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なかしゅー世界一周2012・第21回:プロツアー直前合宿とチーム・グランプリの風景

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2012.10.18

なかしゅー世界一周2012・第21回:プロツアー直前合宿とチーム・グランプリの風景

By 中村 修平


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 日本から飛行機でアメリカへ向かうと一口に言っても、航路は無数。
 何せ、アメリカを横断するのと太平洋を横断するのにかかる時間差がほとんどないくらいなのです。

 そこから目的の都市に行くためにはどれが最適なルートなのか。
 一昔前なら、そこが旅行代理店の腕の見せ所だったのでしょうが、今は個人でも旅券比較サイトを使えば、金額と時間を加味した上で簡単に答えが導き出せてしまいます。テクノロジー万歳。

 ですがソフトウェアの向上に比べてハードウェアについては、この10年の電車の変化と同じように劇的なものはありません。
 たまに新しい路線が出来たり、車内の設備が少し良くなることがあってもだいたい変わりなく、ハブ空港からハブ空港へが基本。
 東京か大阪発だとワシントン、ニューヨーク、シアトル、ミネアポリス、アトランタ、シカゴ、ロスアンゼルス、そしてサンフランシスコ。

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 そのサンフランシスコから今回の目的地までは50キロほど。
 目的地にも国際空港もありますが、直行便は日本からは無いし、接続するのも馬鹿馬鹿しい。何よりも追加料金がかかってしまう。
 ふと私の住んでいた大阪北部、淀川の両岸が互いに違う沿線で、移動するのにひどく面倒だったことを思い出してしまいました。

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 と、かなり脱線してしまいましたが、今回の目的地はアメリカのサンホセ。
 つい1ヶ月前にもサンホセに行きましたが、あちらはコスタリカの首都。
 こちらのサンホセはサンフランシスコ湾の南に奥まったところにあるシリコンバレーの中心都市。
 実は私の所属するチャネルファイアーボールの本拠地もここにあり、こここそが恒例になっている一軒家を借りてのマジック合宿の地となります。

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 時は10月6日の土曜日。
 身構えていたのにあっさり入管を通過できて安心したものの、ここからサンホセまでは「数年前に行ったはず」という記憶を頼りに、たしか電車が通っていたからとりあえず駅に行ってみるというところからスタート、いや即投了。
 さすがにうろ覚えではどうしようもありませんでした。
 インフォメーションデスクで行き方を教えてもらって、モノレールから電車への乗り換えを1つ挟んで到着。

 電話をかけて駅で待つこと15分程、ヒゲにサングラスと胡散臭い格好をしたばるがすさんが『タクシーイカガ?』とキャッチをかけてきたところで一安心。
 大丈夫だと解ってはいても、やはり異国の地で待ち合わせというのは緊張します。

 レンタルハウスは日曜日から、この日は「ラプター」ことジョシュ・ウッター=レイトンの家に、同じく土曜日到着のパウロ・ヴィター、コンリー・ウッズ、そして初参加のパトリック・チャピンと逗留するという予定。

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 ラプター家に到着してみると、サンホセ在住のディビット・オチョアに家主を加えて6名が、既に席に座ってブースターパックを握りしめています。
 ということで1ドラフト。

 ・・・そこまでは覚えているのですが、時差ぼけをもろに食らっていて途中で力尽きてしまいました。
 次に気がついたのは翌朝、いや翌日正午頃に、「ガレージマーケットで昼食を食べに行くけどどうする?」と聞かれたときだったはず。

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 もちろんついていくことにして、3週間ぶりのアメリカ飯で一息つきます。

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 いよいよチャネル合宿の舞台であるレンタルハウスへ移動です。


合宿にて

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 広い、とにかく広いです。

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 それだけではなく気持ち悪いくらい大きなテレビにドラフトテーブル、オルガン付きという居間はもとより、庭にはログハウス。書斎にはマッサージチェアと内装もいたって豪華。

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 なによりもベッドルームの数が多いこと、2階の4部屋は全てベッドルームで、それに加えて1階にも1部屋。書斎やログハウスにもソファーベッドがあるので、全員にシングルベッドが行き渡っていながらまだまだ寝るスペースには困らないという素晴らしさ。
 アメリカ人が日本人の家屋をウサギ小屋と言うのも、これなら仕方ありませんね。

