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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ウルザトロン(ファングレン型)(Pauper)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ウルザトロン(ファングレン型)(Pauper)
by 岩SHOW
「Pauper」
日常生活では使用しない類の英単語だ。
その意味は......貧乏人・貧困者。そりゃ、そうそう使う機会もない......
のだが、日本のマジックプレイヤーにも馴染みが深い単語であったりもする。
《持たざる者の檻》? さすがに決定打ではない(余談だが、閉じ込められてるおっちゃんが中学時代のマジック仲間の父親によく似ているためたびたび話題になり、今でもイラストを見ると当時のトークを思い出して笑いがこみ上げてくる)。
Magic Online上で遊べるフォーマットの1つが、このPauper。ちゃんとした発音ではパーパーと言うらしいが、日本ではその字面から「パウパー」と呼ばれている。
このフォーマットは、持たざる者の名の通り、レアリティの高いカードを持たずとも戦える構築戦の一種である。使用可能カードは、Magic Online上でレアリティがコモンに設定されているカードのみ。平たく言えば、コモン限定構築だ。
コモンはアンコモンやレア、神話レアに比べて格段に入手難易度が低い。手に入りやすいコモンのみ、と言っても馬鹿にしてはいけない。マジックの基礎はコモンから。《稲妻》や《対抗呪文》といったシンプルで強力なカードが多数存在するし、《臭い草のインプ》や《空中生成エルドラージ》のような各セットの特色を色濃く押し出したデッキが組めそうなカードも山ほどあるので、デッキ構築に困るということはまずないだろう。
このフォーマットでは、以下のカードが禁止カードに指定されている。いずれも、かつて環境を支配したはちゃめちゃなデッキを実現させていた面々だ。
これらを踏まえた上で、実際に現在活躍しているデッキを見てみよう。「ウルザトロン」をご覧あれ。
4 《ウルザの鉱山》 4 《ウルザの魔力炉》 4 《ウルザの塔》 4 《憑依された沼墓》 1 《ゆらめく岩屋》 -土地(17)- 4 《海門の神官》 4 《熟考漂い》 3 《ファングレンの匪賊》 1 《ウラモグの破壊者》 -クリーチャー(12)- |
4 《彩色の宝球》 4 《彩色の星》 4 《探検の地図》 4 《稲妻》 3 《古きものの活性》 4 《虹色のレンズ》 4 《予言のプリズム》 3 《とどろく雷鳴》 1 《ムラーサの胎動》 -呪文(31)- |
2 《古えの遺恨》 2 《緑の防御円》 2 《赤の防御円》 2 《疲弊の休息》 1 《天啓の光》 3 《石の雨》 2 《忘却の輪》 1 《ムラーサの胎動》 -サイドボード(15)- |
現行モダンでも「赤緑トロン」「青トロン」と呼ばれるデッキが使用されているが、このトロンはウルザトロンの略称。《ウルザの鉱山》《ウルザの魔力炉》《ウルザの塔》の3つを戦場に揃えると、それぞれ2マナ・2マナ・3マナと、たった3枚の土地で7マナを生み出す驚異の爆発力を見せる。これを最短で目指すデッキを、「ウルザトロン(閣下)」と呼ぶようになり、今に至るというわけだ。
モダンでは《ワームとぐろエンジン》や《精神隷属器》などのマナ・コストは重いが強力なアーティファクトを連打するデッキだが......それらが使用できないPauperでは、やや様子が異なる。
採用されているクリーチャーがなかなかシブい。《熟考漂い》はウルザの土地を探しに行くためにさっさと3マナ2ドローで使い捨てても良いし、それらが揃ってからは溢れるマナで《予言》付き2/2飛行として運用する。このカードを使いまわせる《憑依された沼墓》もなかなかやるもので、本来ならその起動コストの3マナは重たいが、ウルザの土地が揃っていれば《ウルザの塔》をスッと寝かせればこと足りる。
もう1枚のシブいクリーチャーは《ファングレンの匪賊》。アーティファクトが墓地に置かれればライフを5点回復する能力は、無色マナを色マナに変換するための使い捨てアーティファクト満載のこのデッキでは簡単に誘発させられる。「赤単ゴブリン」などのライフを詰めるデッキが多数存在する環境での5点回復の意味は、他の構築におけるそれを遥かに上回るものだ。本人も殴りにいけるスペックなのも二重丸ッ。《彩色の宝球》を生け贄に捧げて、出した緑マナで《ムラーサの胎動》を唱えて宝球回収して......なんてやっているだけで、バーンやビートダウン系のデッキは心が折れる音を聞くことになるだろう。
《絶え間なき飢餓、ウラモグ》を叩きつけるド派手デッキであるモダンのそれとは異なり、堅実な勝利を追求する形のPauperの「ウルザトロン」。ただこれにも派生は多数あり、青黒コントロール寄りのもの、より大型クリーチャーの連打に特化したものなど、デッキの作り甲斐は他のフォーマット同様に楽しめるもの。コモンに秘められた無限の可能性を、今こそ掘り起こせ!まずは押入れに眠っているカードの束を整理するところから始めよう!(これが一番辛いな)
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