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なかしゅー世界一周

なかしゅー世界一周2012・第4回:プロポイントシステムの変更、グランプリ・ボルチモア

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2012.03.01

なかしゅー世界一周2012・第4回:プロポイントシステムの変更、グランプリ・ボルチモア

By 中村 修平


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 ホノルルでのプロツアー終了からどうせ少しあっちでのんびりしたいなと思って帰りの飛行機の日付を水曜日にしたのですが、これは結果的に失敗。
 活火山で有名な隣のハワイ島、マウナケア火山に行こうとしたら、航空会社のデスクが営業していない土日には現地ツアーは手配できないと言われて、手痛いミスでした。

 日本に帰ってきたら木曜日、翌日にはもう次のグランプリです。

 それにしても、ここ1ヶ月の動きを振り返ってみれば、
 ホノルルで寿司を食べ、

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 東京築地で寿司を食べ、

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 そしてここ、アメリカはボルチモアでも寿司を食べているところです。

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 あ、そういえばその合間に神戸で神戸牛の残念会なんてもののもありました。

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 これまでほとんどの時間をスタンダードとドラフトに使っていたので、練習がてらに前日のトライアルに出てみればどう組んでも4色にならざるを得ないパックをもらい、「これがこの環境では案外標準なのかも」という勘違いは1時間も立たずに身を持って味わったところ。

 翌日のデッキは昨日よりはちょっと強いかもという程度の代物。
 日曜日は哀しみを背負った同部屋の野郎ども、もとい自称紳士諸君と有馬温泉に繰り出していた次第です。

 そこから日本に、1週間の観光旅行にグランプリのついでに来ている、日本に留学経験があり、2年前の世界選手権千葉で日本の観光ガイドを海外サイトに寄稿したこともあるベン・シュワルツと、現在はスター・シティオープン中心に活躍しているAJ・サッチャーと一緒に遊びまわること、数日間。

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左からBen Schwartz, AJ Sacher, それとお馴染み津村 健志

 後ろ髪どころか、心底日本を離れたくない気分でしたが、1ヶ月前に旅券を取ってしまっているし、方々にも、とは言っても全体のスケジュールから見ると半分ほどですが、滞在をお願いしている手前、行かないというのも無礼な話です。

 なんてことを入国管理局に別室送りにされているさなか、これで強制送還とかになったら言い訳になるな、だなんて考えていたりしました。
 普通に考えれば「こんなに頻繁にアメリカに来ている」「帰りの日程が大分先」「職業はあってなきようなもの」「滞在先は転々とする予定」とか答える怪しげな日本人がいたら、とりあえず詳しく話は聞きたくなりますね。

 どうしてここまでやる気がないのか。
 それは今年1月に発表された新プロクラブについて少々話す必要があります。

 当初、プレインズウォーカーポイントシステムへの移行により、消滅するはずだったプロポイントとプロプレイヤークラブですが、年末に発表された再度のシステム変更によって復活を遂げました。

 当初はこれまでのプロポイントとは似て非なるものではないかという憶測もありましたし、実際にそのようなニュアンスのアナウンスもされていたように記憶しています。
 ですが、若干の調整があるものの、事実上はこれまでと地続きのものとして、今シーズン最初のグランプリを迎え、今では完全に同じプロポイントとして換算されています。

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先週末のグランプリ・マドリードでトップ32位入賞を果たし、
遂にライフタイムトータルでカイ・ブッディを上回り世界1位となったラファエル・レヴィ

 その『若干の調整』というのを大雑把に説明すると以下のようなものです。

(出典:Pro Players Club Guidelines and Procedures(リンク先は英語))


シーズン年度の変更

 これまでは11~12月に開催されていた世界選手権の終了をもってシーズンの終わりとしていましたが、2011-2012シーズンは2011年6月13日を起点として、2012年5月13日、プロツアー・アヴァシンの帰還の最終日でプロポイントの計算を終了し、ワールド・マジック・カップやマジック・プレイヤー選手権は翌シーズンのポイントとなります。


プロポイント配分の見直し

 簡潔に言ってしまうとプロツアーへの配分強化です。
 グランプリでの上位入賞獲得ポイントが、例えば優勝が10点から8点へと若干減っているのに対して、プロツアーは最低点が 2点から3点へ、更に25位以上からは従来の7点から10点、16位以上には8点から15点へと大幅に獲得ポイントが増加しています。


