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なかしゅー世界一周
なかしゅー世界一周2011・第4回:パリ、一週間
読み物
木曜マジック・バラエティ
2011.02.24
なかしゅー世界一周2011・第4回:パリ、一週間
by 中村 修平
火曜日
もし英語しか話せない人がいたとして、ヨーロッパ各国の非英語圏の人達はどういう反応をするでしょうか。
例えばオランダ人はあっさり英語で応答し、イタリア人はジェスチャーを交えてなんとか融通を図ろうとします。スペイン人も同じタイプですね。
ドイツ人は無理やりドイツ語に合わせようと奮闘してきます。門外漢なのですが、英語とドイツ語は微妙に似通ってる部分があるので、波長が合いさえすれば意外になんとかなってしまいます。ただし何とかならない時は相当なもので、我々日本勢ご一行とドイツ語オンリーのタクシー運ちゃんのやり取りなんかは、傍から聞くと相当質の悪いコメディーにしか見えません。
そしてフランス人は。
ひと通りフランス語を話した後に大げさにため息をついて、英語に切り替えて話します。もちろん偏見です。ですがフランス人が自国の文化、特に言葉に対してとても誇りを持っているのは間違いないです。
日本国内で標識が日本語のみというのはただ単に言語人口比率の問題に過ぎませんが、パリではまた違ったものとなるのです。そしてよく見かけるのです。フランス文化万歳、そしてフランス語表記された地下鉄の路線図に四苦八苦する日本人ご一行様万歳。まあ道に迷うのは毎度の事ですが、今回は道というより路線図に迷うという感じ。
日本と比較しても整備されているパリの地下鉄網ですが、当然のごとくフランス語だらけ。慣れない人間にかかってしまうと、それはただの迷宮です。乗り換え3回、プラットフォームを行ったり来たりしているうちに、なんとかホテルに到着したのは空港を出発してから3時間以上後。まだ明るかった空もすっかり暗くなり、長旅の疲れもあってこの日は近くのチャイニーズレストランで軽く夕飯を済ませ全員就寝して、パリ1日目は終わりました。
水曜日
よくパリ市内の場所を説明する時に、「かたつむり」という言葉が引き合いに出されます。
by Realisation Pline |
中心部のセーヌ川のほとり、ルーブル美術館やコンコルド広場がある1区から始まってそれよりは少し北側のオペラ座が2区、右回りに巻き込むような形で隣の区へと続いていきます。
今回のプロツアーの会場は8区と17区の境目。かたつむりの二回り目で1区から見て北西にあたり少し南に歩けば凱旋門、そしてシャンゼリゼ通りという立地。
この日はプロツアーのレジスト日であると同時に、私と渡辺にとってはウィザーズ支給ホテルへの移動日にもあたるのですが、ホテルへの移動自体は地下鉄を使えばやはり簡単で30分もあれば到着してしまいます。
昼前に出発して正午過ぎには移動が完了。近くのインド料理で怪しげなランチを取ってもまだ会場が開くまでには時間があります。
ちなみに天気はこの旅行中唯一と言って良かった快晴。気温も日本よりか明らかに暖かくて、コートさえ着込んでいれば充分という環境に隣には初パリ、凱旋門と聞いて目を輝かせている井川良彦と条件が揃い踏みしてるのだから、中島さんと一緒に以下省略です。
という訳でまずは凱旋門まで、実は凱旋門的なモニュメントはパリに3つあり、シャンゼリゼ通りを含む直線上に位置しています。一つはルーブル宮殿の割と常識的なサイズの凱旋門、もう一つは更に外郭にある新凱旋門。そして我々日本人がパリというとイメージするあの巨大な凱旋門です。
ナポレオンの戦勝記念碑として建造されたこの凱旋門。丘の上に建てられているのに加え、放射線状に各方向への道が延びており、それぞれの方角の遠景まで見渡せるというロケーション的にも演出を一工夫をいれた建築なのですが、問題はその現在の状況。馬鹿でかいロータリーのど真ん中に位置しているのです。
4年前の世界選手権の時にはどうやっても車が途切れない直線距離100メーターを思い悩んだ挙句、若さに任せて隙をついての猛ダッシュという一歩間違えれば愚劣極まりない手法を選んだのですが...
