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世界選手権2015への「オリジン・ストーリー」:北米編2
世界選手権2015への「オリジン・ストーリー」:北米編2
Mike Rosenberg / mtg-jp.com staff
2015年8月21日
編集より
マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2015が、8月27日・28日・30日の日程で、アメリカ合衆国・ワシントン州シアトルにて「PAX Prime」と併催されます。
本大会に先立ち、参加選手全24名それぞれのはじまりの物語、「オリジン・ストーリー」を選手への取材をもとに英語記事として制作、数回に分けて翻訳を掲載いたします。
第4回は北アメリカ編その2として、アメリカと世界全土に知られる名手たちの「オリジン」をご紹介します。日本との意外な接点も...?
サミュエル・ブラック/Samuel Blackの「オリジン・ストーリー」
招待事由:北アメリカ地域プロ・ポイント上位
大きな達成感や感情の爆発、そして人生が変わる感覚。「プロツアーでの勝利」といえば、そこでの成長よりも結果の方が強調されるものだ。だが長年のプレイヤーであり高名なデッキビルダーであり、「StarCityGames.com」の連載ライターであるサミュエル・ブラックにとって、達成感とは自身の成長から得られるものであり、ひとつの成功がまた別の成功に繋がるという感覚にあった。
とはいえ、プロ・マジックの世界でブラック自身が成功するより以前から、彼は世界最高のデッキビルダーのひとりという評価を長年にわたり築き上げ、プロツアーでは彼の所属するチームが使うデッキ選択に大きな影響を与える人物となっていた。彼はそのデッキ構築の腕前から、マジックというゲームで最も名前を知られたプレイヤーのひとりとなり、プロツアーでもその名に恥じず鋭い洞察をもって、目をみはるばかりのデッキ選択を行っている。
しかしながら、ブラック自身のプロ・マジック・キャリアが本当の意味で始まったのは、2013-2014年プレミア・プレイ・シーズンからだった。世界中のグランプリを駆け抜けた先のプロツアー『テーロス』にて準決勝まで進出し、ブラックは早くも世界選手権2014の大本命となった。そしてその大会でも、彼はトップ4入賞目前まで駒を進める見事な戦いぶりを見せた。その勢いは今シーズンも続き、ブラックは1年を通して安定した成績を重ね、プレイヤー・オブ・ザ・イヤー・レースの上位にその名を載せたままプロツアー『マジック・オリジン』へと向かっていったのだった。
そんなブラックの原点を探ると、彼のマジックとの出会いは幼少の頃だった。そしてそこから初めてのプロツアー参戦までは、長い年月を要した。
「マジックの遊び方を学んだのは11歳か12歳の頃かな」と、ブラックは振り返る。「友だちが『リバイズド』のスターター・デッキをふたつ持ってきたんだ。ひとつはその友だちので、もうひとつはその子の兄弟のものだった。僕らはそれらを半分ずつに分けて、4人でゲームをしたんだ。でも誰も、ターンがどのように進んでいくのか知らなかった。全員でアップキープを共有し、全員一緒にドローした。それから全員で土地や呪文をプレイして、みんなで攻撃したんだ。『リバイズド』のスターターを使っていたおかげで、戦闘に問題が起こるほど複雑な盤面にはならなかったけれど、かなり政治的な駆け引きが必要なゲームだったね」
「初めてプロツアーに出たのは、2006年のホノルルだ」と、とブラックは続けた。「エクステンデッドのプロツアー予選で《イチョリッド》を使って権利を獲得し、今でも続く相棒のレックス/Lexと一緒にプロツアーへ行った。僕は1勝もできないまま3敗したところで、初日落ち確定と勘違いしてドロップしてしまった。その後の大会で、0勝3敗からトップ25までいったことがあるんだけどね。とはいえ、1勝もできなくても、知らない人ばかりでも、これは最高の経験だった。最後まで満喫したとは言い難いけれど、この旅のことを考えてみると、そこから僕の中に起きた変化の大きさには驚くばかりさ」
しかしながら、この最初のプロツアーはブラックにとって別の理由で特別なものではあるものの、彼のプロツアーの「オリジン」とは言えない。彼の本当のプロツアーの「原点」は初勝利をあげたときであり、彼の持つデッキ構築力を示した瞬間であった。
「本当のプロツアーの『オリジン』は、初めてマジックで大きな結果を出したときのことだと僕は思う」と、ブラックは語る。「自作のデッキでCarと地域大会に優勝したことで、僕は自分のデッキ構築に大きな自信を持てた。それがその先のプロツアーに繋がっていったんだ」
彼の言う「Car」とは世界選手権2007にて開催された「Win-a-Car トーナメント」というものだ。それはブラックが一躍華々しい活躍を見せた大会であり、彼はそこで全力を注ぐ先を見つけた――「誰もが驚くデッキを作り、それで勝つ」という彼の信念が生まれた瞬間であった。
2シーズン続けての世界選手権出場となったブラック。昨年の成績を超えるには、トップ4に入賞するしかない。果たして彼はそれを成し遂げるだろうか?