プロクラブの見直し

 これまでは8つのレベルによって待遇が区分されてきましたが、今年からは、厳密に言うと今年のシーズンが終了する6月からは以下の3つの区分へと変更になります。

シルバー:プロポイント10点以上。
 プロツアーへの参加権は無いかわりに、それ以外の各種トーナメントへのシード権とグランプリでの2バイが与えられます。
 プロポイント的なものも含めて現レベル2と同待遇の地位です。

ゴールド:プロポイント25点以上。
 すべてのプロツアーへの参加権と各種トーナメントでのシード権、グランプリでの3バイが与えられます。
 現在のレベル4とほとんど同待遇ですね。

プラチナ:プロポイント40点以上。
 すべてのプロツアーへの参加権と各種トーナメントでのシード権、グランプリでの3バイに加え、各プロツアー開催地までの航空券、期間中のホテル。更にプロツアーに参加する毎に3000ドル、グランプリに参加する毎に報酬として250ドルが与えられます。
 現在のレベル8相当といったところですね。

世界選手権の再構築

 これまで開催されていた第4のプロツアーといえる世界選手権は終了し、新たに国別代表戦の部分を抽出したトーナメント、『ワールド・マジック・カップ』と、年間プロツアー優勝者の3名に世界王者、年間プロポイント上位者の合計16名による年間最優秀選手、プレイヤー・オブ・ザ・イヤーを決定する『マジック・プレイヤー選手権』に分化されました。
 そしてこのプレイヤー選手権は言うに及ばず、ワールド・マジック・カップへの最も確実な道はプロポイント。各国のプロポイント最上位者には代表枠への招待があるのです。


 現在の私の境遇はというと。
 プロツアー・闇の隆盛でのトップ25入賞でプロポイント加算10点。
 これで、去年6月から再換算されているプロポイントカウントが合計40点。
 ちょうどプラチナへと昇格を果たし、今年12月まではレベル8の待遇が保護されるという規定と、新規定での支給のちょうど美味しいどころ取りができるという立場です。
 グランプリに参加する毎のレベル8での500ドルの報酬と、プロツアーに参加する毎のプラチナでの3000ドル、加えて殿堂ボーナスというのが新設されたのでプラス500ドルの合計3500ドル。

 特にグランプリでの500ドル報酬が生きている今シーズンの価値は大きく、アメリカに留まり続けて今週のボルチモアから6週連続で開催されるグランプリに参加した場合、アメリカからアメリカへの移動費、滞在費を含めて週500ドル以内の予算に収めることは比較的簡単です。
 ホテル暮らしだと足が出てしまいますが、友人の家から家へとなら、わりかし何とかなります。
 やや心配な各地への移動もネットで簡単に出来てしまう世の中です。
 実際、ボルチモアにいる今になっても、次の目的地であるシアトル行きの値段のチェックをしているだけで、未だに旅券を取っていません。
 東京からボルチモア、そして4月2日のソルトレイクシティから東京へ。この旅券を取った当時の私も、それを勘定しての決断でした。

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 ですが本来は、シーズン末近くにならないと到達していなかった最高レベルに大分余裕を持って到達してしまったのです。
 当時27点から、こんなに早く40点に到達してしまうとは正直いって予想外でした。
 かつて、そして今も、グランプリで稼ぐことを考えるなら13点というのはそれほど大きなポイントだったのです。

 最も大きな目標に到達済み。
 たしかに、ワールド・マジック・カップへのより安全な参加権を考えるならばまだプロポイントは必要です。
 同じくプレイヤー選手権の上位10名程度というボーダーを考えると、少しでもポイントは加算することに越したことはありません。
 ですがプロクラブのプラチナレベルに関して、
『次のシーズンでは状況によって到達ポイントの見直しをする予定』
 だとはっきり書かれているのです。
 ここからの上乗せ分がそのまま来期のプラチナへの参考にされるかもしれない。
 来年もこの生活を続けるかどうかは決めかねていますが、少なくとも下手に頑張りすぎると自分の首を絞めることになりかねない。そのことへの警戒感はかなりあります。

 それにホノルル滞在から数えて既に1ヶ月が経過しつつある、旅暮らしの疲れも確実にありました。
 仲間と一緒に何かするのももちろん好きですが、同じくらい私は一人でゆっくりする時間が必要な人間なのです。

