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Making Magic -マジック開発秘話-

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『カラデシュ』の材料 その2

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年9月19日

原文はこちら

 先々週、私は『カラデシュ』のデザインの話を始めた。先週1週は休憩がてらに「Kaladesh Inventions」、そして「Masterpiece Series」全体を紹介した。そしてようやくデザインの話を締めくくることになる。その1でデザイン・チームの紹介と、エネルギー・メカニズムの起こり、そして『カラデシュ』でそれをどう仕上げたかの話はした。そこで、今回はその間の抜けている部分を取り上げることにしよう。それは、先行デザインのときのことになる。

手を貸してもらえるか?

 我々が先行デザインで最初にやったことは、エネルギー・メカニズムを成立させる方法を探すことだった。それが終わって、私はチームに、プレイヤーが何を『カラデシュ』で予想すると思うかを尋ねた。すでに『マジック・オリジン』でこの世界のヒントを出していたので、何が来るかを予想する手がかりはあるのだ。我々はさまざまなアイデアについて話し合った。やがて、『マジック・オリジン』でクリエイティブ・チームが作ったカラデシュに関するものに目を通すべきだと提案したのだ。そして、このアートを見たときのことだった。

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 カラデシュという次元には、巨大な飛行船やその他の乗り物があるはずなのだ。私の、語り手としての仕事の中には、多くのファンと語り合い、諸君が望んでいるものが何なのかを的確に掴むということが含まれている。何か提案を受けたら、私はそれを記録している。そして、何年もの間、乗り物を作ってほしいという話は繰り返されてきたのだ。

 これまで取り組まなかったのは、乗り物をデザインするのは難しい上に、乗り物を導入するのに相応しいと思える世界がなかったからである。そう、今こそ変化のときだ。カラデシュには乗り物があると強く押し出されている。そこで私は先行デザイン・チーム(ショーン・メイン/Shawn Main、ダグ・ベイアー/Doug Beyer、アダム・プロサック/Adam Prosak、ダン・エモンズ/Dan Emmons、私)に、機体というカード・タイプが成立するようにする方法を探すように指示した。最終的に解決策を見いだせるかどうかはわからなかったが、やってみる価値はあると感じていたのだ。

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 我々は、まず機体がどのようなものであるべきかと自問した。前提として、クリーチャーが「乗り込み」「運転する」ことができなければならない。また、機体が何らかの形で戦闘に関わるというアイデアが気に入った。それを踏まえて、チームは問題に取り組み始めたのだった。

 最初に手掛けたのは、機体を装備品と似たようにすることだった。ただし、装備品はクリーチャーにつけるものであるのに対し、上記はクリーチャーをつけるものだという点が違っていた。我々はこの能力を「乗車/boarding」と呼んだ。クリーチャーが機体に乗車している間、機体が何らかの能力を与えるというものだった。例えば、〈熱気球〉はクリーチャーに飛行を与える。乗車にはマナが必要だったが、機体1つに乗車できるクリーチャーの数には制限がなかった。自分のクリーチャーすべてを熱気球に載せたければ、そうすればいいのだ。

 たった1回のプレイテストで、このデザインの問題は明らかになった。1/1が1体、2/2が1体、そして〈熱気球〉(乗車したクリーチャーに飛行を与える機体)をコントロールしていたとする。(クリーチャー1体ごとに2マナ、合計)4マナを支払い、1/1と2/2を乗車させる。それらは飛行を持つことになる。対戦相手が1/2飛行クリーチャーを出しているので、2/2だけで攻撃したいとすると、何が起こるか。2/2単独で攻撃して1/1は攻撃しないで残る――同じ〈熱気球〉に乗っているのに。攻撃したりブロックしたりするのは一緒でなければならないのか、それとも2/2だけで攻撃するなら1/1は下車しなければならないのか、あるいはフレイバー的な問題に目をつぶってこのままにすべきなのか。

 しかも上記の例はバニラの1/1と2/2で他にはカードの相互作用が存在していない。この設定の機体がどう動くべきかを掘り下げていけば行くほどに、この設定ではフレイバーを正しく再現する形で表現することはできないということがわかっていった。そこで、我々は違うことを試みることにした。

