくらかのサポートが必要で、他のメカニズムと絡むのに問題がある。
  • 硬直 ― このメカニズムの使用は難しく、かなりの前提が必要となり、他のメカニズムと混ぜるのには明確な問題がある。
デベロップ

 このメカニズムのコスト付けがどの程度難しいか。バランスを取るのは難しいか。このメカニズムを仕上げるのが簡単かどうか。この評価では、メカニズムをデベロップする難易度を見ている。評価は3段階になる。

  • 問題なし ― このメカニズムをデベロップする上での問題は存在しない。
  • 普通 ― デベロップする上でいくらか問題は存在するが、大問題ではない。
  • 問題あり ― このメカニズムをデベロップする上で、かなりの問題が存在する。
プレイアビリティ

 このメカニズムの働きや他のメカニズムとの相互作用を、プレイヤーが理解する上で問題があったかどうか。このメカニズムを使う上で物理的な問題はなかったか。この評価はメカニズムをプレイする上での障壁があったかどうかを見るもので、2段階になる。

  • 問題なし ― プレイする上で問題はなかった。
  • 問題あり ― プレイすることに影響するような問題が存在した。

 これを踏まえて、メカニズムの値付けを始めることにしよう。


変身 (『イニストラード』『闇の隆盛』『イニストラードを覆う影』『異界月』、『マジック・オリジン』)

回転

クリックで変身
人気: 大好評

 市場調査の際に我々が尋ねているのは、変身メカニズム単体ではなく両面カードについてである(変身は両面カードの一部である)。これまで全ての両面カードは変身メカニズムを使っているので、両面カードの評価と変身メカニズムの評価は同一視しても問題ないだろう。プレイヤーは変身(と両面カード)を大好きなのだ。これよりも人気があったのは、フルアートの土地とギルド、混成マナ、多色カードだけである。つまり、これは「マジック史上最も愛されたメカニズム」のリストの最高位に位置付けられるものである。

デザイン空間: 広大

 複数の働き方をするカードはマジックの黎明期から存在し、ほぼ全てのセットに登場してきた。両面カードの物理的な特徴が問題でなければ、多くのセットで変身が登場していたことだろう。デザイン空間は非常に広い。

多用途性: 普通

 変身をこの分類においてどう評価すべきだろうか。伝統的な感覚で言えば、変身は非常に柔軟である。シナジーを作るのも簡単で、デッキに1枚だけ入れることも大量に入れることもできるような部品的メカニズムである。問題は、変身は両面カードと一緒に使うものであり、その物理的な問題からほとんどのメカニズムよりも扱いにくいものになっているのだ。どう評価すべきだろうか。デザイン的には柔軟で、物理的には硬直である。そのため、ここではその中間を取って普通と評価することにした。

デベロップ: 問題なし

 変身には多くの調整点、つまりカードがバランス良いものになるようにデベロッパーが調整できるさまざまな数字があり、他の多くのメカニズムよりもバランスをとるのが簡単になっている。ただし、変身には、ほとんどのメカニズムには存在しない物理的な問題(ドラフトでの扱いや、スリーブ不使用のときの扱いなど)がある。

プレイアビリティ: 問題あり

 このメカニズムに一貫したテーマがあるとするなら、それは、変身にはゲームプレイ以上の問題があるということである。スリーブをかけるか代理のカードを使い、そして変身したときにはスリーブから出さなければならないのだ。両面カードと変身の働きに関しては理解しなければならない問題も存在する。全体として、フレイバーの強力な助けがあってプレイヤーは直感的に捉えることができているが、障害は大量にあるのでこの分類では問題ありとなる。

ストーム値: 3

 まず、このストーム値は両面カードではなく変身の値であると言っておこう(両面カードなら2だ)。変身は、間違いなく再び登場するであろう両面カードの一部であるが、(両面カードという)カードの道具ではなくメカニズムの分類ということになると、落葉樹メカニズムというよりは人気があって何度も再録されるであろうメカニズムだと私は考えている。変身は非常に人気が高く、メカニズムとして考えられる限りのデザイン空間を持っている。ただし同時に平均的なメカニズムよりも問題は多く、その問題のせいで使い続けるということはできないでいるのだ。変身のファン諸君、恐れるなかれ。このメカニズムは必ずや何度も再録されることになるだろう。