 もう一つ、全く用意していないスタンダードデッキという要因もあります、
 プロツアーのために準備したとはいえ、プロツアー後とプロツアー前では完全に違うフォーマットと言っても差し支えのないくらい、別物となっているはずなのです。
 心底ボルチモアへは行きたくありませんでした。
 現地には金曜日の夕方到着、そこから知り合いと情報交換をしてデッキ製作。
 日本からの出発前日に行弘(賢)から聞いた《太陽のタイタン》に軸を据えた青白黒のコントロールを使う予定でした。
 しかし、予想以上に青黒コントロールの使用者が多そうという情報を受け、青黒に勝てるようにと、気に入らないカードを抜いて一人回しでチューニングしていくと、気がつけばプレインズウォーカーコントロールみたいになってしまい・・・

ソーラーフレア的なもの / スタンダード[MO] [ARENA]
4 《
3 《平地
1 《
2 《水没した地下墓地
2 《氷河の城砦
3 《闇滑りの岸
3 《金属海の沿岸
4 《孤立した礼拝堂
2 《幽霊街
1 《ネファリアの溺墓
2 《進化する未開地

-土地(27)-

2 《幻影の像
3 《太陽のタイタン

-クリーチャー(5)-
2 《漸増爆弾
4 《審判の日
3 《マナ漏出
4 《禁忌の錬金術
3 《未練ある魂
1 《虚無の呪文爆弾
2 《喉首狙い
2 《忘却の輪
1 《死の支配の呪い
2 《ヴェールのリリアナ
2 《イニストラードの君主、ソリン
1 《エルズペス・ティレル
1 《解放された者、カーン

-呪文(28)-


 ・・・これなら青黒コントロールを使ったほうがまだマシではないか、と思ったところで時刻は午前4時を回ったあたり。

 かくして使用するデッキは決まりました。

中村 修平 / 青黒コントロール
グランプリ・ボルチモア2012 / スタンダード[MO] [ARENA]
8 《
7 《
4 《水没した地下墓地
4 《闇滑りの岸
2 《ネファリアの溺墓
2 《幽霊街

-土地(27)-

3 《瞬唱の魔道士
2 《聖別されたスフィンクス
1 《墓所のタイタン

-クリーチャー(6)-
3 《悲劇的な過ち
2 《喉首狙い
2 《飢えへの貢ぎ物
2 《死の支配の呪い
3 《黒の太陽の頂点
2 《漸増爆弾
4 《マナ漏出
2 《雲散霧消
3 《熟慮
3 《禁忌の錬金術
1 《青の太陽の頂点

-呪文(27)-
2 《幻影の像
2 《血統の守り手
2 《殴打頭蓋
2 《ネファリアの溺墓
2 《虚無の呪文爆弾
1 《外科的摘出
1 《雲散霧消
1 《否認
1 《瞬間凍結
1 《解放された者、カーン

-サイドボード(15)-

/

 結果は初日を7-2で通過したところまでは良かったのですが・・・
 2日目の初めの3戦を全敗してしまい、これ以上続けてもプロポイントを獲得できる可能性がなくなったのでドロップアウト。
 グランプリ2日目を途中で投げるのはおそらく7年ぶりです。

 デッキは安定していました。
 ですがそれだけでした。
 それはデッキを使用する前から、それこそホノルルの調整段階から解っていましたし、こうして後から考えてみると、サイドの《ネファリアの溺墓》について少なくとも1枚はメインに移すべきだったとか、そのためにはこのデッキでは大きなリスクとなる《進化する未開地》を甘受する必要があったとか、《熟慮》の数、フィニッシャーを3枚にしたのは良かったのですがその選択については、などなど、色々と改善点を見出すこともできます。

 しかし、私にとっては何より青黒コントロールというデッキ自体が決して良い選択ではなく、せめて初日くらいは通過したいという逃げの選択でした。
 ここまで酷い結果になるとは思いたくありませんでしたが、反面200人ものプレイヤーが2日目に残り、6回戦ではなく7回戦だった日曜日では良いところ5勝2敗でプロポイント2点くらいだろうとは考えていたのです。

 負けるべくして負けた。
 そういう週末でした。

 来週はシアトル、そしてインディアナポリス、さらにナッシュビル・・・
 まずは休息を取ること。
 何よりもそれが私に必要なのは解っています。
 まだまだアメリカ行は続くのです。具体的な話はその後から。
 それではこのあたりで、次回またアメリカのどこかでとなるはずです、


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