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なかしゅー世界一周
なかしゅー世界一周2012・第5回:アメリカ道中記?ハリスバーグ、シアトル
読み物
木曜マジック・バラエティ
2012.03.15
なかしゅー世界一周2012・第5回:アメリカ道中記~ハリスバーグ、シアトル
By 中村 修平
アメリカを西に東に、地図上だと右往左往していますがなんとまだ生きています。
今は目当ての映画の上演時間を待っているところ、残念ながらストーリーなど有って無きようなものなアクション映画が精一杯な私の読解力ですが、まあそれは些細なこと。
ご当地スペシャル、シカゴスタイルピザを食べながら映画談義に花を咲かせているのだから、まあいろんな意味で上々といったところ。
苦労といえば、ライフタイムで五指に入るくらい好きな『さらば、我が愛/覇王別姫』の認知度がアメリカでは極端に低くて、誰も知らない程度なものですかね・・・
と脱線はこれくらいにして、前回からの2週間。
その間に何処にいたのかを具体的な地名を挙げていくと・・・
まずボルチモアから高速バスを使ってアメリカ東部、ペンシルバニア州ハリスバーグへ、
5日ほどそこで滞在した後に、飛行機でシアトル、グランプリがある近郊のタコマへ、
グランプリ終了後はシアトルとタコマの間、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストの社屋もあるレントンで4日ほど滞在し、
再び飛行機でアメリカ中部、インディアナ州の中心都市インディアナポリスで人生初のレガシーグランプリに参加しつつ、
日曜日にはシカゴへと自家用車で帰路につくマジックプレイヤーの車に乗せてもらって、今はシカゴ近郊のディアフィールドというところに滞在しています。
ハリスバーグにて
グランプリがあったボルチモアから、AJ・サッチャーの家があるペンシルバニア州ハリスバーグまでのバスに乗れたまでは良かったのですが、アメリカ人の『近い』という感覚がどれほどかを再認識させられること3時間あまり。
何処へ移動するにしてもこの国では完全に一日仕事です。
ここでの暮らしは簡潔に言うと、引きこもりニート生活ですかね。
というのも、私もAJも完全に時差ぼけ状態。
家に到着した時にはAJの弟がスノーボード全米選手権に参戦中。家族総出で応援しているという事情もあって、夕方過ぎに家に到着と同時に寝てしまった結果、翌日、目が覚めると午後5時を過ぎたあたりという完全な昼夜逆転。
アメリカ人としては珍しく車の免許を持っていないAJと、国際免許の更新を忘れてしまっている私では車を使うこともままならず、15分歩いて麓にあるファーストフード店に駆け込むのが関の山。
とはいえ、こんな生活をしているとわりかし外出する必要もないわけで、途中からは生活リズムを立て直すのも諦めて、AJがやっているマジック・オンライン(MO)のネット配信にゲスト参加で朝まで生ドラフト、なんてことをやりながら過ごしていました。
なにせこの週のグランプリ・シアトルはリミテッド。
ドラフトの数をこなすのはリミテッド練習の基礎中の基礎とも言える作業です。
なかなか良いデッキを作ったと思ったのに初戦であっさり負けてしまうとなれば、無闇やたらと熱くなってしまって、次のドラフト!となってしまうのは、MOでドラフトをしたことがある方なら解ってもらえると思います。
3日目にして願掛けペンギンまで登場させた末に今度は逆に勝ちっぱなしになり、それはそれで「じゃあもう1回」という無限ループに入ってしまったのも上に同じく。
MO廃人から、ようやく社会性が認められるくらいの活動ができるようになったのは、AJの家族が帰ってきてからですね。
弟さんの結果はかなり良いもので、全体で26位、同世代間ではなんと1位。
この調子だと更に上のグレード、マジックで言うところのプロツアー出場も現実を帯びてきたとのこと。
このシーズンはほぼ毎週のように遠征の日々だというから、案外2年後にはソチ五輪でサッチャーという名のアメリカ選手を見ることになるやもしれませんね。
何はともあれ我々としては待望の外出手段――AJのお母さんに送り迎えしてもらうというものですが――を手にいれて向かった先はAJ一押しのハンバーガー屋。
日本にいる時に少し話題に上がっていたところです。
それと2番目の弟が通っている高校のマジック部活動におじゃまをしました。
『ブライアン・キブラーの電話番号知ってるらしいぜ、すげー』
や、
『コンリー・ウッズのチームメイトって本当?』
なんて言われた時には、なるほどここはアメリカなんだな、と改めて思うことしきりです。
AJや彼ら、そして部活の先生の話を聞いて日米の違いを最も感じたのは、アメリカでは何か人と違うことが一般的に素晴らしいこと、よい意味で個性的なこととして尊重されているみたいだ、という点ですね。