フラッシュバック (『イニストラード』『闇の隆盛』、『オデッセイ』『トーメント』『ジャッジメント』『時のらせん』『未来予知』『アンヒンジド』)

人気: 大好評

 マジックの歴史上、フラッシュバックほど人気の高いメカニズムはそう多くない。『オデッセイ』ブロックで初登場し、『時のらせん』ブロックで再録され、さらに『イニストラード』ブロックでも再録された(2つ目の銀枠セットである『アンヒンジド』でも、1枚のカードで再録されている)。収録されるたびに、大人気になっている。

デザイン空間: 広大

 わずかな例外を除いて、インスタントやソーサリーが持ちうるあらゆる効果とフラッシュバックを組み合わせることができる。非常に広大なデザイン空間である。

多用途性: 柔軟

 フラッシュバックを使うセットでは、能力を活用する助けになるカードを数枚作ることになることが多いが、サポートが必要なメカニズムとは違い、フラッシュバックは単体で成立しやすい。フラッシュバックはインスタントやソーサリーに限られているが、セット内の他の要素とシナジー的に働くようにする上で障害になることはほとんどない。唯一の環境的な問題は、墓地をリソースとして消費するメカニズムと相性が悪いことだが、それは簡単に避けられる程度のデザイン空間しか使わない。全体として、フラッシュバックは他のメカニズムと相性がいいと言える。

デベロップ: 問題なし

 作った当初はパワー・レベルの調整に少し時間がかかったが、今、我々はフラッシュバックの適切なコストがどのようなものであるべきかという性質を理解しており、デベロップしやすいメカニズムである。マナ・コストとフラッシュバック・コストが存在して調整できることも大きな助けになっている。

プレイアビリティ: 問題あり

 フラッシュバックは墓地を記憶し、どのフラッシュバック呪文が自分や相手の墓地にあるかを意識する必要がある。

ストーム値: 3

 これは典型的なストーム値3であり、戻ってきても驚くことではない。私は長年に渡り多くのメカニズムをデザインしてきたが、フラッシュバックは私のお気に入りである。データが示すとおり、これが気に入っているのは私だけではない。このメカニズムはマジックの将来に渡り何度も登場することだろう。


陰鬱 (『イニストラード』『闇の隆盛』、『コンスピラシー』『統率者(2014年版)』)

人気: 普通

 陰鬱は単にこの(4段階で下から2番目)分類に入っただけでなく、かろうじてこの分類に入ったという評価だった。正直なところ、私は初めて陰鬱の評価を見たときには驚かされた。私の印象では、もう少し好かれていると思っていたのだ。

デザイン空間: 中等

 もう1つ、この評価についてもギリギリ中等だった。陰鬱には様々な制約があり、その中でも最大のものは戦闘後(つまりクリーチャーの死亡がよく起こる時期のあと)で有意義な報奨を持たなければならないということである。そのため、例えば戦闘中に使うような呪文は不可能になる。陰鬱には、パーマネントにも呪文にもつけることができるという利点はある。全体として、陰鬱は一見すると実際よりも少し広いデザイン空間があるように見える種類のメカニズムなのだ。

多用途性: 柔軟

 陰鬱はクリーチャーの死亡を必要とするが、マジック、特にリミテッドにおいてそれが大量に発生しないということはない。つまり、陰鬱はクリーチャーや除去呪文と相性がいいが、それ以外の呪文と組み合わせるのは多少難しいということである。しかし、我々はすでにそのための方法を会得している。

デベロップ: 問題なし

 デベロップ上の最大の問題は、本来の効果と強化された効果の差がコストに見合うようにしなければならないということである。しかし大局的に見て、それはそれほど難しい問題ではない。

