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渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
闇の隆盛 リミテッド点数表・前編?闇物語?
読み物
渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
2012.02.24
闇の隆盛 リミテッド点数表・前編~闇物語~
こんにちは。渡辺です。
闇の隆盛を使った2大イベント、プロツアー・闇の隆盛inホノルルとグランプリ・神戸が終了しましたね。
プロツアーはキブラーが貫禄のプロツアー2勝目を果たし、グランプリ・神戸は平賀優宏選手が日本で行われた過去最大級のリミテッドグランプリを制し、新しいグランプリチャンピオンとして名乗りをあげました。
両イベントの勝者とはそこそこ仲が良い間柄なので、彼らの勝利は大変喜ばしいですね。
特に平賀選手とは僕がプロマジックを始める前から、お互いが10代からの友人関係で、一緒にマジックをする以外にも食事やカラオケのようなマジック以外での遊びでの交流もあります。
そんな長い付き合いの友人が今回のような大舞台で結果を残す。友人としてこれほど嬉しいことはありません。
まぁ準々決勝の直接対決で彼に直接切られているので、少しも悔しくないといえば嘘になるのですが......
そんな悔しさよりも優勝という最高の結果を出した友人を祝福できる喜びのほうが遥かに上。この場を借りて改めて祝福の言葉を贈りたいと思います。
本当におめでとうゾルゲ!!
今回の成績により5月にスペインで開催されるプロツアー・アヴァシンの帰還にもおそらく参戦予定とのことなので、彼のこれからの活躍に期待しましょう。
さてちょっと本筋とは関係ない前置きになってしまいましたが、今回は『闇の隆盛』特集記事の第3回です。
前回まで特集記事を読んでいない方や、おさらいをしたい方はよかったらこちらもどうぞ。
3回目となる今回のテーマはリミテッド点数表。
その言葉の通り、闇の隆盛のカードをリミテッドの視点で見た点数付けをし、リミテッド点数表を作っていくというものです。昨年の僕の連載を見ていただいていた方にはお馴染みの企画といってもいいですね。
今回はプロツアーやグランプリでの経験によってある程度カード評価が固まっているので、それを点数表という形で皆さんにお伝えしていきます。
また、闇の隆盛の全てのカードを一回でやってしまうと相当な量になってしまうので、点数表は前後編の2回に分割してやっていきます。
本当はグランプリ・神戸前に掲載できれば良かったのですが、僕個人の経験値が不足しているときに点数表を書くと大幅に間違った情報を提供してしまうこともあると考え、自分の中である程度評価が固まってから書くために少々お時間を頂きました。神戸前に掲載を期待していた方には申し訳ありません。
それと一つ念を押しておきたいのは、あくまでこれは僕個人の点数表なのでこれが正解というわけではありません。実際のピックや完成系のデッキを見据えたときに点数の低いカードを優先することも多々あります。あくまでもカードごとの点数のおおまかな基準として見てください。
カードの採点基準は以下の通り。
点数 | 基準 |
10 | 神カード。見たら取るべし。確定初手。 |
9 | 爆弾カード。これ1枚でゲームに勝てるようなカード。初手~2手目。 |
8 | かなり優秀なカード。流れてきてもおかしくないが、初手でも問題ないレベル。初手~3手目。 |
7 | 優良カード。是非デッキに入れたいレベル。2~4手目。 |
6 | 普通にデッキに入るくらいのカード。3~6手目。 |
5 | ぎりぎりデッキに入るぐらいのカード。5~8手目。 |
4 | できればデッキに入れたくないようなのカード。枚数が足りないときに仕方なく使うレベル。または特殊な条件でのみ使用するカード。7~9手目。 |