 〈戦気球〉を作ったことで、我々は機体をクリーチャー化するというアイデアを掘り下げることになった。クリーチャーが乗車している場合にだけ、機体で攻撃やブロックができるとしたらどうだろうか。〈戦気球〉のパワーは乗車しているクリーチャーすべてのパワーの合計に等しい。これによって古い問題の幾つかは解決されたが、新しい問題がいくつか浮上した。3マナを支払って3/3クリーチャーを自分の〈戦気球〉に乗車させる。これで攻撃したら、そのクリーチャーはどうなるのか。〈戦気球〉で攻撃したとして、対戦相手のターンに3/3でブロックできるのか。フレイバー的におかしな話だ。3/3は〈戦気球〉の中のはずなのだ。

 先行デザインが終わるまでに機体を完成させることはできなかったが、充分な可能性は見つけることができた。そこで、私は(先々週紹介した)デザイン・チームにこの完成を任せることにし、最初に以下の条件を提示した。

  1. 機体はアーティファクトであるべき
  2. 機体は戦闘で攻撃したりブロックしたりできるべき
  3. クリーチャーは機体に乗車できるべきで、それは意味があるべき
  4. 機体は装備品とは違う感じであるべき

 デザイン・チームは、クリーチャーが機体に乗り込み「スイッチを入れる」というアイデアを理解した。デザインの初稿では、機体はアーティファクト・クリーチャーだが、適切な乗員がいなければ攻撃もブロックもできない、というものだったと思う。しばらくのプレイテストを経て、我々は最終的に、クリーチャーが機体に乗車し、そして、乗車したらそのクリーチャーが下車するまで機体が攻撃したりブロックしたりできる、というアイデアに到った。この時点で、乗車はまだマナが必要な能力だった。そして、我々は機体で攻撃したりブロックしたりするために必要なクリーチャーの数という制限を加えた。

 ここで例を挙げよう。1/1と2/2をそれぞれ1体ずつと、〈大型戦車〉という5/5でトランプルを持ったアーティファクト・クリーチャーの機体をコントロールしている。乗車するのに2マナ必要で、乗員が2人必要だ。4マナで、クリーチャー2体を〈大型戦車〉に乗車させることができる(カードを下に置く)。そして、これらのクリーチャーが乗車しているかぎり、攻撃したりブロックしたりできる5/5トランプル持ちが手に入るのだ。このクリーチャーたちは乗車している間も呪文や能力の対象にできるので、機体への最高の対策の1つは乗員を倒すことだったのだ。

 プレイテストの結果、我々はいくつかのことに気がついた。1つ目に、クリーチャーがずっと乗車した状態になるのは好ましくないということ。2つ目に、乗車にマナが必要ないようにする方法を探したいということ。3つ目に、機体に乗車している間もクリーチャーの起動型能力を使う人が後を絶たず、それはフレイバー的に奇妙だということ。

 我々の解決策は、コストとしてマナを支払うのではなくタップするようにするということだった。乗車するためには、適切な数のクリーチャーをタップする必要があるようになった。そうすれば、そのターンの間攻撃したりブロックしたりできるのだ。これで〈大型戦車〉は「乗車2」だけが書かれるようになった。これは、この5/5トランプル・クリーチャーで攻撃するためには、その前に自分がコントロールしているアンタップ状態のクリーチャーを2体タップしなければならないということを意味する。

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機体を操る

 これが、デザインからデベロップに渡された時点での機体の働きだった。デベロップは数値を調整した。クリエイティブ・チームは、乗車されていない機体がクリーチャーにしかできないようなことをするのは奇妙なので、乗車したときにだけクリーチャーになるということはできないかと尋ねてきた。そうすれば、機体をタップして他の機体に乗車させるという問題も解決できる(これは今もルール上は可能だが、そうしようとするメカニズム的な理由はほとんど存在しない)。また、「乗車」という用語が「搭乗」に改められた。

 デベロップは何週間もの間機体を調整し、そして問題を見つけていった。特定の数のクリーチャーを必要とするということは、つまり小型クリーチャー、特にトークンを大量に並べることを非常に有利にする(これはこのあとで触れる最後のメカニズムである製造と関連してくる)。機体がトークンと組み合わせると非常に効果的に働くので、デベロップはトークンを使っているものとして機体のコストを決めなければならなかった。そして、その結果、トークン戦略以外と組み合わせたときには重すぎて使い物にならなくなってしまったのだ。