プレイアビリティ: 問題なし

 順番の問題は多少あり(陰鬱呪文を唱える前に攻撃しなければならない)、そのために戦闘を戦略的に理解するのがほんのわずかだけ複雑になるが、全体としては非常に単純で直截的なメカニズムである。

ストーム値: 5

 陰鬱は人気がなくてデザイン空間もいくらか狭いため、ストーム値は多少大きくなっているが、プレイ感の良いメカニズムであり、私はいずれ再録されるだろうと確信している。


呪い (『イニストラード』『闇の隆盛』『イニストラードを覆う影』、『統率者(2013年版)』)

人気: 普通

 マジックのプレイヤーには2種類いる。呪いが大好きなプレイヤーと、呪いについてあまり意識しないプレイヤーだ。嫌うというより無関心なのだ。そして、後者のグループのほうが前者のグループよりも多い。呪いの人気は、それがどれだけフレイバーに富んでいるかによると私は考えている。

デザイン空間: 中等

 初めは、全ての呪いはプレイヤーをエンチャントするオーラで、不利になる能力をそのプレイヤーに与えるものだった。従って、定義上、非常に限られたデザイン空間だったのだ。興味深いことに、取り組んでいくうちに私が最初考えていたよりも広いデザイン空間を持っていることがわかってきた(普通はその逆で、狭いことがわかってくることがほとんどである)。

多用途性: 普通

 エンチャント先であるプレイヤーは必ず存在するし、不利になる能力はほとんどの場合に有用であるが、呪いは他の多くの「メカニズム」が持つようなシナジーを持たない。

デベロップ: 問題なし

 呪いのほとんどは競技レベルのカードではないので、パワー・レベルに関してはデベロップ的な問題はあまり存在しない。

プレイアビリティ: 問題あり

 呪いは、カードをテーブル上で対戦相手の側に置く必要があるので、把握するのが少し難しく、また対戦相手がそれを自分のカードと混ぜてしまう可能性が非常に大きくなる。

ストーム値: 2

 呪いがサブタイプであるという特徴が非常に大きい。呪いだと感じられるようなカードがあれば、それをセットに入れることができるのだ。また、誰もに好かれるようにするよりも、誰かが大好きなようにするほうが重要だということについてはしばしば語ってきている。呪いは誰もに好かれるようなものではないが、呪いファンは本当に呪いを楽しんでいる。濃いフレイバーを持つことも考えると、これはいつでもセットに登場しうるものの1つだと言えるだろう。


窮地 (『闇の隆盛』)

人気: 不評

 これは今日取り上げる15個のメカニズムの中で最も人気のないメカニズムだと思う。このメカニズムが有効になることは少なかった上に、有効になったときでさえもゲームに影響をおよぼすほどではなかった。

デザイン空間: 狭小

 『闇の隆盛』だけでも充分なデザインを作るのは困難だった。このメカニズムには、強化されたら負けないで済む可能性があるような効果が必要だったが、これは非常に狭いデザイン空間しか存在しないのだ。

多用途性: 普通

 この評価については悩んだ。硬直よりも普通がふさわしいとした理由は、ライフの総量(とライフの喪失)はマジックの根幹部分であり、扱わないでいることは難しいからである。

デベロップ: 問題あり

 窮地には、ライフを5点以下にしなければならないというリスクがある。そして、そのリスクに見合うようにするには、強化された能力がありえないほど大きいものであるか、元の効果が窮地なしでも使い物になるものである必要がある。どちらもバランスをとるのは簡単ではない。

プレイアビリティ: 問題なし

 窮地を使うには、全てのプレイヤーのライフの総量を把握する必要があるが、それは普段からやっていることであり、大問題にはならない。

ストーム値: 8

 プレイヤーに好かれているわけでもなければ、デザインやデベロップが簡単なわけでもない。これが再録されるとしたら、窮地が完璧にふさわしいような世界が作られたときだろう。


不死 (『闇の隆盛』『アヴァシンの帰還』)

