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市川ユウキの「プロツアー参戦記」

2016.05.06

市川ユウキの「プロツアー参戦記」 プロツアー『イニストラードを覆う影』 後編

yuukiichikawa.jpg

 こんにちは!Team Cygames所属の市川です。

 今回は、前回の続きとしてプロツアーに向けての大会レポートを綴っていこうと思います。よろしくお願いします。


0.ドラフト雑感

 大会レポートの前に軽くドラフトの雑感を。

 今回のドラフト練習も前回のプロツアーに続いて、私が所属するプロチーム、Team Cygamesで合宿を行いました。

■色ごとの強弱

 環境最強色。

 『イニストラードを覆う影』のリミテッド環境は最近の環境から一転して、クリーチャーのサイズが一回り小さくなっていますが、緑だけは別格です。

 コモンで《孤独な狩人》、《ケッシグの不吉な豚》のようなゲームを決め得る大型クリーチャーが存在し、《狂気の一咬み》のような信頼できる軽量除去も有しています。

 その他《針毛の狼》のような汎用性の高いカードがコモンに多く、序盤はそれらの普遍的に強い緑のカードをピックしていき、

 狼シナジーのカードを拾って環境最強の呼び声高い、「赤緑狼」に進むのもよし、

 昂揚カードから「緑黒昂揚」に行くのも良いでしょう。

 その他《信条の香炉》などの装備品を軸にした「緑白人間」もとても安定したアーキタイプで、様々なカラーバリエーションで3-0スペックのデッキを組める緑は、強力かつ受けの広い色と言えます。

 一方、青は環境最弱という見解で一致しそうです。

 コモン枠が呪文に割かれ過ぎていて、クリーチャーがとにかく少ない。そして細い。

 緑や赤の変身クリーチャーと比べると変身前で同じ程度のマナレシオ、変身後はとても抑え込めないサイズになってしまいます。

 優良クリーチャーは《薄暮のニブリス》のみと、とても主軸になれる色ではありません。

青に参入する理由

 青に参入する理由は簡単、レアのみです。

 《氷の中の存在》と《驚恐の目覚め》はスペル過多の青赤デッキに入ると別格の強さになります。

 《火の猟犬》や《苛虐な魔道士》などの安いクリーチャー達で盤面を固めて、早い巡目では《癇しゃく》や《ただの風》などの優良スペルを最優先でピック。

 大量のドロー呪文、《目録》や《苦しめる声》などを介してからの《薄暮のニブリス》か《火の猟犬》に《放たれた怒り》をプレイして一撃必殺。

 クリーチャーは10体程度で残り13枚から14枚は全て呪文で構成するという、環境でも異端の構築と言えます。

 この青赤はTeam Cygames合宿中、メンバーで環境最弱色である青をどう使えば勝ちうるのかを検討し続けた結果たどり着いた、唯一の答えでした。

 環境最強色である緑はもちろん念頭にありますが、《氷の中の存在》、《驚恐の目覚め》と言った「両面」カードである爆弾レアが青ゆえに避けられ、上から流れて来ているのを「確認」して、一気に青赤ピックに舵を取る、これが今回の自分の戦略、になる「はず」でした、数日前までは......。

ドラフトにおける両面カードの扱いについて:プロツアー『イニストラードを覆う影』で使用されるブースターはスリーブに入れられることになりました。今後のプロ・レベル・イベントにおける扱いは、プロツアー後に再検討いたします。


 鶴の一声ならぬ、ジョン・フィンケル/Jon Finkelの一声から端を発した両面ドラフト問題。

 なんとプロツアー3日前に『スリーブに入れた状態』でドラフトをすることが決まり、両面カードが見える状態でドラフトの練習をしていた参加者たちは大混乱。

 筆者ももちろんその一人で、青をやるルールとして『上から《氷の中の存在》か《驚恐の目覚め》が流れて来るのがわかったら』だったので、この時点で青をやる戦略は卓内で青をやるプレイヤーが出て来ているか判別し辛くなってしまい、リスクが高くなり過ぎたのでほぼ無しに。

1.プロツアー

 と、いうことでいよいよプロツアー本戦です。

 この大会で11勝5敗以上だと、次のプロツアー『異界月』(シドニー)の参加点を含めて、プロポイント33点以上が確定し来期のプロプレイヤーレベル・ゴールドレベルが確定します。

 なので、是が非でも11勝5敗以上を!