 そのころ、私は2017年(北半球の)秋のセットである『Ham』のデザインで忙しかった。私は『アモンケット』のデザインを始めるため、『カラデシュ』のデザインを途中からショーン・メイン/Shawn Mainに任せた。そして、『Ham』を手がけるために、『アモンケット』のデザインを途中からイーサン・フライシャー/Ethan Fleischerに任せたのだ。

 『Ham』で、我々は新しいメカニズムに取り組んでいたが、それは起動するために特定の数のクリーチャーを必要とするもので、あまりにも機体に似ているのが気がかりだった。このメカニズムを機体と差別化するため、私は、クリーチャーの数ではなくクリーチャーのパワーの合計値を参照するようにしていた。我々はそれのテストを行い、非常にいい手応えを得ていたのだ。

 ときどき、私はすでに手を離れたセットに目を向けることにしている。『カラデシュ』はデベロップ中だったので、私は『カラデシュ』の共同リード・デベロッパーであるイアン・デューク/Ian Dukeとエリック・ラウアー/Erik Lauerに話を聞いた。彼らは、機体に問題を見つけたと言った。そして、彼らのその問題についての説明を受けて、私は『Ham』のメカニズムに関する解決策が『カラデシュ』で使われているということを理解した。「搭乗5」は、5体のクリーチャーをタップする必要がある、という意味ではなく、パワーの合計が5以上になるように好きな数のクリーチャーをタップする必要がある、という意味になったのだ。

 デベロッパーたちはこのアイデアを興味深いと考え、試してみた。それは素晴らしい解決策だった。搭乗の後の数字が大きくなっても、大量のトークンを使うデッキを使わなければならないということにはならないのだ。大型クリーチャーを使う、トークンのないデッキでも問題ない。そしてできたのが、これである。

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 機体に関して、1つ言い添えておこう。間違いなくプレイヤーが機体デッキを組めるようにしたかったので、様々なプレイスタイルに対応した機体をデザインした。すべてのプレイヤーが、望むなら、自分のデッキに何枚かの機体を入れることができるのだ。

製造の製造

 デザインの目標の1つが、その世界の雰囲気を再現することである。最初、アーティファクト・セットとみられる中での差別化を図るため、私はこの線を提示した。つまり、カラデシュ世界ではアーティファクトは生物学ではなく工学である。前回のアーティファクト世界であるミラディンでは、金属でできた世界であるがゆえに多くのものがアーティファクトであり、そしてその世界の生物はどういう形にせよその金属を注入されているのだ。

 カラデシュは金属世界ではなく、発明の世界だ。アーティファクトは工学を表すべきだ。カラデシュの住人は、生物学的に金属を組み込んだからではなく、工学を利用していることで強化されているのだ。様々な道具や機体や自動機械を使う。ただし、これはアーティファクトだけに限った考え方ではない。工学という観点は、すべての色にも同じように存在するべきなのだ。

 そのために、我々はマジックの中でこのフレイバーを再現するために使える道具を探した。クリーチャーは工学を用いて強く、速く、賢くできる。強化できるのだ。マジックにおいて、こういった進化を+1/+1カウンターで表すのはよくあることだ。また、我々はカラデシュの住人に金属生命体を作る能力があるということを示したいと考えた。例えば、飛行機械は『マジック・オリジン』で示されたカラデシュの大きな要素である。この人工的に作られたクリーチャーは、アーティファクト・クリーチャー、あるいはアーティファクト・クリーチャー・トークンで表すことができる。

 +1/+1カウンターを使うことが決まって、我々はそれを軸にしたメカニズム的テーマを作りはじめた。同様に、トークンについても、クリーチャーであることやアーティファクトであることによって有利を得るものを作っていたっ。こうして、このセットは+1/+1カウンター・テーマとトークン・テーマ(そしてアーティファクト・テーマ)を有するようになった。最大の問題は、この2つが望むほどは関連していないということだった。それでは、この2つのテーマの懸け橋となるようなメカニズムはできないだろうか。

