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Making Magic -マジック開発秘話-

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こぼれ話:『霊気紛争』 その1

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年2月6日

原文はこちら

 セットごとに、「こぼれ話」と題して諸君からの最新セットに関する質問に答える記事を書いている。『霊気紛争』が発売されたので、そろそろ質問に答える時期となった。

 私がツイートしたのは次の文章だ。

 現在、『霊気紛争』についての「こぼれ話」記事を書いている。1ツイートでこの最新セットに関する質問を送ってくれたまえ。#WotCStaff

 いつもの通り、可能な限り多くの質問に答えようと思っているが、以下のような質問には答えられない。

  • 文字数制限があるので、答えられる質問には限りがある。ブログではもっと短く答えているが、記事ではより詳細な長い回答をすることになる。
  • 誰か他の人が既に同じ質問をしているかもしれない。最初に質問してきた人に答えるのが通例である。
  • 私が正解を知らない、あるいは私は答えるのに相応しくないと思われる質問もある。
  • 将来のセットのネタバレになるなど、さまざまな理由で回答できない話題もある。

 これを踏まえて、質問に入ろう。

 ストーリーに焦点が当たったことで、『霊気紛争』の開発はどのように影響を受けましたか?

 『霊気紛争』のカードセットにおける最大の影響は、単色の伝説のクリーチャーのサイクルと、それにともなう巧技サイクルだと思われる。クリエイティブ・チームはカラデシュ人のキャラクターを大量に生み出し、我々は可能な限り多くのキャラクターをカードにしたいと考えたのだ。他の影響としては、ストーリーの雰囲気とゲームプレイの雰囲気を合わせようとしたということがある。『霊気紛争』について言えば、強烈な不安感を生み出すということがそれである。

 『カラデシュ』で、我々は創造的発明の雰囲気を再現するためのデザインを組み上げた。それが《発明博覧会》である。発明家たちは自分の能力を発揮していた。『霊気紛争』では、破壊的発明の雰囲気に焦点を当てた。発明家の多くは領事府に対する紛争のさなかにいる。変化をもたらすために自身の発明品を使っているのだ。つまり、破壊的効果を持つカードや、生け贄に捧げたりバウンス(何かを手札に戻すこと)したりする効果が多くなっている。このメカニズム的傾向の結果、デヴァイン(開発部内でデザインとデベロップの間の工程)中に紛争メカニズムができたのだ。

 《闇の暗示》を活かすために将来何枚ぐらいのボーラス呪文を唱えることを狙うべきでしょうか?

 「ボーラス・プレインズウォーカー・呪文」は、ボーラスというサブタイプを持つプレインズウォーカーだけを参照する。これまでに存在しているのは1枚、『コンフラックス』の《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》だけだ。『レジェンド』の伝説のクリーチャー《ニコル・ボーラス》は、プレインズウォーカーではないので関係しない(まだニコル・ボーラスの灯が覚醒していないのだ)。

 機体のデザイン空間は『霊気紛争』や『カラデシュ』で使われたよりもずっと広いと思います。新しいメカニズムのデザイン空間はどのように、そしてどれくらい、計画されていますか?

 機体をデザインした時に、かなりの可能性があるということは明らかだった。フレイバーに富んでおり、さまざまな世界で登場させることができる可能性も非常に高く、ユーザーからはこの空間を掘り下げてほしいと思っていたという意見が届いていた。大きな問題は、実際に機体を登場させたときの諸君からの反応がどうなるかだった。我々が選んだ実装が気に入られるかどうか、それはフレイバーに富んだものになっているか、ユーザーがその使い方を理解できるか、そしてなるべく早く再登場してほしいと思うようなものになっていたかどうかである。

 最後の質問への答えが肯定的なものであった場合に備え、我々は可能なデザインを立案し、再録した時に使えるように単純なもののいくらかを温存した。機体はほとんどのメカニズムよりも柔軟なのだ。もし諸君が再録を望むようなものになったなら、デザインとデベロップは挑戦することになる。大きな問題は(メールやソーシャルメディアで教えてもらいたいことだが)、諸君が機体の再登場を望んでいるかどうか、である。

 『霊気紛争』では大量のコンボパーツが登場しました。WotC内でマジックのコンボに関する視点が変わったんですか、それとも一度限りの道具ですか?