1日目/ドラフト

 ドラフトの前には、紙の掲示でまずドラフトポッドが発表されます。

  • ポッドナンバーが後半=人数が端数なら最大7卓までできる7人卓に入れる可能性がある=7人卓ではBye(不戦勝)が発生する

という痩せた発想の公式から導き出される最も魅力的な卓、最終卓に入り込んだ私はウキウキ気分でドラフトテーブルへ。

 まず座ってみると、8人ピッタリ座っていて(痩せたことを考えていた私的には)ガッカリ。7人卓だと思ったんだけどなーと考えていると、そこに一人のヘッドジャッジ。

「ジェントルマンたち、ここにもう2人入るから席を詰めてくれないか」

 と、驚きの一言が。

 確認しますがここは乗車率80%の山手線の座席ではなく、プロツアー『イニストラードを覆う影』の1stドラフトのドラフトテーブルなのです。

 なのになぜ8+2? つまり10人でドラフトするってこと!?

「はい、そうです。」

 まさに前代未聞の10人ドラフトが開幕。

 どうも当日レジストのプレイヤーが2人急遽現れ、都合が悪いことに7人卓が無いくらいぴっちり詰められた会場。

 他のドラフトテーブルから1人ずつ連れて来て7人卓をたくさん作り直すことは至難の業......と言うことで最終卓に2人追加する手はずとなったようです。

 事情がわかったにしろ、およそそこにいる10人全員初めての出来事でみんな困惑。

『しまった、10人ドラフト練習してくるの忘れちゃったよ』

 とかいうジョークも飛び交う始末。

 すったもんだありましたが以下が私がドラフトしたデッキです。

ichikawa_ptsoi16_draft1.jpg

 初手は当初の目論見通り、汎用性の高い緑トップコモン《狂気の一咬み》から。

 2手目も方針通り、どのカラーバリエーションになっても緑なら想定通りのパワーを発揮してくれる《針毛の狼》とブレなく進みました。

クリックで変身

 その後、自分のパックが一周してきて(10人ドラフトなので11手目)、《秋の憂鬱》が帰って来ました!

 《秋の憂鬱》は緑黒昂揚に入ったらレア並のパワーを発揮するキーパーツです。

 《秋の憂鬱》が一周=緑黒昂揚が空いている、というシグナルだったので一気に舵を緑黒昂揚に取り、強力なデッキが完成。

  • 第1回戦 白緑 ○○
  • 第2回戦 白黒 ○○
  • 第3回戦 赤黒 ○×○

 と、幸先良く3連勝!

 第1~2回戦の相手は両方とも白軸のデッキだったのですが、卓に白が多かったようで、完成度がイマイチでした。

 第3回戦の赤黒吸血鬼は10人の力を結集したような吸血鬼デッキで、素晴らしい完成度。《マルコフの戦慄騎士》を前に力尽きようというところに《狂気の一咬み》をトップデッキし、昂揚している《死天狗茸の栽培者》の接死ダメージで破壊し勝利!

 10人卓だと、カードが通常の8人卓と比べると多く出るため、カードプールが広くなります。

 住み分けをしっかりとできるとデッキが強くなるんだなあと、果たしてこの知識は次いつ使われるのか怪しいところですが勉強になりました。

1日目/構築

 次は構築ラウンドです。

 使用デッキはバント・カンパニー。

市川ユウキ - 「バント・カンパニー」
プロツアー『イニストラードを覆う影』 / スタンダード (2016年4月22~24日)
3 《森》
3 《平地》
1 《島》
1 《荒地》
4 《梢の眺望》
1 《要塞化した村》
4 《大草原の川》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
1 《伐採地の滝》
4 《進化する未開地》

-土地(26)-

4 《薄暮見の徴募兵》
4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《森の代言者》
4 《変位エルドラージ》
4 《反射魔道士》
3 《不屈の追跡者》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
2 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー(26)-
4 《ドロモカの命令》
4 《集合した中隊》

-呪文(8)-
4 《ラムホルトの平和主義者》
2 《保護者、リンヴァーラ》
3 《否認》
3 《悲劇的な傲慢》
3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-サイドボード(15)-

「バント・カンパニーを乗り越えるデッキを作る」

 を軸に、色々なデッキを試して来ましたが、プロツアーまでに明確に有利と言えるデッキを作れず、挫折しました。

 ただ、バント・カンパニー同型は決定打に欠け、何か明確に有利になる、ブレイクスルーとなるカードが無いと使いたくないなあと考えていたら、私は不参加だったTeam Cygames合宿で同じTeam Cygamesの山本(賢太郎)さんと、Hareruya Prosの津村(健志)さんが《変位エルドラージ》入りバントカンパニーを改良していました。