3 | サイドボード要員。基本はデッキに入らない。10~12手目。 |
2 | よほどのことがない限りデッキに入れることはないカード。12~14手目。 |
1 | 何をしてもデッキに入らないレベル。ほぼ14手目。 |
おおまかにはこんな感じです。
ではまずは白の点数表から見ていきましょう。
白
点数 | カード |
9 | 《高まる献身》 |
9 | 《未練ある魂》 |
9 | 《鎮魂歌の天使》 |
9 | 《スレイベンの破滅預言者》 |
8 | 《壺のニブリス》 |
7 | 《忠実な聖戦士》 |
7 | 《罪の重責》 |
7 | 《スレイベンの守護者、サリア》 |
6 | 《スレイベンの異端者》 |
6 | 《信仰の盾》 |
6 | 《町民の結集》 |
6 | 《ガヴォニーの鉄大工》 |
6 | 《霧のニブリス》 |
4 | 《銀爪のグリフィン》 |
5 | 《ホロウヘンジの霊魂》 |
5 | 《エルゴードの審問官》 |
5 | 《熟練の突き》 |
5 | 《深夜の護衛》 |
4 | 《突然の消失》 |
4 | 《暁天》 |
3 | 《降霊術》 |
3 | 《天啓の光》 |
3 | 《扉に閂》 |
2 | 《聖所の猫》 |
2 | 《疲労の呪い》 |
2 | 《大天使の光》 |
環境最強色と名高い白。
コモン・アンコモン共に全体的にカードの質が高く、非常に安定している色です。グランプリ・神戸の初日に会場の《平地》が足りなくなるという事件があったくらいの人気色。本当にカード1枚1枚のクオリティが高いです。
今回9点をつけた4枚は、その白の中でも群を抜いて強いですね。
その中で唯一のアンコモンである《未練ある魂》ですが、正直普通のレアよりも断然強いです。流石に1枚のカードで飛行クリーチャーを4体も出すのはリミテッド的に壊れていますね。
どれくらいかというと、プロツアー直前の練習ドラフトでヤソ(八十岡翔太)が一緒にパックから出た《食百足》を流してこちらを優先するくらいです。もし僕が同じ状況でもまったく同じピックをするでしょう。強力神話レアよりも優先するアンコモンというだけで、このカードが如何に壊れているかが分かりますね。
グランプリ・神戸優勝者・ゾルゲ(平賀 優宏)の一押しカードの《突然の消失》ですが、僕の評価はあまり高くありません。
確かにフィニッシュブローとして優秀なカードではあるのですが、6マナという重さとフィニッシュ以外での汎用性の低さが評価の低い理由ですね。一応自分にも打てるので、CIPクリーチャーを使いまわしたりクリーチャーを擬似的に警戒持ちにしたりという使い方もできますが、それでもこの高速環境での6マナという重さを考えるとデッキに入れるのを渋ってしまいます。
ただこういった他人と評価の違うカードを上手く使ってこそのリミテッド。
決勝でのゆくひろ(行弘 賢)とのゲームを決めたカードですし、僕自身もゾルゲとの直接対決でこのカードが決定打となって負けているので、評価を改めなければいけないかもしれません。
コモンのトップを見てみると《忠実な聖戦士》と《罪の重責》が同じ7点になっていますが、もしこの2枚が一緒にあったら僕は《罪の重責》を優先するでしょう。
優秀な2マナ域かつ両面カードをピックすることによる色の主張のできる《忠実な聖戦士》も捨てがたいですが、やはりリミテッドにおいて確定除去は別格。毎ターンマナがかかるとはいえ1マナの確定除去が弱いわけがありません。優秀な2マナ域である《忠実な聖戦士》も確かに魅力的ではあるのですが、僕の中では除去カード>クリーチャーという評価になっていますね。
というわけで僕の中での白のコモントップは《罪の重責》ですが、戦略によっては序盤から展開していける《忠実な聖戦士》を優先するという方も居るでしょう。この高速環境において擬似的な不死を持っている2マナ域というのはそれだけで非常に価値があります。あなたならこの白のコモンの2種、どちらを優先しますか?
