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戦略記事

Beyond the Basics -上級者への道-

ロナス最後の抵抗

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ロナス最後の抵抗

Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2017年6月22日


 今や、破滅の刻が訪れようとしている。

 ついに来るんだ。数か月前、『アモンケット』が発表されたとき、同時に『破滅の刻』についても公表された。その時の私たちは、アモンケットの世界が問題を抱えているということは知らなかった。そして確かに、ニコル・ボーラスは私たちの想像を裏切らなかった。

 アモンケットの救世主の正体は、怒れる神であった。この次元の数多の住人たちは完全なる破滅を避けるため、ゲートウォッチの最大限の支援を受けつつ彼と戦うつもりだ。

 そしてボーラスを打倒しようと試みるのは、定命のものにすぎない存在だけではない。

 もうひとつの存在について話をさせてもらおう。

 『アモンケット』では、督励メカニズムが登場していた。このメカニズムはクリーチャーが持っていて、攻撃したときに使うと次のターンにアンタップしなくなるが、有利な効果を得ることができる。

 さて、『破滅の刻』でも督励は登場する――しかも『アモンケット』では見られなかったいくつかの新しい変化を伴ってね。ずらりと並んだ人間やミノタウルスや様々な種族が、これまでと似た(あるいはちょっと新しい)方法で督励を用いる。例えば、コストにタップを含む能力のいくつかは督励が可能になっていて、熱心に働いてもらうことで驚くべき活躍をしてくれるだろう。

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 本当にどれも素晴らしいよ。だけどこれで終わりじゃない。

 神にあなた自身を督励してもらうとどうなる? あるいは、もっと重要な疑問だが、神の力を駆るために督励してもらうべき場合とは?

 どんなものを想像したかな?

 『破滅の刻』には、それが可能な5枚のサイクルがある。そして今日は、そのサイクルの緑を構成するカードを紹介しよう。《ロナス最後の抵抗》を見よ!

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 この5枚のサイクルはそれぞれが単色のソーサリーで、『アモンケット』で登場した5柱の神々それぞれに1枚ずつ存在する。どれも素晴らしい効果を発揮する一方で、次のアンタップ・ステップに土地がアンタップしなくなるんだ。

 あるいは端的に言えば、プレイヤーを督励するんだ。

 これらはどれもでたらめに強い――《ロナス最後の抵抗》についてもそう思うだろう。2マナで5/4? ばかげてる! ちょっとした欠点がついてるだけだ。

 そして、マジックにおけるあらゆる欠点について考えるのと同じように、私はそれに欠点を受け入れるだけの価値があるかどうか考え始める......不利益を受けずに利用する方法もね。そこで今日は、『破滅の刻』で登場するこの5枚の目玉カードに注目し、これら「自己督励」カードを使ってデッキを組むいくつかの方法について語ることとしよう!

1.マナ・カーブに沿って唱える場合

 自問しなければならない最初の問題は、「自分のデッキでこれをマナ・カーブ(訳注1)そのままの流れで(《ロナス最後の抵抗》の場合は2ターン目に)唱えたとき、この欠点を許容できるだろうか?」というものだ。

(訳注1:マナ・カーブ/マナ域ごとの枚数をグラフにすることで見える曲線)

 《ロナス最後の抵抗》なら、2ターン目に叩きつけて、次のターンに5/4で攻撃する準備を整えられる。ああ、緑のアグレッシブなデッキなら、それだけでも十分かもしれない。それによって次のターンに5点のダメージを与えられるなら、土地が起きないぐらいはかまわないだろう。

 しかし危険が無いわけではない。クリーチャー除去呪文やバウンス(訳注2)効果は、こちらのターンを無に帰しつつ対戦相手が自由に展開する、という悲惨な結果を生む。

(訳注2:バウンス/戦場のカードを手札に戻す)

 逆に、2ターン目に出すのが正解と思われる、かなり安全に出せそうな対戦もある。例えば、赤いデッキと対戦する場合、トークンを除去するには火力呪文を2枚は消費しなければならないだろう――その状況なら、こちらが有利だ。

 《ロナス最後の抵抗》をすぐ唱えるべきか、それとも別の機会を待つべきかを知るためには、対戦相手が《ロナス最後の抵抗》に干渉できるか否かを見極めることが重要だ。強烈な効果を得るために次のターンを犠牲とするとき、対戦相手はこちらをどの程度までひどい目に合わせられるだろうか? それは相手によるんだ。

 2ターン目に唱えるという事例に限って言えば、もう1つ鍵となる要素がある。3ターン目に何ができるだろうか? 3ターン目に取れる行動が弱い、あるいは行動が取れない場合は、《ロナス最後の抵抗》を用いるに最適な状態だ。逆に3ターン目に素晴らしい手が打てるなら、温存したほうがいいかもしれない。

2.後になってから唱える場合

 マナ・コストを見て、「唱えられるようになったらすぐ使うべきだな」と考えるのは簡単だ。しかし、先週「まだ動くな!」で述べたように、すぐ使うことが正しいとは限らない。

 例えば、アグレッシブな緑のデッキや、今のスタンダードで見られる黒緑のミッドレンジのようなデッキを組むとしよう。《ロナス最後の抵抗》以外にも、2ターン目に唱えたいカードが数多く採用される。そうすると、5ターン目になってから、土地を2つタップして強力な自己督励呪文を撃つ、ということもあるだろう。