 《変位エルドラージ》は同型のメインデッキでは無類の強さを誇ります。

 自分の《反射魔道士》をブリンクして対戦相手をロック状態にしても良いですし、《大天使アヴァシン》をブリンクしてずっと破壊不能状態!にしても良いでしょう。

 また、対戦相手のクリーチャーをブリンクすることで、(起動マナを立たせていたら)実質的に相手の《ドロモカの命令》を無効化もできます。

 問題の無色マナの調達ですが、《進化する未開地》と《荒地》の組み合わせと、《ヤヴィマヤの沿岸》を4枚採用することで補っています。

 前々から従来のバント・カンパニーのマナベースはタップインランドが多いことが嫌だったので、《伐採地の滝》を減らしてアンタップインを増やすことに抵抗はありませんでした。

 《跳ねる混成体》のスロットが《変位エルドラージ》になっていてその分マナフラッドの受けは増えていますから、《伐採地の滝》を減らすことによるデッキパワーの低下も防げているでしょう。

 このリストをプロツアー前日に山本さんと津村さんに見せてもらい一目ぼれ!

 図々しいながらもシェアしてもらい、プロツアーに出場することにしました。

  • 第4回戦 バント・カンパニー ××
  • 第5回戦 バント・カンパニー ××
  • 第6回戦 緑赤ランプ ×○○
  • 第7回戦 青白エルドラージ ○×○
  • 第8回戦 緑赤ゴーグル ××

 と、思ったらあれー???

 ミラーマッチ2敗を含む2勝3敗。

 トータル5勝3敗でプロツアーを折り返し。

 バント・カンパニー同型はマリガン後青マナの無いハンドをキープしたら負けるまで青マナを引けなかったりと、不運も重なりましたが同型戦の経験不足を感じました。

 バント・カンパニーのような選択肢の多いデッキを使うときは、せめて3日前くらいまでにはデッキを決めて練習するべきですね。

2日目/ドラフト

 さあ2ndドラフトです。

 ドラフトは最近好調ですし、ここも3-0して二日目の弾みにしたいところ!

  • 第9回戦 赤緑 ××
  • 第10回戦 青緑ライブラリーアウト ×○×
  • 第11回戦 赤黒 ○××

 が、ダメ......!

 3連敗......! 眼前に見えるは0-3......!! 夢に思えるが......!! ところがどっこいこれが現実......!!

ichikawa_ptsoi16_draft2.jpg

 2ndドラフトは1パック目初手・2手目が勝敗の分かれ目でした。

 初手は《サリアの副官》から。

 白軸の人間デッキになったら強力だろうとピック。

 2手目は《古き知恵の賢者》がこんにちは。

 初手の《サリアの副官》と噛み合いますし、白緑人間を目指すか......ホクホクしていたらそこにおりますもう一人のレア、《ギトラグの怪物》。

ギェー!

 カードパワーで考えたら《ギトラグの怪物》に軍配が上がりますが、初手との兼ね合いを考慮して《古き知恵の賢者》を。

 そうしたら全然流れてこない白。1-9、1-10で一周してくる黒のグッドコモン《闇告げカラス》。

 やむなく緑黒昂揚に参入しましたが、《ギトラグの怪物》を流しているので、間違いなく下家に緑黒昂揚デッキを組ませてしまっているでしょう、完成度の低いデッキになってしまいました。

 終わった後に周りに聞いてみると、その《古き知恵の賢者》と《ギトラグの怪物》の2択で《ギトラグの怪物》を取れるかは怪しいけれど、そんなに《サリアの副官》強くないよねと言う指摘が。

 確かに言われてみると《サリアの副官》デッキの完成度がものすごく高くないと真価を発揮しないカード。

 90点のデッキを100点にするかもしれませんが、60点のデッキを70点にしてくれるようなカードではありません。端的に言うとオーバーキル。

 自分の中でそういう発想が無かったので、確かにと感心しました。

 ドラフトは合宿で10数回練習するのですが、ことレア、神話レアの使用感については学べないことが多く、もっと周囲に聞いて勉強しておくべきだったと感じました。

 と、2ndドラフト終了時点で6敗。

 目標だった11勝5敗は霧散してしまいましたが、6敗で終わるとプロポイント6点。

 来季のゴールドレベルへの足掛かりとしては十分です。

 目指せ構築全勝!