 そのとき、『運命再編』の《砂草原ののけ者》が思い起こされたのだ。

 これが戦場に出ると、選択肢が与えられる。クリーチャーを+1/+1カウンターで強化するか、あるいはトークンを出すかだ。この選択肢を軸にしたメカニズムを作ることはできないだろうか。そうすれば、プレイヤーは両方のテーマを意識することになるし、製造(この架け橋になるメカニズムの名前だ)は両方のメカニズムと噛み合うので、両方を1つのデッキに入れることができるようになる。

 最初は、《砂草原ののけ者》をもとにして、トークンは、アーティファクトである以外には何も能力を持たない1/1クリーチャーを想定していた。舞台がカラデシュなので、トークン/クリーチャーを1/1の飛行を持つ飛行機械にするというアイデアも検討したが、そうしなくてもプレイヤーはクリーチャー・トークンを選びすぎるという問題があった。飛行まで持たせると、事実上選択の余地がなくなってしまう。

 1/1で飛行を持たないクリーチャーでさえ、+1/+1カウンターよりも選ばれることが多かった(この時点では機体に搭乗するのに必要なのはクリーチャーの数であり、トークンはずっと有利だったのだ)。我々は製造の数を1つにまとめる、つまり+1/+1カウンターにせよアーティファクト・クリーチャー・トークンにせよ得られる数は同じにする、という決定を下していたが、この2つの数字を分けるべきかという議論もあった。しかしそうするとカードはさらに複雑になり、簡単には把握できなくなってしまう。

 解決策は、製造クリーチャーにパワーが上がると強化されるような能力を持たせるというものだった。そうすれば、+1/+1カウンターを選んだときにはさらなるシナジーを得られることになる。機体のメカニズムが変更になって、アーティファクト・クリーチャー・トークンを選ぶ有利が多少減った(とはいえ、必要以上の搭乗をせずに、つまり必要以上のパワーをタップさせずに機体に搭乗できるというメリットはある)。そして、この2つの選択肢のバランスが取りやすくなったのだ。

数字は3

 デザイン中に、我々は他のメカニズムをいくつも作っていた。ある時点で、このセットには5つのメカニズムが入っていたのだ。しかし、エネルギーと機体はかなりのデザイン空間を使う必要があり、しかも平均的なメカニズムよりも頭を使うものだった。そこで、我々はメカニズムを3つだけに絞ることにしたのだ。今年の「デザイン演説」で語ったとおり、私はここ数年のセットは詰め込みすぎだったと考えているので、少し引き戻すというアイデアには賛成だ。それでもたくさんの要素があるので、残り2つのメカニズムがなくなったことには満足している(私はその2つどちらも気に入っていたので、いつか再び日の目を見ることになるだろう)。

 もう1つ重要なのが、プレイヤーに発明家気分になってもらうというのはメカニズムだけに限られる話ではないということである。プレイの多様性が増えるようなさまざまな興味深い選択や、デッキを組む上で軸にできるようなカードが(通常より多く)存在するようにしたかった。『カラデシュ』は、プレイヤーが賢いと感じられるような、そして常に新しい挑戦を見つけられるようなセットにしたかったのだ。

 上記の通り、我々はこのセットにはさまざまなテーマがあるようにして、プレイヤーがそれらを組み合わせられる形で作るよう尽力した。そうすることで、プレイヤーは自分のデッキを組むとき、さらにプレイするときにも、発明できるようになっているのだ。その途上での、さまざまなクールなデザインに関する面白い話はいくらでもあるが、それはもう少し待ってもらいたい。これから数週間で、カード個別の話の中で語っていくことにしよう。

 今日の話の終わりに、私が『カラデシュ』にどれほど興奮しているか強調しておこう。カラデシュ世界に関して、私の心に響き、私が衝撃を受けたものがある。このセットを作った、デザイン・チームにとっても同様だった。クールなものが大量にあり、このセットには楽しく興味深い形で組み合わせられる、非常に部品的デザインが存在している。諸君がプレイし始めるのを見るのを待ちきれないほどだ。

 さて、本日はここまで。私はいつも反響を楽しみにしているが、『カラデシュ』は本当にお気に入りなので、いつもよりももっと反響を楽しみにしている(建設的批判であれ、肯定的なものであれ)。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、『カラデシュ』のカード個別の話を始める日にお会いしよう。

 その日まで、あなたが驚くべきものを発明しますように。

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