 そうではない。マジックのメタゲームが盛衰し、さまざまな戦略で常に変化し続けるべきだというのは開発部の一貫した信念である。コンボは、ときに推されるものであるべきで、発明をテーマとしたアーティファクト・ブロックは推すタイミングだと思われたのだ。『霊気紛争』は、『カラデシュ』を踏まえての発展系なので、さらにコンボ中心になっている。

 紛争メカニズムは『イニストラードを覆う影』ブロック(昂揚)に触発されたものですか、それとも純粋に『霊気紛争』のストーリーから作られたものですか?

 紛争メカニズムの作者にして『霊気紛争』のリード・デベロッパーだったベン・ヘイズ/Ben Hayesにこの質問をぶつけてみた。紛争メカニズムは手掛かりやエルドラージ・末裔には配慮しているが、直接『イニストラードを覆う影』や昂揚に触発されたものではないとのことである。紛争の元になったメカニズムがあるとすれば、それは旧『イニストラード』ブロックの陰鬱だと思う。

 デザイン中、デベロップ中に巧技サイクルはどのように進化しましたか?

 このサイクルはデベロップがかなり弄ったが、比較的軽いものをただで唱えるという基本コンセプトはデザインが作ったものである。デベロップがおこなった大きなことは2つある。1つ目が効果の多くを変更したことである。例えば《カーリ・ゼヴの巧技》は、4種類の異なるバージョンを経過してきた。2つ目は、デベロップ・チームとクリエイティブ・チームは協力して、このサイクルと単色の伝説のクリーチャーのサイクルとを繋ぐことにしたということである。これはデザイン中にはなかった要素だ。

 陣営をメカニズム的にどう一貫させるかについて、どのように決めていますか? 『霊気紛争』には「領事府」デッキを組む気になるようなメカニズム的な推しはありませんでした。

 セットをデザインするときに決めなければならないことの1つが、カードがどのような物語を語るかである。『霊気紛争』では、反乱軍の視点から描くと決めていた。これは我々がよくやる2つの陣営の対立を描いたセットではなく、2つのセットでの発明家たちの違いを描くセットなのである。先述の通り、『カラデシュ』は彼らが作ったものを誇らしげに示す姿を、『霊気紛争』は同じ技術をもっと実践的に使って激しい不正義だと感じたものを止めようとする姿を描いているのだ。これはどちらも「発明家気分になる」というモットーに従っている。

 基本的に、我々が陣営にメカニズム的特徴を与えるかどうかは、我々がその陣営にどれだけ焦点を当てたいかによる。このブロックは発明に寄せているので、プレイヤーにはその側についてもらいたかったのだ。領事府は諸君が目にする権力であり、それをカードで描くように尽力はしたが、メカニズム的特徴は与えなかった。それは焦点ではないからである。枠は限られており、もし全てを描こうと思えば、本当に焦点を当てたいものを正しく実現する枠が足りなくなってしまうのだ。

 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》が攻撃した時に生成したラガバン・トークンを、戦闘終了時に追放すると決めたのはなぜですか?

 「ターン終了時」でなく「戦闘終了時」にしたのは、第2メイン・フェイズに紛争が有効になるようにするためである。紛争が作用する環境を作るために、平均よりも多くの道具を供給しているのだ。

 『カラデシュ』のメカニズム的要素のうちで、『霊気紛争』のメカニズムに一番影響を与えたのは何ですか?

 最大の要素2つを挙げるなら、アーティファクトと、発明家気分というテーマである。エネルギーや機体が再登場するのもわかっていた。『カラデシュ』に存在しなかった中で最大の影響力を持つテーマは、反乱である。

 紛争の「どこでも」誘発するという性質は、モダンでフェッチランドと合わせて使えるようにしたいという狙いにどの程度影響を受けましたか?

 デベロップがフェッチランドとの相互作用に気がついていたのは知っているが、それは我々が紛争の条件をもっと自由度の高いものにしたい理由の1つにすぎない。最大の理由は、ブロック内のさまざまな要素との相互作用である。『カラデシュ』や『霊気紛争』に入ることになるあらゆるものとのシナジーになりうることがわかっていたのだ。

 なぜ今《ショック》を再録したんですか?

