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Making Magic -マジック開発秘話-

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こぼれ話:『霊気紛争』 その2

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年2月13日

原文はこちら

 スタンダードで使えるセットが発売されるたび、私は「こぼれ話」として諸君からの質問に答える記事を書いている。『霊気紛争』に関して多くの質問が集まったので、今回は2部作にすることにした(その1はこちら)。それを踏まえて、今回の質問に入ろう。

 『ウルザズ・サーガ』の「フリースペル」からのどんな教訓が巧技サイクルに活かされていますか?

 『ウルザズ・サーガ』ブロックの「フリースペル」は、その呪文をプレイしたときにその点数で見たマナ・コストと同じ数の土地をアンタップするという呪文だった。発想としては、唱えるために支払うだけのマナがあればタダで唱えられるというものだったのだ。

 興味深いことに、「フリースペル」の最も壊れた部分はそれらの呪文が究極的にタダだというところではなく、唱えたプレイヤーにさらなるマナを与えうるという部分だったのだ。例えば、『ウルザズ・サーガ』には《トレイリアのアカデミー》という土地があって、タップして大量のマナを出すという能力を持っていた。これをアンタップするだけで、あらゆるひどいことが起こり得たのだ。巧技呪文にデベロップ的な危険がないとは言わないが、「フリー」で唱えられる呪文は限られており、唱えたプレイヤーがさらなるマナを得ることはないので『ウルザズ・サーガ』の「フリースペル」に比べるとほとんど問題はなくなっている。

 Masterpieceを選んでいるのは誰で、なぜ《羽ばたき飛行機械》が入っているんですか? 意味は無いんですか?

 Masterpiece Seriesは開発部が選んでおり、そのカードがさまざまなフォーマットでどれぐらい使われているかに基づいている。実際のデッキに入れられることがないようなカードであれば、魅力的なバージョンを作る意味がないのだ。《羽ばたき飛行機械》は、さまざまなフォーマットのさまざまなデッキで使われている。0マナのクリーチャーは、主にコンボデッキで非常に便利な存在だが、他の使い方もある。《羽ばたき飛行機械》をKaradesh Inventionsに入れたのは調査の結果プレイヤーが望んでいるカードだと想定されたからであり、そして実際のデータを見たところ、その想定は正しかった。

 アーティファクトや機体に対する全体除去を入れないことに決めたのはどういう検討の結果ですか?

 セットを作る上で最も慎重にならなければならない部分の1つが、そのセットの新要素に対してどれだけの対策カード(特定の種類のカードを破壊するなど著しく阻害するようなカード)を作るかを決めることである。多すぎればその新要素は日の目を見ないことになるし、少なすぎればその新要素が強すぎたときに止めることができなくなる。『カラデシュ』は、アーティファクト・テーマがあったが、『ミラディン』や『ミラディンの傷跡』といったアーティファクト・ブロックのように可能な限り多くのアーティファクトを入れることを強く推してはいなかった。そのため、デベロップは全体除去ではなく単体除去に頼ることに決めたのだ。機体に関して言えば、機体に搭乗するにはクリーチャーが必要なので、既にクリーチャーを破壊する呪文が機体デッキを抑える上でいい働きをしている。そのため、我々は機体に対する全体除去カードが必要だとは感じなかったのだ。

 実際に作られなかったエネルギー・カードの中で、心底興奮したものってありましたか?

 あったとも。エネルギーは無限のデザイン空間を持つメカニズムの1つだ。リソースは非常に自由度が高く、それを使ってできることも無数にある。我々は最終的に印刷に到らなかった数多くのクールなエネルギーのデザインを作った。最終的なカードの比率にピッタリとはいえなかった、他にやっていることと重複していた、最高の実装を見つけることができなかった、さまざまな理由があるが、中には将来エネルギーを再録するときのためにデザイン空間を温存するためのものもあったのだ。私はエネルギーがいずれ再録されると思っているので、我々が試したが印刷には到らなかったクールなものについては秘密にしておこう。

 霊基体は霊気精製の副産物ですから、他の次元で見かけることはないのでしょうね。

 これはデザインというよりクリエイティブ寄りの質問になる。私が知っている限りのことを答えよう。まず1つ目、霊基体は非常に人気がある。私が覚えている限り、おそらくスリヴァー以外では最も好評を得た新種族だろう。2つ目、霊気は多元宇宙の中心的要素であり、どの次元にも存在しているはずだ。つまり、カラデシュが特別なのは霊気の量が特殊であり、カラデシュで霊基体が発生している状況はどこにでもあるものではない。霊基体は人気があるので、クリエイティブ・チームも他に霊基体が存在できる世界を探すことに前向きになることだろうが、必ずそういう世界が見つかるとは断言できない。

 紛争をデザインするときに、エターナルなどのローテーションのないフォーマットのことは考えましたか?