人気: 好評

 寄ってらっしゃい見てらっしゃい。死んだはずのクリーチャーが強くなって復活だ、というのは一般的に人気がある話だ。

デザイン空間: 中等

 デザイン上の最大の制約は、このメカニズムを戦場にしがみつくためでなく攻撃するためのものにしたいという要求だ。従って、我々は、これを持つクリーチャーではブロックできない、あるいはブロックしたくないようにする。そのための方法はいくつも存在する(「これではブロックできない」「これでは飛行を持つクリーチャーしかブロックできない」など)。しかし、無数にあるわけではない。これが狭小でなく中等になっているのは、クリーチャーそのものの持つ広いデザイン空間のおかげである。

多用途性: 柔軟

 クリーチャーがゲーム内の他のものとシナジーを持つようにするのは非常に簡単である。特に、攻撃させたいクリーチャーならなおのことだ。

デベロップ: 普通

 殺すのが難しいクリーチャーにはデベロップ上の懸念があることは多いが、このメカニズムは楽しいものなので、デベロッパーたちはすでにバランスを取る方法を見つけている。

プレイアビリティ: 問題あり

 このメカニズムには+1/+1カウンターが必要である。

ストーム値: 5

 不死はフレイバーに富んでおり、良いゲームプレイを生むことが多い。最大の問題は、デザイン空間が限られていることである。しかし、いつの日か再録されると思う。


奇跡 (『アヴァシンの帰還』)

人気: 普通

 奇跡の評価はかなり二分化している。好きなプレイヤーは本当に好きで、嫌うプレイヤーは本当に嫌っている。全体としては、奇跡は平均よりも少しだけ下のあたりに位置する。このメカニズムについて一番大きな批判の1つが、これを最大限に活用しようとすると、奇跡がデッキに入っている可能性があると思わせるようにプレイの仕方を変えなければならないということである。本質的には、実際にはデッキに入れていなくても、マジックをプレイする限り入っているかのように見せかける必要がある。これが問題になるのはトップ・プロだけだが、彼らが嫌っていることは強く発信されていたのだ。

デザイン空間: 狭小

 奇跡の元になったアイデアは、必要なとき、奇跡が必要な時にそのカードを引いたら、軽いコストで助けてくれるような効果を得られる、というものである。フレイバーは強力だが、デザイン空間は非常に限られたものになる。

多用途性: 普通

 奇跡は他のメカニズムと特に相性がいいというメカニズムではないが、特に相性が悪いメカニズムでもない。ライブラリーの一番上が何であるかを知れるような効果以外の他のカードとコンボを組むようなメカニズムでもない。

デベロップ: 問題あり

 奇跡は振れ幅の大きいメカニズムで、バランスをとるのが難しい。また、デベロップは、このメカニズムをデッキに入れているときにばれないようにプレイの仕方を変えなければならないという、これが競技プレイに与える影響も懸念しなければならない。

プレイアビリティ: 問題あり

 奇跡を引いた時に公開する可能性がある場合、引いたカードをすぐに手札に入れないようにするため、多くのプレイヤーは普段と違うカードの引き方をするようになった。

ストーム値: 8

 我々は一度奇跡を再録しようとしてボツにしたので、これの再録する上での問題がどこにあるかは把握している。(ウィザーズの社内、社外を問わず)奇跡のファンがいるので、完璧な流れが来れば再録することになるだろう。


結魂 (『アヴァシンの帰還』)

人気: 大好評

 ストーム値の記事を書くために調査すると、メカニズムの人気については私の感覚と資料はほぼ一致していることが多い。結魂は、私の記憶が外れていた数少ない例の1つである。ジャッジたちから寄せられた、このメカニズムが初心者プレイヤーたちを混乱させているというコメントを覚えていたのだが、調査によると非常に好評だったのだ(市場調査を行なった場所の中に濃いマジック・プレイヤーの多い場所があったため、市場調査は多少そちら寄りになる傾向にあるとは思う)。本質的には、このメカニズムがどう動くのかを理解すれば、このメカニズムを好きになる傾向にあるのだ。