ポール・リーツェル/Paul Rietzlの「オリジン・ストーリー」
招待事由:プロ・ポイント上位
2013-2014年プレミア・プレイ・シーズンは、殿堂顕彰者ポール・リーツェルにとって実りの多いものだった。彼は2013年10月のプロツアー『テーロス』にて自身5度目のプロツアー・トップ8入賞を果たし、2014年度プロツアー殿堂顕彰の選出に自らの力で後押しをしたのだ。そしてその輝かしいシーズンに、彼は世界選手権への招待も獲得したのだった。
今シーズンも、彼の勢いが留まることはなかった。プロツアー・トップ8入賞こそなかったものの、この新たな殿堂顕彰者はプロツアー・レベルの戦いで安定したパフォーマンスを見せ、2014-2015年プレミア・プレイ・シーズンのプレイヤー・オブ・ザ・イヤー候補に名前が挙がるほどプロ・ポイントを稼いでいった。そしてそのまま優勝タイトルを獲得することなく、彼は「プロ・ポイント上位」の枠で今年「PAX Prime」にて行われる世界選手権2015に招待されたのだった。驚くべきことに、彼はアリゾナ州スコッツデールにて人事役員の仕事をしながら、週末のみマジックの戦士となりすべてを成し遂げたのだ。
だが、その姿こそが現在のポール・リーツェルだ。様々なことを学び、生まれ育った故郷を離れ、仕事と社会生活がある大人のマジック・プレイヤー。だがそれでも、マジックは彼の一部として生き続けている。故郷ボストンでの彼の「オリジン」もまた、彼の中に生き続けていた。
「私が9歳のとき、ベビーシッターがマジックを教えてくれたんだ。生まれながらに負けず嫌いな私は、技術を磨いて向上できる場所を探した」と、リーツェルは回想した。「住んでいた場所から15分ほどのところに『YourMoveGames』のショップがあったのは幸運だったね。そこにはダーウィン・キャスル/Darwin Kastleやデイヴ・ハンフリー/Dave Humpherys、そしてロブ・ドウアティ/Rob Doughertyという殿堂顕彰者たちがいて、さらにウィリアム・ジェンセン/William Jensenやブライアン・キブラー/Brian Kiblerもよく足を運ぶショップだったんだ」
「YourMoveGames」で鍛えられたとあれば、リーツェルがそこで多くのことを学んだのは間違いないだろう。彼は、安定して勝つのが最も難しい環境のひとつで、プレイヤーとして成長していったのだ。「1週間にいくつも大会に出て、あのレベルのプレイヤーたちと戦った。今のプレイヤーとしての自分を作り上げたのは、あの日々だったな」と、リーツェルは語った。
アメリカ東海岸で戦いを続けたリーツェルだったが、そこで開かれるプロツアー予選はどれも手強いもので、プロツアーの権利を獲得するのは容易でなかった。それでも、優勝を勝ち取り招待されたマジック最高の舞台は、素晴らしい思い出になったという。
「最初のプロツアーは2002年の大阪だった」と、リーツェルは振り返る。「当時私は16歳で、母が一緒に日本まで来てくれた。2日目進出をかけた試合でマイク・チュリアン/Mike Turianに負けて敗退したけれど、この大会をきっかけに高いレベルのマジックへのめり込んでいったんだ。その後は京都や東京、広島と、日本を探訪するのにしばらく滞在したよ」
そこから、リーツェルはマジックに夢中になった。「自分の力で『play the game, see the world(ゲームをして、世界を見よう)』を実現できるかどうか、確かめたかったんだ」