続いて青のカードに移ります。
青
点数 | カード |
10 | 《意思の詐話師》 |
9 | 《地下牢の霊》 |
9 | 《ヘイヴングルのルーン縛り》 |
9 | 《高まる混乱》 |
8 | 《塔の霊》 |
8 | 《ゲラルフの精神壊し》 |
8 | 《息吹のニブリス》 |
7 | 《ネファリアの海鳶》 |
7 | 《執拗なスカーブ》 |
7 | 《嵐縛りの霊》 |
7 | 《同族の呼び声》 |
6 | 《捕海》 |
6 | 《魂を捕えるもの》 |
6 | 《金切り声のスカーブ》 |
5 | 《骨を灰に》 |
5 | 《スキフサングの詠唱》 |
5 | 《予言》 |
5 | 《首無しスカーブ》 |
5 | 《神秘の回復》 |
5 | 《救助の手》 |
5 | 《思考掃き》 |
4 | 《巧みな回避》 |
4 | 《予言の寒気》 |
4 | 《叫び霊》 |
3 | 《死者の秘密》 |
2 | 《対抗激》 |
2 | 《こだまの呪い》 |
白ほどではないですが、青も全体的にカードの質が高いです。青の専売特許である優秀なコモンの飛行クリーチャーと、《捕海》のような優秀なバウンス呪文があるのがその理由ですね。
そんな青のカードのトップは《意思の詐話師》。
条件付きではありますが、一回起動し始めれば延々と《精神の制御》を使えるという悪魔のようなクリーチャーです。
この手のクリーチャーは大抵、自身が戦場を離れた際にお借りしていたものを返すのがならわしだったのですが、この神話レアのお姉さんはたとえ自分が息絶えても人から借りたものは返さない主義のようです。なんというジャイアニズム。
強いて弱点を挙げるとするなら自身の1/1というサイズですね。タフ1クリーチャーなので《霊炎》や《炉の小悪魔》で簡単に対処されるときもありますが、逆にそれらで対処できなかったときは本当にとんでもないことになるので、まぁそれくらいは目をつぶるとしましょう。
とりあえずドラフトで見たら問答無用で取っておきましょう。あと使用した際には、ゲームが終わった後に拝借したクリーチャーの返却を忘れずに!
先程の《突然の消失》と同じく、ゾルゲの神戸優勝デッキに入っていたレアカード《同族の呼び声》。
このカードに関しては実際に使われて大幅に評価が上がったカードです。というのも環境にある除去が対象を限定するものだったり、戦場に残り続けるものだったりするので、思ったよりも対処されずに残ることが多いです。
一度戦場に残ったら盤面に干渉する優秀なアドバンテージエンジンとなってくれるので、そのままゲームに勝ってしまうことも多々あるでしょう。実際、僕はゾルゲとの対戦でこれを貼られたクリーチャーを対処できずに、盤面に群がっていく人間達を呆然と見ることしかできませんでした。
使用上の注意として、デッキ内の種族をある程度まとめないと効果を発揮しないので、ドラフト序盤にこれを確保してそこから種族に寄せていく方向でピックしましょう。まぁこの環境は種族に寄せていくドラフトが主流なので、自然と枚数は集まりそうですけどね。
青のコモントップは《嵐縛りの霊》と《ネファリアの海鳶》の2枚。
この2枚に関してはほぼケースバイケース。2手目以降にこの2択で悩んだ場合はそれまでのピックの状況によって決めるといった感じです。
それまで青路線でピックしていたなら《嵐縛りの霊》。青路線ではなく、そこから青へ参入なら《ネファリアの海鳶》を優先するといった感じでしょうか。要は、青が1色目か2色目かで色マナを許容できるほうを取るといったところです。
当然マナ域の都合もあるので、一概にはそうだと言えませんが。
個人的にはちょっとだけ《ネファリアの海鳶》の方を優先しています。これは完全に好みの問題で、こういった「構えておいて後出しで得をできる可能性のあるカード」が好きなんですよね。
ただ軽くて不死という強力な能力を持った《嵐縛りの霊》を優先する方の意見も分かります。
あなたならどちらを優先しますか?