デザイン空間: 中等

 結魂はクリーチャーにしか持たせられず、共有できるような能力を必要とする。キーワード能力の数は限られており、長すぎる文章を書きたくはないので、作ることができるカードの枚数には限りがある。ただしこの制限はセット1つ内での話であり、新しいセットではクリーチャーのサイズを変えることができるのだ(初めて登場した飛行結魂クリーチャーは1/1だったとしても、次に登場する飛行結魂クリーチャーは2/2にすることができる)。

多用途性: 柔軟

 結魂はクリーチャーと相性がいい。そしてクリーチャーは大量に作るものだ。

デベロップ: 普通

 このメカニズムは複雑で振れ幅が大きいので、デベロップしがいがある。

プレイアビリティ: 問題あり

 結魂はパーマネントの関係を覚えておく必要があり、対になったオブジェクトが増えれば増えるほど複雑になっていく。また、結魂クリーチャー自身が戦場に出たときだけでなく、他の(対になっていない)クリーチャーが戦場に出たときにも対になることができるという性質も記憶することを難しくしている。

ストーム値: 6

 結魂の最大の問題は、このメカニズムが複雑だということである。好きなプレイヤーも多く、盤面を把握することができていればいいゲームプレイになる。このメカニズムが再録されるかどうかはわからないが、人気があるので可能性はあると思う。


昂揚 (『イニストラードを覆う影』『異界月』)

人気: 普通

 このメカニズムに関してプレイヤーの評価は二分されている。把握する煩わしさに見合う価値があるか、あるいはないかだ。価値があると感じれば、楽しいものだった。そうでなければ、そうでないものだった。価値があると感じているプレイヤーにとってはプレイ上多くの機微があるが、価値を感じないプレイヤーには評価されないことである。

デザイン空間: 中等

 昂揚呪文には強化できるような効果が必要だが、それは我々がいつもやっていることであり、理解はできているが取り立てて広いわけではない。あらゆるカード・タイプで使えることから、狭小ではなく中等という評価になった。

多用途性: 普通

 昂揚は他のカードと組み合わせて使うというだけでなく、他のカードを必要とする。プレイ時だけでなくデッキを組むときにも影響を及ぼすメカニズムの1つである。シナジー的ではあるが環境をかなり強制するので、これを評価するのは難しい。

デベロップ: 普通

 昂揚は複雑なデッキ作成上のパズルで、本意でない行動が必要になることがある。デベロップするのもパズル的である。

プレイアビリティ: 問題あり

 このメカニズムでは全ての墓地を監視し、条件を満たした時に自分の(そして相手の)カードがどう変化するかを意識しなければならない。

ストーム値: 7

 昂揚は評価が難しい。ハードルを超えることができたプレイヤーにとっては、楽しくてやりがいのあるメカニズムである。しかし、残念なことに、そのハードルを超えられるプレイヤーは決して多くない。私は再録については懐疑的だが、予想外のものが再録されることはあるものである。


調査 (『イニストラードを覆う影』)

人気: 好評

 カードを引くのが嫌いな人などいるだろうか。調査の大ファンは少ないが、ファンでない人もいない類のメカニズムである。

デザイン空間: 広大

 調査は基本的には新型キャントリップであり、あらゆるデザインの可能性がある。また、さらなるデザインの可能性を広げる、手がかり・トークンと相互作用するカードを作ることもできる。

多用途性: 柔軟

 「カードを1枚引く」とコンボにならないものはほとんど存在しない。また、アーティファクト・トークンを生成することによってもある種のセットではシナジーを持つ。

デベロップ: 問題なし

 デベロップが手がかり・トークンを生成する妥当なコストを把握してからは、デベロップするのは簡単だった。

プレイアビリティ: 問題あり

 このメカニズムはトークンを必要とする。

ストーム値: 3

 デザインの観点からは、調査は当たりだと考えられる。非常に一般的な良いフレイバーを持ち、どんなセットでも使える類のメカニズムである。マジックの将来において、調査は大量に存在することだろう。