 『霊気紛争』のリード・デベロッパーにして紛争の作者であるベン・ヘイズ/Ben Hayesに聞いてみた。「それらのフォーマットに影響があることはわかっていましたが、エターナル・フォーマットとの相互作用のあり方は、我々がスタンダードで必要だと思ったあらゆる相互作用の結果ですよ」とのことだ。

 一般に、我々がカードをデザインするとき、2つのことを行なう。1つ目が、そのカードと組み合わせられるとわかっているものとの相互作用においてシナジーがあるようにすることである。これは主にリミテッドやスタンダードであり、これを調整するためにプレイテストをしている。2つ目が、我々がプレイテストを行わなくても、マジックに存在するカードとの関係を発見できるように充分自由度が高いようにすることである。フェッチランドなどと紛争が相互作用することに気づいていたか、と問われれば、気づいていた。

 aetherってどう発音してるんですか?

 正式な発音は「イーサー」、伸ばしたイの音だ。ここで言う正式というのは、ウィザーズのことではなく、辞書のことである。「Aether」という語はマジックのほぼ初期から存在していた(『ザ・ダーク』には《上天の嵐》がある)。しかし、カード名に含まれるすべての単語の正式な音を決めてはいない。翻訳でも同じような音になるよう、固有名詞とセット名についてだけ定めているのだ。「Aether」がセット名になったので、我々はこれをどう読むかを宣言する必要があった。辞書に明確に定められた発音があるので、我々はそれに従うことにした。

 私のポッドキャストを長い間聞いてくれている諸君は承知の通り、私はずっと「アイサー」と読んでいた。我々が『カラデシュ』(と『霊気紛争』の名前)を紹介した去年のPAXの準備中に、初めて「イー」と読むように言われたのだ。練習の間はずっとごっちゃになっていたが、実際のプレゼンテーションの際には何とか正しい発音で通すことができた。

 このブロックの飛行機械は青赤なのに、飛行機械の「ロード」(『カラデシュ』の《小物作りの達人》)が白なのはなぜですか?

 質問が少し間違っている。《小物作りの達人》は飛行機械のロードではなく、飛行機械と霊気装置のロードである。実際のところ、《小物作りの達人》は霊気装置を作るので、霊気装置を中心として霊気装置と飛行機械のロードだと言うべきだろう。なぜ白かを考えるために、いくつかの資料を見てみよう。1つ目に、『カラデシュ』ブロックの、霊気装置・トークンを生成するカードを色ごとに分類してみよう(多色の場合、それぞれの色に0.5枚ずつ加えることにした)。

  • 白:9.5
  • 青:1.0
  • 黒:7.5
  • 赤:1.0
  • 緑:6.0
  • アーティファクト:5.0(うち1枚の《歯車工の組細工》を活用するには白マナが必要)

 次に、『カラデシュ』ブロックで飛行機械を生成するカードを色ごとに分類してみよう(青赤の多色カードが2枚存在するので、各色1枚ずつとして加算してある)。

  • 白:1
  • 青:3
  • 黒:0
  • 赤:2
  • 緑:0
  • アーティファクト:2(他に、Kaladesh Inventionsに3枚)

 見ての通り、霊気装置を生成するカードのほうが飛行機械を生成するカードよりもずっと多い(30対9)。そして、白はその両方が一番多い色なのだ。

 舞台裏の話が好きな諸君のために一言。《小物作りの達人》は霊気装置のロードとして作られ、後になってフレイバーに従って汎用性を増やすために1つ目の能力に飛行機械が追加されたのだ。

 エネルギーを参照する伝説のクリーチャーがいないのはなぜですか?

 マジックのセットを作る上での課題の1つが、さまざまなプレイヤーを満足させるために無数のボールでジャグリングすることである。統率者戦プレイヤーがそのセットの大テーマそれぞれに関連した伝説のクリーチャーがいることを喜ぶのはわかっており、我々は実際にそれを作ろうとしている(例えば、エネルギーを使う伝説のクリーチャーはいくつもデザインされたのだ)。しかし、セットを組み合わせて仕上げていく中で、注目からはずれていくつかのボールは落ちることになる。『カラデシュ』でエネルギーを扱う伝説のクリーチャーが存在しなかったのは残念なことだが、我々はもっと焦点を当てたいと意識しているのだ。

 『カラデシュ』や『霊気紛争』で見られた、少数でテーマ的なメカニズムを使うという流れは今後のセットでも保たれますか?

 それが当たり前になるようにしたいと思っている。そのためにセットの作り方は多少変化することになるだろう。

 紛争の誘発条件が戦場を離れたときになったのは、墓地関連のメカニズムとの差別化のためですか?