リーツェルは大人になったが、その生活の中でマジックは欠かせないものになっている。長年にわたりその一部として生きてきたマジックをするたびに、彼は親しい友人と毎週のように会うことができ、仕事から離れることもできた。数週間後、彼は再び挑戦する。華々しく飾られたその経歴に、「世界選手権王者」の肩書きを加えるための戦いに。
オーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldの「オリジン・ストーリー」
招待事由:プロ・ポイント上位
親友ふたりと参加したチーム・リミテッドのグランプリにて優勝。オーウェン・ターテンワルドは、2014-2015年プレミア・プレイ・シーズンでこれ以上のスタートないスタートを切った。彼はその後1年を通して、世界ランキングの上位に君臨し続けた。
今シーズンのターテンワルドは、過去最高に安定した成績を誇った。プロツアー『タルキール覇王譚』では11位に入賞し、また多くのグランプリで11勝4敗の成績を積み重ね、グランプリ・ポートランド2014の優勝を合わせて多くの賞金とプロ・ポイントを稼ぎ出した。その結果、彼は世界選手権2015の「プロ・ポイント上位」枠のひとつを確保したのだ。
ターテンワルドのマジックのルーツは、ほとんど覚えていないほど幼い頃にあった。
「当時はファンタジーな世界観のゲームや戦略的なゲームを片っ端から遊んでいた。だから、マジックにたどり着くのも必然のことだったね」と、ターテンワルドは記憶を探って言った。「地元のカード・ショップのオーナーがマジックの遊び方を教えてくれたんだ。覚えているのは、スターターに入っていた《大ダコ》で攻撃したところぐらいかな。そのときの対戦相手はその店一番のプレイヤーで、僕がこのゲームを学ぶのに辛抱強く付き合ってくれた。その彼は《灰色熊》2体でブロックしようとしたんだけれど、オーナーが初心者にはダブル・ブロックは難しすぎるから、と言ってそれを許さなかった。結局、そのまま3/3の《大ダコ》で殴りきったよ」
これも実に微笑ましいエピソードだが、ターテンワルドがマジックに夢中になるきっかけとはならなかった。やがて、まだまだ幼い頃に、彼はプロツアーへ招待されることになる。
「初めてのプロツアーは、2007年にヴァレンシアで行われたものだった。洪水によって(リンク先は英語)会場が水浸しになって、初日が中止になったんだ」と、ターテンワルドは思い出を語ってくれた。「僕の知る中で、初日10回戦、2日目4回戦のプロツアーは史上唯一だと思うよ。その中で僕は素晴らしい成績を出してトップ8入賞のチャンスを得たんだけれど、最後にトリプルマリガンを強いられて負けてしまった。それでも結果は18位で、ゲームの賞金としてはこれまで得たことのない大金を手にした(当時は3,500ドル)。それ以来マジックに夢中になり、可能な限りすべてのプロツアーやグランプリに出場し続けたんだ」
ターテンワルドはその後、驚くべきキャリアを積み上げていく。2011年にはグランプリを中心にとてつもない活躍を見せ、プレイヤー・オブ・ザ・イヤーを獲得。それからプロツアー・トップ8入賞2回、グランプリ優勝3回をその経歴に加えていった。
とはいえ、ターテンワルドがこうして安定した成績を残しているのは事実だが、彼には足りないものもある。それはひとつの大会で飛び抜けた結果を出すことだ。11勝4敗をひたすらに積み上げてきた男は今、優勝の二文字に強烈に飢えているはずだ。果たしてターテンワルドは、今月「PAX Prime」の舞台で、優勝を掴み取ることができるだろうか?
マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2015 イベント特設ページ
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