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 さて、見聞が終わった後にすることと言えばただ一つ。
 誰がどの部屋を使うか。
 それに話題が行くのは自然の摂理、そしてこの記事を読んでる方には薄々以上に理解されているとは思いますが、チャネルというのはおおよそギャンブル狂いの集団です。
 これがネタに上がらない訳が無いということで喧々諤々の議論の末、くじ引きというある意味順当な手段をもって部屋決めが行われることとなりました。

 当然ここにはどういう順番でくじを引くか、さらにくじと何番目が一番期待値が良いか、いや期待値というより多幸感を醸し出せるか、というのを巡って討論が発生するなど、大絶賛壮絶茶番劇が繰り広げられるわけですが、まあ途中から皆ヒートアップしてしまってただでさえ日常会話もギリギリな私は完全置いてけぼり状態。

 適当に聞き流して自分のくじを引いたらドラフト2巡目獲得、念願の個室をゲット。

 ・・・までは良かったのですが、翌日の昼時にチャピンに「同室のキブラーのいびきが耐えられないから50ドルで部屋を変わってくれ」と懇願され、頼まれると断れない日本人気質に溢れている私としてはまあいいかと思って了承したのが失敗でした。

 キブラーのいびきは大したことなかったのですが、ベッドが固くて寝辛いことこの上なし。確かにキブラーはいびきをかかないではないし、ベッドについてはチャピンは何も言っていません。
 グッドジョブ、完全にチャピンの術中にハマってしまいました。
 勝負はどこで決まるか解らない・・・恐ろしや。

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 チャネル合宿のマジック部分についてはプロツアーの兼ね合いもあるので次回にするとして、この1週間を振り返ると昼はマジック、夜はすっかりチャネルメンバーの間で流行しているリーグ・オブ・レジェンド。
 この週はあちらの方の世界選手権があったらしくて、ライブストリームをつけっぱなしにして見ながらマジック、ルイスコ達が「夜は滾ってきたのでチームで突撃するぜ」といい、それを実際にゲームをやるほどの興味はないパウロや私が観察、というルーチンワークが成立していました。

 あとひどく個人的なことですが、気がつけば「ドクターペッパーとチェリーコークを違和感無く飲める」ようになってしまい、すっかり飼いならされた、いやアメリカ人的食生活に順応してしまった、という事実について愕然としている私がいたことくらいですね。

 今のところシュガーフリーという一線だけはなんとかキープしているのですが、アメリカ人は「いかにも健康に気を使っている層」と「体型を見れば食生活が容易に想像がつく層」が本当にはっきり分かれているおり、ここが果てしない分水嶺かもしれないと思うと、身が震えます。

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 この国の名物といえば、のピザを片手に順調にリバウンドしているルイスと、宅配に来てくれた体型がそっくりなルイス弟、ミゲル。
 そしてアメリカ人からすら「砂糖好きすぎだろう」とツッコミを入れられていて、事実順調にアメリカ化していっているパウロを見ていると尚更ですね。


グランプリ・サンホセ

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 そんな与太話はさておき、今週はグランプリ・サンホセ。(リンク先は英語カバレージ)
 3人チーム戦方式のグランプリとしては、2005年大阪以来、実に7年ぶりの開催。期待も相当高かったようで、金曜日の段階で登録が400チーム超えで、運営サイドが慌てて机を増床している光景が見られる程の盛況っぷり。
 そして当日の発表では571チーム。実に参加者1700名のマンモスグランプリとなりました。

 かつてアメリカのグランプリはヨーロッパや日本に比べて大分楽だという印象だったのですが、もう完全に難度は逆転してしまっていますね。
 それとアメリカのグランプリといえば運営がとにかくゆっくり、というのが枕詞のようになっていたのですが、今回は非常にスピーディーに進行していて大変驚かされました。

 参加者も気合が入ったグループが多かったですね。

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 全員同じ服装どころか、ヒゲまで生やしてきたパット・コックスとシャーフマンのチームや、