私も大人になりました。今回は地下からの連絡道路で凱旋門の真下まで行けるのでした。
ひと通り凱旋門ウォッチングをした後はシャンゼリゼ通りを下ってルーブル宮まで。
その手前のコンコルド広場のオベリスク見学をして、
ちょっと寄り道してオペラ座を見た後に、ルーブル美術館。
前回の会場はこのルーブル美術館の地下入口、ルーブルにある二つのピラミッドの地下側。そうそう、アップルストアの隣のイベント会場で開かれていたのです。何もかもが懐かしいです。しかしあの12月のルーブルを参加したメンバーの内、パリを再訪したのは半分以下というのはやはり少し寂しいものがあるなと、かつての会場を見ながら思いました。
そうこうするうちに開場時間が近づいてきたので今日の観光はここまで、進路を会場まで、地図を片手にそれらしき建物の方へ向かうと言うのを繰り返していましたが実は地下にある施設だったという落ちが待っていて、会場近くで迷子になりかけるのはもはや仕様ですね。
木曜日
さて、いよいよ本番とも言えるプロツアーが開幕です。
フランスという立地もあって参加者数はプロツアーレコードとなる480人。通常400人程度の参加者という事を考えると大分多い人数で、まずはスタンダード5回戦にその後ミラディン包囲戦・傷跡×2のブースタードラフト3回戦で5勝3敗以上の成績者だけが2日目に進出。2日目はドラフトからで後半がスタンダード5回戦をこなした上で、最終上位8名によるプレイオフを日曜日に開催する、という日程になっています。
そして私の成績はというと、スタンダード2勝3敗、ドラフトを初戦負けての初日落ち。
最終ラウンドで小室修に引導を渡された4年前のプロツアー横浜以来となる散々たる結果となってしまいました。
負けた理由については、それこそ探せば際限なく挙げられそうな気がしますが、スタンダードラウンド開始直前、15分前くらいになっていきなり、使用デッキを青黒コントロールから森勝洋・渡辺雄也製の青黒テゼレットへと替えたことが大きかったと考えています。
大会結果を見てもらってもわかるように、《饗宴と飢餓の剣》への耐性の無さから青黒コントロールを使いたくなかった、というのがその理由だったのですが、それにしても時間が少なすぎました。
カードとデッキリストを揃えるのにかかりっきりで一人廻しもする時間も持てず、スリーブすら付け替える時間が無い状態での1回戦開始、こんな状態で勝てる訳もなく1戦目を落とし、続く2,3戦目を取ったものの経験値が足り無すぎて4、5戦目両方を1-2で落としてしまい。気がつけば後が無い3敗という状態に。
3連勝縛りというドラフトラウンドも2パック目、3パック目で最序盤のピックを卓内に溢れている毒デッキ用のカードをカットしなくてはならないという噛み合わなさ、そして初戦で座るのはその毒デッキ、恐らく卓内でただ1人の強力な毒デッキの前になす術も無くやられて、私のプロツアー・パリは終わってしまいました。
金曜日
昨日の敗戦が思っていた以上に堪えたみたいです。
最後の殺され方、《マイアの種父》をブロッカーとして立ててターンを返したら、《伝染病の留め金》、さらに《伝染病の留め金》で除去されて止めを刺されたことを再演される悪夢で目を覚ました後は、何をする気力も湧かずに、同じく初日落ちした面々と観光行く約束していた事を思い出して会場まで行ってはみたものの、合流できずに延々と会場で初日落ち組とドラフトをやっていた日でした。
ですが昼を過ぎて夕方になるあたり、プロツアーが終盤戦に入り日本人がトップ8に入りそう、そして入ったというあたりまでなってくると、徐々にテンションが回復してきました。
明日のグランプリに向けていつまでも敗戦を引きずれるほど余裕があるわけはないですし、何よりも今回勝ち残っているのは、去年あれだけ不在が嘆かれた若手世代です。反省とその帰結として落ち込むのは日本に帰って、原稿を書いてる間にすれば充分です。
パリなのにイタリアンピザをテイクアウトしてホテルに戻ってみると、エッフェル塔まで本気になっていました。
土曜日
予想はされていた事ですが、もの凄い参加者数です。
その数2182人、参加者を驚きの3分割しても、なお700人オーバ。そこで9回戦、更に9回戦時点での2敗以上がエクストララウンドである10回戦に進出できるというシステムとなった初日でした。