ロナス最後の抵抗》 アート:Winona Nelson

 これはいくつかの選択肢を提供してくれる。

 1つは、次のターンに3マナを残せるというものだ。次のターンに3マナ以下の呪文を引いた時に、それを唱えるチャンスが残る。

 あるいは、同じターンに残ったマナを使って別の呪文を唱えることも可能だ。2ターン目に使うと、アグレッシブ・デッキでかなり重要な存在である3ターン目の行動をパスすることになってしまう。一方で3ターン目を放棄せず、5ターン目に《ロナス最後の抵抗》とさらに別の何かで対戦相手にさらなる圧力を与えられるなら、6ターン目に土地がアンタップしなくてもそこまで問題にはならないはずだ。そのころには、すでに戦場に他の脅威も存在しているだろうし、単体除去呪文を消費していて5/4が除去されないかもしれないからね。

 そして、もちろん、後から唱えることで得られる利益は他にもあるわけだが......

3.取れる行動がなくなるまで待つ場合

 呪文は土地を使って唱える......しかし唱えられる呪文がもう無い場合、自己督励呪文の利点と欠点を計る先はライブラリーの一番上のカードだ!

 4ターン目までに手札の脅威を全て展開し、手札には土地だけが残っているとしよう。ああ、《ロナス最後の抵抗》を唱えるには最適なタイミングじゃないかな! 次のターンに唱えたかった呪文を引いたとしても使えない、という問題は確かにある。しかし、大体のデッキは、呪文を引いたとしても残っている土地で唱えられるだろう。そして、土地が起きないせいで唱えられない呪文を引いたとしても、5/4のクリーチャーにはその危険性を受け入れるだけの価値があるはずだ。

 一方で、少なくともこの場合は、《ロナス最後の抵抗》を唱える状況の中では最も影響力が低いタイミングと言える。4ターン目に出てくる5/4よりは、2ターン目に出てくる5/4のほうが遥かに強烈だ。つまり、状況に応じて適切なプレイを判断しなければならない、ということになる。

4.欠点を克服する

 さて、最後は私にとって、どんな欠点付きカードでも確認したくなる項目だ。欠点を克服し、完全に無視する方法はあるだろうか?

 土地がアンタップしない問題を回避する方法の1つは、土地以外のマナ源を大量に用いることだ――この方法は都合の良いことに、《ロナス最後の抵抗》と同じ緑色にも存在する。そう、例えば、《耕作者の荷馬車》のような手堅いマナ源や、あるいはマナを生んだり土地をアンタップするようなクリーチャーもいいね。代表的なところでは《ラノワールのエルフ》、《旅するサテュロス》、それにきぼう――あーっと、今のは気にしないでくれ。

 ともかく、これらが欠点を克服する方法の1つであるのは確かだ。しかし、この欠点を克服するもう一つのすごい方法がある。

 次の自分のアンタップ・ステップを飛ばすような効果が存在する。(例えば、《瞬間の味わい》とか。)同じターンに《瞬間の味わい》を2つ唱えると、そこから2ターンはアンタップ・ステップが飛ばされてしまう。

 しかしながら、《ロナス最後の抵抗》はそうじゃない!

 自己督励サイクルの呪文を使うと、次に自分のターンのアンタップ・ステップが来ても土地はアンタップしない――それでもアンタップ・ステップがあることに変わりはない!

 私が言いたいことがわかるかな?

 ......ああ、いや。わからないかもしれない。だけど、うん、考えてくれて嬉しいよ。

 ともかく、何が言いたかったかっていうと、自己督励呪文を2つ(あるいはもっと!)唱えても、土地が起きないのは1ターンで済むってことだ。

 そうだな、4ターン目に《》を4枚コントロールしていて、《ロナス最後の抵抗》が手札に2枚あるとしよう。ああ、5/4クリーチャーを2体も出して、土地が起きないのは1回だけだ! これもまた問題を回避する方法さ。

 この方法を使うには、このサイクルの他のカードがどんな効果を持っていて、同じデッキに一緒に入れられるものが何かを調べる必要がある! (これ以外は)もう少し待つだけで全てが明らかになるぞ。

抵抗せよ

 さて、これらのカードを上手に使うにはどうすればいいだろうか? 最も重要なことは、それで何ができるのか、取る手段によって何が変わるのかをすべて把握し、瞬時に正しい判断を下すことだ!

 私は《ロナス最後の抵抗》について、2ターン目に必ず唱えるとも後から唱えるとも決めてはかからないだろう。2ターン目に入ったときに、戦場、手札、対戦相手の状態を判断し、そのつど正しい決定を下さなければならない。時には覚悟とともに唱えることになり、時には保持することになるだろう。どちらも、それが正しいという状況がある。

 意思決定のために、十分な事前知識が備わったと思ってもらえれば幸いだ。

 今回の記事について何か疑問や考えはあるかな? ぜひとも知りたい! 話を聞かせてもらうのはいつだって大歓迎だ。TwitterTumblr、あるいはBeyondBasicsMagic@Gmail.comに(すまないが英語で)意見を送ってほしい。

 私は次回、まさに『破滅の刻』と言えるものを紹介するつもりだ。それまでは、残りのカード・プレビューを楽しんでくれ......そして、それらのカードを使って対戦相手を滅亡させるための方法を計画しておこう。それがニコル・ボーラス流だ。

 また来週。

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

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