2日目/構築
  • 第12回戦 バントカンパニー ○×○
  • 第13回戦 青白エルドラージ ○○
  • 第14回戦 白単人間 ×○○
  • 第15回戦 エスパー・プレインズウォーカーコントロール ×○○
  • 第16回戦 緑赤ランプ ×○×

 構築4連勝で最終戦を迎えた市川。

 数分後には最終ゲームをトリプルマリガンして憤死する姿が......!!

 と、いうことで最終成績は9勝7敗。

 プロポイント4点獲得で、ヒットと呼ぶには怪しい、バントのような結果になりました。(バントカンパニーだけに)

 蓋を開けてみたら、緑赤ゴーグル・ランプや、黒緑《過ぎ去った季節》コントロールなど、様々な独創的なデッキがプロツアーを彩っていました。

 日本人でプロツアートップ8入りを果たした、八十岡翔太さんも独自のエスパー・ドラゴンを使用していましたし、トーナメントシーンで使えるデッキをプロツアー前までに作れなかったのは正直悔しい気持ちです。

 次のプロツアーでは、自作で自慢のデッキでプロツアーに挑みたいですね!

2.今回のベストデッキ

 さて、今回の私的ベストデッキのコーナーです。

 今回はトップ8に入った全てのデッキタイプが違うという、多種多様な環境でしたが、私的には間違いなくこのデッキがベストデッキ、それはルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasの「黒緑サクリファイス」です!

Luis Scott-Vargas - 「黒緑サクリファイス」
プロツアー『イニストラードを覆う影』 7位 / スタンダード
8 《森》
4 《沼》
4 《風切る泥沼》
4 《ラノワールの荒原》
3 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地(23)-

4 《膨れ鞘》
4 《壌土のドライアド》
4 《薄暮見の徴募兵》
4 《エルフの幻想家》
4 《ズーラポートの殺し屋》
4 《地下墓地の選別者》
4 《ナントゥーコの鞘虫》
2 《異端の癒し手、リリアナ》

-クリーチャー(30)-
3 《謎の石の儀式》
4 《集合した中隊》

-呪文(7)-
2 《不屈の追跡者》
1 《肉袋の匪賊》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
4 《精神背信》
4 《究極の価格》
2 《ウルヴェンワルドの謎》

-サイドボード(15)-

 前環境の《先祖の結集》デッキから《先祖の結集》が抜けたような黒緑サクリファイス。

 一撃必殺こそ無くなりましたが、『イニストラードを覆う影』より加入したカードがデッキを支えています。

 バント・カンパニーでは優秀な2マナ域兼マナフラッド用として使われていた《薄暮見の徴募兵》ですが、黒緑サクリファイスではまさにデッキの心臓部分。

 《謎の石の儀式》と合わせて爆発的な展開を行います。

 マナが仲間を呼び、仲間がマナを生む、まさに自給自足。

 《エルフの幻想家》や《地下墓地の選別者》から横並びビートからの《ウェストヴェイルの修道院》+《ズーラポートの殺し屋》はまさに一撃必殺!

 今でこそリストが割れていますが、プロツアー当日はいわゆる「わからん殺し」が多発していたことは想像に難くないでしょう。

 お互いに地上クリーチャーを並べ合うバント・カンパニー、白単人間にはこのように《ズーラポートの殺し屋》を絡めた飛び道具で戦うことが可能なため、有利な構成になっています。

 その他、バント・カンパニーや白単人間を狙い撃ちにしてきた除去コントロールのようなデッキにも除去されても損しない《地下墓地の選別者》や、点数除去、マイナス修整除去に耐性のある《ナントゥーコの鞘虫》などのクリーチャーでゲームを有利に進めることができます。

 このように、一見弱い、痩せたカードが大量に入っていますが、シナジーが太く、メタに合ったデッキを持ち込んだChannelFireballはお見事!

 優勝はできませんでしたが、みんなを驚かせたベストデッキはキミだ!

3.終わりに

 今回のプロツアー参戦記は以上です。

 今回も大活躍!と言ったような結果ではなく、なんとも言えない結果に終わりました。

 ゴールドレベル維持と言う目標もありますが、次のプロツアー『異界月』ではプロポイント関係なく、ドカンと勝ちたいところですね!

 それではまた、次の記事でお会いしましょう!

市川

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