もちろんアメリカ人はアメリカ人で日本人的感覚からすれば、よく解らない境界線を持ってたりもするんですが、この1点については本当にアメリカ人を羨ましく思いましたね。
簡易ベッドを用意してくれたり、早朝に空港まで送ってくれたAJパパや、スタークラフト廃人のAJの1つ下の弟さん。それにやたらと懐いてくれたケニー。
サッチャー家の人々には多大なお世話になりつつ、午前6時の飛行機でアメリカの反対側、西海岸の北にあるシアトルへと向かいました。
アメリカの旅券事情についてこの時までほとんど知らず、いつでも取れると高をくくっていた結果、1週間前で料金に壁があるのを身をもって味わった上に、移動時間は飛行機でもなんと6時間、間に時差を2回も跨ぐという、体力的にも財布的にもハードなものでした。
諸々の費用を考えると、早速賞金を稼がなければ赤字確定です。
グランプリ・・・の前に
初めに取ろうとしていたシアトル行きの旅券を先延ばしにしていた理由は、チャネルの情報交換板にルイス・スコット=バルガスがこんな書き込みをしてたからです。
『午前11時にシアトル到着予定。現地で美味いものツアーするけど参加者いない?』
そうです。
200ドルちょっとのチケットでは、どうやっても到着は正午過ぎになってしまって参加できなかったからなのです。
ですがある意味迷いは吹っ切れました。
これでめくるめく美食の旅に突入です。
まずは手始めにステーキサンド。
→デザートにアイスクリーム
→ゲームストア/カフェに立ち寄りお茶をしつつアクワイア
→そしてシアトルで最高級のレストランRaysで本日のメインディッシュ。
特にRaysは中々にパンチ力がありました。
まさか月曜日~木曜日までの滞在費をあっさり上回ってしまうとは・・・
ところがこれだけに留まらず、グランプリ開催中も夜な夜なステーキハウスに繰り出しては散財する日々。
特に日曜日に行った雰囲気抜群、倉庫を改装した隠れ家的レストランは、Raysに勝るとも劣らないもの。
しかも値段や感じからして、普通の量かと思ってオーダーしたら出てくるのは巨大な肉。
ある程度覚悟していた私はともかく、毎度食べきれない量が出ると必ず消化してくれるディビット・オチュアが断っているところを初めて見ました。
バルセロナの次のプロツアーはシアトルと言うことらしいですし、もし同じ会場でやるのなら、もう一度挑戦してみたいですね。
改めてグランプリ・シアトル
グランプリの方は「スリープインスペシャル」。
バイ持ちのプレイヤーは追加登録料を払うことで、朝方にあるプレイヤーミーティングに参加せずともよくなり、規定の時間に会場に訪れれば、予めチェック済みのパックでシールドデッキを構築できるというサービスです。
これを時差ぼけ解消に久しぶりに使用しました。
というのも以前、このサービスを使った時に物凄く弱いパックを引いてしまって、それ以来なんとなく気乗りしなかったのです。
ですが今回はわりかし深刻な体調上の都合があり、背に腹は替えられません。
そんな感じで恐る恐るといった具合にパックを受け取りましたが、思った以上に良いカードプールです。
青と白に解りやすく強力なレアが集中しており大枠は簡単に完成。
残りの構築時間はデッキの微調整をする作業ですが、これが思ったより難航します。
対戦相手のカードに接触できるカードが極端に少ないのと、15枚目換算のクリーチャーを入れたくて《秘密を掘り下げる者》を加えるためにインスタント、ソーサリーの数を調整するのに時間を食ってしまい、《縫い合わせのドレイク》《その場しのぎのやっかいもの》を入れすぎたままリストを提出してしまいました。
8 《平地》 8 《島》 1 《ゆらめく岩屋》 -土地(17)- 1 《秘密を掘り下げる者》 1 《精神叫び》 1 《縫い師の見習い》 1 《縫い合わせのドレイク》 1 《ドラグスコルの隊長》 1 《礼拝堂の霊》 2 《ネファリアの海鳶》 1 《地下牢の霊》 1 《その場しのぎのやっかいもの》 1 《魂を捕えるもの》 1 《ドラグスコルの肉裂き》 1 《月皇ミケウス》 -クリーチャー(13)- |
2 《町民の結集》 1 《狼狩りの矢筒》 1 《熟練の突き》 1 《戦慄の感覚》 1 《邪悪の排除》 2 《雲散霧消》 1 《禁忌の錬金術》 1 《骨を灰に》 -呪文(10)- |
序盤のクリーチャー代わりになるもののほとんどが墓地に落ちない、あるいは墓地に落ちてもクリーチャーではないこの構成では、2枚は明らかに多すぎるのです。
結局、より弱い方の《その場しのぎのやっかいもの》は《修道院のグリフィン》に、《邪悪の排除》は《予言》へと2戦目以降は毎回入れ替える失態をしつつも、7勝2敗で初日抜け。
もっとも、最終戦の負けはかなり酷かったので心中あまり穏やかではありませんでしたが、神戸では行きたくとも行けなかったドラフトへと駒を進めることができました。
・・・と気負ったところが出たのでしょうか、翌日の1回目のドラフトで失敗デッキを作ってしまい、瞬く間に2連敗。