お次は黒。
黒
点数 | カード |
9 | 《不浄なる者、ミケウス》 |
9 | 《貪欲なる悪魔》 |
8 | 《悲劇的な過ち》 |
8 | 《影の悪鬼》 |
7 | 《墓所這い》 |
7 | 《遠沼の骨投げ》 |
7 | 《スカースダグの剥ぎ取り》 |
6 | 《死せざる邪悪》 |
6 | 《復讐に燃えた吸血鬼》 |
6 | 《覚醒舞い》 |
6 | 《死の愛撫》 |
6 | 《ゲラルフの伝書使》 |
6 | 《名門のグール》 |
5 | 《黒猫》 |
5 | 《マルコフに選ばれし者》 |
5 | 《ファルケンラスの拷問者》 |
5 | 《墓所粛正》 |
5 | 《高まる野心》 |
5 | 《海墓の刈り取り》 |
5 | 《悲惨な旅》 |
4 | 《命取りの魅惑》 |
4 | 《陰惨な発見》 |
4 | 《盲いたグール》 |
3 | 《ゾンビの黙示録》 |
3 | 《不幸の呪い》 |
3 | 《渇きの呪い》 |
2 | 《悪意に満ちた影》 |
前述の白・青と違って人気色とはいえない黒。前の2色と比べて、コモンとアンコモンの質が全体的に良くなく、必然的に不人気色になっています。
《悲劇的な過ち》や《死せざる邪悪》のような軽くて使いやすい呪文はあるのですが、クリーチャーの質が良くないので余程恵まれない限りは2色目になりがちです。
そんな黒のトップは《不浄なる者、ミケウス》と《貪欲なる悪魔》/《強欲の大悪魔》。
超が付くほどの高速環境であるイニストラード・闇の隆盛ドラフトで6マナという重さが気になる《不浄なる者、ミケウス》ですが、流石に出た後の盤面へのインパクトは凄まじいものがあります。
自軍全体強化+不死に加え、相手の人間クリーチャーの攻撃を渋らせるその存在感。いくら6マナでもこの能力なら文句なしの運用でしょう。流石は黒の神話レアといったところですね。
もう片方の《貪欲なる悪魔》/《強欲の大悪魔》は闇の隆盛の数少ない両面レアの1枚。
変身前の能力は平凡そのものですが、人間を食べて変身した後の圧倒的な姿は圧巻の一言。変身後の維持コストにも人間が必要なので、ある程度の人間クリーチャーを集めないといけませんが、そうまでして使う価値は十分にありますね。相方の色は人間の多い白にするのが筋です。
それと、これの評価が高い理由はもう一つ、「このカードが両面カードである」ということです。
この環境の黒は上や下とは絶対に色被りをしたくないので、これを早い段階で取ることにより、両面カード特有の自分の色主張を行うことができます。
この環境でのドラフト時における色主張の重要さは、イニストラード環境をやってきたみなさんには今更必要するまでもないでしょう。
カードの能力も強く、色主張もできる。評価が低いわけがないですね。
黒のコモントップは《悲劇的な過ち》。黒というか、闇の隆盛のコモンの中でトップといったほうがいいですね。
1マナというテンポを取りやすい軽さ、陰鬱さえしていればほぼ全ての生物を倒すことのできる汎用性の広さ。陰鬱の条件も1マナインスタントという構えやすさのおかげでそれほど気になりません。非常に使いやすい優秀な除去ですね。
グランプリ・神戸でもモリカツ(森勝洋)がこの環境で過小評価されている1枚に挙げたカード。確かにグランプリの1stドラフトの5手目くらいで流れてきて本当にびっくりした覚えがあります。それまで赤緑の狼男の方向でドラフトしてたので、ピックの方向性とまったく合わず泣く泣く流しましたが、そこから黒に参入するか真剣に悩んだほどですね。
ドラフトでは黒があまり好きではない僕も、このカードからなら黒に参入しても良いと思っているくらいには強力なカードです。
今回はここまで。今回できなかった残りのカードはまた次回に持ち越しということで。
それではまた、闇の隆盛 リミテッド点数表・後編でお会いしましょう。
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