私が割り振られたのはブルートーナメント。デッキ構築用の名前アルファベット順に配置された席に座り、パックを開封して誰が使うかはまだ解らないリストを記入する作業です。それが終わると対面のパックと交換して二重チェックです。
通常はこの後にパックを左右に移動させるなりした物が実際に自分が使用するパックとなるので、対面に座っていた中島さんとお互いのチェックしたパックの微妙さ加減について話していたら、今回はまさにそのパックでデッキ構築をするようにというアナウンスが・・・
デッキ構築時間中は2人揃って真っ青になっていました。
9 《森》 8 《沼》 -土地(17)- 1 《胆液爪のマイア》 1 《マイアの種父》 1 《腐敗狼》 1 《敗血のネズミ》 1 《ファイレクシアの憤怒鬼》 1 《モリオックの模造品》 1 《嚢胞抱え》 1 《絡み森のカマキリ》 1 《死体の野犬》 1 《ゴーレムの職工》 1 《メリーラの守り手》 1 《ダークスティールの歩哨》 -クリーチャー(12)- |
1 《皮剥ぎの鞘》 1 《皮羽根》 1 《縒り糸歩き》 1 《ダークスティールの斧》 1 《喉首狙い》 1 《闇の掌握》 1 《感染の賦活》 1 《忍び寄る腐食》 1 《苦行主義》 2 《病気の拡散》 -呪文(11)- |
毒になりきれずの毒10点、ライフ20点のトータル30点を狙うというどっちつかずのデッキが完成。ところが思ってた以上にデッキが良い廻りをしてくれます。
まず豊富に除去があるので序盤のマナマイア連打なんかを完全に無視して本命を落とす事に絞れます。そして生体武器。ただでさえ及第点のクリーチャー、それが死んでしまっても今度は装備品としても運用できるというのは、リミテッドではキーワード能力自体が逸脱気味ですが、その中でも上位クラスなアンコモンの2枚がデッキにいるのです。
更に大技の《忍び寄る腐食》、アーティファクトに触れるカードが実はデッキの中にこれ1枚ですが、書いてある事が強すぎて、結局これを初手から抱えて如何にタイミング良く打てるかというというゲームが多くありました。早いゲームも遅いゲームも大体はこのカードで決着しています。
そして《苦行主義》。戦場にあったところで生体武器は対象に取られてしまうというアンチシナジーを加味してデッキの中で20番目くらいの強さのカードと思って投入したのですが、上位デッキはみんな馬鹿みたいに除去だらけの強力デッキというのと、《忍び寄る腐食》待ちという状況を作りやすいという意味でMVPは完全にこのカードでした。
そういえば他にも《腐食獣》との2択で選んだ《メリーラの守り手》が《黒の太陽の頂点》とフォイル《黒の太陽の頂点》を打たれながら平然と攻撃し続けたというのもありました。完全に噛み合った1日。8回戦をカイ・ブッディの怪物デッキに落とした以外は、気がつけばの9勝1敗という成績で2日目に進出です。
日曜日
土曜日を望外の好結果で折り返しての翌朝。
進行の都合で午前8時にはプレイヤーミーティング開始、緯度が日本よりも高い冬のフランスではまだ夜も開けきっていない中での2日目スタート。
普段ならば1敗折り返しという初日スコアは、トーナメントの目標であるトップ8に対してある程度の道標、目処が立つ段階となります。
ですが2200人とグランプリのシステムから逸脱した参加者数にもなると、1敗でもまだ足りなかった。そういう1日でした。
結果は1回目のドラフトを2勝1敗でこなした後に、英語版カバレージのドラフト譜記事とフィーチャーマッチにもあるように5戦目のトップ8争いに敗れ、更に最終6戦目も敗れて通算12勝4敗。73位でプロポイントは0点という結果に終わってしまいました。
こうして私のマジックウィークエンドは、プロポイント的にはわずか2点と散々な結果に終わりました。今年も長い長いシーズンになりそうです。
とは言ったところで、どうという事にもならず、また一歩ずつまた上っていくだけですけどね。
次回はパリの続きから、翌週に開催されたグランプリ・デンバーについてを予定しています。
それではまた世界のどこかでお会いしましょう。
中村修平
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