 ベンは、さまざまな理由から《ショック》をセットに加えたと言っていた。1つ目に、スタンダードのバーンにはプレイヤー受けの良い強い呪文を入れる余地があるということ。2つ目に、テーマ的に紛争というテーマのセットにまさに相応しいということ。3つ目に、《ショック》はベンが常々大好きな象徴的カードであるということである。

 なぜ(製造の代わりとなる)1つでなく(紛争と即席の)2つの新メカニズムを加えたんですか?

 元の計画では、『カラデシュ』のメカニズム3つすべてを『霊気紛争』に残し、新しいものを1つだけ追加する予定だった。我々は全てのセットで1つは新しいメカニズムを投入したいと思っているのだ。製造は再利用するほどのデザイン空間がないと気がついて、我々はそれを2つ目の新メカニズムと置き換えることにした。今、製造を持ち越さないで新メカニズムを1つだけにすることはできなかったかと聞かれると、できただろうと思う。いくつもの記事で語ってきたとおり、我々はセットを成立させるために必要なメカニズムの数について常に再検討を続けているのだ。

 『テーロス』ブロックから「神啓」メカニズムは検討しましたか? フレイバー的にもぴったりですし、メカニズム的にも機体と相性がいいです。

 私の知る限り、検討されたことはない。

 白のならず者というのは奇妙な選択に見えます。このクリーチャー・タイプについて説明してもらえますか?

 白があるシステムを公正だと信じたら、白はそのシステムの中で変化するように動く。しかし、白があるシステムを根本的におかしい(壊れている、倫理的に破綻している、など)と信じたら、白はそのシステムを自身の信じるものに変化させるように試みるのだ。白のならず者と他の色のならず者の違いは、白のならず者は自分の個人的な目的ではなくより大きなもののために活動しているというところである。

 なぜ『霊気紛争』で製造を再録しなかったんですか?

 我々は取り組んだ。『霊気紛争』のデザイン初期には製造があったのだ。問題は、使い物になるマナ・コストとパワー/タフネスの組み合わせが限られており、そのほとんどは『カラデシュ』で使い尽くしていたということである。

 どちらのセットにも、相手のエネルギーを盗むようなエネルギー対策カードがないのはなぜですか?

 マジックの24年の歴史の中でマナを盗むカードがあまり無いこと、そして土地破壊を減らしているのと同じ理由である。リソースを破壊したり盗んだりするのは、楽しいゲームにはつながらないのだ。エネルギーを使われて困るなら、エネルギーではなく、それを使うパーマネントに対処することをおすすめしよう。

 レアの単色の伝説のクリーチャー5体のサイクルは、「タイニー・リーダーズ」向けにデザインされたのですか?

 私のあずかるところではない。よりありうる要素は、世界設定上その5体が人形生物であるので、マナ・コストやパワーやタフネスが小さくなったのだと考えられる。

 なぜ霊気流通の支配権を巡って陣営が争うセットなのに、エネルギーを奪うという要素がないんですか?

 我々の第一の目標は、楽しくて魅力的なゲームプレイを作ることである。フレイバー的に相応しいというのはこの第一目標に背く理由にはならない。

 霊基体のロードは予想外でした。このカードはどのようにできたんですか?

 何年も前に、部族テーマ(特定のクリーチャー・タイプを参照すること)がプレイヤーの間で人気があるということがわかった。そのため、我々はすべてのブロックでいくらか部族を扱い、ブロックによっては部族にもっと焦点を当てるようにすることにしているのだ。部族を選ぶ場合、そのセットが何をしているかに対応していることが多い。例えば、『カラデシュ』ブロックでは、アーティファクトに焦点が当たっているので、工匠寄りの部族を選ぶことにしたのだ。

 霊基体のロードは、黒の部族がどれもふさわしくなかったので、新しい部族を作ることにしたことが原因である。通常、我々が充分な量の新しい種族を作る場合、その部族でデッキを組めるように、ロードなどの部族に焦点を当てたカードを作っている。霊基体で何かクールなものを作ろうとしていたので、ロードを作るのは非常に当たり前の選択だった。《真夜中の随員》は、霊基体の持つ短命さのフレイバーに従っており、そのため霊基体が死亡することで利益を得るようになっている。


《真夜中の随員》 アート:Lius Lasahido

 《速製職人の反逆者》のクリーチャー・タイプがレベルでないということは、二度とレベルは登場しないということですか?