マッドネス (『イニストラードを覆う影』『異界月』、『トーメント』『時のらせん』『次元の混乱』『未来予知』『アンヒンジド』)

人気: 好評

 マッドネスはフレイバーに富んでいて楽しい。全体として、プレイヤーはマッドネスを好んでいる。このメカニズムを正しくプレイするのはほとんどのメカニズムよりも複雑なので、その複雑さを扱う能力によってプレイヤーの評判は分かれる傾向にある。

デザイン空間: 中等

 このメカニズムは土地以外のあらゆるカード・タイプにつけることができる。マッドネスは、それを使ったカードを作るのはそう難しくないが、プレイして興味深いカードを作るのは非常に難しいという興味深い性質を持つ。一見してわかるよりもずっと巧妙になるようにデザインするにはさまざまな技が存在する。

多用途性: 硬直

 マッドネスは、使うためには2種類のカードが必要になる、いわゆるA/Bメカニズムである。マッドネスの場合、マッドネスを持つカードと、マッドネスを使うためにカードを捨てることができるようにするカードが必要となる。マッドネスを含むセットを作るにはかなりの代償が必要になる。

デベロップ: 普通

 マードネスには捨てることができるようにするカードが必要であり、全体として非常に複雑である。バランスをとるのは難しい。

プレイアビリティ: 問題あり

 マッドネスはデッキ作成とプレイの両方で複雑である。また、効率的に使うには、平均的なメカニズム以上にルールの知識が必要になる。

ストーム値: 8

 最初のストーム値の記事を書いたとき、私はマッドネスを8の例として使った。それからわずか数か月後に、『イニストラードを覆う影』が発売となり、マッドネスが再録されていた。『イニストラードを覆う影』のプレビュー記事で語ったとおり、もしかした、のだ。狂気をテーマとした、墓地要素を持つブロックだったのだ。狂気を意味するマッドネスにまさにふさわしいので、我々はマッドネスが使えるようにする必要があったのだ。これによって評価が変わらないのか、というと、変わる可能性はあったが、実際にはマッドネスの問題を再確認することになった。ルール上は奇妙なことがおこり、複雑さの問題もあり、セットのデザインを歪めたのだ。再録の可能性は、最初にマッドネスを8だと判断したときと同程度だと思う。


潜伏 (『イニストラードを覆う影』『異界月』)

人気: 不評

 我々は潜伏を青黒の常磐木メカニズム候補として作った。実験は大失敗に終わった。そもそも、プレイヤーはこれを特に気に入ってはくれなかったのだ。

デザイン空間: 狭小

 次にわかったのは、これはデザインするのが難しいということだった。クリーチャーにしかつけられず、大型のクリーチャーでは意味を持たない。結局のところ意味を持つのは一部のカードでだけだったのだ。

多用途性: 普通

 相互作用はあったが、大量というわけではなかった。常磐木にしようと言えるほどではなかった。

デベロップ: 普通

 このメカニズムのデベロップは特に難しいものではなかったが、使うのが難しいという問題が発覚し、修復するのは少しばかり難しかった。

プレイアビリティ: 問題なし

 この分類に入るのは、作った時に認識していたよりも少しばかり使うのが難しいということだけだった。

ストーム値: 7

 実験は大失敗に終わった。このメカニズムは人気がなく、デザインが難しく、プレイ中の処理も難しかった。私は再録されることには懐疑的だが、ふさわしい世界が訪れたらあり得るかもしれない。


現出 (『異界月』)

人気: 好評

 現出は好評だった。一部のプレイヤーに愛され、大多数のプレイヤーに好まれた。

デザイン空間: 中等

 そもそも、現出は大型クリーチャーだけが持つ能力で、大型クリーチャーがセット内に大量に存在することはない。エルドラージが存在する『異界月』は平均よりも少し大きかった。これはセット内で作れる数に制限がある類のメカニズムだが、このメカニズムを時とともに広げていくことを考えるとデザイン空間はもっと存在している。