 我々が紛争を手がけていたときに浮かんだ問題の1つが、陰鬱(『イニストラード』ブロックの「死亡関連」メカニズム)と充分違うと感じられるようにするということであった。つまり、質問の通り、いくらか違うもので誘発するように変化させることが重要だったのだ。また、陰鬱は全てのクリーチャーを参照していたが、紛争は自分がコントロールしているパーマネントが戦場を離れることだけを参照している(クリーチャーとパーマネントの違い、コントローラーを参照するかどうかの違い)。

 このセットに《プロパガンダ》を入れることは検討しましたか?

 知らない諸君のために説明すると、《プロパガンダ》は『テンペスト』で初登場し、その後『統率者』セットで何度も再録されている。

 『霊気紛争』で検討しなかった理由は、攻撃クリーチャーにコストを要求するメカニズムは既に青のものではなくなっているからである。何年も前に、コスト要求のほとんどを白に移動させていて、《プロパガンダ》の能力もその一環である。『神河物語』で初登場した《亡霊の牢獄》は白の《プロパガンダ》であり、この効果が新セットに必要であればこちらを使うことになるだろう。

 機体のデザインをこの2つのセットの間でどう割り振りましたか? 意図的に『霊気紛争』のために温存したものはありますか?

 大型セットと小型セットの両方で使う予定のメカニズムがある場合、我々は大型セットでそのメカニズムを可能な限り広くデザインし、思いつく限りのバージョンを使う。その後、デザイン空間を把握できるようになってから、小型セット用の場所を封鎖するのだ。機体の場合、我々はこのメカニズムにはいわゆる「バニラ空間」が非常に広い、つまり大量の調整点があり、シンプルな機体を大量に作ることができるということがわかった。デザインにおいては、我々は1つの機体でできる突飛なことが大量に見つかった。我々はそのいくらか(エネルギーを使う、カウンターを使う、プレインズウォーカーが搭乗する)を『霊気紛争』のために温存したのだ。

 なぜ猫猿をもっとたくさん使わなかったんですか?

 クールなことが大量にあり、枠は限られていた。猫猿が好きなら、その評価を広めてくれたまえ。プレイヤーが何かを好きだとなれば、それが再録される可能性は大きく上がるのだ。

 《闇の暗示》は明らかに『アモンケット』に向けての「プレビュー」ですね。他にも将来この種のカードを入れる予定はありますか?

 諸君からもらって嬉しい反響の1つがこれだ。現時点では低い頻度で行っていることだが、好意的反響が多ければもう少し頻繁に入れることができるようになるだろう。特に、現在のストーリーに焦点を当てている状況ではなおのことである。私は個人的にカードでメカニズム的にプレビューをすることのファンだが、嫌っている人もいることはわかっている。

 将来、製造が再録されることはありますか?

 製造はデザイン空間が狭く、また霊気装置を生成するということを踏まえるとスタンダードで使えるセットでの再録は難しいだろう。しかし、もっと再録の可能性の低いと思っていたメカニズムも再録されたことがあるのだ。

 猿はいつの間にサブタイプになったんですか? 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》が公開されるまでは告知もありませんでしたが、これまで類人猿だったカードが数枚そうでなくなっていますよね。

 猿は『カラデシュ』の発売と同時に新しいサブタイプになった。これが追加された時点で、明らかに猿であるべきだったクリーチャー数体を類人猿から猿に変更した(猿が追加されるまでは、猿はクリーチャー・タイプではすべて類人猿になっていた。科学的に正しくなかったのだ)。

 《上級建設官、スラム》が工匠でないのはクリエイティブ、デベロップ、テンプレートのどの理由ですか? 彼に似合う〈アドバイザーのゴーグル〉がないのはなぜですか?

 「工匠」と「アドバイザー」の両方をタイプ行に入れることはできないので、どちらか1つを選ばなければならなかった。アドバイザーを選んだのは、彼のストーリー上での役割を踏まえたフレイバー的な判断である。しかし、振り返ってみると、工匠はこのブロックでメカニズム的に意味を持つクリーチャー・タイプなので、この判断は間違っていたかもしれない。

 なぜ伝説の猿をトークン・クリーチャーでなくカードとして作らなかったんですか?

 理由はいくつか存在する。

  • ストーリーに従い、カーリとラガバンに関わりをもたせたかった。カーリがラガバン・トークンを作るようにすることでそれが確実にできる。
  • セットに入れられる伝説のクリーチャーの枠は限られている。『霊気紛争』には5体分しか伝説のクリーチャーの枠はなく、単色のサイクルでいっぱいだったので、ラガバンのための枠を作るためにはカーリと違う色の誰かを削らなければならなかった。
  • ラガバンをトークンにすることで、フルアート版を作ることができた。

質問は多く、時間は少ない

 残念なことに時間切れだ。ここでこの2部作を終わりにせねばならない。いつもの通り、今日の質問への回答や、他になにか新しい質問などの反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、諸君が自分のマジックを作るためのヒントを詰め込んだ毎年恒例の「基本根本」記事でお会いしよう。

 その日まで、猿での攻撃の楽しみがあなたとともにありますように。

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