 ああ、レベルね。『霊気紛争』について私が受けた質問で一番多いのは、おそらく、「レベルはどこですか」というものだろう。なぜ存在しないか説明しよう。まず、クリーチャーを中心にしたメカニズム的テーマを作る場合、それをまとめるために職業のクリーチャー・タイプを用いることがある。今回直面した問題は、マジックは歴史が長く、さまざまな職業を使ってきたということである。つまり、我々はフレイバー的な理由でそれら全てをサポートすることはできないのだ。

 例えば、『霊気紛争』のクリーチャーのほとんどには種族が存在する。また、紛争の中にいる人々は発明家である。そこで、我々は工匠のクリーチャー・タイプを持たせたいと考えた(先述の通り、このブロックには軽い工匠部族要素が含まれている)。全てのカードにさらにレベルというクリーチャー・タイプを持たせるのは面倒なことになる。また、両セットに同じタイプのキャラクターが存在していても、『霊気紛争』で紛争が起こるまではレベルではない。『カラデシュ』ではレベルではなかった基本的なカードが、『霊気紛争』ではレベルになるのだろうか?

 我々はこれについて検討したが、最終的には、不細工で、メカニズム的な正当性もないということになった。レベルが二度と登場しないということかと聞かれれば、そうは限らない、ということになる。メカニズム的に何かを定義する必要があり、そのために最適な選択がレベルであれば、再登場はありうる。しかし、ただ新しいクリーチャー・タイプが必要だというだけでない要素がある場所がない限り、使うことはないだろう。

(訳注:18年前、『メルカディアン・マスクス』ブロックには、レベルというクリーチャー・タイプが存在していました。これは英語では《速製職人の反逆者》のカード名にある「反逆者」と同じ単語です。)

 このセットであなたの「《岩への繋ぎ止め》」は何ですか?

 知らない諸君のために説明すると、私は以前新しい世界のデザインの初期にカードをデザインする方法として、他のセットでは存在できないカードを作り、そのセットでやることの定義の助けにするということについて話している。通常、それは私が新しい世界を作るとき、すなわちほとんどはブロックの第1セットである大型セットでだけおこなわれることである。『霊気紛争』についてそれにもっとも近いものを考えると(その世界を定義づける以外ではできないような空間を使ったカードということになると)、《光に目が眩む》だろう。

 からくりのことは知っています。城砦化は議論されましたか? フレイバー的に、領事府側に相応しいと思います。

 2つの理由から、城砦化は検討されなかった。1つ目に、それほどフレイバー的にふさわしいものではない。2つ目に、このセットは既にアーティファクト関連の要素が多すぎる。そして、城砦化は我々が掘り下げている「発明家気分」には関わってこなかった。

 どれぐらいのエネルギーがこのセットに相応しいか、どうやって決めましたか?

 より広い質問内容は、「メカニズムの持つデザイン空間をどのように計っているか」だと思われる。答えは、2通りある。1つ目が、そのメカニズムを持つカードをデザインしてみることだ。いくらかデザインしてみると、「ピンチポイント」(そのメカニズムが必要な要素で限界を定めているもの)がどこにあるのか掴めてくる。2つ目が、私のように長い間続けていると、新しいメカニズムについて直感的にわかるようになってくる。基本的には、経験を積むことでピンチポイントがどこにあるのかだいたい掴めるようになってくるのだ。

こぼれ話は終わらない

 今日はここまで。とはいえ、すべての質問に答えられたわけではない。いつもの通り、今日の返事について、中でも私が質問しているものについての反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、さらなる質問に答える日にお会いしよう。

 その日まで、あなたが『霊気紛争』を楽しみ、さらなる質問とめぐりあいますように。

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