多用途性: 柔軟

 このメカニズムはクリーチャーが必要だが、それは制限と言うにはかなり緩い。フレイバー的な裏付けも必要だが、それはマジックがあまり扱わないようなものではない(世界を闊歩する大型クリーチャーに関わるものであればいい)。

デベロップ: 問題あり

 現出はコスト低減メカニズムで、しかもA/Bメカニズムでもある。つまり、デベロップは非常に難しい。本質的には、それぞれのカードと、スタンダードに存在する全てのクリーチャーとの相互作用を考えなければならない。

プレイアビリティ: 問題あり

 現出を使うためにはいくらかの算数が必要になる。それほど恐ろしいものではないが、問題ないと言うわけにはいかない。

ストーム値: 6

 現出は楽しく人気のメカニズムだが、デザインもデベロップも難しいので確実に再録されるとはとても言えない。


増呪 (『異界月』)

人気: 好評

 歴史的に見て、プレイヤーは選択を好むものだ。市場調査によると、モードを持つメカニズムはたいてい平均以上である。

デザイン空間: 中等

 モードを持つメカニズムを作ると、効果のネタ切れという問題に直面するものである。使える色が増えれば、作れるカードの枚数も増えることになる。増呪も、セット内では上限があり、別ブロックに広がればデザイン空間も広くなる類のメカニズムである。

多用途性: 普通

 増呪は他のカードと特に相性がいいとか悪いとかいうことはない。シナジーは選んだ効果に大きく左右されるものであり、メカニズムの多用途性はカードごとに異なる。増呪に必要なのは、複数のモードを使うために必要となる大量のマナを使える環境である。

デベロップ: 問題なし

 モードを持つ効果は、追加のモードを得るためのコストが存在する限り、特にバランスをとるのが難しいということはない。

プレイアビリティ: 問題なし

 少しの算数は必要だが、それほど難しいものではない。

ストーム値: 5

 増呪は良いメカニズムだと思うが、『異界月』に最適なものではなかった。増呪が脚光を浴びる世界は1つならず存在することだろう。


合体 (『異界月』)

人気: 不評

 最終的には、このメカニズムは非常に意見が分かれた。忠実なファンと、熱心な反対者がいた。

デザイン空間: 狭小

 合体には合体カードの元になる2枚のカードが必要である。この2枚のカードにはつながりが必要で、しかもこの2枚と合体カードのつながりも必要である。すべて組み合わさると、この天使たちのように、美しいといえるものになる(美、がふさわしいとは限らない)。しかし、素晴らしいデザインの数には限りがある。

多用途性: 普通

 合体カードはそのセットで筋が通っていなければならないので、前提条件とかなりのフレイバーが必要となる。メカニズム的には、オモテである2枚のカードによっていくらかのシナジーを作ることができるが、それらのカードとセットのそれ以外のカードがどう関連するかという点には限界がある。

デベロップ: 普通

 メカニズムを成立させるために特定の2枚のカードが必要であるということから、合体カードにかなりの利点がなければならない。このことはバランスをとる上でいくらかの問題を生じさせた。

プレイアビリティ: 問題あり

 両面カードを使うので、合体には物理的な問題がある。

ストーム値: 5

 合体は賛否両論だったが、魅力的で話題の種になった。再録する状況があることは確信しているが、それがすぐに来るとは思っていない。

ストームの仕掛け人

 今日はここまで。今回のストーム値の記事も、これまでのもの同様に好評であれば幸いである。いつものとおり諸君の意見を聞きたいと思っているので、今日の記事について、あるいは何かが再録されるべき、再録されるべきでない、などについて、メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 今日の記事について、ベン・ヘイズ/Ben Hayesの助力に感謝する。

 それではまた次回、『アモンケット』のプレビューが始まる日にお会いしよう。

 その日まで、あなたのお気に入りのメカニズムが再録されますように。

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