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 帽子着用のジョシュ、オチョア、チャピン。
 キブラーと、彼の勤め先でもあるゲイリーゲームズ社長でプロツアー・オースティンチャンピオンでもあるジャスティン・ゲイリーは、自社の新作ゲームのプロモーションTシャツでアピールしていましたし、普段はカバレージを書いているブライアン・デビッド=マーシャル(BDM)も今回はプレイヤー参加でチームメイトの2人はどこかのスポンサードを受けていたみたいです。

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 そのBDMが記事に挙げているように(編注:リンク先は英語)、有名プレイヤーの誰がどんなチームで組んでいるかというのも楽しめますし、チーム戦ならではのやりとりも。
 隣で対戦しているカナダ人のチームがジャッジをいきなり呼んで、
『今からフランス語でチームメイトと会話しても良いか?』
 なんていうシーンはチーム戦ならではですね。
 是非とも、このままこのフォーマットを復活させてほしいと思います。

 もっとも、人数が増えるということはそれだけ運営するのにも負担がかかるといることで、しかも久しぶりのチーム戦、実際には旧来から大幅なシステム変更が加わっているので全く新しい方式の大会を新たに立ち上げるようなものであり、改善して欲しい点も山積み。

 一例を挙げると、リミテッドグランプリ恒例のチェックパックからデッキ交換の際には、個人戦の要領で横に渡してスライドしても3人横並びなので同じパックが行き渡ってしまう、そもそもどのプレイヤーがパックを持つかによって結果が悲惨なことになる、など。
 それを統一・改善しようにもその基準がないし、そもそもテーブルが3の倍数で区切られている訳でもないのでどうしようもありません。
 先ほどのチーム内会話についても、そもそも他者と会話できるという箇所についてルールが整備されておらず、双頭巨人戦の際に放置された課題がチーム戦を無くすというのでそのままにされてきてしまったがゆえ、「どこまでが可でどこまでが不可なのか」の確認を求めてもジャッジすらよく解らない箇所が多々ある。
 といった感じでかなり混乱があったということも事実です。

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 それと20世紀ならいざ知らず、初日に日を跨いでしまうことが確定な11回戦というのも、プレイオフに残るチームが2敗程度であるという数字的要件を満たすためには仕方ないとはいえ、誰もが長すぎると感じたのではないかと思います。

 トーナメント進行についてはノウハウの蓄積で改善されていくでしょうが、システムについてはかつての双頭巨人戦のように手早い変更をしてくれることを期待したいです。

 いちプレイヤーとしての視点に立ち返って、「リミテッドで初日11回戦」が意味するところでは、「回を重ねる毎に上澄みと戦っていくことになる」ため、よっぽど強力なパックを引かなければ初日抜けは難しく、非常に厳しいものになります。

 私が組んだ相手はおなじみのマーティン・ジュザに、チャネル随一のリミテッダー、ベン・スターク。おそらく会場内でも有数の強力チーム、そして練習用に開けたパックよりかなり強いパックをもらうこともできましたが、それでも足りずに結果は10回戦で力尽きて途中ドロップ。

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10回戦にして23時過ぎを指す時計(右)

 疲労困憊で時間を見てみると23時半、日付が変わっているのにまだ1回戦残っているという状況に、その時点で1敗で初日抜けを確定させたコンリー、イーフロウ、オーウェン組の結果を待つまでの余裕も無く引き上げて、翌日の昼まで倒れていました。

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 まあ、これに関しては固いベッドで寝てしまっている自分のせいというのも。
 図らずも午前様になってしまった勢の中でも、朝まで拠点で飲み明かしたキブラーやチャピンのような剛の者もいますからね。

 ドラフトをするのは週末まで、後はモダンの練習に充てると決めていたので、この日は会場で延々とドラフトに取り組んでいたのですが、結果は相当な負け越しを記録。

 来週は本番とも言えるプロツアー「ラヴニカへの回帰」。
 サンホセを発つのは木曜日、それまでの数日間でできる限りのことをしなくてはならないのですが...

 何やら不吉な終わり方になってしまいますが、ここで一区切りとして。
 それではまた次回にお会いしましょう。

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