1周目の闇の隆盛で《悲劇的な過ち》スタートから無理なく青に参入して、パックが1周する9手目以降にもカードを確保。
都合10枚もデッキに入るレベルのカードが取れて流れを完全に掴んだと思ったのが過ちでした。
続く2つのイニストラードでは全く流れてこない青と黒のカードを尻目に、溢れているその他の色のカード。何度かあった他色に再参入する機会も袖にして、出来上がったのはカードが全く足りていない青黒でした。
先週の3連敗、そしてノーポイントがすぐ後ろに迫ってくる中、やはり黒をやっていた右のプレイヤーとの最下位決定戦をなんとか勝って一息。
上を目指すには遅すぎる勝ちですが、まだポイントがかかっているラインで出血を止めることができたのは僥倖でした。
中途半端に物事が進んでしまっていると、視野が狭くなってしまうものです。
特にそれが意識されているかどうかという曖昧な時が一番怖い。なにせ自分では正常に振舞っているつもり、全く問題ないと思っているのですから。
ここで一息つけたことで、なんとか自分をそんな状態から通常へと引き戻すことができた気がします。
そしてターニングポイントが2回目のドラフトではありました。
赤緑をドラフトしているところに2パック目の初手が《月皇ミケウス》、これでタッチ白かと考えていたところに3手目に《オリヴィア・ヴォルダーレン》。
1回目のドラフトと似たような光景です。ついさっき決めた方針にちゃぶ台を返すような流れ。
ですが今回は先程よりも自分らしく対応できました。
とりあえず取っておいて、両方デッキに入れる方向にデッキの最終型を修正するオプションを用意する。
ドラフトしていた色が、今回はマナサポートに優れた緑だったからという要因はもちろんあります。
ですがそれをできずに、隣にあった、オリヴィアよりかなり劣る自色のカードを取っていたのがつい数時間前の私でした。
そうしてできたデッキは、ある意味予定通りのマナサポートをかなり早く取った上で無理やりとも言える4色デッキ。
そして《根囲い》《夜明け歩きの大鹿》などマナサポート
普段の私のドラフト戦略からすればかなり異端な出来です。
ですが1回目のドラフトよりよほど私らしい、そして自信が持てる構成でした。
結果は3連勝でプロポイント1点。例年ならプロポイント2点を狙える4敗ラインも、グランプリ参加者数の増加で全く届きません。
ですがホノルル以来、そしてこの旅でようやくプロポイントを取れたというので、ようやく気持ち的に切り替えが始まったのを実感できます。
グランプリは続く
とは言ってもまだまだこの旅は始まったばかり。
そして翌週のインディアナポリスでは、またもや初日通過からの負け越しでノーポイントという結果に終わってしまうのですけどね。
全く練習していなくて、ただやってるからという理由で参加したレガシーのグランプリで、ちょっと2日目に残ったから、もしかしてもう少し行けるかも、と欲をかいてしまった結果がてきめんに出てしまいました。
仕事のために来ていたあんちゃん(高橋優太)からデッキをそのまま借り、環境を全く知らずに付け焼刃の知識だけで、1本目は対戦相手のデッキの構造も知らずに落とすような有り様なのに、慢心なんてしてしまった日には負けて当然としか言いようがないですね。
次回があればもう少しは上手くやろうと思ったり思わなかったりですね。
シアトルのひととき、ウィザーズ潜入体験
少し話を前後させてしまいますが、グランプリ・シアトル終了後、インディアナポリスまでの数日間はウィザーズ開発部に務めているしゃば(射場本正巳)さんご夫妻の家に滞在させていただき、その上色々と連れ回してもらっていました。
前週までの半ば地底人のような暮らしからは想像もできない健康的な生活に、規則正しい美味しい食事、そして良い眺め。
素晴らしい3日間でした。
もう1つ、ウィザーズの社内を見学させてもらったことも良い経験でした。
かなり舞い上がってしまって、聞きそびれてしまったことなんかも数知れずですね。
早くも半年以上先のプロツアー・シアトルでやりたいことリストが埋まってしまってきました。
そしてまた旅の途中
というようなことがありつつ、現在はシカゴにて次の移動先であるナッシュビルへの旅程を考えているところです。
実はインディアナポリスからシカゴ経由でナッシュビルという旅券を取ってしまっていて、これをなんとかシカゴから搭乗に変えたいのですが、旅券の変更は原則できないというルールを前に果たして上手くいくのかどうか。
それ以前に「英語で電話」という難関を突破できることができるのか、という問題が立ちふさがっているわけですが・・・
まあ、なんとか2週後もこんな感じで旅の顛末をお届けできているような気がします。
それでは今回はこの辺で、次回もアメリカの何処かでお会いしましょう。
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