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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:スワン・アサルト(モダン)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:スワン・アサルト(モダン)

by 岩SHOW

 モダンというフォーマットは難しい。これはプレイする側はもちろん、プレイヤーに環境を提供する側もそうだと思う。モダンは『基本セット第8版』『ミラディン』から最新のセット(現時点では『霊気紛争』)までのカードが使用可能と、文字通り広大なカードプールが最大の魅力である。あるのだが、新旧パワーカードがそろい踏みになるということは、むちゃくちゃ強い、他を寄せ付けないデッキが誕生してしまいかねないということ。多種多様なカードが使えるのが魅力なのに、勝ってるデッキはいつも同じ......というのは少々、なんというかよろしくないよね。そんなわけで、禁止カードを設けたり、最新セットにモダン級のカードを投下して眠れるデッキを目覚めさせたり、といった環境保全活動が行われている。

 これらカードそのものに関することはもちろんだが、個人的にはプロツアーのフォーマットからモダンを外した、ということも無視できないファクターだと思っている。プロプレイヤーたちの多くが「モダンがプロツアーのフォーマットでなくなったら、環境はもっと穏やかなものになる」と語っていた。なるほど、確かに。賞金とプロポイント、そして名誉......さまざまなものを勝ち取るため、世界中のプロが本気で挑むことによって、モダン環境のデッキは光の速さで進化する。これはこれで面白いのだが、その結果禁止カードを量産せざるを得ないという事態になってしまっては......プレイヤーとしては喜ばしいことではないよね。

 というわけで、モダンは年に数度のグランプリ開催は維持されたまま、プロツアーという激流からは外れたわけだが......個人的には、この方針転換は成功だったと思う。ここ最近のモダンのトーナメント......特に、ショップ主催の賞金制のものや、もっと小規模な草の根大会なんか見ていると、いろいろなデッキが勝つようになった。それも、独創的なものがね。各自が思いついたデッキを持ち込んで、ゲームを楽しみ、そして勝つチャンスもある。モダンが今後も楽しいフォーマットとして続いていくことを、いちカジュアル・プレイヤーとしては願うばかりだ。

Gracen Atkinson - 「スワン・アサルト」
2017 TCGplayer States - ID 優勝 / モダン (2017年3月5日)[MO] [ARENA]
20 《
7 《
1 《蒸気孔
4 《天啓の神殿
4 《急流の崖
4 《シヴの浅瀬
1 《イゼットのギルド門
1 《さまよう噴気孔

-土地(42)-

4 《ブリン・アーゴルの白鳥

-クリーチャー(4)-
2 《溶鉄の渦
1 《稲妻
1 《血清の幻視
4 《宝物探し
4 《突撃の地鳴り
1 《神々の憤怒
1 《一日のやり直し

-呪文(14)-
1 《研究室の偏執狂
2 《トーモッドの墓所
2 《呪文貫き
1 《稲妻
1 《溶鉄の渦
1 《引き裂く流弾
3 《粉々
1 《マナ漏出
2 《神々の憤怒
1 《スフィンクスの後見

-サイドボード(15)-
TCGPlayer.com より引用)

 現行モダンのいろいろ勝ってるワイワイ環境感を体現するようなデッキがこの「スワン・アサルト」だ。《ブリン・アーゴルの白鳥》という唯一無二の能力を持ったクリーチャーを軸とした、独自の動きを見せる面白いデッキだ。

 4マナ4/3飛行とスペックも良い青白ハイブリッドクリーチャーだが、その能力がOne and Only。これがダメージを受ける際、それを軽減して0にしてしまう。この軽減されたダメージの発生源のコントローラーは、軽減されたダメージに等しい枚数のカードを引く。ダメージに対しては不死身であるが、アドバンテージを取らせてしまう恐れがある......ちょっと使いにくい、諸刃の剣系能力に見えることかと思う。

 ただ、この能力は実は自分で利用することもできる。対戦相手ではなく、ダメージの発生源のコントローラーがカードを引くことに注目。つまり自らの手で白鳥にダメージを与えれば、カードを引くことができる。ダメージをドローに置換するエンジンを使用して勝とうというデッキなのだ。

 白鳥にダメージを与えるのは《突撃の地鳴り》。手札から土地を1枚捨て、白鳥に2点ダメージ。これで2枚ドロー。また土地を投げ、2枚ドロー。これを繰り返していく。

 こうして1枚の土地を2枚のカードに変換していって......最後は対戦相手に10枚ほど土地を投げつけてライフを削り切って勝利。このコンボのために、メイン60枚のデッキのうち42枚が土地という他に類を見ない偏りとなっている。ここまで土地に寄せれば、このコンボが止まってしまうことはないだろうという設計だ。美しいね、機能美ってやつだ。

 《突撃の地鳴り》はマナが不要なのでこれに勝るものはないが、引けないという展開が最も恐ろしいので追加の地鳴り枠として《溶鉄の渦》が採用されている。こちらはマナが必要なのだが、自身のコストが1マナと軽いのが強み。1ターン目から設置して、相手のクリーチャーを焼き続けるコントロールカードとして用いるのも大いにあり。

 白鳥+地鳴りコンボはクリーチャー絡みでありながら除去での対処がし辛く(環境の多くの除去に耐性があり、またインスタントタイミングで能力を起動できるため)、うっかり揃ってしまえばあっさりと勝ててしまうことだろう。難点は、コンボパーツが重いこと。どうしても、カードを盤面に揃えるには2ターンにまたがってしまうことだろう。コンボパーツを確実に引けるわけでもない土地42枚構成なのと相まって、毎回確実に決められるわけじゃない不安定さは抱えている。

 一応、白鳥以外の勝ち手段として《宝物探し》による大量ドロー、そして《一日のやり直し》という手段がある。

 《宝物探し》は運次第だが1枚で致死量の土地を手に入れられるかもしれない楽しい1枚。《一日のやり直し》は手札の土地をすべて撃ち込んだ後に唱えて7枚引けば......まあ大体、相手のライフを削り切るくらいの土地は手に入るだろう。自身のターンは終了してしまうが、あまり関係なく対戦相手のアップキープに土地をゴンゴン投げつけて勝利しよう。これらの事実から、大事なのは白鳥よりも地鳴りか。その辺りを意識して、マリガンを行っていきたい。

 まあ安定して勝てるデッキではないが、だからこそ周りからは目の敵にされていない......これはこの手のデッキの特権だ。それを活かしてか、「エルドラージ・トロン」や「親和」なんかのデッキを薙ぎ倒して優勝するポテンシャルはある。君もこの「スワン・アサルト」のように、自分の好きなコンボデッキで今一度モダンのトーナメントに参加してみてはどうかな。以前はそれでダメだったかもしれないが、諦めるにはまだ早い!

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